見て見ぬふりも“加害”のひとつ
チャットルームの運営者「ジェントルマン」はスジンを部屋に監禁し、仮想通貨を会員に払わせてスジンに対する暴力行為を“競り”で決めようとする。それを見たドンジュは自らも仮想通貨を払い、ジェントルマンと対峙して恋人をなんとか救出しようとする。ドンジュの決死の挑戦はチャットルームを沸かせ、さらに多くの人間が面白半分にチャットルームに参加する。
このストーリーはもちろんフィクションだが、仮想通貨で決済する犯罪モデルはn番部屋事件と同じで、事件のなかで一番残虐だった部屋の運営者は「博士」と呼ばれていた。実は、チェ・ジュヨン監督はある短編動画にインスパイアされて脚本を書いたという。
その短編動画は学生が卒業制作で作った作品で、人々がお金を払って盗撮のライブ配信を観るというストーリーだった。そのとき、監督は「今後、テクノロジーが進化するにつれ、このようなデジタル性犯罪はどんどん増えていくだろう。そうなったときに、自分も加害者になるのではないか」と強烈な恐怖に駆られたそうだ。
とはいえ、現在、どこの国でも統計的には性犯罪者の多くが男性だ。なぜ、女性の監督が“自分も加害者になり得る”と思ったのだろうか?
「傍観者も加害者に含まれると思うからです。“本当の犯罪だとは知らなかった”、“自分にできることはない”など様々な理由で私たちは他人に背をむけがち。しかし、見て何もしないのも、加害です。今後、デジタル犯罪が増えるにつれ、性犯罪も増えていくでしょう。私たちが加害者になるかもしれない危険性に、性別は関係ありません。このメッセージを映画にしたいと思いました」(チェ・ジュヨン監督、以下同)
日本でもX(ツイッター)で誰かが暴力を行う・受ける動画がよく拡散されている。しかし私たちのほとんどが、それを通報せず傍観している。「本物かどうかも分からないし」と他人事として受け流しているのが現実だ。
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