盗撮した警察官を「公表基準に達していない」で済ませる愛知県警に問いたい
https://news.yahoo.co.jp/articles/83737679366613ef02eb8ea29bbb8d5407bfbdc0
盗撮を取り締まる側が、盗撮で書類送検。それでも非公表ですか。
CBCニュースなどによると、愛知県警半田警察署地域課の20代男性巡査長が、電車内で女性の下半身などをスマートフォンで盗撮した疑いで、愛知県迷惑行為防止条例違反などにより書類送検されていたとのことです。
しかも、報道によれば、この事件は現場で被害者が訴え出て発覚したというより、巡査長の生活態度などに問題があり、上司がスマートフォンの中身を確認したところ、動画が見つかったという経緯のようです。
そして、愛知県警はこの件について「公表基準に達していない」として発表せず、巡査長は処分を受け、すでに退職していると報じられています。
正直に言います。
何をもって「公表基準に達していない」のでしょうか。
一般市民が電車内で女性の下半身を盗撮すれば、警察は当然のように捜査し、場合によっては実名報道までされます。ところが、盗撮を取り締まる立場の警察官が同じような行為をしたときには、「基準に達していない」で非公表。
この説明で、市民が納得できると思っているのでしょうか。
問題は「氏名を出せ」ではない。概要すら公表しない姿勢です。
この問題で重要なのは、被害者保護を無視して警察官の氏名を出せ、という話ではありません。
被害者のプライバシーは当然守るべきです。被害者が特定されるような公表は絶対に避けるべきです。
しかし、それと「事件そのものを公表しない」ことは別問題です。
警察官が盗撮で書類送検された。
処分を受けた。
退職した。
この事実は、警察組織への信頼に直結する重大な問題です。氏名を伏せても、所属を抽象化しても、被害者を特定できない形にしても、少なくとも事件概要、処分内容、処分日、再発防止策は公表すべきです。
「基準に達していない」という一言で済ませるなら、その基準のほうが市民感覚から大きくずれています。
「停職以上でなければ非公表」なら、処分の重さで情報公開を調整できてしまう
警察庁の懲戒処分発表の指針では、私的行為に関する懲戒処分について、停職以上の処分は発表対象とされています。
つまり、逆に言えば、私生活上の行為として扱い、処分を減給や戒告にとどめれば、形式上は「発表基準に達していない」と説明できる余地が生まれます。
ここが一番おかしいのです。
盗撮をした警察官を停職以上にするか、減給以下にするか。
その判断によって、公表されるかどうかが変わる。
これでは、市民から見れば「公表しなくて済む処分に落としたのではないか」と疑われても仕方がありません。
警察官の盗撮は、単なる私生活上の不祥事ではありません。警察官は、盗撮被害の相談を受け、被害者を保護し、加害者を取り締まる立場です。その警察官が盗撮をしたなら、職務外であっても、警察組織への信頼を根本から損なう行為です。
依願退職なら、退職金はどうなったのか
報道では、巡査長はすでに退職しているとされています。
ここで当然出てくる疑問があります。
処分後に依願退職したのであれば、退職金は支払われたのでしょうか。
支払われたのであれば、満額なのか、一部制限されたのか。
そもそも懲戒免職ではなく退職で終わらせた理由は何なのか。
この点が説明されなければ、市民からは「退職で幕引きしたのか」「税金から退職金を支払って終わらせたのか」「身内に甘い処分ではないのか」と見られて当然です。
もちろん、現時点で退職金が支払われたと断定することはできません。しかし、警察官が盗撮で書類送検され、非公表のまま退職している以上、退職手当の扱いは市民が確認すべき重大な論点です。
撮影罪ではなく、迷惑防止条例違反「など」なのか
もう一つ納得できないのが、罪名の扱いです。
報道では、愛知県迷惑行為防止条例違反などの疑いで書類送検されたとされています。
現在は、性的姿態等撮影罪が整備されています。いわゆる盗撮行為について、従来の都道府県迷惑防止条例だけではなく、国の法律として処罰する仕組みができています。
もちろん、映像の内容や撮影態様によって、性的姿態等撮影罪に当たるのか、迷惑防止条例違反にとどまるのかは個別判断です。
しかし、電車内で女性の下半身などをスマートフォンで盗撮した疑いと報じられている以上、なぜ性的姿態等撮影罪ではなく、愛知県迷惑行為防止条例違反などとして処理されたのか。この説明も必要です。
一般市民に対しては厳しく、警察官に対しては条例違反で軽く見える形にする。そう受け取られれば、警察への信頼はさらに落ちます。
被害者保護を理由に、組織保護をしていないか
警察が公表しない理由として、被害者保護やプライバシー保護を挙げることはあります。
それ自体は正しいです。
しかし、被害者保護は、加害者側の組織を守るための便利な盾ではありません。
被害者を特定しない形で、事件概要を公表することは可能です。現に、多くの不祥事発表では、被害者名を伏せたまま、所属、年齢、処分内容、事案概要を公表しています。
警察官による盗撮事件で、公表しない理由が「基準に達していない」だけなら、それは被害者保護ではなく、組織防衛に見えてしまいます。
愛知県警に問いたい
この件で、愛知県警に問いたいことは明確です。
第一に、男性巡査長への処分は、懲戒免職、停職、減給、戒告、訓戒のどれだったのか。
第二に、「公表基準に達していない」と判断した具体的な基準文書と条項は何か。
第三に、警察官による盗撮事案を、なぜ警察組織への信頼を損なう重大事案として公表しなかったのか。
第四に、性的姿態等撮影罪ではなく、愛知県迷惑行為防止条例違反などとして処理された理由は何か。
第五に、退職手当は支給されたのか。支給されたなら、支給制限は行われたのか。
この5点に答えない限り、市民の疑念は消えません。
「基準に達していない」ではなく、基準が市民感覚に達していない
今回の問題は、単なる一警察官の不祥事ではありません。
盗撮被害者に対して、警察は「相談してください」「110番してください」と呼びかけています。にもかかわらず、警察官自身が盗撮で書類送検されると、組織は「公表基準に達していない」として発表しない。
これでは、被害者が警察を信じられなくなります。
公表しないための基準ではなく、市民の信頼を守るための基準でなければ意味がありません。
警察官の盗撮は、一般人の盗撮より軽いのですか。
盗撮を取り締まる立場の人間が盗撮をしても、退職すれば終わりですか。
公表基準とは、市民に説明するための基準ですか。それとも、身内の不祥事を隠すための基準ですか。
愛知県警には、逃げずに説明していただきたい。
「基準に達していない」のではありません。
その基準と運用が、市民の信頼に達していないのです。
引用・参考資料
・CBC news/TBS NEWS DIG
「電車内で女性の下半身を盗撮か…20代男性巡査長を書類送検 基準に達していないとし公表せず 生活態度に問題→上司がスマホの中身を確認し発見 愛知県警」
・メ~テレ
「電車内で女性の下半身などをスマホで盗撮か 愛知県警半田警察署の20代男性巡査長を書類送検」
・警察庁
「懲戒処分の発表の指針の改正について」
https://www.npa.go.jp/laws/notification/tyoukaishobunnohappyounosisinn20240329.pdf
・警察庁
「懲戒処分の指針の改正について」
https://www.npa.go.jp/laws/notification/kansatu.tyoukaishobun20250601.pdf
・法務省
「性犯罪関係の法改正等 Q&A」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html
・愛知県警察
「愛知県迷惑行為防止条例(平成31年1月1日施行)」
https://www.pref.aichi.jp/police/syokai/houritsu/sekou-kaisei/shijo/h300101meiwakuboushijourei.html
・愛知県
「懲戒処分の基準」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/jinjika/choukaikijun.html
・愛知県警察
「愛知県警察の情報公開制度」
https://www.pref.aichi.jp/police/202209jouhou-kojin.html
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