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再審法改正「諦めない」 冤罪被害者ら、5年後の見直しに希望つなぐ

藤牧幸一 荻原千明 黒田早織 二階堂友紀

 再審制度を見直す改正刑事訴訟法が17日に成立したことを受け、冤罪(えんざい)被害者や弁護士らが会見などで思いを語った。求めてきた形にはならなかったが、5年ごとの検討に希望をつないだ。

 静岡一家殺害事件をめぐり死刑確定から再審無罪となった袴田巌(いわお)さん(90)の姉、秀子さん(93)はオンラインで参加した。「もう少しまともな改正をしてくれると思ったが、がっかり。法務省は私たちの方を向いていない」と語った。

 再審制度は1948年に現行法が制定されてから、一度も見直されてこなかった。80年代に四つの死刑事件で再審無罪が相次いだ時ですら、法改正に至らなかった。

 見直しに消極的だった法務省を、袴田さんの再審無罪が動かした。秀子さんは「巌だけが助かればいいと思っていない」と繰り返し、冤罪救済のための法改正に力を尽くしてきた。

 「良い証拠も悪い証拠も全部出してフェアに戦うべきだ」というのが持論だ。改正法は裁判所が検察に証拠の提出を命令する制度を新設した。だが、厳しい要件が設けられるなど、無罪につながる証拠が埋もれる恐れが指摘されている。

 滋賀県日野町で酒店経営の女性が殺害された日野町事件をめぐり、亡き父の再審を求めてきた阪原弘次さん(65)も「証拠の全面開示は大事な基本だった。納得していない」とオンラインで話した。

 ただ、改正法では施行後5年ごとに制度のあり方を検討するとされた。「最後まで諦めていない」と前を向いた。

 今年2月に裁判のやり直しが確定したが、検察が再審開始決定に2度の不服申し立て(抗告)を行い、その審理に7年7カ月を要した。今回、検察抗告は「原則禁止」とされたが、実効性が疑問視されている。

 「今ある波をさらに大きくしたい」。今後も抗告の全面禁止などを訴え続けるという。

 福井女子中学生殺害事件で再審無罪となった前川彰司さん(61)は取材に、「証拠開示は後退した部分があるのではないか。抗告の原則禁止にも抜け道が残っている。法改正とは名ばかりで、敗北感がある」と語った。

 そのうえで「再審制度に問題があることを世の中に示せた。5年後に光を見いだしたい」と次の改正に希望をつないだ。

失われた修正機運「立法府の責任は大きい」

 日本弁護士連合会(日弁連)の再審法改正推進室長、鴨志田祐美弁護士は会見で「再審を判断するにあたり、重要な部分が検察官の裁量や運用に委ねられている。このような法案で終わったことについて、立法府の責任は大きい」と指摘した。

 自民党の事前審査では、3回の法案修正が重ねられ、検察抗告の制限などが実現した。しかし、国会審議では衆院で付則が微修正されたのみ。参政党が賛成に回り、与党が少数の参院でも過半数を形成したことで、修正の機運が失われた。

 鴨志田さんは「弁護士として法律の解釈を固め、冤罪被害者を迅速に救済する実績を作っていけるかが課題だ」と述べた。

 改正法の懸念点は、証拠開示と検察抗告だけではない。大学教授や弁護士らでつくる「司法情報公開研究会」もこの日会見を開き、証拠の「目的外使用」禁止規定について抗議を表明した。

 この規定は、検察が開示した証拠を再審手続きやその準備以外で使うことを一律で禁じる。公益目的でも証拠をそのまま公開すれば違法となる。

 同会は、国民の知る権利や報道の自由を損なう危険性が高いとして、早急な見直しと、運用に当たり報道や研究目的での使用を妨げないことを求めた。

 ジャーナリストの江川紹子さんは、この規定の新設は「改悪でしかない」とし、「再審請求審という閉ざされたプロセスがますますブラックボックス化してしまう」と懸念を示した。

 塚原英治弁護士は、袴田さんのケースで再審の扉を開いた「5点の衣類のカラー写真」を踏まえ、「あの証拠の報道なくして、その後の進展があり得たか」と指摘。冤罪救済をも困難にする規定だと批判した。

 規定創設に反対してきた日本新聞協会も「強い遺憾の意」を表明する編集委員会代表幹事談話を出した。「報道機関への情報提供に萎縮が生じ、(非公開の)再審請求審がさらに不透明なものになることを深く危惧する」とした。

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この記事を書いた人
黒田早織
東京社会部|裁判担当
専門・関心分野
司法、在日外国人、ジェンダー、精神医療・ケア
二階堂友紀
東京社会部|法務省担当
専門・関心分野
法と政治と社会 人権 多様性

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