- 1二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 22:29:44
- 2二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 22:38:01
死んだか……?
- 3二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 22:42:49
このレスは削除されています
- 4二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 22:45:18
ふーん…続けろ
- 5二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 22:49:56
- 6二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 23:01:49
- 7二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 23:03:28
- 8二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 23:08:07
- 9二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 23:13:48
おかしいやつを亡くした
- 10二次元好きの匿名さん26/07/16(木) 23:38:39
>>1君はさぁ〜
蘇って悪夢を見た後のブエナがブエトレの周囲の女性達にコレ私のアピールする姿を描く仕事がまだ残ってんじゃんかよ
- 11二次元好きの匿名さん26/07/17(金) 09:21:32
存分に甘えさせてあげなければ
- 12二次元好きの匿名さん26/07/17(金) 13:27:57
おお
- 13二次元好きの匿名さん26/07/17(金) 13:39:09
- 14二次元好きの匿名さん26/07/17(金) 13:44:29
オラッ >>1 はその夢で別れを切り出したお兄ちゃん側の理由とその時の態度まで事細かに書いてそれを解消するために似たシチュを可能な限り再現しつつ真逆の結果にしてブエナを安心させるお兄ちゃんを書くんだよッ
- 15前編26/07/17(金) 20:12:43
気がつくと、ブエナビスタはリビングの椅子に座っていた。
窓から差し込む光は薄く、部屋の中は朝とも夕方ともつかない色に沈んでいる。
向かいにはトレーナーがいた。
背筋を伸ばし、組んだ両手に視線を落としたまま、何かを言い出そうとしている。
その顔は、息苦しくなるほど重々しかった。
「……どうしたの?」
呼びかけても、トレーナーはすぐには答えなかった。
代わりに、別のものが目に入った。
いつも彼の指にはめられているはずの指輪がない。
ブエナビスタは反射的にテーブルへ視線を落とした。
指輪は、そこにあった。
二人で選んだものが、何でもない小物のように雑に置かれている。
胸の奥を、鋭い痛みが貫いた。
「お兄ちゃん……?」
自分の声なのに、ひどく遠く聞こえる。
トレーナーがゆっくりと顔を上げた。
しかし、その目はブエナビスタを見ているようで、どこにも焦点が合っていなかった。 - 16前編26/07/17(金) 20:13:44
「ブエナ。話があるんだ」
嫌だ。
続く言葉を聞く前から、身体の奥底がそう叫んでいた。
耳が伏せられ、膝の上に置いた指先が震える。
「俺たち、別れよう」
心臓が止まったような気がした。
言葉の意味は分かる。
一つずつなら、どれも知っている言葉だった。
それなのに、頭の中で繋がらない。
「……どうして?」
やっと絞り出した声は、泣き出す寸前の子どものように頼りなかった。
トレーナーの唇が動く。
「ブエナと一緒にいると、俺は――――」
その先だけが、何かにかき消された。
聞き返すこともできないまま、次の言葉だけが耳の奥へ突き刺さる。
「だから、もう終わりにしたい」 - 17前編26/07/17(金) 20:14:44
「……そっか」
自分でも驚くほど、素直な返事が出た。
泣いて困らせてはいけない。
引き留めて、嫌われたくない。
自分と一緒にいることで彼が苦しむのなら、離れてあげるべきなのかもしれない。
(お兄ちゃんが幸せになれるなら、それでいいよね)
そう思った途端、胸の奥にある何かが音を立てて崩れた。
視界が白く霞んでいく。
声も出ない。
息の仕方さえ分からない。
黙り込んだブエナビスタを見つめた後、トレーナーはテーブルの端にあった指輪を中央へ押し出した。
硬いものが木の表面を擦る、乾いた音がした。
それだけで、二人の間にあった時間まで捨てられてしまったように感じた。 - 18前編26/07/17(金) 20:15:44
トレーナーが立ち上がる。
(待って)
言わなければいけないのに、喉が動かない。
彼の背中が遠ざかる。
扉が開き、向こう側の暗闇へ消えていく。
(行かないで)
扉が閉まり始める。
「待って……!」
ようやく漏れた声は、閉じる音に呑み込まれた。
「お兄ちゃん……っ!」
自分の叫び声とともに、ブエナビスタは目を覚ました。
荒い呼吸が暗い寝室に響いている。
頬を伝った涙が枕を冷たく濡らしていた。
何度か瞬きをして、ようやく見慣れた天井が目に入る。
夢だった。
そう理解しても、胸を締めつける痛みは消えてくれない。 - 19前編26/07/17(金) 20:16:45
ブエナビスタは隣へ顔を向けた。
トレーナーはそこにいた。
しかし、こちらに背を向けて眠っている。
ただ寝返りを打っただけ。
頭では分かっているのに、夢の中で遠ざかっていった背中と重なった。
(嫌……)
ブエナビスタは涙を手の甲で拭うと、静かに身体を起こした。
ベッドの端とトレーナーの間には、人ひとりが入るにも窮屈なほどの隙間しかない。
それでも構わず、彼が向いている側へ回り込む。
掛け布団を持ち上げ、狭い場所へ身体を滑り込ませた。
そして逃がさないように、トレーナーの背中に両腕を回す。
確かな体温が腕の中にある。
耳を寄せれば、規則正しい鼓動が聞こえる。
その音に縋るように、ブエナビスタはさらに強く抱きしめた。
「……ん……?」
トレーナーが身じろぎし、ゆっくりと目を開ける。
至近距離にいるブエナビスタを見て、眠たげに何度か瞬きをした。
「すごい寝相だな。わざわざこっちまで回ってきたのか?」
からかうような声だった。 - 20前編26/07/17(金) 20:17:46
悪い夢を見て怖くなったなんて言うのは恥ずかしい。
ましてや、夢の中で別れを告げられたのが悲しくて泣いていたなど、知られたくなかった。
ブエナビスタは唇に笑みを作った。
「ふふっ……本当だね」
彼は何も言わず、ブエナビスタの頬へ手を伸ばした。
その指には指輪があった。
肌に触れる金属の冷たさに、ブエナビスタの胸が大きく震える。
トレーナーはブエナビスタの顔を少し上向かせ、その瞳をじっと見つめた。
「……お兄ちゃん?」
意図を測りかねたブエナビスタはトレーナーの瞳を見つめながら言葉を待った。
「今日も可愛いなと思って」
一瞬、言葉の意味を理解できなかった。
遅れて頬が熱くなり、耳の先まで一気に赤くなる。
「もうっ……!」
顔を隠すように胸元へ抱きつくと、トレーナーの小さな笑い声が聞こえた。
大きな手が頭へ添えられ、髪を梳くようにゆっくりと撫でてくれる。 - 21前編26/07/17(金) 20:18:46
「もう少し眠るか?」
今日は二人で出かける予定がある。
しかし、時計を見るとまだ時間に余裕があるのが分かった。
「……うん」
トレーナーが身体をずらし、ブエナビスタが横になれる場所を空ける。
今度は向かい合ったまま、互いの身体へ腕を回した。
ブエナビスタは目を閉じる前に、もう一度だけ彼の顔を確かめた。
眠たそうな目も、少し乱れた髪もすべてがいつもと変わらない。
胸元に頬を寄せると、トレーナーの腕が背中を包み込んだ。
その温かさを確かめながら、ブエナビスタは静かに目を閉じた。
後編に続く - 22二次元好きの匿名さん26/07/17(金) 21:07:11
この後の展開がとても気になりますね
正夢なのか、それとも… - 23二次元好きの匿名さん26/07/18(土) 00:24:36
続きを全裸待機
雨が辛いので早めに頼む - 24二次元好きの匿名さん26/07/18(土) 00:29:53
100億ボルトあるんですけど…
- 25二次元好きの匿名さん26/07/18(土) 09:00:00
わっふるわっふる
- 26二次元好きの匿名さん26/07/18(土) 15:50:35
次は事情の説明からのイチャイチャパートかねぇ、楽しみだ
- 27二次元好きの匿名さん26/07/18(土) 16:46:25
- 28後編26/07/18(土) 18:10:46
少しだけ眠り直した二人は予定どおり街へ出かけた。
休日の通りは人が多く、店先から漂う甘い焼き菓子の香りや楽しそうな話し声が辺りを満たしている。
ブエナビスタはトレーナーの手を握り、指と指をしっかり絡めて歩いていた。
普段の彼は街中でこうして手を繋ぐと恥ずかしがる。
しかし今日は何も言わなかった。
昼食に入ったレストランで店員に案内されたのは向かい合わせの席だった。
椅子を引こうとした瞬間、あの悪夢が蘇る。
テーブルを挟んだトレーナー。
外された指輪。
どこにも焦点の合わない目。
胸の奥が冷たくなった。
「ブエナ?」
トレーナーが不思議そうにこちらを見る。
ブエナビスタは胸の内に残る冷たさを押し隠すように笑い、彼の正面ではなく、隣の椅子へ手をかけた。 - 29後編26/07/18(土) 18:11:46
「今日は、こっちがいいな」
「隣?」
トレーナーは席とブエナビスタの顔を交互に見た。
ブエナビスタは椅子の背に指をかけたまま、少しだけ首を傾げる。
「だめ?」
「だめじゃないよ」
トレーナーはそれ以上理由を尋ねず、自分の椅子を横へずらした。
二人分の食器を置けるように、卓上のメニューや水のグラスも手早く移してくれる。
空いた場所へ腰を下ろすと、すぐ隣から彼の体温が伝わってきた。
肩が触れるほどではない。
しかし、手を伸ばせばいつでも届く距離だった。
先ほどまで胸の奥に張りついていた冷たさが、ほんの少しだけ薄れていく。
注文した料理が運ばれてくると、二人はいつものように取り分け合った。
「ブエナ、こっちも食べてみる?」
「うん。じゃあ、私のも一口あげるね」 - 30後編26/07/18(土) 18:12:46
皿を寄せるトレーナーの指にはいつもの指輪が光っている。
夢の中ではあれがテーブルの上に置かれていた。
その光景が一瞬だけ蘇り、ブエナビスタは無意識に自分の指輪に指を重ねた。
滑らかな輪郭をなぞると、確かな硬さが返ってくる。
ここにある。
彼の指にも、自分の指にも。
「どう? 美味しい?」
「……うん。すごく美味しいよ」
問いかけられて顔を上げる。
すぐ隣にあるトレーナーの表情は、いつもと変わらなかった。
食事の間、テーブルの下では膝が何度か触れ合った。
そのたびにブエナビスタはわずかに息を詰めたが、足を引くことはしなかった。
トレーナーも特に気にした様子はなく、そのまま料理の感想や、この後に立ち寄る店の話を続けている。
他愛のない会話。
温かい料理の匂い。
すぐ隣から聞こえる声。
一つひとつを確かめるうちに、夢の中で白く塗り潰されていた思考がゆっくりと元の色を取り戻していった。 - 31後編26/07/18(土) 18:13:46
会計のためにトレーナーが席を立つと、ブエナビスタもすぐにその後を追った。
ほんのわずかな距離なのに一人で席に残る気にはなれなかった。
レジの前で財布を取り出すトレーナーの隣に立ち、その袖へ触れそうな近さで会計が終わるのを待つ。
支払いを済ませたトレーナーが礼を告げると、店員は二人を見比べ、にこやかに笑った。
「ふふっ、素敵な彼氏さんですね」
彼氏。
その言葉が、胸の奥に残っていた不安へ触れた。
恋人ではない。
いつか離れてしまうかもしれないような、曖昧な関係ではない。
夢の中で外されていた指輪が視界の端で光る。
「夫です」
考えるより先に言葉が出た。
三人の間に、一拍の沈黙が落ちる。
店員の笑顔がわずかに固まり、トレーナーも驚いたようにブエナビスタを見た。
そこでようやく、訂正したときの自分の語気が強かったことに気づいた。 - 32後編26/07/18(土) 18:14:50
「……っ、ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて……」
耳が熱くなる。
胸の奥に、罪悪感と情けなさが一度に押し寄せた。
「こちらこそ、失礼いたしました」
店員も慌てて頭を下げる。
「いえ、本当にごめんなさい……」
店を出るまで、ブエナビスタはまともに顔を上げられなかった。
外の風が火照った頬に触れる。
隣を歩くトレーナーへ何か言わなければと思うのに、うまく言葉が見つからない。
すると、離れていた手に彼の指が触れた。
今度はトレーナーの方から、一本ずつ確かめるように指を絡めてくる。 - 33後編26/07/18(土) 18:15:50
ブエナビスタが顔を上げると、彼は冗談めかした表情を浮かべていた。
「彼氏だってさ。俺、若く見えたのかな?」
責める気などないのだと、その声だけで分かった。
さっきの重い空気を自分からほどこうとしてくれている。
指に伝わる温かさが胸の中へゆっくり広がっていく。
ブエナビスタは絡めた手に少しだけ力を込め、ようやく自然に笑った。
「うん。お兄ちゃん、すっごく若く見えると思うよ」
今度は、柔らかく言えた。
トレーナーが照れたように視線を前へ戻す。
しかし、繋いだ手は離れない。
並んで歩く二人の指には、同じ指輪が光っている。
ブエナビスタはその輝きをそっと見つめた後、隣にいる大切な人の肩へ少しだけ身を寄せた。 - 34後編26/07/18(土) 18:16:50
帰宅して着替えを済ませると、トレーナーはリビングのソファに腰を下ろし、テレビをつけた。
画面では出演者たちが賑やかに笑っている。
しかし、ブエナビスタの耳にはその声がほとんど入ってこなかった。
トレーナーの隣に座る。
肩が触れ合うところまで近づいてみても、まだ足りない。
ブエナビスタは彼の腕を両手で抱え込み、頬をそっと押しつけた。
トレーナーは何も言わず、ブエナビスタを腕に抱きつかせたままテレビへ視線を戻した。
袖越しに伝わる体温が心地いい。
時折、彼が笑うたびに腕がわずかに揺れる。
朝よりもずっと落ち着いている。
街を歩く間も、食事をしている間も、彼は隣にいてくれた。
指輪も、今なお彼の指にある。
それなのに、胸の奥にはあの悪夢の名残が薄く張りついていた。
しばらくすると、トレーナーがリモコンを手に取り、テレビの音量を下げた。
「ブエナ」
「ん?」
「何かあったのか?」
あまりにも真っ直ぐな問いかけに、ブエナビスタは顔を上げた。
「……えっ」 - 35後編26/07/18(土) 18:17:50
トレーナーはこちらを見ていた。
責めるような表情ではない。
ただ、いつもの穏やかな目でブエナビスタの返事を待っている。
「今日はいつもより甘えん坊だったから」
抱きついていた腕を解こうとすると、今度はトレーナーの手がブエナビスタの腕に触れた。
引き留めるほど強くはない。
しかし、逃げなくてもいいと言われているような触れ方だった。
「……たまには甘えたくなる日もあるよ」
笑ってみせる。
少しだけ声が上擦った気がした。
「そっか」
トレーナーは一度頷いた。
そのまま話が終わるのだと思った。
「でも、朝、泣いてただろ?」
身体が固まった。
息をすることも忘れたように、ブエナビスタはトレーナーを見つめる。 - 36後編26/07/18(土) 18:19:00
「……気づいてたの?」
「うん」
「じゃあ、どうして何も言わなかったの……?」
「ブエナが自分から話してくれるなら、それまで待とうと思ってた」
トレーナーは困ったように眉を下げた。
「でも、いくら待っても言ってくれそうになかったから」
隠し通せているつもりだった。
子どもじみた理由を知られずに、一日を終えられると思っていた。
それなのに、最初から全部見抜かれていた。
恥ずかしさで頬が熱くなり、ブエナビスタは彼の肩へ顔を伏せた。
「……笑わない?」
「笑わないよ」
「本当に?」
「もちろん」 - 37後編26/07/18(土) 18:20:00
穏やかな声に促され、ブエナビスタは重い口を開いて昨晩見た悪夢について説明を始めた。
夢の中で指輪が外されていたこと。
向かいに座ったトレーナーから別れを告げられたこと。
話しているうちに、夢の光景が再び胸へ迫ってくる。
「夢だって分かってるよ。でも、怖くて……。だから、ずっと近くにいたくなって……」
言い終えた途端、耐えきれずに顔を両手で覆った。
「こんなの、子どもみたいだよね……」
情けなくてたまらなかった。
もう幼い頃の泣き虫なぶぅちゃんではないつもりだったのに、悪夢ひとつで一日中彼に縋っていた。
しばらく返事がない。
恐る恐る指の隙間から覗くと、トレーナーは何かを考えるようにわずかに首を傾げていた。
「ブエナの夢に出てきた俺は、ずいぶんとバカなんだな」
「……え?」
トレーナーの腕が背中へ回り、ブエナビスタの身体を抱き寄せる。
急に縮まった距離に目を瞬くと、彼は確かめるようにブエナビスタの顔を覗き込んだ。
「こんなに素敵な人を手放すなんて」 - 38後編26/07/18(土) 18:21:01
胸の奥で、鼓動が大きく跳ねた。
身体中へ一気に熱が広がり、頬も耳も赤く染まっていく。
「お、お兄ちゃん……」
続く言葉を探している間にトレーナーの手が頬へ添えられた。
親指が唇の端を柔らかくなぞる。
その意味を察したブエナビスタは、震える睫毛を伏せた。
唇が重なる。
触れるだけの、優しい口づけだった。
それでも、温かな感触が胸の奥へ染み込んでいく。
夢の中に残されていた冷たい痛みが、触れ合ったところから少しずつ溶けていった。
唇が離れる。
目を開くと、すぐ近くにトレーナーの瞳があった。
逸らすことなく、真っ直ぐにブエナビスタを見つめている。
そして、トレーナーは言った。
「ブエナと一緒にいると、俺はすごく幸せな気持ちになるんだ」
「だから、これからもずっと、一緒にいたい」 - 39後編26/07/18(土) 18:22:01
視界が滲んだ。
今度の涙は、胸を締めつける冷たいものではない。
頬を伝って落ちた雫さえ、彼の言葉の温かさを帯びているようだった。
「……そっか」
夢の中と同じ返事。
しかし、そこに込められたものは、まるで違っていた。
ブエナビスタは涙の跡を残したまま微笑み、トレーナーの首へ腕を回した。
「ありがとう、お兄ちゃん。大好き」
今度はブエナビスタから顔を近づける。
重ねた唇の向こうから、確かな体温と息遣いが伝わってきた。
- 40後編26/07/18(土) 18:23:03
寝室へ移った二人はベッドに横になった。
今夜は向かい合って眠ろうと、トレーナーが約束してくれたのだ。
トレーナーはブエナビスタの頭へ手を添え、一定の速さで優しく撫でてくれる。
髪の間を通る指の心地よさに身を委ねていると、瞼がゆっくり重くなった。
それでも眠る前に、どうしても伝えておきたいことがあった。
ブエナビスタは頭を撫でていたトレーナーの手を取り、自分の口元へ引き寄せた。
そして、大きな手のひらへ、そっと唇を触れさせる。
手のひらへ落とす口づけには、懇願の意味がある。
自分の自由を預けてもいいと思える相手に、すべてを委ねたいと伝えるための、小さな願い。
(きっと、お兄ちゃんには分からないよね)
それでもよかった。
言葉にできないほど深い願いを、形にして渡したかったのだ。
唇を離して顔を上げると、トレーナーが静かにこちらを見つめていた。
「……お兄ちゃん?」
彼の顔が近づいてくる。
また唇へ口づけをされるのだと思い、ブエナビスタは目を閉じた。 - 41後編26/07/18(土) 18:24:03
しかし、柔らかな感触が触れたのは唇ではなかった。
熱い吐息が肌を撫で、その直後に、ある場所へと優しい口づけが落とされた。
「……っ!」
ブエナビスタの身体が小さく跳ねる。
その口づけが何を示すのか思い至った途端、顔が燃えるように熱くなった。
(お兄ちゃん、意味を分かってやってるの……?)
もし分かっているのなら、あまりにも真っ直ぐで逃げ道のない返事だった。
トレーナーが口づけをしたのはブエナビスタの「首筋」だったのだ。
問いかけることもできず、ブエナビスタは赤くなった顔をトレーナーの胸元へ隠す。
頭上から、微かな笑い声が聞こえた。
意味を知っているのか、それとも偶然なのか。
最後まで答えは分からなかった。
終わり - 42二次元好きの匿名さん26/07/18(土) 18:37:50