友近サスペンス劇場Ⅱができるまで
ご覧いただき、ありがとうございました😊
「フィルムエストTV」が提示し続けてきた〝80~90年代っぽい映像〟。2024年9月、友近さんの持ち込み企画によって生まれた第1作『道後ストリップ嬢連続殺人』を公開してから、あっという間に2年が経ってしまいましたが、実は2025年2月には、今作実現に向けて動き始めていました。
奇跡のロケ地との出会い
第1回目のロケハンで訪れたのは、茨城県筑西市の「ザ・ヒロサワ・シティ ユメノバ」。ここには、かつて実際に走っていた寝台列車が4両連結で保存されているのです。
寝台個室、ロビーカー、食堂車……。全国をどれだけリサーチしても、これほど完璧に保存されている場所はない! この見事な車両群を目にした瞬間、「とんでもないものが作れる」と直感しました。この閉鎖空間に多くの人間が出入りし、そこに怪しげなミステリーが重なっていく。事件が起き、「整理」しつつ推理を広げる――。絶対、ここで撮る! このロケ地との出会いこそが、第2弾の本格的なキックオフとなりました。
一歩ずつ前へ進む「能登」に明るい話題を
そして、本作を語る上で外せないのが、主な舞台である「能登」への想い。
私は1994年12月、兵庫県神戸市で生まれ、育ちました。「フィルムエスト」自体も神戸発のチーム。私たちは95年の阪神・淡路大震災を経験しています。私自身は当時、生後40日。当然、震災そのものの記憶はありませんが、幼い頃から〝地震の子〟として、常にあの震災と紐づけられながらアイデンティティを形成してきました。だからこそ、大地震のニュースが流れるたび、どうしても他人事とは思えない、複雑な「当事者意識」を感じるのです。
前作のロケ地となった愛媛では、作中で取り上げたご当地商品の売上が爆発的に伸びたり、多くの方が聖地巡礼で現地を訪れたりと、非常にポジティブな経済効果と活気をもたらすことができました。
『友近サスペンス劇場』には、地域を元気にし、明るい光を灯す力がある。
ならば今、「最も元気を必要としている場所に、私たちのエンターテインメントを届けるべきではないか」。
友近さんに「第2弾の舞台を能登にしたい」と相談したところ、友近さんも大賛成してくださいました。
ロケハンや撮影で能登へ赴くたび、復興の歩みを肌で感じていました。数ヶ月ぶりに現地を訪れると、街の景色が変わっている。壊れた場所が直っている。
傷つきながらも一歩ずつ前へ進む、能登や七尾の街の力強さを感じました。
パスティーシュを超えた「作品」として
前作は「昭和サスペンスをフィルムエストフォーマットで再現する」というコンセプト自体の新しさも大きく、同じアプローチを発展させる上では「〝物語としての面白さ〟を更に強調したい」「パスティーシュの枠組みを超えて、純粋にサスペンスとしても強度を持つ、自立した作品に仕上げたい」…というのが、今作のスタート地点にありました。
そこで脚本には、『崖』や『架空名作劇場』にも参加してくれた前田知礼さんに加わっていただき、友近さんと三人で議論を重ねながら内容を詰めました。友近さんが提案した「同窓会ツアー」スタイルによって、閉鎖空間での複雑な人間模様を描ける! そこへ、サスペンスの文脈が重なることで、ミステリー作品として奥行きが広がるのではないか…と、確信が生まれました。「連続殺人が起きているのに、なぜ旅を続けるのか」という矛盾を逆手に取って、いかにして旅を続けさせるかという不条理な面白さも、この作品ならではの見どころに。
〝変態〟と呼ばれるまでの時代再現
プリプロ(撮影準備)&ポスプロ(編集/仕上げ)で膨大なエネルギーを費やしたのは、美術品の徹底的な時代考証です。鉄道ファンはフィクションに対しても極めて解像度が高い。誤解を恐れず言えば、手を抜くと指摘されまくる。
しかし、私自身もディテールに対するこだわりを徹底する表現者ゆえ、彼らの審美眼を裏切ることは先ず許されないという思いがありました。
国鉄時代の空気を再現すべく、車掌や鉄道公安職員の制服、客室に配置された浴衣のデザインは、「鉄道被服研究会」のご指南とご尽力をいただきながら、当時の仕様を再現しました。
さらに、作中を疾走する列車は、「ぶたごりら」こと東田利之さんと、石平和彦さんの手によって、緻密な3D-CGとしてモデリングされたものを使用させていただきました。
【こだわりMEMO】「フォントマニア監督」の文字愛
切符の印字フォント、食堂車の架空メニュー、車両側面のサボ(行先標)、「はつゆき」マーク、時刻表に至るまで……未知の領域を研究しつつ、0から再現。切符に印字されたフォントは、似たものが見つからず1文字ずつ作成。時刻表の「列車番号」は、振り方が分からずXで質問。せっかく作ったのでまたいつか、展示会もやりたいな。
キャスト陣による再解釈と圧巻の演技
メインどころのキャスティングは、今作も友近さんによるディレクションです。素晴らしい役者の皆様の顔ぶれに武者震いしました。
それぞれのキャラクターがもたらす奥行き。一方で「フィルムエスト」作品に求められる、現代のナチュラルな演技でも、単純なデフォルメでもない、〝あの頃っぽい〟という様式美のなかで表現しなければならない難しさがあります。皆さんそれぞれが、それを再解釈して、演技へと落とし込んでくれました。
【こだわりMEMO】あえて前作より「古い」時代を描く時間軸のギミック
本作にも、熱心なフィルムエストファンに向けた〝細かすぎる時代設定〟のギミックが! 実は今作は、前作(1989年舞台)よりもさらに過去を想定したものとなっています。そのため、冒頭の架空CMに登場する「三東電器」ロゴも、前作より古いものを使用しています。
七尾の皆さんとの共同作業
そしてなにより、今作の舞台裏を語るに欠かせないのは、石川県七尾市の皆様による多大なるご協力です。前作同様、地元の方が劇中に登場するのは、本シリーズの大きな魅力だと思っています。
「遺体」を発見する重要な役どころを演じてくださったのは、七尾市役所職員の山本あおいさん。サスペンスドラマが大好きだという山本さんは、友サスの撮影を「悲願」と仰り、「この作品を自分の卒業制作にしたい!」と熱い想いをぶつけてくださいました。
山本さんはじめ七尾市役所の皆さんは、制作スタッフ並みの働きで市内での折衝業務を引き受けてくださり、縦横無尽に現場を支えてくださいました。
また、青林寺のご住職も「本物」。観光案内所の職員や、観光客、警察官役といったエキストラも、能登や石川県内からお集まりいただいた方々です。
刑事役のお二人は、石川県出身のキャストを起用。
台本上では標準語で書かれていたセリフを「石川弁(能登弁)」へと翻訳して演じてくださったことで、作品に生きた地域性が加わりました。
スタッフは17名から倍増
前作のスタッフは僅か17名。通常の2時間サスペンスドラマの現場では少なくとも40名規模が稼働することを考えると、極めて異例の体制です。そんな現場を、職人力でくぐり抜けてきた技術スタッフたちと、今作でも再び挑めたことが心から嬉しく、そして誇りに思っています。
また新しく「友サス」シリーズに加わった制作スタッフも、急な予定変更にも臨機応変に対応してもらい、その機動力の高さに何度も救われました。出演者の数が大幅に増加したことから、事前の計画や手配の難易度も上がりましたが、スタッフ陣は綿密かつシビアに計画を組み立て、抜かりのない準備を進めてくれました。
カメラワークや照明設計、録音のクオリティを支える技術チームも、ほぼ完璧な形でイメージを具現化してくれました。本当に頭が上がりません。
実は、このチームとはこの2年間、様々な挑戦を共にしてきました。『崖』、テレ東の『呉村安太郎』、『まりとっつぁん』。
4月11日。クランクアップ後の挨拶で、助監督からサプライズで手作りのアルバムをいただきました。そこには、スタッフ一人ひとりのメッセージが綴られていました。本来であれば、私から皆さんに感謝を伝えるべき立場にもかかわらず……。中身をまともに読めないほど、大号泣してしまいました。人目を憚らずここまで泣いたのは初めてかもしれない。
『友近サスペンス劇場』は、私にとってもマイルストーンとなる大切な作品です。ここで満足することなく、このメンバーと共に、さらに高いステップを目指したい。より多くの方々に笑顔を届けたい! これからも全力で挑み続けたいと決意を新たにしました。
ヒエーー、まだまだ書き足りないですが3000文字を超えていました。
何はともあれ、記念すべき今日という日を無事に迎えられたこと。そして応援してくださったファンの皆様、賛同各社の皆様に、感謝申し上げます。
この作品を通じて、能登の魅力が一人でも多くの方の心に届くことを願ってやみません。


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