熱中症研究者が100種類検証して見つけた…「40℃の環境に負けない体」をつくるスーパーで買える果物の名前
■もう一つの注目はココナッツミルク 血管内皮細胞の保護作用についての研究を続けるうちに、ココナッツオイルなどに含まれる「中鎖脂肪酸(MCT)」も熱中症対策の強力な味方になることがわかりました。通常、脂肪がエネルギーに変わるプロセスは熱に弱い酵素に依存していますが、中鎖脂肪酸はそのプロセスをスキップして、効率よくミトコンドリアの燃料になってくれるのです。 実際、夏場の気温が42℃を超えるような米国アリゾナ州の過酷な地域では、人々は経験的にココナッツウォーターやココナッツオイルを愛用しています。私も夏にアリゾナのスーパーマーケットに行きましたが、さまざまな種類のココナッツウォーターが目立つところに陳列されていました。科学的なエビデンスが、先人たちの知恵を裏付けた形です。 ただし、中鎖脂肪酸は熱に弱く、揚げ物を揚げるような温度では使えません。高温調理に使うと酸化・分解してしまい、本来の効果が失われてしまうのです。また日本では、普段の食事にココナッツを取り入れる習慣はありません。 そのため、実用的な摂取方法としては、MCTオイルを食品や飲み物に混ぜるか、ソフトカプセルに封入するかのいずれかになります。スムージーやコーヒーに数滴加える方法は、手軽に日常的な摂取を続けやすいやり方です。そこで比較的豊富に中鎖脂肪酸を含む食品としては、牛乳、バターなどがあげられます。また、高齢者向けの栄養補給剤にも中鎖脂肪酸が含まれていることが多く、医療・介護の現場でも活用されています。
■三つの果物を上手に取る「相乗効果」とは 私たちの研究では、熱中症対策として有効な3つの成分を特定しました。ハッサクなどに多く含まれるオーラプテン、シークワーサーに多く含まれるタンゲレチン、そしてヤシ油やパーム核油などに含まれる中鎖脂肪酸の三つです。 これらはそれぞれ独立した働きを持ちながら、組み合わせることで単独では到達できない高い効果、すなわち相乗効果を発揮します。 こうした研究成果を基に、現在ではオーラプテンを配合した「暑さを払う飴」や、アスリート向けのドリンクや羊羹などの開発が進んでいます。 私たちの研究は、研究室の中だけでは終わりません。この知見をいかに社会に役立てるか。次回は、夏の熱中症と冬のヒートショックに共通する「血管の弱さ」と、3つの成分がもつ可能性に迫ります。 ---------- 加藤 和則(かとう・かずのり) 東洋大学健康スポーツ科学部 教授 1963年、岩手県奥州市生まれ。東北大学大学院薬学研究科卒、薬学博士。薬剤師、公認スポーツファーマシスト。東洋大学健康スポーツ科学部教授、同大学院研究科長。順天堂大学医学部、UCサンディエゴ医学部、国立がん研究センター、札幌医科大学でがんと免疫に関する基礎と臨床研究に従事し、2011年から東洋大学に着任。東洋大学では、食品中の機能性成分に着目し、熱中症やアスリートコンディショニングに関わる研究を産官学連携で実施。順天堂大学大学院医学研究科客員教授を兼任。 ----------
東洋大学健康スポーツ科学部 教授 加藤 和則