兵庫県、338億円の地方債を違法に発行 違法性認識なく、理由不明
兵庫県は13日、2020年度に338億円の地方債を違法に発行していたと発表した。借金返済のために積み立てている「県債管理基金」の残高を多く見せかける形になっていた。残高を減額修正すると、30年度決算で都道府県初の「早期健全化団体」に転落する恐れがあるという。
記事のポイント
・何が「違法」だったのか
・背景に阪神大震災
・斎藤知事の発言は
・識者はどう見る
財政課によると、20年度、公共事業の用地取得のために発行した490億円分の地方債が満期を迎えた。用地の一部は既に売却し、338億円の売却収入があったため、本来なら338億円分を返済する必要があったが返済せず、全額を借り換えたという。
この地方債は用地の取得に限って活用できるもので、売却済みの338億円分の借り換えは地方財政法に違反していた。財政課は6月に新聞社の取材を受けて問題に気づいたという。
338億円は用地の売却時に県債管理基金に積んでおり、取り崩さず残したことで、基金不足を補塡(ほてん)した形になった。
県は当時の担当者に聞き取りをしたが、担当者に違法性の認識はなく、理由は不明という。財政課の幹部は「県の財政運営の目標に、県債管理基金の積み立て不足率の指標があった。それが念頭にあったのでは」と語った。斎藤元彦知事は13日、「当時の(井戸敏三)知事から指示があったと聞いている」と報道陣に述べた。
阪神・淡路大震災後の財政難で、兵庫県は今年8月から国の許可がないと起債できない「起債許可団体」になる見通しだ。
今回の問題を受け、基金残高を減らした上で長期金利などの財政見通しを見直すと、財政規模に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率(3年平均)がさらに悪化する。対策を講じなければ、30年度に25%以上になり、北海道夕張市のような財政再生団体の手前の早期健全化団体に転落する恐れがある。
早期健全化団体になると、地方自治体財政健全化法に基づく財政健全化計画を公表し、国に報告しなければならない。
起債許可団体
・実質公債費比率18%以上など
・地方債発行に国の許可が必要
・北海道、新潟県、兵庫県(8月~)など
早期健全化団体
・実質公債費比率25%以上など
・財政健全化計画の公表、国への報告義務
・都道府県の前例なし
財政再生団体
・実質公債費比率35%以上など
・財政再生計画の公表、起債制限
・北海道夕張市のみ
続く財政難、重い震災復興 斎藤知事は…
兵庫県の財政難の背景には、1995年の阪神・淡路大震災がある。
県が負担した復旧復興事業費は2兆3千億円。うち1兆3千億円は県債(借金)で補い、5千億円は県債管理基金を取り崩した。震災30年後の2024年度決算でも、震災関連の県債が1478億円残っている。
県債管理基金は5873億円の残高があるが、実際の県債に対する積み立て不足は3852億円に上る。
満期一括返済の地方債の場合、満期までは基金を使うことがないため、財政の収支不足を補うために基金を取り崩す自治体は他にもある。
大阪府では5202億円の赤字分を借金返済のための「減債基金」の取り崩しで補い、基金の目減りを防ぐために3500億円の借換債を増発していたことが08年に発覚。赤字隠しとして問題視された。
ただ、県債管理基金の積み立て不足は、実質公債費比率に影響する。18%以上になると起債許可団体、25%以上で早期健全化団体になり、財政運営に制約が生じる。
このため兵庫県は21年度まで、特定の目的に使う別の基金を県債管理基金に集約するなどして残高を確保していた。当時の井戸敏三知事は16年の議会答弁で「実質公債費比率対策であることは率直に認める」と述べていたが、議会からは問題視する声が上がっていた。
21年度に就任した斎藤元彦知事は「ありのままの財政状況を示す」として、22年度から基金の集約を解消。今回も違法な起債で県債管理基金の残高を多く見せていたとして残高修正を公表した。
今回の借り換え問題を7月上旬に聞いたという斎藤知事は7月13日、財政問題の有識者会議で「当時の知事からの指示で(借り換えを)実施したと報告を受けている。しがらみなく、過去の負の遺産を将来に先送りしないためにも、なぜこのような対応をしたのか検証することが大事だと思う」と述べた。
「コンプラに甘さ、検証を」
赤井伸郎・大阪大大学院教授(財政学)の話 地方債は発行前に厳格な審査が行われるため、起債が違法とされた事例は聞いたことがない。今回の借り換えは、地方財政法のルールを確認せずに起債した当時の判断に問題があったのだろう。コンプライアンスに甘さがあり、それが露呈してさらなる財政悪化が明らかになった形だ。なぜこのような対応をしたのか、検証する必要がある。今後は県民にも負担を求めることになるが、投資を抑制し、財政の健全化を進めなければならない。
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