これほどアブない「ヤニねこ」がアニメ化できた理由
2026年夏アニメがそろそろ出揃ってきた感のある時期だが、その中でも特に問題作とされている作品を今回はひとつ取り上げてみよう。
「ヤニねこ」
これ、まずタイトルがたった四文字で短くていいですよね。
ここ近年は「タイトル(原題)がやたら長い」➾「よって略称として四文字に短縮する」というケースが非常に多かったが、だんだんそういったカタチそのものに一種のダサさを感じてきた今日この頃・・。
その点でいうと、この作品は最初から略す必要もなく四文字というのが実に心地いいんだ。
思えば、「タイトル(原題)がやたら長い」というのは明らかに平成のノリであり、いわば流行りモノ、一種のキラキラネームみたいなものだよな?
そういうのは思いついた時まではイイとして、その後一生背負っていくには結構キツイものがある・・。
たとえば、「ゆるふわЖ天使ハメ子」とかw
これの原作は講談社「ヤングマガジン」連載の漫画で、どっちかっつーと「ヤンマガ」内でもかなり異彩を放ってるものらしい。
ようするに、めちゃくちゃ売れてるからアニメ化した、というわけでもないらしいのよ。
もともとは、Twitterに投稿されてた漫画が始まりだったという。
そこで注目されて「ヤンマガ」に引き抜かれたという流れなんだろう。
ただ、こういうネコ耳系の作品は本来なら「ヤンマガ」の畑では決してないだろうが(本来なら「きらら」の畑)、その一方で登場人物たちが喫煙してダラダラする描写はどう考えても講談社「ビーバップハイスクール」の文脈そのものであり、いうなれば令和版「ビーバップ」なんですかね、これ?
いや、令和版「ビーバップ」というよりも、個人的にはダニーボイルの名作「トレインスポッティング」、もしくはダーレン・アロノフスキーの出世作「レクイエムフォードリーム」、これらの方がイメージとして近いかもしれない。
「トレインスポッティング」(1996年)
「レクイエムフォードリーム」(2000年)
「ヤニねこ」を描いたにゃんにゃんファクトリー(←個人ではなくグループらしいね?)が一体どういう年代の人たちなのかは知らんが、きっと上記の作品群にダイレクトにブチ当たった世代だと思う(つまり、そんなにジジイではない)。
だからこれ、言うなれば「平成レトロ」の文脈から湧いたものなんですよ。
まぁ、こういうトレンドというのは必ずループするものであり、「そろそろ『平成』がレトロとしてクルよな・・?」と直感して巧く当てたのが今春の「超かぐや姫!」の大ヒットだったわけだが、今回の「ヤニねこ」もまた、そっち系の亜流ともいえよう。
一説によると、こういうトレンドのループというのは「四半世紀」がひとつの単位ともされていて、仮に「平成」西暦2000年をひとつの基点とするなら今年はまさにその「四半世紀」後。
そして西暦2000年の「四半世紀」前にはこういうトレンド↓↓がありました。
「傷だらけの天使」(1974年)
「限りなく透明に近いブルー」(1976年)
(著/村上龍 芥川賞受賞作品)
今から考えると「限りなく透明に近いブルー」なんてトンデモない小説で、これは言わずと知れた村上龍の自伝小説なんだが、内容は皆さんもご存じの通り、大学生が日々ヤバいドラッグをキメまくる退廃的な日常を描いたものである。
・・いや、これが遠い日の「若気の至り」として描かれたものだというならまだしも、この作品で龍さんは24歳の時に芥川賞を獲ってるわけで、あれ?よく考えたらこの小説の内容って「つい先日のこと」じゃないのか(笑)?
この受賞の時点で、まだ大学在学中(武蔵野美大)だったらしいし・・。
今思うと龍さん、よく逮捕されなかったよなw
で、今の村上龍が偉そうにマトモなオトナみたいな発言してるのを聞くに、「おいおい、お前が言うなや」と思ってる人たちは世にたくさんいるはず。
でもって、懸案の「ヤニねこ」は、まんま「限りなく透明に近いブルー」的世界観なんですよ。
特に第2話はヤバかったですねぇ~!
自室で謎の注射をしているヤクねこ
(本人いわく「予防接種」ww)
・・というか、そもそもこの作品における「ヤニ」は、もうタバコの領域を完全に超えてますよね?
私自身、喫煙者なので(しかもヘビースモーカー)ある程度ヤニねこたちに共感はできるが、とはいえ、さすがにあのタバコが切れた時の常軌を逸した禁断症状は理解できない。
あんなの、絶対タバコじゃないって!
「タバコさえあれば全て忘れられる」とか「タバコが切れたら働く」とか、タバコってそこまで人生のプライオリティNO.1の地位を占めるアイテムじゃないだろうに・・(笑)。
ただし、これが普通のニンゲンではなくネコ型の獣人ということで、そこに一種のリアリティが生じてるわけよね。
ネコって基本、怠惰な生物だから。
イヌとは違う。
思えば、コンテンツの世界ではある時期まで圧倒的にイヌの方が優勢だったかと。
たとえば「フランダースの犬」、「101匹わんちゃん」、「スヌーピー」、「名犬ラッシー」、「忠犬ハチ公」など挙げればキリがない。
やっぱ基本はイヌ=勤勉、ネコ=怠惰であり、少なくとも我が国が経済成長のベクトルにあるうちは【イヌ>ネコ】の構図は歴然だったと思う。
ところが、やっぱバブル崩壊に伴い不況に陥った頃ぐらいからですかねぇ、そこからどんどんネコ人気が伸びていったんですよ。
大して役に立たない(ややお馬鹿な)ネコが、なぜかここにきて急に尊い存在に思える時代が訪れました(笑)
こういうのは、ホント時代を映す鏡そのものですよねぇ・・。
右肩上がりの時代➾イヌ
横這いor右肩下がりの時代➾ネコ
で、いまどきはハリウッド等でも、役者がタバコを吸うシーンを極力カットしてるというホワイトなご時世だというのに、そこに逆行して喫煙ありきのこういう作品をアニメ化したことは凄いな!と感じてる人はたくさんいると思う。
攻めてるな、と。
ただね、よくよく話を聞くと、これ作ってる側の人たちも「こんなの大丈夫なんですか?」という思いを抱えてたらしいんだよね(笑)。
みんな、うっすらとヤバさを感じていたのだという。
なのにアニメ化が実現したのは、どうやらこのオトコ↓↓の存在ありきだったらしいのよ。
講談社「ヤングマガジン」編集長
鈴木一司
そう、これのアニメ化は言い出しっぺがまず鈴木編集長だったらしいのよ。
「ヤニねこ」をアニメ化したい、と。
もちろん、多分「ヤンマガ」には他にもっとアニメ化に適した作品はあっただろうに、なぜか鈴木さんは「ヤニねこ」を推したらしい。
そもそも、「ヤニねこ」をTwitterから引っ張ってきたのも鈴木さんである。
ここで極めて大事なことは、この件の責任の所在が割とハッキリしてることだな。
「カイシャ」という漠然と曖昧な存在ではなく、鈴木一司という「個人」がこのアニメ化の責任を握ってるわけよね。
いや、もちろん作ってくれるスタジオを探すなどは講談社が組織的に動いたらしいが、でもそういうのも全て「最終責任は鈴木編集長がとってくれる」という前提で皆が動いてるのさ。
・・これ、非常に大事なポイントだと思う。
やっぱ、こうしてちゃんと責任とってくれる人がハッキリしてさえいれば、組織はコンプライアンスに対しても十分に攻められるんですよ。
逆に、責任者の顔が見えない曖昧な状態では、組織は安全優先で守りに入るものである。
その時はコンプライアンス最優先、苦情こないこと最優先となるので、今回の「ヤニねこ」アニメ化みたいなチャレンジは絶対に不可能になります。
ちなみに鈴木さんご自身、喫煙者だそうですw
さて、今回のアニメ化で「へぇ、こういう小汚い世界観も今の子たちに十分通用するのか」と改めて気付くことができたんだが、じゃ、これイケるならあの作品だって今の時代に再評価されるのでは?と私が真っ先に思い出したアニメを1つ最後にご紹介するカタチで今回は締めようと思う。
皆さんは、このアニメ↓↓を知ってますか?
「NieA_7-ニア・アンダーセブン」(2000年)
はい、今から四半世紀前、西暦2000年にオンエアされたアニメである。
内容だが「ヤニねこ」は<ダメなネコ型獣人>が主人公なのに対し、こっちは<ダメな宇宙人>が主人公で、ほとんど流れは同じだと思います(笑)。
舞台が小汚いアパートなのも同じだし。
なんかね、こっちの設定は宇宙人がたくさん地球に入植してる近未来(?)が舞台なんだが、そういう入植者たちにもクラスを示す等級があり、これのヒロインは最下級の「アンダーセブン」という超貧乏な層の宇宙人なんですよ。
この設定、きっと後のSF映画「第9地区」の元ネタだと思う。
ゆえに、「NieA_7」はコメディの割に、ちょっとしたカルトアニメなんですよね。
この「貧乏なくせに働かないヒロイン」というのがまんま「ヤニねこ」で、トレンドはループするなぁ・・としみじみ感じてしまいます。
で、これの原作者は安倍吉俊先生で、「serial experiments lain」のキャラ原案や「灰羽連盟」の原作者としても有名な人である。
で、監督は佐藤卓哉さん、後に「STEINS;GATE 」の監督をやる人ですね。
ハッキリいって「NieA_7」、アニメとしてめちゃくちゃクオリティ高い。
今さらだが再放送とかしたら、普通にバズると思うんだが?
興味のある人はYouTubeで「NieA_7」というワードで検索してみて下さい。
普通に全13話視聴可能だと思います。
なお、このヒロインは喫煙しませんけどね(笑)。


ネコちゃんにはマタタビだろう~!なんでタバコ吸わせるんや~!と、スルーしましたが、まあ擬人化猫だし、一回視てみるかなぁ…w
昭和生まれでもっとグロな日常を過ごし映像的にもピンクフラミンゴとか見た世代だから耐性はあるけどやっぱテレビでは綺麗事だけ見ていたいので無理。