「お父さんは詐欺犯じゃない」濡れ衣で解雇された一家の柱は、帰らぬ人に 一審は遺族の完勝、でも会社は再び犯人と主張…判決前日、思いも寄らぬ結末
▽「犯人の家族」一変した生活 残された家族の生活は一変した。狭い町でうわさはすぐ広まる。警察や労基署を巡り、どれだけ無実の証拠を集めても「詐欺事件の犯人の家族」と見られる状況は変わらなかった。 2023年、妻は子供たちと一緒に、会社に計約1億円の賠償を求めて宇都宮地裁に提訴した。 「お父さんの願いは、会社の不正を公にすること。無念を晴らすには裁判しかなかった」 会社は「詐欺に関与した証拠はある」と真っ向から反論した。 裁判所に提出したのが、社長から渡された引き取り書に、男性が署名する様子を撮影した防犯カメラ映像だった。会社側は男性が自ら詐欺への関与を認めた瞬間を捉えたものだと説明。だが、映像は音声が不自然に消され、カットされた形跡もあった。 遺族は音声の復元を試みた。すると、社長が書類の詳細を伏せて、署名をさせた経緯の一部始終が収められていたことが判明した。 迎えた証人尋問。男性の死後初めて姿を見せた社長に、遺族側の弁護士は犯人と決めつけた理由を問いただした。だが社長は具体的なことは言わない。
「証拠は全て提出した」「警察に聞いてほしい」 最後までやりとりはかみ合わなかった。 妻は会社への憤りをつづった陳述書を提出した。 「夫は、何の取りえもないかもしれませんが、人として、父として恥じない立派な人でした。夫の人生はあなた方のものではない。一生許すことはできない」 ▽判決は「完勝」、だが会社は「詐欺に関与したと考えるのが合理的」 2025年11月、宇都宮地裁は会社側に約8200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。裁判長は、男性が詐欺に関与したかのような証拠を社長が作成し、一方的に懲戒解雇したと判断。その上で、亡くなる直前まで月100時間に上る時間外労働もあったとして、会社が極めて強い心理的負荷をかけて自殺に追い込んだと結論づけた。 遺族側の「完勝」とも言える内容だった。 しかし、会社は翌日に東京高裁へ控訴。再び「詐欺に関与したと考えるのが合理的」と主張した。根拠は地裁判決が「男性を欺いて作成した」と認定した引き取り書だった。賠償額についても「男性は職に就いておらず『一家の柱』には該当しない」と大幅な減額を求めた。
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