「お父さんは詐欺犯じゃない」濡れ衣で解雇された一家の柱は、帰らぬ人に 一審は遺族の完勝、でも会社は再び犯人と主張…判決前日、思いも寄らぬ結末
妻は男性が標的となった理由をこう推測する。 「そもそも詐欺を裏付ける証拠が少なかったのでしょう。だから責任者だったお父さんに証言させたかったけど、うそはつけない人だった。その正直さが気にくわなかったのだろうと思います」。調査の結果、不正は300件近くに上ったというが、立件されたのはわずか4件、約11万円分だけだった。 ▽「社長がここまでやるとは」 2019年4月、男性は社長から呼び出され、警察で事件について話すよう指示された。困惑しつつも出頭した警察署で、初めて自分が署名した引き取り書が詐欺の証拠として提出されていることを知った。 「社長に言われるがまま署名した」。そう弁明すると、応対した署員も「社長から話を聞いてほしいと言われたから仕方なく聞いている」と困った様子だったという。 取り調べ後、署の駐車場で待っていた社長に経過を話すと「話が違う」と怒鳴りつけられた。会社に戻ると、その日は夜10時まで残業を強いられ、社長からは「おまえのせいで警察に怒られた」と詰め寄られた。
帰宅した男性は疲れ切った顔で妻につぶやいた。「ここまでやるとは思わなかった」 ▽「死んじゃえばいいのかな」 翌日、事件の聞き取りとして会社に呼び出された男性は、その場で社長から懲戒解雇を言い渡された。 その日のことを男性は日記にこう記している。 「私の話など聞く気も無し、犯罪者のような扱いで話をされた。警察に提出する書類と言ったらサインを書かないと思ったので、うそを言って書かせたと開き直っていた」 男性は人が変わったように自室に引きこもり、「俺、死んじゃえばいいのかな」とこぼすようになった。 「一家の柱として情けない」 雇用保険の受給手続きで訪れたハローワークの職員の前で、そう泣き出すこともあったという。 「あいつら、また何かたくらんでいる」。そう妻につぶやいた日の翌朝、男性は自宅の車の中で命を絶った。遺書には短くこう書かれていた。「会社に言いたいことはいっぱいあるけど、面倒くさい」
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