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キャリア・教育

2025.07.07 13:30

SNSの悪口は現実化する?有害な言語を「ホープスピーチ」へ

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このような文書を読む読者は、高い教養があり賢明で進歩的で、まさか自分がレイシストやセクシスト的行動をするとは思わないだろう。私自身もそうである。しかし、こうした研究が示すのは、私たちは望む望まないに限らず、意識する意識しないに限らず、周りの言語環境に影響を受け、場合によってはマイノリティの不利益になるような行動すら選択してしまうということだ。「差別的な嫌なことばを見たな」と感じる必要すらない。まばたきよりも短い時間(まばたきは300ミリ秒ほど)ほんの一瞬、スクロールする画面の上を通り過ぎた差別的な表現によって、私たちの行動は変化しているかもしれないのだ。

SNS上にあふれる「有害言語」

各種SNSをはじめとした、オンライン空間の「治安が悪い」と感じている人は多いだろうが、実際のところはどうだろうか。

X社(旧Twitter社)も、フェイスブックとインスタグラムを運営するメタ社も、透明性を担保するため、各種の報告書を定期的に公開している。それらの報告書はおおざっぱなもので、統一的でもなければ提示されるデータも限られているが、それでも、膨大な量の有害コンテンツが、SNS上に存在していることがよくわかる。

Xはカテゴリーごとにユーザーによる規約違反の報告数と、削除といった実際に対応を行った数を公表している。2024年上半期の半年間に限ったデータを見てみよう。ヘイト関連の投稿として、6600万件以上のユーザー報告があり、そのうち500万件弱の投稿に何らかの処置がなされている。「暴言やハラスメント」関連としては、約8100万件のユーザー報告、約2600万件の対応が報告されている(注5)。

メタ社は、ユーザー報告数ではなく、実際に何らかの処置を行った投稿数を発表している。同じ期間、まずヘイト関連投稿としては、1460万件(フェイスブック)、1630万件(インスタグラム)、そして「いじめやハラスメント」の項目では、1570万件(フェイスブック)、2040万件(インスタグラム)が、処置を行った投稿数である(注6)。

ここでは、多数ある有害性の分類の、ふたつのカテゴリーに絞って数字を取り上げた。ほかにも児童ポルノやテロ組織といった、別種の有害コンテンツが存在する。また、これらはユーザーが通報したもの、あるいは会社が有害であると明確に認定したものの数に過ぎない。ユーザーや会社が見逃しているものも数多くあるだろう。つまり、上記の数値には偽陽性も含まれるに違いないが、どう少なく見積もっても、億単位の有害投稿がこれらの主要SNSには存在していることになる。

そして、先述の研究などを踏まえると、一瞬そのような有害な言語を目にするだけで、私たちは悪影響を受けているかもしれないのだ。

したがって、残念ながら、企業側が公表する数値を検討する限りでも、オンライン空間の安全性は保証されていないと言うことができる。インスタグラムやXはメジャーな公共空間である。人気のない夜の裏通りの話をしているのではなく、ブランド店が立ち並ぶような大通りの話をしているのである。そこを子どもがまっすぐただ歩くのが安全ではない、というような状況に、現在の情報空間は陥っているのである。


注5:X社の“Global Transparency Report H1 2024”https://transparency.x.com/en/reports/transparency-reports(最終アクセス2025年4月15日)。

注6:メタ社の “Community Standards Enforcement Report” https://transparency.meta.com/reports/community-standards-enforcement/(最終アクセス2025年4月15日).

次ページ > 有害言語増と進化的ミスマッチ

文=和泉悠 企画・編集=一般社団法人デサイロ

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2026.06.26 11:00

PwCと東急不動産が「勝浦ブルーバーガー」で挑む、環境問題の事業価値化

環境問題への意識が高まるなか、サステナビリティを企業価値やブランドに結びつけようとする企業は増えている。だが、環境への取り組みを事業として成立させるのは容易ではない。

東急不動産とPwCコンサルティングが千葉県勝浦市で進める取り組みは、その壁を越えるべく、藻場(もば)保全という専門的な環境課題を、地域や観光客を巻き込み、持続可能な施策へと昇華させている。このプロジェクトは、従来の環境施策と何が違うのか。東急不動産ウェルネス事業ユニット リゾート事業本部の白倉弘規とPwCコンサルティング マネージャーの田中裕子に話を聞いた。


勝浦の海から始まった価値創造の試み

千葉県勝浦市では近年、海水温の上昇や植食性魚類の増加などを背景に、海藻が減少する「磯焼け」が課題となっている。藻場はアワビやイセエビなどの水産資源を支える重要な生態系であり、その減少は漁業や観光にも影響する。

その現状を受け、東急不動産は、勝浦市や新勝浦市漁業協同組合、千葉県関係機関などに働きかけ、「勝浦市藻場保全対策協議会」の設立に寄与。自らも協議会のメンバーとなり、ブダイなどの植食性魚類を駆除する活動を通じて、不動産会社が参画したプロジェクトとしては初となるJブルークレジット認証の取得にもつなげた。そのシンボルとして開発されたのが、駆除した植食性魚類の一種であるブダイをフィッシュバーガーとして活用する「勝浦ブルーバーガー」である。

なぜ不動産会社が、勝浦の海に向き合うのか

――不動産会社である東急不動産が、なぜ勝浦の海洋環境や漁業の課題に向き合うことになったのでしょうか。

白倉弘規(以下、白倉):私たちは勝浦で会員制ホテル、ゴルフ場、別荘地を長く営んできました。長いところでは50年ほど、地域に根付いています。ですから今回の取り組みも、「不動産会社として」、そして勝浦で事業を行う「地域事業者として」という思いが強くあります。

東急リゾートタウン勝浦だけでなく、勝浦市全体の魅力を高め、来訪を促すことがゴルフ場の利用や別荘地の価値向上にもつながっていく。地域の困りごとを一緒に解決し、それを観光振興にもつなげられないか。そう考えるなかで、藻場保全を起点としたブルーカーボンの取り組みが見えてきました。

――御社が掲げる「環境先進企業」としての方針ともつながるのでしょうか。

白倉:環境先進企業として、環境への取り組みを単なるCSRの取り組みではなく、地域の資源を活かし、自然環境や地域にとってより良い、持続可能なものにしていきたいと考えています。勝浦でも、海の生態系を守りながら、如何に地域の資源を使って新たな価値を生み出し、事業者だけでなく地域にも還元できるかを地域の皆さんと一緒に考え、取り組んでいます。

東急不動産ウェルネス事業ユニット リゾート事業本部の白倉弘規
東急不動産ウェルネス事業ユニット リゾート事業本部 白倉弘規

伝える前に成立する構造をつくる、PwCの戦略

――PwCコンサルティングは、このプロジェクトでどのような役割を担ったのでしょうか。

田中裕子(以下、田中):もともとは、東急不動産の中期経営計画策定に伴走するところから関わらせていただきました。そのなかで、環境問題に取り組む企業として勝浦を活用した新しいリゾートのあり方を考えたとき、「ネイチャーポジティブなリゾート」という方向性が見えてきました。 

大事なのは、環境問題をどう社会に実装し、中長期的に事業価値へと転換していくかです。そのためには、単なる啓発や発信ではなく、“事業として持続する構造”を設計しなければなりません。サステナビリティは、「良いことをしている」と伝えるだけでは、社会にも生活者にも定着しない。重要なのは、何を社会価値として定義し、それをどう可視化し、第三者性をもって評価できる仕組みに落とし込むか。そして、生活者や地域が自然に参加できる体験へと昇華しながら、最終的に事業価値やブランド価値へ接続していくことにあります。私たちは、この一連の設計思想を「サステナビリティブランディング」と呼んでいます。

今回の取り組みでは、東急不動産が主体となって「勝浦市藻場保全対策協議会」を組成し、ドローンやAI解析を用いてブルーカーボンの変化を測定・可視化し、Jブルークレジット認証へと結びつけました。

さらに、「駆除した魚を捨てず、食を通じて循環させる」という「勝浦ブルーバーガー」の物語を重ねることで、環境保全を単なる理念に終わらせず、生活者が自ら関与できる体験へと転換。環境価値の可視化と地域課題の解決、さらに体験価値を有機的に結び合わせることで、社会性とを両立する新たなモデルへと昇華させています。

PwCコンサルティングマネージャー 田中裕子
PwCコンサルティング マネージャー 田中裕子

――一般的な広告やPRと、サステナビリティブランディングはどこが違うのでしょうか。

田中:広告やPRは、対象とするモノ・コトをどうターゲットに訴求し、アテンションをとるかに重心が置かれることが多いと思います。もちろんそれも大切ですが、サステナビリティブランディングでは、その前段が重要になります。

サステナビリティの発信では、実態と表現の距離が近いことが欠かせません。実装し、測定し、第三者性をもたせ、表示・発信する。この順序が崩れると、いくら表現が魅力的でも信頼にはつながりません。企業が何を目指しているのか。事業としてどう成立させるのか。誰を巻き込み、どのような根拠をもって語るのか。そこまで含めて設計する必要があります。

PwCの特徴は、表現やPRだけでなく、パーパス、事業戦略、環境価値、制度対応、さらには生活者体験までを横断的に設計できる点にあります。環境領域の専門家、戦略コンサルタント、マーケティング人材、データ・開示の専門家が連携しながら伴走することで、“サステナビリティを事業として成立させる構造”まで踏み込める。それが私たちの強みです。

実際、多くの企業では、「開示しても投資家評価につながらない」「環境配慮コストを価格へ転嫁できない」「現場に浸透せず実行が進まない」「専門性が高く社会や顧客に伝わらない」といった“SX推進の壁”に直面しています。PwCのサステナビリティブランディングは、そうした課題を、付加価値化や競争優位性、さらには社内外への浸透という観点から乗り越えていくためのアプローチでもあります。

PwCのサステナビリティブランディング支援では、「事業として成立させる構造」まで踏み込んで支援を行うことを特徴としている
PwCのサステナビリティブランディング支援では、「事業として成立させる構造」まで踏み込んで支援を行うことを特徴としている

白倉:東急不動産としては、ブルーカーボンに取り組みたいという思いはありましたが、専門的な知見やネットワークが十分にあったわけではありません。PwCコンサルティングには、全体の進め方から協議会設立時のルールメイク、申請書類の表現、人脈の紹介、PR機会の設計まできめ細かく支援していただきました。取り組みを進めるうえでのエンジンになっていただいた感覚があります。

田中:PwCには環境分野で現場を知り尽くした有識者も多く、また社内メンバー間の共創を歓迎するコラボレーションカルチャーが根付いています。本プロジェクトもネイチャーポジティブ・ブルーカーボンの有識メンバーとスピーディーに連携し東急不動産が環境先進企業としてどうリーダーシップを示すか、ステークホルダーを巻き込むかという構造も設計していきました。 

“遠い正義”を、味わえる体験に変える

――環境保全の取り組みを、なぜ「勝浦ブルーバーガー」という食の体験に落とし込んだのでしょうか。

田中:ブルーバーガーは、環境メッセージを伝えるための話題づくりとして生まれたものではありません。まず、勝浦でどのような事業を続けたいのか、地域の課題に企業としてどう向き合うのかを整理し、そのうえで生活者が実際に触れられる形として行き着いたものです。

サステナビリティは専門的で、社内外に伝わりづらい活動になりがちです。それゆえに、環境課題を「分かる・伝わる・使える価値」に翻訳し、事業戦略やブランド戦略と接続する必要がありました。

前提にあったのは、環境保全を“遠い正義”ではなく、“身近な体験”に変えること。そしてローカルを大事にする企業としてのあり方を追求することでした。独特のカッコよさのある勝浦の海を眺め、潮風を感じながら「自分も少し関わっている」と思える接点をつくりたい。そうして導き出されたのが「食」であり、未利用魚を循環させるブルーバーガーです。

――メニュー開発では、どのような工夫があったのでしょうか。

白倉:今回活用しているブダイは、食べられない魚ではありません。ただ、鱗が非常に固く、処理が大変なことや、海藻を食べる植食性魚類は処理によっては臭みが出やすいことから、これまで未利用魚として扱われてきました。その難点を、漁協や地元の食品加工業者の皆さんの協力を得て克服し、おいしく食べられる食材として活用できています。

メニューは最初に4種類ほど試作し、その中から勝浦のソウルフードである「さんが焼き」をベースにしたものと、現場のオペレーション負荷を考えたときにつくりやすい「照り焼き」の2種類を選び、現場でアレンジを加えていきました。

食害による磯焼けの原因となる未利用魚ブダイを「さんが焼き」にしてパティに使用した「勝浦ブルーバーガー」
食害による磯焼けの原因となる未利用魚ブダイを「さんが焼き」にしてパティに使用した「勝浦ブルーバーガー」

田中:体験設計で重視したのは、キャッチーでありながらも、「ちゃんと美味しい」こと。勝浦タンタンメンに続く、新たな地元のソウルフードとして根付くことも目指したいと考えていたからです。そして、この勝浦ブルーバーガーがそもそも「なぜ生まれたのか」を食べていただく方に伝えることでした。全国の人気フィッシュバーガーショップに実際に足を運び、味や見た目、食べやすさ、サイドドリンクまで、東急不動産グループらしい遊び心や先進性、勝浦の実直さやホスピタリティを意識して、一つひとつ落とし込んでいきました。そして、実際に提供する際には「勝浦ブルーバーガー」が生まれた背景を伝えるミニポスターや絵本風のパネルを付近に展示することで、勝浦エリアのブルーカーボン取組啓蒙にもつなげていきました。

行動変容には、理解だけでなく参加しやすさが必要です。バーガーを選び、食べ、展示を回り、小さな海藻をもち帰って育てる。その日常的な流れ全体が、認知変容と行動変容のプロセスだと考えています。

2025年9月に実施した地域イベント。「勝浦ブルーバーガー」のお披露目に合わせ、藻場保全の取り組みを紹介するパネル展示やスタンプラリーも行った
2025年9月に実施した地域イベント。「勝浦ブルーバーガー」のお披露目に合わせ、藻場保全の取り組みを紹介するパネル展示やスタンプラリーも行った

信頼、共感、経済をつなぐブランドへ

――取り組みを通じて、地域や来訪者の反応にはどのような変化がありましたか。

白倉:9月のイベントに対するアンケートでは、来場者の約8割が活動に関心を示されました。10月上旬からは、ゴルフ場のランチメニューとして数量限定で提供を始めましたが、ゴルフをしない方が「ニュースを見た」「バーガーを食べたい」とレストランに来てくださることもあります。また、来訪者だけでなく、行政や漁協など関係者が一枚岩となって活動を推進するうえでも、ブルーバーガーは有効なツールとして機能していると感じています。

今では、会員制のホテルでもミニバーガーや黒酢あんかけをつくるなど、調理人の創意工夫による未利用魚の価値付けも始まりました。試行錯誤が活発になり、ブルーバーガーが地域課題を共有するコミュニケーションツールとして機能しているのは心強いですね。

――企業ブランドへの影響はどう見ていますか。

白倉:これまで、勝浦の取り組みが環境文脈で語られる機会は限られていましたが、ブルーバーガーの発信以降は、東急不動産の環境先進の文脈と合わせて勝浦を取り上げていただく機会が増えました。この取り組みが、ネイチャーポジティブといった言葉と一緒に取り上げられることで、当社の環境経営に対する姿勢が対外的に印象づけられた結果となっています。テレビCMなど広告媒体を通じて企業ブランドの発信も行っていますが、ブルーバーガーのような分かりやすくキャッチーな発信は、より訴求効果が高いと考えています。

――今後、この取り組みをどのように広げていきたいと考えていますか。

白倉:ブルーカーボン推進と植食性魚類の駆除と活用、ブルーバーガーの安定供給を拡充し、地域事業者として勝浦市の皆さんとwin-winになる環境創出を目指していきます。

そのほか、勝浦と同様に地域に根差しリゾート事業に取り組む長野県の蓼科では、地域材を活用した循環型サイクルの実現を目指す地域共創プロジェクト「蓼科カラマツ」を始動しています。このように、私たちがリゾート運営を行っている地域ごとの課題と向き合い、十分に価値が見出されてこなかったものに新たな価値を与え、地域の魅力向上とネイチャーポジティブな事業を両立させていく。将来的には新たなキャッシュポイントにつなげることも視野にあります。

田中:今回のポイントのひとつは、ブルーバーガーそのものを横展開することではなく、「体験×環境」という考え方にあります。食でも、音楽でも、イベントでも、施設でもよい。環境課題を生活者が触れられる「体験価値」に翻訳できれば、他地域や他事業にも応用できる可能性があります。勝浦の取り組みは、東急不動産ホールディングスグループが掲げる「体感型サステナブルリゾート」の象徴的な一手として位置付けられるのではないでしょうか。

――サステナビリティ経営が求められるなかで、ブランディングの役割はどう変わっていくのでしょうか。

田中:これからのブランディングは、単に「取り組みを伝える」ものではなく、事業そのものを設計する機能をもつようになると思います。特にサステナビリティ領域では、自然資本やカーボンの価値を測れる状態にすること。第三者性のある認証やデータによって信頼できる形にすること。そして、それを生活者の体験にまで翻訳すること。この3つがそろってはじめて、経営として持続可能な取り組みになります。

サステナビリティ部門だけで活動が閉じてしまう、事業部門がビジネスとの接続を見出せない、環境先進企業としての姿勢をどう示せばよいかわからない。そうした課題をもつ企業は少なくありません。

そこで重要になるのが、中期経営計画や事業戦略と接続し、社会価値と事業価値を両立するストーリーを描き、それを体現するモノ・コトまで設計することです。PwCのサステナビリティブランディング支援サービスでは、“伝わりづらい活動”を、自社事業と社会を動かす“意味のある価値”へ変えていくための支援を行っています。翻訳し、構造化し、関係者を巻き込みながら、経営戦略を社会に実装していく。その伴走が、私たちの役割だと考えています。

勝浦ブルーバーガーは、藻場保全という専門的な環境課題を、地域の人や来訪者が手に取り、味わえる体験へと変えた。それは環境を語るだけでなく、社会のなかで動かすための設計でもある。勝浦の海から始まったこの挑戦は、サステナビリティを事業価値へ変えるための一つのモデルケースとなりつつある。

PwCコンサルティングのサステナビリティブランディング支援サービスの詳細はこちら


しらくら・こうき◎東急不動産 ウェルネス事業ユニット リゾート事業本部 リゾート事業部 リゾート事業グループ グループリーダー。リゾート施設の企画・運営をはじめ、地域資源を活用した滞在価値の向上や新たな観光体験の創出に従事。ウェルネスやワーケーション、地域共創を軸に、時代に即したリゾート事業の開発とブランド価値向上を推進している。

たなか・ゆうこ◎PwCコンサルティング マネージャー。九州大学卒業後、メディア関連会社にて法人営業を経験し、その後、大手広告代理店へ。行政、流通、不動産、金融、エンタメ業界など120社以上のマーケティング戦略設計を支援。現職では、企業のサステナビリティ領域に特化し、ブランディング・マーケティング戦略の高度化、新規事業構想を推進。あわせて、コンテンツ開発およびコミュニケーション設計として、国際会議における展示企画、環境PRコンテンツ、TNFDレポート等の対外開示、投資家・ステークホルダー向けコミュニケーションの企画〜実装まで一貫して支援。

Promoted by PwCコンサルティング / text by Sei Igarashi / photographs by Masahiro Miki / edited by Akio Takashiro

教育

2024.11.08 14:30

合意形成学で「わかりあえない」を諦めない

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「わかりあえない」と諦めないための「合意形成学」。新潟大学佐渡自然共生科学センター教授の豊田光世が読み解く。


「合意形成」という言葉を聞いて、あなたは何をイメージするだろうか。

例えば、自治体の職員に「合意形成」から何を思い浮かべるかを聞いてみると、「調整」「妥協」「交渉」といった言葉を連想する人や、「時間と手間がかかる」「難しい」など、どちらかといえばネガティブな感覚を口にする人が多い。「合意形成」という言葉には、なぜネガティブなイメージがつきまとうのか。ひとつは、「不和」や「対立」など、できれば回避したい状態を想起することがある。さらには、納得感や満足感の高い話し合いの場に参加した経験が乏しいこともあるのではないか。必要だけどできていない、必要だけどうまくいっていない……「合意形成」という言葉には、同時に、意見の一致を生み出すことの難しさが示唆される。

「合意形成学」を専門とする私は、そうした合意形成のネガティブなイメージを払拭したいと考えて、話し合いのデザインに取り組んでいる。合意形成はただ必要なだけでなく、参加した人が前向きになれる創造的なプロセスとして理解されることが重要だ。

私は「合意形成」を、さまざまなステークホルダーと共に、何ができるかを考え、選択肢を生み出していくプロセス、未来の可能性を切り開くプロセスとしてとらえる。懐疑、不安、面倒くささ、無力感……こうした合意形成をめぐる感情を変えていくような話し合いを、私はデザインしたいと考えている。

あらためて「合意形成」とは何か?

この文章を読む人々の多くは、どこかで「合意形成」を日々実践しているのではないだろうか。基本的には、複数の人や組織が関係している話し合いの場で必要になるコミュニケーションだとされている。例えば、議論が紛糾し、時には対立が生じ、結論を出せなくなっているとき。あるいは、複数の選択肢から、多数決とは異なる方法で関係者が賛同しうる意見を探るとき。家庭、職場、地域、国家間など、異なる立場や意見が存在していて、その差異を克服しなければならない場面で合意形成が求められる。

「合意形成学」とは、哲学、社会学、情報学、工学、さらには数理科学など、異なる学問領域から多角的に話し合いのプロセスや結果を分析し、豊かなコミュニケーションのあり方を探る実践的学問である。意思決定プロセスのデザインやファシリテーション技術の体系化にとどまらず、そもそも「合意形成とは何か」「なぜ合意形成が必要なのか」といった根源的な問いを掘り下げながら、理論の構築を試みる。

話し合いによる意思決定は、他者と共に生きていくうえで、避けることはできない。しかし、他者の考えを理解することは、容易ではない。わかりあうことの難しさに困惑しながらも、社会に生きる私たちは、他者と共に考え続ける。合意形成学は、そうした人間の生き方に寄り添いながら、対話と共創が駆動する社会を実現するための方法を模索する学問である。
次ページ > 「トキとの共生」をめぐる挑戦

文=豊田光世 企画・編集=一般社団法人デサイロ

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2025.06.14 18:00

Z世代が実践、スクロール中毒を抜け出して集中力を取り戻す3つの方法

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ネガティブなニュースやソーシャルメディアのコンテンツをチェックすることがやめられなくなり、半ば依存的になってしまう「ドゥームスクローリング(Doomscrolling)」が、働き手の生産性を奪っている。そうした中、ネットを使う際の集中力を取り戻そうとする動きの先頭に立っているのが、Z世代の若者たちだ。

TikTok、インスタグラム、Xなどのソーシャルメディアプラットフォームは、思わずやみつきになるようなフィードバック・ループを作り出し、私たち人間が自然に持つ「ネガティビティ・バイアス(ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に影響を受けること)」に乗じるように設計されている。その結果として生じるのが、ドゥームスクローリングによるその場限りの興奮、社会が分断されているという意識の高まり、生産性の低下、時間の浪費を招く注意力散漫だ。

ソーシャルメディアの世界には、皮肉を込めた発言や恐怖、「FOMO(取り残されることへの不安)」が溢れており、いわば「怒りの経済」と言うべき体系を形作っている。だが、こうした状態への対抗策として、Z世代が行動を起こしつつある。彼らは、ソーシャルメディアに支配された世界に対して、より理性的なアプローチを取る動きの先頭に立っているのだ。

実際、ドゥームスクローリングをやめることが不安の連鎖を断ち切り、ネガティブな物事に動揺しない強い心を育むために役立つことが判明している。

ドゥームスクローリングが奪う生産性

Z世代と、その下のアルファ世代を対象に英国で実施された調査では、対象者の50%近くが「インターネットがない世界で育ちたかった」と回答した。若年層に対するソーシャルメディア禁止令を歓迎する者も、半数に達した。

「The Offline Club(オフライン・クラブ)」というインスタグラムのアカウントは、50万人を超えるフォロワーを獲得している。ある意味皮肉なのは、「ソーシャルメディア断ち」を勧める「クラブ」が存在している場所がソーシャルメディアだということだ。

このクラブは、メンバーに対して「スマートフォンの画面を見つめている時間を、リアルで過ごす時間に置き換えよう」というスローガンを掲げ、「(スマートフォンの)電源を切り、リアルで人とつながり、リラックスして楽しもう」と呼びかけている。ドゥームスクローリングしている時に、こうした「リラックスして楽しい」という感情を覚えるだろうか?(みなさんと同様に、私もそう感じることはない)。

あなたは、ほんの一瞬だけ「チェックしたい」という欲求を感じ、悪いニュースをもたらす通知をスクロールして、退屈をしばし紛らわそうとしたことはあるだろうか?(私はある)。そして、画面を見始めてから2時間が経過し、「おしゃべりする赤ちゃん」ミームを6つ見たあとも、インターネットから離れられないでいる自分に気づく──そして、ドゥームスクローリングの落とし穴にはまって、1日の貴重な数時間を奪われたことに気づいたことがあるのではないだろうか?

次ページ > SNSはスロットマシンとかなり近い

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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2024.12.05 15:00

「男性はデート代をおごるべきか?」「おごり規範」と性別役割の近未来像とは

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「恋愛文化」から読み解く社会の現在地。大妻女子大学人間関係学部・准教授の木村絵里子が注目したのが「おごり規範」だ。



「男性はデート代をおごるべきか?」という論争が近年起こっている。

デート代をおごらない男性は、なぜカッコ悪いといわれるのだろうか。特に初デートのときには男性がおごるという行為が、女性に対する思いや、今後、ふたりの関係を進展させたいという気持ちを示すことになっているのは、いったいなぜなのだろうか。

社会には、理由はよくわからないけれどその社会で生きる多くの人々が守るべきと考えるルールがある。社会学では、それを「規範」と呼んでいる。この規範を破ったからといって何らかの法的な罰則があるわけではない。しかし、多くの人がそのルールに従ったほうが良いと思っていたり、あるいは絶対に従わなければいけないと思っていたりする強制力のあるものもある。

デートの際に「男性がおごらなければいけない」という人々の考え方も、「おごり規範」とでも呼びうる恋愛関係にみられる規範のひとつとなっている。長い時間をかけて繰り返される行為のなかで、こうした規範はかたちづくられてきた。

「リード規範」実践と恋愛アドバンテージ

では、現在、上記の規範を守らなければいけないと考える人は、実際にどのくらいいるのだろうか。直接「男性がおごらなければいけないのか」を尋ねたものではないのだが、この規範を包摂し、主に男性側に課せられている「デートは男性がリードするべき」という規範意識(「リード規範」)の項目を検討してみたい。

若年層の研究を行う社会学者のグループ・青少年研究会が2022年に行った全国調査のうち、16~39歳までの独身者のデータを使用した分析によれば(注1)、「デートは男性がリードすべきだ」という考え方を支持(「そう思う」+「ややそう思う」)するのは46.8%、支持しない(「あまりそう思わない」+「そう思わない」)のは53.2%であった。支持する人としない人でおおよそ半分に割れている。
 
補足として、夫は外で働いて稼ぎ、妻は家庭を守るべきだという家庭内の性別役割に関する意識についても確認しておこう。前述の全国調査によれば、「家事や育児は、夫ではなく妻が中心的に担うほうがよい」の支持率は15.6%、「一家の家計を支えるのはやはり男性の役割だ」の支持率は36.7%で、支持しない派が多数を占めている。

男女共同参画白書(令和3年版)(注2)でも、近年になるにつれて「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方を支持しない人が多数派になっている。このような傾向からすると、日本社会ではもう性別役割分業のあり方が十分に是正されたかのようにも見える。

一方で、先ほどのデータでは「デートは男性がリードすべきだ」の割合が、支持/非支持でおおよそ半数に割れていた。では、どのような人が恋愛関係のリード規範を支持するのだろうか。


注1:調査概要については青少年研究会のHP( http://jysg.jp/)を参照のこと、注2:男女共同参画局「男女共同参画白書(平成30年版、令和3年版、令和4年版)」
次ページ > デート時の「暗黙のルール」の成立過程

文=木村絵里子 企画・編集=一般社団法人デサイロ

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2025.06.06 08:15

「SNS鵜呑みは大人だけか」 高校生のフェイクニュース耐性はどのくらいか

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なんでもかんでもネットの情報を鵜呑みにして、陰謀論やフェイクニュースに騙されてしまうのはオジサン・オバサン認定ということになりそうだ。現役高校生は、SNSの情報をかなり冷静に受け止めている。

ティーンエイジャーに特化したリサーチ企業「若者リサーチ」が運営するマーケティング情報サイト「放課後ニュース」は、全国の高校生194人を対象に「SNS上にある情報を信じているか」についてアンケート調査を実施した。それによると約52パーセントともっとも多かった回答が、SNS上の情報を「すこし信じている」(約52パーセント)だった。それに、「あまり信じていない」(約37パーセント)、「まったく信じていない」(約8パーセント)と続く。「すごく信じている」という人はわずかに2.6パーセントという結果だ。

あまり信じていない人たちに理由を尋ねると、「誰でも書き込めるから」、「何かにコントロールされていそう」、「承認欲求のかたまりだから」といった意見が聞かれた。また「学校で習ったから」という声も多かった。SNSネイティブ世代ならではの妥当な情報リテラシーだ。

いちばん多かったのは少し信じるという人だったのだが、その理由としてもっとも多かったのが「信じちゃいけないと思っても気になっちゃう」、「すぐ信じちゃうけど、それはダメだと思っている」という意見だった。つまり、決して信じる派と信じない派に二分されたというのではなく、「すごく信じている」という2.6パーセントを除く97.4パーセントは、簡単に信じてはいけないという認識を持ち合わせている。

また、「気になった情報は自分で調べて信じるに値するか考える」という意見も目立ったという。そう時を置かずして、フェイクニュースに踊らされるのは古い人間という時代になりそうだ。それは明るいニュースと言えるだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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