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2026.07.08 09:42

AIを使う女性は「無能」、男性は「実利的」と見なされる 職場に潜むジェンダーバイアス

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なぜ女性は男性に比べてAI(人工知能)ツールを使う割合が25%も低いのだろうか。新たな研究は、このジェンダーギャップの原因が、主に女性のAIスキルや関心、アクセスの欠如にあるという考えを覆している。女性がAIの使用をためらうのは、職場でAIを使用する際に直面する「能力評価のペナルティ(competence penalty)」に対する合理的な反応なのだ。

女性労働者がAIを利用する際に被る能力評価ペナルティを示す最新の証拠が、Metaの元ストラテジストでCode For Good Nowの創設者であるゼフラ・チャトゥーによる2026年の研究で明らかになった。この研究では、AIの支援を得て作成された履歴書を提出した女性は、まったく同じ履歴書を提出した男性よりも、能力が低く、信頼性も低いと評価されることがわかった。評価者にとって、女性のAI使用は「能力不足」を意味し、男性のAI使用は「主体性」を意味していたのだ。

この研究は、仕事を効率的にこなすためにAIを利用する女性に対して能力評価ペナルティが科されることを示した過去の研究を補強するものだ。組織が従業員向けのデジタルスキル研修やAI導入促進のためのインセンティブに投資するだけでは、AI利用におけるジェンダーギャップは解消されないことを示している。雇用主は、AIの使用に関連するジェンダーに基づく認知バイアスにも対処しなければならない。

2026年の研究で判明した、AIを使う女性への能力評価ペナルティ

この新しい研究で、チャトゥーはマーケティング職向けのAI作成の履歴書を用意し、2026年4月にイギリスの成人1000人に候補者を評価してもらった。評価者には同一の履歴書が渡され、候補者がAIの支援を利用したことが伝えられた。履歴書の唯一の違いは候補者の氏名だった。評価者の半分にはエミリー・クラークという名前が、もう半分にはジェームズ・クラークという名前が提示された。

履歴書の内容は同一であったにもかかわらず、評価者は女性候補者によるAI支援の利用を、男性候補者よりもはるかに厳しく判定した。

AIが作成した履歴書が女性のものであるとされた場合、評価者が候補者の能力を疑問視する割合は2倍にのぼった。エミリーの履歴書を評価した1人は、「自分で履歴書すら書けないのなら、その仕事を遂行するスキルがあるのか疑問だ」と述べた。

対照的に、AIが作成した履歴書が男性のものであるとされた場合、評価者がその候補者を「主体性がある」と見なす割合は2倍になった。言い換えれば、女性のAI使用は「無能」の証拠とされ、男性がまったく同じ成果物を作るためにAIを使用することは「実践的な問題解決(プラグマティック)」と見なされたのだ。

「明らかになった評価のギャップは、専門的な評価において女性がより厳しく判定されるという、すでに十分に立証されている事実にとどまらない」とチャトゥーは言う。「AIを使用する女性が、まさにその使用を理由に、より厳しく判定されるということだ」

また、AIが作成した履歴書がジェームズではなくエミリーのものである場合、評価者が候補者の信頼性を疑う割合は22%高くなった。「男性がAIを使うとき、私たちはその努力を疑う。しかし、女性がAIを使うとき、私たちはその誠実さを疑うのだ」とチャトゥーは話す。「この違いが、AIを使用することへのリスク認識を変えてしまう」

この研究ではさらに、評価者自身がAIツールにどの程度精通しているかは、他者のAI使用を評価する際のジェンダーバイアスの解消にはつながらないことも判明した。高齢の評価者は、自身もAIを使用する可能性が高いZ世代の男性評価者よりもジェンダーバイアスが少なかった。Z世代の男性の間では、ジェームズを「強力な」候補者と評価した割合が97%だったのに対し、エミリーを「強力な」候補者と評価した割合はわずか76%であり、21パーセントポイントものジェンダーギャップが存在した。

チャトゥーは、AI使用に対するペナルティは、高齢の女性や有色人種の女性、あるいはその他の交差的なバイアスに直面している女性において、さらに大きくなる可能性があると警告している。「この研究はジェンダーという単一の変数に焦点を当てたものだ」とチャトゥーは言う。「人種、民族、年齢、社会経済的背景はすべてジェンダーと相互に作用し、さらに細分化された結果をもたらす。AIに対する評価ペナルティは、これらの側面が重なり合うことで複雑化する可能性が高い」

女性はAI能力評価ペナルティを自覚している

チャトゥーの研究は、職場でAIを使用する女性が直面する能力評価ペナルティを記録した過去の研究を裏付けている。女性はこのジェンダーバイアスに気づいており、それがAI利用率の低さに合理的に結びついているのだ。

「女性の躊躇はスキルのギャップではない。不平等な環境を正確に読み取っている結果だ」とチャトゥーは言う。「上部にある名前に基づいて同じ成果物が異なる評価を受けるのであれば、慎重になるのは論理的な反応だ」

2025年の研究では、従業員にAIツールの使用を積極的に奨励している企業においてすら、女性は職場でのAI使用に対して能力評価ペナルティに直面していることが明らかになった。

この過去の研究は、あるグローバル・テクノロジー企業が、AI導入を促す1年間のキャンペーンを行ったにもかかわらず、女性のソフトウェアエンジニアのわずか31%しかAIツールを使用していないことを発見したことから開始された。同社の幹部は、この期待外れの結果を調査するため、北京大学と香港理工大学の研究者に連絡を取った。

女性エンジニアのAI利用率が男性エンジニアよりも低い理由を評価するため、研究者らは同社のソフトウェアエンジニア1026人に、まったく同じコンピューターコードを評価するよう依頼した。エンジニア全員がまったく同じコードをレビューしたが、そのコードがAIの支援を受けて書かれたものか否か、またプログラマーが女性か男性かについて、それぞれ異なる前提条件が伝えられた。

予想通り、レビュアーたちはすべての条件下で、同一のコンピューターコードの客観的な品質を同様に評価した。しかし、コードを書いたエンジニアに対する評価は大きく異なっていた。レビュアーは、AIを使用していないとされるエンジニアと比較して、AIを使用したとされるすべてのエンジニアに能力評価ペナルティを課した。そして、AI使用に対するペナルティは、男性よりも女性に対してはるかに厳しかった。

男性のAI使用者は、AIを使用していない者に比べて能力評価が6%低かったのに対し、女性のAI使用者は、まったく同じコンピューターコードを作成したにもかかわらず、能力評価が13%低かった。自身がAIを使用していない男性の評価者が、最も深刻なジェンダーバイアスを伴う能力評価ペナルティを課した。AIを使用していない男性は、AIを使用して同じ成果物を作成した女性エンジニアを、同じくAIを使用した男性よりも26%厳しく評価した。

この研究はさらに、女性がAIを使用することで、職場における貢献度がどのように過小評価されるかを明らかにした。エンジニアとAIツールの相対的な貢献度を推定するよう求められた際、評価者は、プログラマーが男性ではなく女性であると信じた場合に、AIツールの作業割合がより大きかったと見なした。「AIの支援は、戦略的なツールの利用を示す証拠ではなく、彼女たちの力不足の『証明』として枠付けされてしまう」と研究者らは結論づけた。

同社の女性エンジニアはこのジェンダーに基づく能力評価ペナルティを自覚しており、それがAIの使用を合理的に躊躇する理由を説明していた。同社のエンジニア919人を対象とした追跡調査では、女性のほうが男性よりも、AIを使用することで管理職による自分の能力評価が下がることを懸念する割合が高かった。そして、その懸念は的中していたのだ。

企業がAI使用におけるジェンダーバイアスを軽減する方法

「AIを使うことで評価を下げるのではないかという女性の恐怖は、主観的な思い込みではない」とチャトゥーは言う。「それは測定可能であり、現実のものだ」。つまり、企業は技術的な研修やインセンティブを与えるだけでは、従業員のAI導入におけるジェンダーギャップを解消できない。雇用主はまた、女性に対して、AIの使用について公平に評価されるという確信を持たせなければならない。

「構造的バイアスは、スキル向上だけで解消できるものではない」とチャトゥーは述べる。「AI導入のギャップを埋めるということは、人々がどのようにAIを使用するかだけでなく、その使用がどのように評価されるかに対処することを意味する」

組織が職場でAIを使用する女性への能力評価ペナルティを軽減するために、3つの実践が役立つ。

1. 従業員のAI使用に関するデモグラフィックデータを収集し、理由を尋ねる

「AIの導入データがジェンダー別に分類されていなければ、ギャップを把握することはできず、対処することも不可能だ」とチャトゥーは言う。「測定を開始することだ」。AIの使用指標は、人種や年齢、その他の能力に対するバイアスを引き起こすステータス別にも細分化することができる。

AIの導入データを収集することは重要なステップだが、雇用主は利用率の格差の原因について思い込みを持つことも避けなければならない。匿名アンケートを活用することで、能力評価ペナルティへの懸念が、特定の労働者の間でAI利用率の低さにどの程度影響しているかを特定するのに役立つ。

2. AI使用者本人ではなく、成果物を評価する

AIの支援を受けた仕事を評価する際に、ジェンダーに基づく能力バイアスを軽減するための効果的な方法は、「ブラインド・レビュー」プロセスを利用することだ。このアプローチにより、評価者は評価対象の成果物をどの従業員が作成したかを知ることができなくなる。ジェンダーやその他のバイアスを引き起こす可能性のある個人的な特定情報を排除することで、AI使用をめぐる公平で一貫した業績評価を強化できる。

ブラインド・レビュープロセスの実施が不可能な場合でも、評価者に対して、労働者自身を評価するのではなく成果物を評価するよう指示することで、バイアスを軽減できる可能性がある。AIが支援したコンピューターコードに関する2025年の研究では、評価者はプログラマーのジェンダーにかかわらず、同一のコードの品質を同様に正確に評価した。AIを利用する女性に対するバイアスは、評価者がプログラマーの能力や貢献度を評価するよう求められたときに初めて現れた。

この知見は、AIツールを使用した労働者の資質を評価するのではなく、AIを活用した成果物の品質を評価するように管理職を訓練することの重要性を示唆している。

3. 客観的な評価指標を用いる

ジェンダーバイアスは、評価者が能力、強み、あるいは信頼性といった主観的な評価基準を用いる場合に発生しやすくなる。雇用主は、採用評価を実際の業務に必要な特定のスキルに基づいて行い、人事評価は生産性や従業員の成果物の品質に関する客観的な測定値に基づいて行うべきだ。

これら3つの実践は、組織がAIを使用する女性に対する能力評価ペナルティを軽減するだけでなく、ステレオタイプが職場の評価を歪めかねないあらゆる文脈において公平性を促進するのに役立つ。従業員のAI使用を公平に評価することを保証すれば、従業員のAIツールの導入もさらに促進されるだろう。

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2026.06.25 11:00

“ここ”から始まる、新しい旅の起点──KOKO HOTELSが挑む、“寝るだけ” ホテルからの脱却

現在、全国で76店舗と急拡大するKOKO HOTELS。インバウンド需要の拡大を追い風に、“寝るだけ”ではない宿泊体験を提案し、宿泊特化型ホテルの再定義に挑むポラリス・ホールディングスの戦略と、その先に描く未来とは。


インバウンド需要の回復、ワーケーション、マイクロツーリズム、そして“暮らすように旅する”という価値観の広がり……コロナ禍を経て、ホテル業界は大きな転換期を迎えている。かつては観光か出張か、で二分されていた宿泊需要は、もっと曖昧で多様なものへと変化した。

「ここ10年で見ると、インバウンド市場はずっと右肩上がりです。一方で、日本人のビジネス出張はリモートワークの普及もあって横ばい、もしくは少し減少傾向。国内レジャー需要は大きく伸びています」

そう語るのは、全国でホテルブランド「KOKO HOTELS」を展開するポラリス・ホールディングス代表取締役社長、田口洋平(以下、田口)だ。特に印象的なのは、インバウンドのリピーター化だという。韓国、台湾、香港など東アジア圏からの旅行者は東京、大阪、京都という従来より定番のデスティネーションだけではなく、高松や別府、尾道といった中小規模の地方都市へも足を延ばし始めている。

「インバウンドが地域文化を求めて分散化しているなか、ホテルも変革を求められています。以前の宿泊特化型のビジネスホテルは、“安心・清潔・機能的”というミニマムな快適性・利便性と、価格優位性を打ち出してきました。でも、今はそれだけでは選ばれない。新しいホテルは、それらを備えていることが当然だからです」(田口)

田口洋平 ポラリス・ ホールディングス 代表取締役社長。
田口洋平 ポラリス・ ホールディングス 代表取締役社長。

“寝るだけ”では選ばれない時代

加えて、土地価格や建築費の高騰もあり、かつてのように安価な宿泊特化型ホテルを大量出店するモデルは成立しにくくなっている。だからこそ、今求められているのは価格競争ではなく、「そのホテルに泊まる意味」をどうつくるか、という体験価値の向上であろう。

こうした市場の変化のなかで「KOKO HOTELS」が掲げるのが、「HERE DISCOVERY BEGINS. ここから見つける旅を」という新たなタグライン。同社取締役兼最高執行責任者の下嶋一義(以下・下嶋)は語る。

「ホテルを館内完結型にするのではなく、地域を発見する“起点”にしたいんです」

「KOKO HOTELS」では、各店舗に“アンバサダー”を配置。地元の飲食店や観光スポット、文化、イベントをリサーチし、スタッフ同士で共有するほか、店舗によっては手描きの観光マップや飲食店案内を作成する。地域イベントにも参加し、札幌ではローカルキャラクターとのコラボルーム、福島・須賀川では耕作放棄地を活用したニンニク栽培など、地域との接点づくりにも積極的に取り組んできた。

「昨今のホテル業界は、ラグジュアリー特化型と、ローコスト・省人化を進める宿泊特化型の二極化が鮮明ですが、これからはホテルも“自分の価値観に合うかどうか”で選ばれる時代になると考えています」(田口)

確かに、現代のホテルは設備面だけで見れば大きな差がつきにくい。安全で清潔、Wi-Fi完備でベッドが快適なのは、もはや当たり前。その前提で選ばれる理由となるのは、“どんな時間を過ごせるか”という感覚的価値だ。近年、地域性や独自の世界観を打ち出したライフスタイルホテルが支持を集めているのも、その流れの延長線上にある。

下嶋は、「『KOKO HOTELS』はいわゆるライフスタイルホテルとは少し違うのですが」と前置きしながらも、目指すのはにぎわいや交流ではなく、“知的な刺激”を感じられる滞在だと語る。

「デザインやアート重視で、夜はDJがいるようなパーティ型のホテルって、好きな人はすごく好きでしょう。でも、私自身はもっと落ち着いて、その街の歴史や文化を知ることができる滞在のほうが心地いい。そういう価値観に共感してくださる方に選ばれたいと思っています」

「KOKO HOTELS」から生まれた、日本の温泉文化を体験できる新ブランド「kokonoyu」は、「Retreat―自分と向き合い、心を解き放つ滞在―」がコンセプト。その第1号店として、大分・別府駅から徒歩3分という好立地に「kokonoyu別府」を2027年夏開業予定。最上階に露天風呂つきの天然温泉を備える10階建て、全150室。©UDS
「KOKO HOTELS」から生まれた、日本の温泉文化を体験できる新ブランド「kokonoyu」は、「Retreat―自分と向き合い、心を解き放つ滞在―」がコンセプト。その第1号店として、大分・別府駅から徒歩3分という好立地に「kokonoyu別府」を2027年夏開業予定。最上階に露天風呂つきの天然温泉を備える10階建て、全150室。©UDS

アセットライトが可能にするスピード展開

興味深いのは「KOKO HOTELS」が“運営”主導のブランドであることだ。ホテル業界には、自社で土地や建物を保有する“オーナー型”の企業も多い。一方、「KOKO HOTELS」はアセットライト、つまり運営を軸に成長するモデルを採用している。

「ホテルを一棟開発するには、数十億円単位の資金が必要です。すると、出店スピードはどうしてもスローになる。我々は不動産ではなく、運営力とブランド価値で競争力を高めていきたいと考えています」(田口)

これは、世界のホテル業界でも進んでいる潮流だ。マリオットやヒルトンのようなグローバルブランドも、不動産保有より“ブランドと運営”を強みに成長してきた。

「KOKO HOTELS」もまた、不動産保有ではなく、“地域体験をどう設計するか”を競争力として、日本全国への展開を進めている。
もっとも、運営会社型にも難しさはある。チェーン展開を進めれば進めるほど、ブランドの統一感と地域性の両立が難しくなるからだ。

「全部をトップダウンで統一すると、“どこへ行っても同じホテル”になってしまう。でも逆に、現場に任せすぎるとバラバラになる。そのバランスは少々難しいですね」(下嶋)

現在、同社は全国を11の地域に分け、エリアトレーナー制度を導入。サービス品質を一定水準で保ちながらも、地域らしさを表現できる体制づくりを進めている。

「チェックイン・アウトなどオペレーションなら、ある程度標準化できます。でも私たちが本当に届けたいのは、“この街を知ってほしい”という想いなんです」(下嶋)

下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼最高執行責任者。
下嶋一義 ポラリス・ ホールディングス 取締役兼最高執行責任者。

そうした考え方は、今後のブランド展開にも色濃く反映されており、大分・別府では温泉文化をテーマにした「kokonoyu」、沖縄・那覇ではアップスケールブランドのホテルを計画。さらに、長期滞在型アパートメントホテルの展開も進めている。だが、この新ブランドの展開も、単なるポートフォリオ拡張を目的としたものではない。ポラリス・ホールディングスが一貫して重視しているのは、それぞれの土地に根ざした体験価値を、いかに宿泊体験へ落とし込むかという視点だ。

「カテゴリーや価格帯が変わっても、その土地の文化や地元の人との接点をどう生み出すか、という根底の思想は共通しています。それはFeel The Local、日本の地域性を感じていただくということ」(田口)

“寝るだけ”のホテルではなく、地域の文化や歴史、人との接点を生み出す場所へ……「KOKO HOTELS」が目指しているのは、“泊まる”を超えて、街へ一歩踏み出すための新しい旅の起点なのである。

ポラリス・ホールディングス
https://koko-hotels.com/


たぐち・ようへい◎ポラリス・ホールディングス代表取締役社長。ITコンサルティング、ホテル運営、ホテルリート運用企業などを経て、ホテル開発・運営の両面に携わる。2022年よりポラリス・ホールディングス取締役として運営・開発事業を統括し、2025年より現職。

しもじま・かずよし◎ポラリス・ホールディングス取締役兼最高執行責任者。ホテル・旅行業界でマーケティング、ブランド戦略、国際事業に従事。国内外のホテル運営やオンライン旅行事業に幅広く携わり、2021年よりミナシア代表取締役社長、2025年より現職。

promoted by ポラリス・ホールディングス | text and edited by Miyako Akiyama | photographs by Kenta Yoshizawa

AI

2026.07.08 14:00

中国の「AI封鎖」が迫る──米国企業のオープンウェイト依存に警鐘

米国のAI企業は中国製のオープンウェイトモデルの採用を増やしている。これらのモデルは、OpenAIやAnthropic(アンソロピック)の主要モデルよりも大幅に低コストである場合が多い(stock.adobe.com)

米国のAI企業は中国製のオープンウェイトモデルの採用を増やしている。これらのモデルは、OpenAIやAnthropic(アンソロピック)の主要モデルよりも大幅に低コストである場合が多い(stock.adobe.com)

中国当局が、同国の主要なAIモデルへの海外からのアクセスを制限する可能性について協議している。米国時間2026年7月6日、ロイターが報じた。対象となり得るモデルの多くは、重みを公開している、いわゆるオープンウェイト型のモデルである。

中国政府はここ数カ月、最先端かつ低コストなモデル、人材、そしてスタートアップを囲い込むための措置を相次いで講じている。これには、Meta(メタ)に対してAIスタートアップであるManus(マナス)の20億ドル(約3240億円)の買収を解消するよう命じたことや、中国に関連する企業への外国投資の差し止めなどが含まれる。皮肉なことに、こうした厳しい規制が、一部の中国人創業者が米国へ移住する動きを生んでいると、2026年3月にForbesが報じていた。

米AI企業に中国勢モデルが広がる──遮断なら事業リスクに

一方で、米国のAI企業ではオープンウェイトの中国勢モデルの採用が広がっている。これらはOpenAIやAnthropicの主要モデルに比べて60〜90%安価になり得ると、CNBCが報じた。加えて、開発者はモデルの挙動をより細かく制御できる。

米国企業がさまざまなAIモデルを使い分けて処理を実行できるようにするスタートアップに、OpenRouter(オープンルーター)がある。同社によれば、中国勢モデルに振り向けられる処理量は着実に増え続け、現在は約30%に達しているという。アーリーステージのスタートアップの一部は、トラフィックのすべてをDeepSeekのような中国企業が開発したモデルに切り替えている。中国がアクセスを遮断した場合、こうした企業にとっては深刻な問題となり得る。

Reflection(リフレクション)は、オープンウェイトの基盤モデルを開発するAIスタートアップだ。同社でプロダクト担当バイスプレジデント兼オープンソース責任者を務めるジョセフ・スピサックは、一部の企業が中国のAIエコシステムに「ロックイン(囲い込み)」されるリスクがあると指摘する。中国製のAIモデルの使用に慣れてしまったり、その上にアプリケーションをすでに構築してしまったりしている場合はなおさらだ。「1度その技術から抜け出せなくなると、ある種の慣性が働き、そこから離れることがますます難しくなる」とスピサックは語る。

中国が自国AIモデルに対する輸出規制を実施する可能性は、Reflectionにとって強力な追い風になり得る。Reflectionは2024年、中国に対抗する米国発のオープンウェイトの選択肢を目指して設立された。創業したのは、Google DeepMind(グーグル・ディープマインド)の研究者だったミーシャ・ラスキンとイオアニス・アントノグルーだ。出資者には、ドナルド・トランプ・ジュニアがパートナーを務める1789キャピタルが名を連ねる。評価額250億ドル(約4.05兆円)の同社だが、オープンウェイトモデルをまだ一般には公開していない。

以下、直近で話題となったAI関連のニュースをまとめている。

次ページ > OpenAIがトランプ政権に5%株式案、米国外企業に警戒感を生む可能性

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2026.07.08 13:30

「人たらし」の論理と美学:川村雄介の飛耳長目

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あれほど心に響いた教科書所収の文章には初めて出会った。「時に残月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた」。中島敦の『山月記』の一節である。高校の現代国語の教科書だった。それまで理数科目が得意で、国語嫌いだった私は、この文章に触れた直後から、内外の文学書を渉猟する文学青年を自称するようになった。

大学受験が近づくと、友人たちから、ある現国のベストセラー参考書を強く薦められた。書店の受験コーナーに平積みされたこの参考書を開いて考え込んでしまった。長文や難文を論理的に整理、仕分けして文意を分析的にとらえる手法が展開されていたのである。国語の参考書というより、文章を数式化した理系のガイドブックのように感じた。

私はこの名参考書を書棚に入れたまま、ほとんど開くことがなかった。山月記以来、授業中でも膝に乗せた新書や文庫を隠れ読みして、膨大な数の本の世界に入り込んでいた。すると、文章は感覚だ、数学みたいに論理的に分解するやり方は邪道、現国の勉強など不要だ、と確信してきた。

文部科学省は、高校国語の「論理国語」と「文学国語」の区別をやめて統廃合するという。現行制度では、理系志望者を中心に文学離れが懸念されているからだそうだ。当然の対応である。

論理国語は論文や実用文など、論理的に組み立てられたものを指す。実社会でその典型は法律の文章だろう。特に法令の文章は、解釈の余地を限りなく排して正確性と論理性を研ぎ澄ませた文章である。生活していくうえでこれらの読解能力が大切であることは間違いない。また、論理性の高い文章は、美とは無縁のように思われがちだが、秀でた論文には美しさもある。数式美にも通じる。

文学はどうだろうか。例えば川端康成の『山の音』である。身に染みる加齢への不安と家族への悩み、息子の妻へのほのかな思いが錯綜する主人公に聞こえる山の音を条文で表現できるだろうか。石川淳の『焼跡のイエス』で描かれる、戦後の闇市に出没する狂暴、残忍で不潔な少年はどうか。彼にナザレのイエスを見る心境と時代風景を論文で体感させるのは困難だ。まして、「岩にしみいる蝉の声」や「わが身世にふるながめせしまに」を論理的国語で解釈しても、心を打たない。

文学には匂い、音、温度感や空気が濃厚に漂う。読み手は五感を総動員しながら、想像力を働かせることになる。

ただし、小説、詩歌にも構成や展開には論理がある。論文とは著しく異なる体裁だが、良い作品には見事なロジックが潜んでいる。感性の羅列のように見えても、感動力をもつ文学は不可視的論理を内在している。読者はこれに直ちには気づかないかもしれないが、論理が破綻した作品は読むに堪えない。論理国語をカメラで撮った写真だとすれば、小説や詩歌は同じ光景を描いた絵画であろう。

次ページ > 実りある意思疎通のためには

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