ズレた言い訳、弁解をする被告人
裁判官「Aさん、Bさんの交際の事実を知りたかったって言っていましたけど、業務に支障をきたしていたのですか?」
被告人「いいえ」
裁判官「きたしていたなら、話をするとかはわかるのですが、そうでなければあなたに関係ないですよね?じゃぁ、あなたはなぜ二人を盗撮したのですか?交際を知りたいなら盗撮しなくていいじゃないですか?あなたが盗撮をした理由は何なんですか?」
被告人「カメラを購入したというところにつながるんですけど、盗撮用のカメラが」
裁判官「そういうことを聞いているんじゃないんですよ!!それもう、交際を知りたいとかじゃないですよね?同じ時期に別の同僚の部屋に忍び込んでそういうことをしている。あなたさっき、嫌悪感を覚えたって言っていたけど、何回も入っているじゃない?さっき反省がどう伝わるとか、フラッシュバックがとか言っていたけど、あなたより二人の方がよっぽど辛い思いをしていると思いますよ。あなた、先ほど身の上話をしていたけど、小学校5年生くらいのお子さんいますよね?その年ごろになるとあなたのお子さんに良からぬことを考える人が出てくる年ごろですよ。あなたそれに対してどう思うの?」
被告人「Bさんのお父さんの供述調書を拘置所で読んで辛かったです。逆の立場だったら『八つ裂きにしてやりたいと思います』」
裁判官「前回(第1回公判)と今回(第2回公判)であなたの話を聞いていましたけど、どれほど真摯(しんし)に向き合ってきたのか、少し釈然としない印象を受けます。質問に対して遠回しにして答えていない感じがして事件と向き合っていない気がするんです。賠償を断られているって言っていたけど、それだけ被害者はお怒りってことじゃない?あなたが真摯に向き合って被害者にお話しするのが、あなたに出来ることなんじゃないですか?」
傍聴席に居たすべての人間が思っていたであろうことを裁判官が代弁した。そして、被害者心情意見陳述が検察官により読み上げられた。
「自宅にカメラを設置され、私生活を盗撮され、性行為を第三者に見られるということ自体がありえないが、その第三者が毎日、顔を合わせる同僚であったらどうでしょう。恐怖でしかありません。被告人は何食わぬ顔で毎日、私たちに接していました。考えただけで吐き気がします。被告人を絶対に許すことは出来ません。事件後、診療内科に通い、外に出られない時期もありました。まだカメラが残っていて誰かに見られているのではないか、インターネット上に映像が流出しているのではないかと心配になることもあります。今回、被告人は実名報道もされず、再就職し、妻と変わらず生活しています。再就職先が以前と同じ業種と聞いて驚きました。人の家に勝手に入り、また同じ業種に就くという神経が理解できません」
検察は男に拘禁刑2年を求刑し、裁判所は拘禁刑2年執行猶予4年、その猶予期間中、保護観察に付する判決を下した。
裁判官は「室内のエアコンにカメラを仕掛けるのは巧妙で計画性があり非常に悪質。他の同僚女性の部屋にも仕掛けており性的欲求を満たす目的以外の何物でもない」と述べ、保護観察付き判決は執行猶予期間中の犯罪のみならず、保護司の指導、受講プログラムを受けなければ猶予が取り消されると釘を刺した。
男は最後に述べた。
「後悔先に立たずとは言いますが、自分のやったことを振り返り、後悔と、被害者の深い悲しみに共感しています。二度とこのようなことはしません」
最後の最後まで、男の発言はズレていた。
文/田辺朋之 内外タイムス