ズージャ語
ズージャ語(ズージャご)またはズージャー語(ズージャーご)とは、太平洋戦争終結後の昭和中期頃から、進駐軍キャンプやキャバレーなどを営業で回るジャズバンドのバンドマンの間で用いられていた隠語である。ズージャ語は一般的でない隠語であり、標準的な辞書等には採録されていないが、論文当で言及されることもあり[1]、隠語における倒語法として研究・収集されている。
発生
[編集]ジャズという語をひっくり返して発音した「ズージャ」、「ズージャー」が典型例であるため、この名称がついた。クラシック音楽ではない軽音楽やポピュラー音楽も「ズージャ」と呼ばれたようである。
隠語を作る際に倒語(逆さ言葉)を用いることは、日本語においても古くからある手法であり、「ドヤ」(宿[2])、パイイチ(酒を一杯[3])、レコ(情人、コレ[4])などは江戸期から存在する。その他に「ダフ屋」(札屋)、「ちくる」(口る)、「ドサ回り」(里回り=濁音にしてよりイメージを悪くしている)などが知られている。ジャズ界では人名も逆さにすることが多く、「森田」姓である「森田一義」が「タモリ」となるのはその例である。
現金払い(即金払い)でギャラを受取ることを「取っ払い」というが、このときに金額的な生々しさを避けるために、数字にも取り入れられた。数字に音名を当てはめて、C, D, E, F, G, A, Hが順番に数字の1から7までを意味した。当時の音楽家は音名をドイツ語で呼んでおり、ツェー、デー、ゲーというようにドイツ語読みされた。例えば25万円であれば「デージューゲー万円」と呼ばれた。また、Cが1になるのはハ長調の第1音(主音)であるからである。なお8は「オクターブ」(略して「ターブ」)、9は「ナイン」または「ナインス」と呼ばれた。
このように調から派生した言葉として、「C調」(しーちょう。こちらのCは英語読み。)がある。この場合の「C調」は、「調子いい」とハ長調(C調)をかけて、軽く調子のいい事を吹聴する人物を指したものである。ジャズ界出身のクレイジー・キャッツが流行らせ、「無責任一代男」には「人生で大事な事はタイミングにC調に無責任」という歌詞が出てくる。また、サザンオールスターズの楽曲に「C調言葉に御用心」がある。
ズージャ語の衰退
[編集]1980年代末から1990年代初頭にとんねるずやブラザーコーン、中山秀征などがテレビ番組などで、銀座を「ザギン」、六本木を「ギロッポン」、姉ちゃんを「チャンネェ」、寿司を「シースー」等とする単語を盛んに使ったため、一般人の間でも若者を中心に使われるようになり、隠語の意味合いが無くなり、一般化した単語などを除いては芸能界でもあまり使われることはない。
脚注
[編集]- ↑ たとえば、JUNKO ITO, YOSHIHISA KITAGAWA AND ARMIN MESTER "PROSODIC FAITHFULNESS AND CORRESPONDENCE: EVIDENCE FROM A JAPANESE ARGOT"(1996)Journal of East Asian Linguistics, Vol.5, pp.217-294. によれば、"One form such a jargon can take is that of an argot - a secret or play language that systematically distorts the words of the vernacular, in a way transparent only to those who possess the key. An argot of this kind, known as zuuja-go 'jazz language, jazzese', is widely used in Japanese jazz circles, from where it has spread to wider parts of the entertainment industry (gyookai-kotoba 'show business talk'). "
- ↑ 初出例「船でさすのは伽やろふ、どやで寝るのが、エイヤラサ」1723年『歌舞伎大塔宮曦鎧』精選版日本国語大辞典
- ↑ 初出例「まあ盃(パイ)いち飲まふかい」(出典:洒落本・箱まくら(1822)中)精選版日本国語大辞典
- ↑ 初出例「けふから金で買切た体、一日違ばれこ宛(づつ)違ふ」(出典:浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)六)精選版日本国語大辞典
関連項目
[編集]- 倒語
- 語音転換
- 六本木〜GIROPPON〜 - 鼠先輩のデビュー曲
- 夙川アトム - ズージャ語や業界用語を使った漫談、コントを行う芸人
- つば九郎 - プロ野球東京ヤクルトスワローズのマスコット。筆談でズージャ語や業界用語を多用する。