AIエージェントのための自動化されたセカンドブレイン — Obsidianと新しい地獄
(有料部分はおまけで主要な論旨はすべて無料で読めます)
Obsidianと地獄の入口から一年、私は新しい地獄にいる。
地方で中小企業のDX支援、システム開発など行う会社を経営しているimdsです。
この記事を書いてからおよそ1年。未だに読まれていてうれしい。
しかし私はAIエージェントと一体化して、より深い地獄にはまっている。
前回、「Obsidianは手段が目的化しやすい。シンプルに使え」と書いた。ファイルブラウザ、Webクリップ、スライド、デイリーノート。用途を4つに絞った。あの結論は今でも正しい。ただし、人間が使う場合は。
この1年で変わったのは、Obsidianを使う主体だ。人間からAIエージェントになった。
セカンドブレインの問題は「人間が見る」ことだった
セカンドブレインに対して、前回は否定的な立場を取っていた。情報を集め、分類し、関連付ける。その作業自体が目的になる。
しかし考えてみると、手段が目的化するのは人間がシステムを「触る」からだ。整理に快感を覚える。リンクを張り巡らせることに達成感を得る。問題はブレインの設計ではなく、人間の認知バイアスにあった。
ではAIが構築・運用するセカンドブレインならどうか。
AIは整理に快感を覚えない。分類の美しさに自己満足しない。「必要な情報を、必要なときに、必要な形で取り出す」ためだけにセカンドブレインを構築する。人間が見ないなら、手段の目的化は原理的に起きない。
目が覚めたら、今日のデイリーノートがもうある
4つの用途のうち、最も変貌したのがデイリーノートだ。
以前の私は、真っさらなデイリーノートを開き、「今日は何をやろうか」と考えるところから朝を始めていた。
今は違う。
毎朝5時にClaude Codeが自動で朝会を実行する。9体のAIエージェントがそれぞれの担当領域をチェックし、結果を統合して「今日のデイリーノート」を作る。
私が目を覚ます頃には、ノートがすでに埋まっている。Fitbitから取得した睡眠時間・HRV・歩数。未読メールの要約。カレンダーの予定。freeeの未処理取引。GitHubのCIステータス。さらには「今日やるべきことリスト」まで。
朝は「何をやるか考える」場ではない。「AIが作った計画を確認し、修正する」場になった。
デイリーノートの構造 — PDCAが1日で回る
私のデイリーノートは、PDCAサイクルがそのまま1日の構造になっている。
P: 今日の計画
朝会で自動生成される。3パート構成。
フォーカスGoal。複数ある目標のうち、今日最も注力すべき1つ。KPI達成度と期限からAIが自動判定する。
KDI進捗。月間の行動指標の達成状況だ。「記事を月4本書く」なら、今月何本書いたか、残り何日で何本必要か。遅延していれば警告が出る。とにかく警告が出る。もう少し実現可能性を上げる調整が必要だと考えているところだ。
今日のアクション。「即実行」「要決断」「推奨タスク」「今週中」の4カテゴリに分かれたチェックリスト。全タスクに5軸の優先度スコアが付与されていて、上位5件が推奨される。
D: 今日のタイムライン
カレンダー予定、アクション、日課を1本のタイムラインに統合したもの。睡眠スコアが低ければ午後に軽めのタスクを配置する。各項目にチェックボックスがついていて、私はこれを修正し、チェックを入れながら1日を過ごす。結果はタスク管理アプリに自動反映し、翌日のデイリーノートにも影響する。
C: 振り返り
夕方のクローズ処理で自動更新される。8体のエージェントが再び並列で今日の成果を報告し、アクション消化率やGoalへの貢献度が記録される。
A: 調整・学び
気づきや失敗パターンを記録する欄。3日連続で同じタスクが消化できていなければ、AIが「粒度が大きすぎるのでは」と分割を提案してくる。
こうして1枚のデイリーノートの中でPDCAが完結する。
以前は「毎日PDCAを回す」こと自体がむつかしかった。freeeを毎日確認する。メールを整理する。タスクの優先順位を見直す。振り返りを書く。完璧にはできていなかった。それをAIが代わりにやっている。
朝会の裏側 — 9体が並列で動く
デイリーノートが自動で埋まる仕組みの中核は、毎朝5時の朝会だ。
まず秘書エージェントが情報収集を行う。Gmail、Googleカレンダー、Fitbit、Discord、GitHub、天気。これらを並列で取得し、デイリーノートの骨格を作る。前日のデイリーノートから未完了タスクも引き継ぐ。
次に、専門エージェントが並列でチェックを走らせる。
経理がfreeeの未処理取引を確認
管理が届出期限や法令対応を確認
開発がGitHubのPR・Issue・CIステータスを確認
秘書が放置タスクを検出
全員の報告が揃ったら統合レポートを生成。デイリーノートに書き込み、Discordにも配信する。その後、全タスクに優先度スコアを付与し、「今日のアクションリスト」と「タイムライン」を作成する。
土曜には週次レビューが自動でインラインされ、6部署の週次レポートが並列生成される。月初には月次スキャンも追加。すべて1つの朝会フローの中で、条件分岐で制御されている。
朝会の実行時間は3-5分。長くても8分。その間に18のステップが走る。Claudeのデスクトップアプリのスケジューラーを使っていてうまく実行できていないことがあるのでその場合は手で実行している。
Webクリップも、AIが回す
デイリーノート以外にも変化がある。
Webクリップは相変わらず無制限に保存している。ただし分類はClaude Codeが自動で行う。記事を保存すると、17カテゴリのキーワードマップに基づいてタグ付けされ、概念インデックスが更新される。私は保存するだけ。整理は一切しない。
スライドはMarpに移行した。メモ書きをAIに投げれば構成を整えてスライドにしてくれる。Obsidianでスライドを作ることはなくなった。
これらはそれぞれ個別の記事にしたい。フォローしていただけるとうれしいです。
新しい地獄の正体
ここまで読んで、便利そうだと思った人もいるだろう。便利だ。だが、地獄でもある。
前回「地獄」と呼んだのは、Obsidianの設定やプラグインの沼だった。手段の目的化。今回の地獄は正反対にある。
真っさらなデイリーノートを開いて「今日は何をしようか」と考える自由がない。AIが作った計画がすでにある。チェックボックスがずらりと並んでいる。やるのは、計画を確認し、修正し、上から順にチェックを入れていくことだ。
Obsidianで思考するのではなく、作業者として、決定者として振る舞う。「これは今日やるべきか」「この優先順位で合っているか」を判断する。それがhuman-in-the-loopの中での役割だ。
ナレッジワーカーが「考える人」から「AIの出力を確認する人」になる。私はまさにその実験台にいる。
そしてこれが不思議なことに、快適だ。
以前は「メールに目を通さなきゃ」「freeeを開かなきゃ」「タスク管理を更新しなきゃ」というプレッシャーが常にあった。
今はそれがない。
朝、デイリーノートを開けば状況がわかる。チェックリストをこなせば1日が回る。遅延があればAIが教えてくれる。
もちろん完璧ではない。タスク提案がズレていることもある。重要度の判定が甘いこともある。だからこそ人間がループに入って修正する。
「人間の思考を研ぎ澄ます場」としてのObsidian。魅力を感じる人もいるだろう。私もそうだった。しかし今は、ObsidianはAIエージェントの出力を確認するUIになっている。
真っさらなページに何かを書く自由を手放し、AIが埋めたページにチェックを入れていく。目的のために淡々と作業をこなす。これが新しい地獄であり、私にとっては解放でもある。
構築の概要
具体的な構築方法は別記事にするが、概要だけ示す。
使っているもの。Obsidian(デイリーノートの表示用)、Claude Code(エージェントの実行基盤)、各種CLI(Gmail、Calendar、freee、GitHub、Fitbit)、Discord(エージェント間通信とレポート配信)。
エージェントは10体。秘書、経理、経営管理、ナレッジ管理、営業、広報、開発、戦略顧問、データアナリスト、コーチ。各エージェントはMarkdownファイルで定義され、ペルソナと担当業務が記述されている。
自動実行は2本。朝5時に朝会、夕方にクローズ処理。YAMLで定義されたワークフローに従い、情報収集 → 部署チェック(並列) → 統合レポート → アクション提案 → KDIチェックの順で走る。土曜は週次レビュー、月初は月次スキャンが自動追加される。
デイリーノートのテンプレートはPDCAの4セクションに加え、体調、メール、GitHub活動、天気のセクションを持つ。朝にAIが実データで埋め、夕方に振り返りを追記する。
コメントや質問をいただければ励みになります。構築手順の記事を書く際の参考にします。
おまけとして、私が実際に使っているデイリーノートのテンプレートと朝会ワークフローの設計書(2026/04/12現在)を有料部分に置いておきます。そのまま使えるものではありませんが興味のある方は参考にしてください。
今後実際の実装方法などを細かく説明していこうと思うのでフォローよろしくお願いします。
デイリーノート自動運用 全体設計書
AIエージェント10体が毎日自動で運用するデイリーノートの全体像。朝会 → 日中の人間作業 → 夕方クローズの3フェーズで、1枚のデイリーノートの中にPDCAが完結する。
1日のサイクル全体図
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