建築費では説明できないマンション高騰|DailyProp#110
はじめに
首都圏の新築分譲マンション価格が高騰している。2025年の首都圏新築分譲マンションの戸当たり平均価格は9182万円となり、過去最高を更新している。2026年には1億円を超える見通しもある。
前回は東京都のマンション価格高騰を世帯年収の側面から考えたが今回は、建築費の観点から考えてみる。
実際、町でもマンション価格高騰の理由として、「建築費が上がっているからマンション価格も上がっている」というのはよく聞く。たしかに建築費は上がっているが、今回の分析からは、マンション価格の上昇は建築費だけでは説明しきれなそうだ。
本記事は、首都圏新築分譲マンションの平均価格と、国土交通省の建設工事費デフレーターを比較し、マンション価格が建築費に対してどれだけ上振れているかを確認した。そのうえで、三井不動産の国内住宅分譲利益率と照合し、この上振れがどこから来ているか考えた。
新築マンション価格と建築費
1985年を100として、首都圏新築分譲マンション価格と建築費を指数化した。この国土交通省の建設工事費デフレーターは資材費だけでなく、人件費を含む建設工事費全体の物価変動を反映するデータだ。
全体的に見ると、2025年時点で、首都圏新築マンション平均価格は9,182万円である。1985年の2,683万円を100とすると、2025年のマンション価格指数は342になる。一方で、建築費デフレーターの「住宅・非木造・鉄筋」は1985年度の71.0から2025年度の122.1へ上昇しており、1985年=100で見ると172である。1985年比で見ると、建築費は約1.7倍、マンション価格は約3.4倍になっている。マンション価格の伸びは、建築費の伸びのほぼ2倍だ。
局所的には、平成バブル期にはマンション価格が建築費を大きく上回った。1990年前後には、マンション価格指数と建築費指数の比率が大きく上昇している。これは、建築費の上昇では説明できない部分が大きくなったと言える。
バブル崩壊後、この乖離は急速に縮小した。マンション価格が下落し、建築費との比率は低下した。したがって、建築費からの乖離は過去には価格調整局面と一致してはいる。
首都圏新築分譲マンションの指数を建築費の指数で割ったものが下だ。現状はバブル期並みに建築費を上回る価格がついている事が分かる。
建築費からの乖離はいくらか?
直近の局面を見るため、アベノミクス開始の2013年を基準にして建築費連動価格を作った。これは
として計算される。これは、マンション価格が2013年以降、建築費と同じペースでしか上がらなかった場合の理論価格だ。
この理論価格と実際価格を比較すると、2022年以降に差が大きく広がる。2025年時点では、実際の首都圏新築マンション平均価格は9182万円。一方で、建築費だけに連動させた価格は6700万円あたりになる。
この差が、建築費では説明できない上乗せ分だ。2025年ではこれが2500万円分あると読める。また2020年までは、建築費の上昇とおおむね同程度に足並みをそろえていたが、2022年以降から急拡大している様子が分かる。
この上乗せ分をバブルと読み替えても良いが、実際は販売価格のプレミアムとして誰かが受け取っているとみることもできる(陰。
三井不動産の国内住宅分譲利益率の急上昇
ここで三井不動産の国内住宅分譲利益率を見る。
2014年3月期から2019年3月期まで、三井不動産の住宅分譲利益率はおおむね一桁台後半から10%前後だった。ところが、2025年3月期には国内住宅分譲収益4135億円、営業利益964億円、利益率は23.3%まで上昇した。2026年3月期には収益4393億円、営業利益1120億円、利益率は25.5%に達している。
もし建築費上昇がデベロッパーの利益を圧迫しているだけなら、営業利益率は下がるはずである。しかし実際には、三井不動産の国内住宅分譲利益率は大きく上がっている。少なくとも三井不動産については「建築費上昇分を販売価格に転嫁できている」さらに「建築費を超える価格プレミアムの一部を利益として取り込んでいる」。といってもよいであろう。
建築費乖離と三井不動産利益率
2013年以降について、建築費では説明できないマンション価格の上乗せ率と、三井不動産の国内住宅分譲営業利益率を並べると、2022年以降に両者がともに急上昇しているのがわかる。
建築費からの乖離は、市場の過熱というよりかは、販売価格プレミアムの上昇、そしてそのプレミアムをデベロッパーが利益として受け取っている可能性は高い。
もちろん、デベロッパーが過去、安い時に土地を安い時に仕入れていて、その利益を計上している可能性もあるので一概には言えない。しかしながら、建築費を超える価格上昇はデベロッパーの利益にはなっている。
デベロッパーのような業態の生産性が急激に上がるとも思えないので、仮にこの利益率を「貰いすぎ」(ぼったくり)とするのであれば、バブル的な状況とも言えなくもない。またその価格で応じることができる、購入資金の滞留もバブル的といえなくもない。
まとめ
首都圏新築マンション価格は、建築費の上昇だけでは説明できない水準まで上がっている。
1985年基準で見ると、バブル期にも建築費からの乖離は大きく拡大し、その後急速に縮小した。したがって、建築費からの乖離は、価格調整リスクを見る指標として使える可能性もある。
2013年以降の局面では、建築費からの乖離が拡大する一方で、三井不動産の国内住宅分譲利益率も大きく上昇している。建築費では説明できない価格プレミアムの一部が、大手デベロッパーの利益として実現している可能性がある。このような利益は「バブル的」と言えなくもない。
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