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 東京証券取引所で上場廃止となる企業が、2年連続で過去最多を更新している。東証が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求めてから約3年、市場との向き合い方は一部の大企業だけの課題ではなくなった。こうした状況について、「日本企業が『会社の値段』を直視できない背景には、戦後から続く構造的な理由がある」と語るのは、企業価値評価やM&Aに1980年代から携わってきたグロービス経営大学院教員の森生明氏だ。2026年4月、前著を20年ぶりに大幅改訂した『会社の値段[新版]』(筑摩書房)を出版した同氏に、日本企業に根付く資本への誤解と、「会社の値段」を意識した経営に向き合うための視点を聞いた。

経営者は「会社の値段」を無視できない時代に

──今回、20年ぶりに著書『会社の値段』を新版として出版したのはなぜですか。

森生明氏(以下敬称略) 旧版で扱ったライブドア事件や村上ファンドなどの事例が、今の読者には過去の出来事になったことが大きな理由です。当時はリーマンショックが起きる前で、「六本木ヒルズ族」に象徴されるように、金融資本主義への期待や熱気が高まっていた時代でした。そこから20年が経過し、現代の状況に合わせて、改めて「会社に値段をつける意味」を整理する必要があると考えました。

 私が本を書くタイミングには、いつも資本市場の大きな変化がありました。2001年の『MBAバリュエーション』(日経BP)はITバブル崩壊の時期、旧版『会社の値段』(筑摩書房)はライブドア事件の頃、2016年の『バリュエーションの教科書』(東洋経済新報社)はアベノミクスでゼロ金利の金融緩和政策により株価が大きく上がった時期でした。

 現在はコーポレートガバナンス改革が進み、東証がPBR1倍割れ企業に改善を求め、外国人投資家やアクティビストの存在感も増しているタイミングといえます。企業の規模を問わず、株主や市場との対話を避けられない時代になりました。

 ただ、私自身の問題意識は20年前から変わっていません。それは、日本の多くの企業と年金基金などの機関投資家が、会社の値段や株価を正しくつけることが資本主義経済を健全に発展させるカギであることを十分に理解していないのではないか、ということです。

 会社の株価とは単なる会社実績の数字ではなく、「その会社が将来どれだけ価値を生み出せるか」について、市場投資家が下している評価です。社会がその企業をどう見ているかを映す鏡でもあります。だからこそ今、「会社の値段」に無頓着な経営者が投資家によって解任されるという出来事が頻発しているのです。