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先月(2026年6月)、大阪地方裁判所は、不動産小口化商品「みんなで大家さん」をめぐる集団訴訟で、立て続けに、出資金の全額返還を運営会社に命じる判決を言い渡しました。

6月5日には25都道府県の出資者84人に約4億5500万円、6月10日には出資者60人に約3億5200万円。いずれも出資者側の請求がほぼ認められています。

これに先立つ今年3月26日の初判決(原告3人・約1700万円の全額返還命令)と合わせ、提起された集団訴訟では出資者側の請求がほぼ認められる結果となりました。

いずれの訴訟でも、運営会社「都市綜研インベストファンド」側は、返還義務についてほぼ争っていなかったため、請求がほぼ全額認められた形となっています。

もっとも、勝訴判決が出たといっても必ずしもお金が戻るわけではありません。本記事では、本件において今後考えられる法的手段のほか、そもそものトラブルの背景にある法的な問題点、法改正の状況などについて説明します。

お金は回収できるのか?

前述のとおり、出資者による運営会社に対する請求は、判決でほぼ認められました。しかしながら、出資者がこれらの金額を現実に回収できるかどうかは別問題であることには注意が必要です。

報道によれば、3月の訴訟で、会社側は返還義務自体は認めつつ、資金繰りの事情を理由に分割弁済による和解を求めていたそうです(原告側は拒否したため判決となりました)。

また、同社が展開する大阪市の「宗右衛門町」商品の土地が税金の滞納などで差し押さえられるなど、運営会社グループの資金状態は安心できる状況とはいえません。

勝訴判決を得た出資者は、その判決をもって個別に強制執行(財産の差押え)を申し立てることはできます。しかし、執行可能な財産を見つけることができなければ、残念ながら勝訴判決も「絵に描いた餅」になってしまいます。

「みんなで大家さん」のパンフレット

なお、仮に、一部の出資者から(あるいは運営会社自身により)破産手続を申し立てられた場合は、出資者などの債権者による個別の強制執行は禁じられ、破産管財人による財産調査や換価・配当に委ねられることになります。

もっとも、過去の大規模な投資被害案件での実例を見ると、配当率は数%にとどまることが多いようです。

「みんなで大家さん」訴訟に見る「不特法」の問題

多くの投資家を巻き込んだ「みんなで大家さん」ですが、この商品は不動産特定共同事業法(不特法)の規制対象となる商品です。では、同法による規制は十分だったのでしょうか。

運営会社および販売会社は、2024年6月に行政処分(業務停止処分など)を受けました。その理由の中心となったのは次の点です。

開発許可を受けていない土地を、許可済みであるかのように契約書面に記載した(不実記載)

事業プランの大幅変更という、投資判断に決定的に重要な情報の説明を怠った

不特法は、投資判断に影響を及ぼす重要事項について、契約成立前・成立時に書面を交付して説明する義務を事業者に課しています(不特法第24条・第25条)。

運営会社らは、上記のとおり開発許可の有無や事業プラン変更などの重要事項について不実記載をし、また必要な記載をしなかったため、30日間の一部業務停止処分を受けました。

もっとも、処分の対象になったのはあくまで説明義務違反の点でした。しかし、本件が投資家に与えた打撃の大きさを踏まえると、不特法の規制そのものが次の点で不十分だったといえます。

(1) 想定利回りの設定根拠の説明が不要
現行法では、想定利回りを示す場合には、予測である旨を表示して広告すれば足りるとされています。算定式や配当額の根拠などの説明までは義務ではありません。

(2) 対象不動産の取得価格の説明範囲が不十分
現行法では、価格を説明しさえすれば、その妥当性の根拠の説明までは必要ありません。

本件でも、運営業者側が示した価格が実勢価格と大きな開きがあると批判されていました。

(3) 出資金の使途が開示されない
現行法では、投資家が出資した金銭がどう流れて何に使われたのかを開示する義務はありません。本件でも、資金がどこに使われてどこから収益を得ていたかという流れが不透明になっていました。

(4) 利害関係人取引の「価格・賃料の妥当性」が開示されない
現行法は、グループ会社など利害関係人との取引について、相手の名称・所在地・取引額・内容の開示は求めていましたが、その価格や賃料が妥当である根拠(鑑定評価額や周辺相場との比較)までは求めていません。

本件では、グループ会社テナントからの賃料に配当原資が依存していたものの、その賃料水準が妥当かを投資家が検証する材料はありませんでした。

(5) 開発型商品の資金計画・進捗が開示されない
現行法では、開発を伴う商品について、開発の資金計画やスケジュールを説明させる定めがありません。

本件では、当初2021年とした造成工事の完了が延期を繰り返しましたが、投資家に進捗の遅れや資金計画の実現可能性を知らせる法的義務はありませんでした。

今年、不特法規則が改正された

こうした問題点は本件に限らず指摘されていました。

加えて、近年に市場が急拡大したこともあり、国土交通省は2025年に「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」を設置し、同年8月に中間整理を公表。

これを受けて、2026年4月に不特法施行規則が改正・一部施行されました。

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改正規則は、一般投資家向けの情報開示の充実や、対象不動産の売却価格などにおける公正性の確保などの制度充実を主な柱としています。

具体的には、契約成立前の説明事項について次の事項が追加されました。

・想定利回りを広告した場合にあっては、当該利回りなどが予想に基づくものである旨並びに当該利回りなどの根拠となる不動産取引の内容・額及びその取引が行われたことの根拠又は行われると見込まれる根拠など

・対象不動産の価格が妥当なものであることを説明するために必要な事項など

・利害関係人取引を行う場合は、当該取引の額が妥当なものであることを説明するために必要な事項など(鑑定評価額、近傍同種の不動産取引価格などの価格及びこれらの価格との差額の理由など)

・出資された金銭の使途

・宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前の場合は、必要な許可などの処分(開発許可、建築確認等)の有無及びその処分の概要、資金計画並びに工事の完了時期など

などです。

また、既に契約を締結した出資者に対しての財産管理報告書への記載事項として次の事項が追加されました。

・報告対象期間において出資された金銭の使途

・既に着手した工事の概要及びその完了時期

・今後の資金計画及び今後実施予定の工事の概要とその完了時期

・必要な許可などの変更許可などの処分の有無及びその処分の概要

さらに、電子取引業務(web上での契約)を行う事業者には、webサイトでの公表事項について次の事項が追加されました。

・利害関係人取引に関する事項

・宅地の造成又は建物の建築に関する工事に関する事項

・収益又は利益の分配に関する事項

これらの改正により開示事項の範囲が広がることで、投資家が商品の内容やリスクをより理解した上で投資判断を行えるようになることが期待されています。

投資家が身を守るための自衛策

ただ、以上のような法令改正がなされながらも、必ずしもトラブルを防止するのに十分とは言い切れません。

出資金使途の「開示」は強化されますが、たとえば分別管理義務(不特法第27条)の監視頻度・検証手法・違反時の制裁の抜本強化には、必ずしも踏み込んでいません。

現に、今年2月に本件とは別の業者が分別管理義務違反と資金の流用を理由に業務停止処分を受けています。

内部での資金流用などは、配当が回っている間は問題が表面化しにくく、発覚・処分されるのがどうしても事後的になってしまうというリスクは避けられません。

投資家としては、やはりしっかり自衛することが求められます。特に、次の点には注意すべきでしょう。

「許可がある=安全」ではない。 不特法の許可は適格性審査であって、元本や分配を保証しません

○配当が続いていることは安全の証明ではない。 むしろ、利益の出ていない事業から配当が出続けているなら、それは危険信号です。

○利回りの数字を鵜呑みにするのではなく、その根拠を必ず確認する。想定利回りの「算定根拠」「配当原資が何か」を説明できない商品は避けるべきです。

○資金は1つの事業者・商品に集中させない。分散こそ最大のリスク管理です。

不動産投資を検討される方は、「行政のお墨付き」や「これまで配当が続いてきた実績」に安心しきるのではなく、商品の中身、資金の使途、利回りの根拠を自ら確認する姿勢を持っていただきたいと思います。

(弁護士・関口郷思)