行動生態学・脳科学・文化心理学・生命倫理学の専門家の意見に耳を傾けよ ―LGBT理解増進法「基本計画」に関する記者会見で私が強調したこと―
●記者会見で語った「包括的性教育」に反対する理由
閣議決定されたLGBT理解増進法「基本計画」には、「理解増進施策の基本的考え方」(第3章)には次のように明記されている。
<取組を進めるに当たっては、様々な意見に耳を傾けながら、個々の状況において対応の在り方を模索することが求められる。異なる意見にも寛容に、自由な意見交換ができる機運の醸成に努めるとともに、幅広く共感を得ながら着実に理解を増進していくことが重要。>
この点を踏まえて、私は参議院議員会館で行った昨日の記者会見(朝日新聞、産経新聞、共同通信社、hitotsuna)で、以下の行動生態学・文化心理学・脳科学(性の分化研究)・ジェンダー研究・生命倫理学・生命誌研究の専門家からのヒアリングを行うように要請した。
さらに、「包括的性教育」に反対する理由について、
①道徳教育を全面否定する浅井春夫『包括的性教育』
②「包括的性教育」の歴史・思想的背景を詳述したクビー著『グローバル性革命』
③ユネスコ編『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』「訳者あとがき」
④同ガイドの「まえがき」などの「過激な性教育」グループによる歪曲解釈がもたらす混乱
⑤「過激な性教育」全国実態調査を踏まえた中教審「性教育の歯止め規定」の撤廃、空洞化を目指し、「包括的性教育推進法」制定を目指す危険な動向
⑥「性は生物学的な性を意味すると結論付けた英最高裁、「性別は男女」のみと明記した米大統領令・スロバキア憲法改正
⑦全米に広がった親と学校の対立・訴訟
⑧性転換手術する18歳以下の急増した英国の教訓に学ぶ必要がある
などの視点から説明した。
また、文部科学省並びに内閣府に提出した「包括的性教育から子供たちを守る会」と「包括的性教育から子供たちを守る地方議員連盟」の陳情書は稿を改めて掲載したい。
いずれも村松裕美甲府市議会議員が代表で、私は顧問として記者会見に同席して補足説明をさせていただいた。
●注目すべき行動生態学者のジェンダー論批判
最も本質的な視点は、雌雄の「性」の縦軸の絶対的な「共通性」と、ジェンダーという後から作られた横軸の相対的な「多様性」を明確に区別する必要があるということである。
行動生態学者の総合研究大学院大学の長谷川真理子教授は著書『生き物をめぐる4つの「なぜ」』(集英社新書)において、
・「性の分化」
・「性差の発達要因」
・「性があることの究極要因」
・「性の起源と系統進化」
について詳述し、「性差は社会的に作られたものである」というジェンダー論について、次のように反論している。
<ジェンダーを作り上げてきた人間社会の歴史が仮に一万年あったとしても、有性生殖の歴史はそれよりもずっと長く、30億年の歴史を背負っているのです>
このように喝破し、雌雄の「性」の縦軸の絶対的な「共通性」と、ジェンダーという横軸の相対的な「多様性」を明確に区別している。
●長谷川三千子の痛烈な批判―「シシャモ」「ナポレオンフィッシュ」みたい
また、埼玉大学の長谷川三千子名誉教授は、日本教科書の道徳中学3年教科書に「もはや家族は『線』としてつながれることなく、個人の選択による『点』として家族は存在していくことになる」と明記され、図示されている点について、毎年秋に数万匹から数十万匹ものシシャモが海から川へ遡上して雌が「大量産卵」し、雄がその周囲で放精し受精させることによって天敵に食べられる危険が高い中で生き残る「捕食者飽和」と呼ばれる戦略を想起したと皮肉った。
「性はグラデ―ション」という記述が多くの教科書に見られることについては、雄がいなくなると雌が雄に「性転換」するナポレオンフィッシュみたいですね、と皮肉った。
●新井康允「ジェンダーフリ―思想は脳科学から見れば噴飯物」
神経解剖学・脳の性分化研究の第一人者として『脳の性分化』『男脳と女脳はこんなに違う』などの著書のある順天堂大学の新井康允教授はヒューマン・アニマル・ボンド研究会における私との対談において「ジェンダーフリー思想は脳科学から見ると噴飯物」と一喝した。
さらに、ニューヨーク大学のジョナサン・ハイト教授は『しあわせ仮説』において、次のように指摘している。
「多様性とはコレストロールのようなものである。善玉と悪玉があり、おそらく両方を最大化しようとすべきではないのである。…多様性の称賛は分裂を促進する…多くを賛美することは、一つを強化する政策によってバランスをとるべきである」
つまり、縦軸の共通性と横軸の多様性の調和、バランスを図る必要があるということである。
●内田由紀子「協調性の上に成立する独立性」が「日本社会に根差したウェルビーイング」の土台―ベストセラー1位のアニメ漫画『武士道心理学』
文化心理学者の京都大学大学院の内田由紀子教授は、「日本人の心の在り方は独立性と協調性の『2階建ての家』」モデルという比喩を用いて説明している。
家の1階が長く日本社会に根差した「協調性」の基礎部分であり、周囲との調和を大切にし、他人に迷惑をかけず集団との関係を重視する「日本社会に根差したウェルビーイング」の土台である。
「和をもって貴しとなす」「出る杭は打たれる」「お互い様」といった価値観である。
2階の「独立性」(個としての自律)は「個人の自由・選択」を重視する。
欧米型の独立性は
①自分の意見をはっきり言う
②他人と違うことを誇りに思う
③自己主張する
という特徴である。
それに対して、日本型の独立性は、
①自分の役割を果たす
②人に頼られながら自立する
③集団の中で責任を果たす
④周囲との関係を壊さずに個性を発揮する
という形で現れる。
一言で言えば、「他者から切り離された個の自立」ではなく、「人とのつながりの中で自立する個人」であり、「包括的主体性」が日本型の独立性の特徴と言える。
欧米では「独立した個人」が「他者と協力する」が、日本では「他者との関係」の中で自立するという順序になるのである。
例えば、武士道では「義」「礼」「責任」「忠義」などが重視されるが、武士は主君や共同体との関係を重んじながら、その中で自らの信念を貫くことが求められた。
一昨日発売されたアニメ漫画『武士道心理学BUSHIDO MIND』でもこの点を強調している。
かつて小林よしのりが「おぼっちゃまくんのお父さん」の比喩で私を初めて漫画化した折の漫画(下図)に比べると、高齢化しているがハンサムに描かれている。AIが作成するとこうなるのかと驚いた。
話が横道にそれたが、これはまさに内田教授のいう「協調性の上に成立する独立性」といえる。
つまり、内田教授の主張の核心は、日本人は独立性が低いのではなく、独立性の育ち方と表現の仕方が欧米とは異なるということである。
それ故に、第4期教育振興計画に明記された「日本社会に根差したウェルビーイング」の向上のためには、「自由選択・自己決定・自己主張」できる子供を育てるだけでなく、「多様な他者との関係の中で自ら責任を持ち、判断して行動できる」子供を育てることが重要な課題となる。
「独立性」と「協調性」は両立可能であり、「対話」によって「共に変わる」場の構築が教育実践の課題といえる。
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