なぜ維持できる?一杯「290円」の博多ラーメン 値上げの波に逆らう“はかたや”のこだわり
実際、業績は右肩上がりだ。コロナ前は月800万円程度だった堅粕店の売り上げは、現在約1400万円となった。7月には糸島に出店。さらに東京への進出も計画する。もちろん290円はそのままという。 □ □ 堅粕店の裏側をのぞくと、随所に工夫があった。
麺のゆで時間はバリカタ15秒、カタ30秒、普通は1分。山中店長は「食券を受け取って3分以内が基準」と言う。一般的な店ではざるを振って湯切りをするが、ここではざるを置いたまま麺の自重で湯を切る。その間にスープを注ぐことで、より効率的なオペレーションが可能になるのだ。また、2玉ずつしか麺をゆでないのにも理由がある。同時にもっとゆでることもできるが、過度に調理に集中するとホールの状況を把握しにくくなるためである。 堅粕店では厨房(ちゅうぼう)の奥で豚骨を炊いているが、こまめにふたをすることで蒸発によるロスも減らしている。「人は原価が上がれば値段を上げるのが当たり前と思っているけど、僕は『なんで?』って思う。まず企業努力をしようとね」と澄川社長は語る。
ラーメン業界には「千円の壁」があり、その価格を突破する店も出始めている。それでも逆張りをすることについて澄川社長は「根本が違う」と言う。 個人店は、価格を上げてでも味の評価を高め、遠方からも客を呼び込む。ただ、その頻度は年に数回でもいい。「でもチェーン店は違うと考えます。値段を気にせず近所の人たちが足しげく通ってもらう店にならないといけない」
はかたやにとっての290円とは、単なる価格ではない。多くの人に日常的に通ってもらうための存在理由そのものである。 福岡市博多区堅粕1の21の17。24時間営業、年中無休。
西日本新聞社