「セミのさなぎ、見たことある?」
そう聞かれると、多くの人が「ある」と答えるかもしれません。
でも実は、セミには蛹(さなぎ)の時期がありません。
夏になると、木の幹にしがみついて羽化している姿や、木に残った茶色い殻を見かけます。
あれは「さなぎ」や「さなぎの抜け殻」ではなく、地中で何年も暮らしていた幼虫が最後の脱皮を終えた「幼虫の抜け殻」です。
チョウやカブトムシは、幼虫から一度さなぎになり、そこから成虫へと姿を変えます。
一方、セミは卵から生まれた幼虫が地中で数年を過ごし、地上へ出て最後の脱皮をすると、そのまま成虫になります。
つまり、セミには「さなぎ」の時期そのものが存在しません。
もちろん、「子どもの頃にセミのさなぎを見た」という人が多いのも無理はありません。羽化直前の幼虫を「さなぎ」と呼ぶことは昔から珍しくなく、日常会話では今でもよく使われている表現だからです。
でも、生き物のことを少し深く知ると、「当たり前」だと思っていた景色が少し違って見えてきます。
知識は答えを増やすものではなく、見えるものを増やしてくれるのかもしれません。