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 なぜ、必要なのか。さっぱり分からない。

 日本の国旗を侮辱する目的で傷つける行為を処罰する「日本国国章損壊罪」(国旗損壊罪)創設に向け、自民党が協議に入った。

 自民と日本維新の会は、連立合意に掲げており、今国会に法案を提出する構えだ。参政党も、同趣旨の刑法改正案を国会に提出した。

 国旗損壊への処罰は、高市早苗首相がかねて意欲を示してきた。自民が野党時代の2012年、自ら主導して議員立法で法案を出したが廃案になり、21年にも提出に動いた経緯がある。

 理由に挙げるのが、刑法には外国旗を燃やしたり、汚したりした人を罰する条文があるが、日本国旗に関して規定がなく、バランスがとれていないとの主張である。

 だが、外国旗の損壊を罰するのは、外交に影響を及ぼし、日本の国際的信用を損なう恐れがあるからだ。自民内にも「同列に扱うのは無理がある」と慎重論がある。

 そもそも、他人が所有する日の丸を傷つければ、器物損壊罪が適用される。

 日の丸を敬う人の気持ちは尊重されるべきだが、異なる価値観を持つ人に押しつけ、罰するのは見当違いである。

 危惧するのは、何が侮辱に当たり、誰が判断するのか、恣意(しい)的に運用される可能性である。

 例えば、政府への抗議の手段で用いる場合や、社会の固定概念を覆す狙いの芸術表現もある。そうした行為まで法に抵触するとなれば、表現活動は萎縮し、政治的な抑圧にもつながりかねない。

 国旗損壊への海外の対応はさまざまで、英国やカナダは法令に刑罰規定がない。米国は星条旗の冒瀆(ぼうとく)に罰則が設けられているが、連邦最高裁が1989年、表現の自由を保障した憲法に反すると判決を示し、事実上無効化している。

 日本では、戦前の軍国主義や植民地支配に使われた歴史から、日の丸を否定的に捉える人もいる。

 99年の国旗国歌法制定の際は、損壊行為の処罰化を見送った。「国家の威信の保護のあり方として刑罰をもって強制することが適当か、根本的な問題がある」とした当時の政府見解は当然といえよう。

 高市政権は、スパイ防止法や情報機関の強化など、安全保障を口実に、国民の権利制限や監視に前のめりな姿勢が目につく。

 憲法が保障する内心や表現の自由に権力が踏み込めば、民主主義の基盤をも揺るがす。そんな危うさをはらむ立法は断念すべきだ。