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「結局誰も守れなかった」佐藤二朗ハラスメント報道への《フジテレビ2度目の声明文》あまりに多すぎた問題点

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(画像:『夫婦別姓刑事』火9【公式】フジテレビより)
  • 浦上 早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員(コミュニケーションマネジメント)

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フジテレビのドラマ『夫婦別姓刑事』の撮影現場で生じた、佐藤二朗と橋本愛のハラスメントトラブル。フジテレビが7月7日に2回目の声明を発表したものの、翌8日には『週刊新潮』が佐藤の独占インタビューを、『週刊文春』が第2弾の記事を配信し、週刊誌による代理戦争の様相を呈している。SNS上では「どちらが悪いか」という論争や誹謗中傷が収束する気配がない。

佐藤、橋本、フジの三者に損しかない迷走劇は、倒れゆくドミノを後から追いかけるような判断ミスの積み重ねが招いた人災と言える。

初動の失敗が不信招く

今回の問題の入り口は、橋本の身体接触に関する配慮事項を相手役である佐藤に伝えるべきかについて、舵取り役が不在だったことにある。

フジの声明によると、橋本側は共有の可否を「フジに委ねる」とし、フジは佐藤の事務所の意向を尊重して本人への説明を見送った。結果、佐藤は蚊帳の外に置かれた。

フジテレビへの懸念を表明した佐藤二朗(写真:佐藤二朗Xより引用)

橋本の事務所から「配慮事項を伝えてほしい」と要請を受けたフジのプロデューサーが、なぜ事前に伝わらなかったかを説明し、積極的に「接触の線引き」を取り決めるよう動いていれば、佐藤が橋本に繰り返し「制限があるなら事前に言うべきだ」と主張することもなかったかもしれない。

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フジの2回目の声明には「男性俳優から、演技する上で、どの範囲の身体的接触であれば問題がないのかについて女性俳優本人に直接確認したいとの申し出があったため、当社プロデューサーは、女性俳優の所属事務所社長も交えた形で協議することを提案」とある。この一文からは、橋本の「事情」に関するプロデューサーの説明が終始あいまいだったことがうかがえる。プライバシーに踏み込む事案で躊躇したのかもしれないが、一連のあいまいさが双方の解釈や受け止め方の違いを広げたと言える。

フジテレビ2回目の声明文の一部

佐藤が楽屋を訪れて発言した内容や態様については、フジと佐藤事務所で評価が分かれている。気になるのは、4月8日の2度目の訪問について、佐藤が「女性俳優とのわだかまりを解消したいと考えた」と説明していることだ。つまりその時点で、佐藤と橋本の関係はぎくしゃくしていたのだろう。

フジはその前に、橋本が佐藤の距離の近さに不安を感じていることを把握していた。橋本のトラウマも考慮すれば、佐藤が初めて楽屋を訪問した時点で、以後独断で動かないよう対処すべきだっただろう。

文春のダブルスタンダード

2つ目の問題は、フジの情報管理の甘さである。

筆者は7月6日公開の記事(「あまりにも他人事すぎでは?」文春の"佐藤二朗ハラスメント報道"延焼を広げた《フジテレビ声明文》への強烈な違和感)で、文春が1日に配信した記事が日付入りでトラブルを詳細に紹介していることに触れ、「複数の番組スタッフ、そして佐藤、橋本に近い事情をよく知る人物が裏付けのある情報を流している」と指摘した。

長年取材している経験から、報告書のような「記録」を入手していると確信したからだ。フジテレビも、「証拠は握っていますよ」という文春のメッセージを読み取れたはずである。

にもかかわらず、7月2日に出されたフジの1回目の声明は、橋本を擁護し、誹謗中傷を諫める内容に終始し、自社の責任には一切触れないまま、「遺憾」という他人事のような言葉で片付けた。

案の定、8日に配信された第2弾の記事で、フジテレビが5月25日に佐藤の事務所に送った内部文書を、文春が入手していることが明かされた。フジの2回目の声明には、「男性俳優が本件に関する情報を口外する懸念を抱いたことから、5月25日になって、男性俳優の所属事務所に対し、男性俳優が撮影終了後もプライバシーに関する情報の開示、誹謗中傷その他相手方の名誉又は人格を害する言動を行わないよう、文書により申し入れを行いました」とある。

日付が一致することから、フジが佐藤を警戒し、情報を漏らさぬよう申し入れた内部文書が、フジ側から流出し文春の手に渡った可能性が高い。特大ブーメランとしか言いようがない。

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フジが的外れな情報管理を行った結果、「身内」から情報が漏れ、佐藤の事務所が長文の声明を出す大義名分を与えてしまった。佐藤側は飛んできた火の粉を振り払うためにそうせざるを得なかったのだろうが、これが橋本への激しい誹謗中傷につながった面は否めない。

さらに文春の続報には、佐藤が俳優仲間3人に橋本の事情を相談していたとの記載がある。これはフジの2回目の声明文にあった、佐藤が橋本に「男性俳優の友人にも相談したところ友人も女性俳優の方がおかしいという意見であった」と告げた件を指していると思われる。

佐藤が橋本のプライバシーに関わる内容を相談したこと自体は適切とは言えない。ただ、第2弾記事でそれを暴露した文春の狙いは、世間の注目を集め「どちらが悪いか」論争を長引かせることにあり、公共性は乏しい。

佐藤が仲間に橋本の事情を伝えたことを糾弾する文春が、一方で「世間」に対してそれを広く知らせているのは、明らかなダブルスタンダードだ。橋本側が積極的にリークしたわけではないにしても、報道への同意があったのではないかと、世間に疑念を抱かせる結果にもなっている。

「深刻なハラスメント」なのに撮影続行

佐藤の行為が弁護士によって「ハラスメント」と評価された後のフジの対応も矛盾だらけだ。

文春の報道によると、フジテレビは佐藤の楽屋での言動について、佐藤の事務所に「深刻なハラスメントに該当すると認識しております。また、このことについては、橋本様に過失はないと認識しております」と通達している。

(画像:『夫婦別姓刑事』火9【公式】フジテレビより)

フジは2回目の声明で、弁護士の見解を受けて撮影中止も検討したが、橋本の強い責任感からの希望で撮影を続行したと説明した。

ハラスメントはそれ自体深刻である上に、さらに「深刻な」とかぶせて強調するほどであれば、夫婦役として近い距離で接する状況は、相当な負担になっている可能性がある。本人が「責任感から」続行を希望しているとしても、責任感で仕事を全うしようとすること自体がリスクだと考えなかったのだろうか。

橋本の事情を考えれば、撮影続行の可否については医療の専門家の判断も仰ぐべきだったと思うが、フジの声明にはそのような記載はない。

佐藤にとっても、ハラスメントの加害者として扱われ、相手との直接のやり取りを制限されながら、夫婦役として演技を続行するというのは耐え難い状況で、「罰ゲーム」とも言える。

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フジの声明では、撮影を続行した理由として、佐藤が降板の意向を示しつつも、その都度「思い直すなどした」ためとあるが、橋本、佐藤双方に「撮影中止になったら大きな迷惑がかかる」というプレッシャーもあっただろう。

フジは中居正広氏の事案の教訓から、ハラスメント対策を最優先とする姿勢を示す一方で、現場の矛盾を放置し、ひずみを大きくしたのではないか。

守った結果の2次被害

本件において、本来ジャッジする十分な材料も権限もない外野が「どちらが悪いか」の泥仕合をやる展開を招いたのは、フジが当事者をプロレスのリングに投げ入れ、文春がゴングを鳴らしたからにほかならない。

筆者は橋本、佐藤の双方ともただただ気の毒だと思う。橋本については、フジと文春が明らかに橋本寄りの立場を取っていることが、かえって2次被害や誹謗中傷を招いている面があり、いまこの状況で何か発言しても火に油を注ぐだけだろう。佐藤は反省すべき点がありそうだが、本来は当事者間で収められる話だったのではないか。

フジは自身も含めて、誰のことも守れなかった。そして残念ながら、この状況が落ち着くには、次のスキャンダルが世間の関心をさらっていくのを待つしかなさそうだ。

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