体育で「男女一緒に着替え」なぜいまだに? 保護者の声で改善の例も
小学校のプール授業などの体育授業で、男女で着替えるスペースを分けていない学校が多数あることが、朝日新聞の調査で判明した。国は配慮を求めるが、なぜいまだに、男女一緒に着替えをせざるをえないのか。
東京都板橋区の女子生徒(14)は、小1の夏を今も思い出す。通っていた埼玉県内の小学校は、プール授業前の着替えが男女同室だった。
巻きタオルを使って水着に着替えていたが、下着を脱ぐときに足の指にひっかかり、転倒。落ちた下着を急いでプールバッグに入れた。
記事のポイント
①「着替えが嫌で体育嫌い」 子どもの声は
②「男女一緒に着替え」自治体が挙げた理由
③予算かけずに工夫、保護者の声で改善例も
④「同性同士でも嫌」な子への目配りは
(記事の最後では全国74市区の自治体別の調査結果がご覧になれます)
放課後、男子たちにパンツの色をからかわれ、学童保育の部屋で泣いてしまった。小2で引っ越した先の小学校では、途中から男女別になった。「見られないようにって焦らなくていいし、安心して着替えができた」
この春、小1になった大阪府の男子児童(7)の言葉に、母親(29)は驚いた。「体育が嫌い」。もともとスポーツ好きで、体格にも恵まれている。理由を聞くと、「着替えが一緒で嫌やから」と言った。
プール授業を含め、体育の前の着替えは男女同室。教室の半分に男子、もう半分に女子が移動し、仕切りも何もない中、男子と女子が互いに背を向けて着替えるよう言われるという。巻きタオルは使うものの、着替えられる時間は短く、焦る。本人は「(異性に)裸やパンツを見られるのが嫌。別の部屋に分けてほしい」と話す。
学校側からは近年児童数が急増し部屋が足りないと聞いたが、母親は「女の子はもちろん、男の子でも嫌な子はいる。うっかり見てしまったり触れてしまったりと加害側に回る可能性がある場面は作らないでほしい」と願う。
「男女一緒に着替え」自治体が挙げた理由は
朝日新聞が県庁所在地など主要74市区の教育委員会へ調査したところ、着替える場所が「小1~2では分かれていない学校がある」と答えたのは25市区(34%)。場所や時間のなさを挙げる自治体が相次いだ。また、小1~2はまだ1人での着替えが難しい子もいることから、「男子と女子それぞれに付き添う男性と女性の教員が足りない」(長野市、宮崎市)という理由も挙がった。
さらに、「小3以降も分かれていない学校がある」自治体は10市区(14%)あった。理由は、「近くに空き教室がなく、遠くまで移動すると授業時間が足りなくなる」(長崎市)などだった。
熊本市は、92校中53校で、男女一緒に着替えている学年があり、うち13校では小3でも同じスペースで着替えていた。朝日新聞の調査を機に実態を把握したという。市教委の担当者は「カーテンで仕切るなどの方法について研修会などでこれまで話してきたが、改めて周知したい」と話した。
予算かけずに工夫する例も
一方で、「全校・全学年で分かれている」と答えたのは30市区(41%)。予算をかけずに工夫する例もみられた。
和歌山市では、同じ教室でも男女で入れ替えて着替えている。また、岐阜市と札幌市では、プール以外の体育がある日は体育着を着て登校しているといい、着替えが不要だ。
現場の意識も変化している。
東京都内の公立小に勤める30代の男性教員は「1、2年生は教員の目がないと時間内に着替えるのは難しいので、男子は男性教員、女子は女性教員がみるようにしている」と話す。その学年に同性の先生がいなければ、呼んでくるという。「女子の着替えスペースには絶対に立ち寄らない。子どもには、着替えの場に異性がいることを普通だと思ってほしくない」
「同性同士でも嫌」な子へも目配りを
保護者の声から、改善された例もある。
東京都練馬区では、保護者から「低学年から男女で分けてほしい」という声が相次いでいた。2021年と24年に区議会でも改善を求める質問があった。教委の担当者は「5年ほど前までは教員らも、低学年は担任の目がある所で皆同じ教室で着替えなければいけないという感覚だった」と説明する。現在では全校、全学年で男女別の着替えとなっている。体育は複数クラス合同が多いため、教室を分けたりして対応してきたという。
アンケートでは、性的少数者などの子への配慮の取り組みについても尋ねた。本人や保護者からの相談があれば、別室で個別に対応していると回答する自治体が相次いだ。
埼玉大の田代美江子教授(ジェンダー教育学)は、「男女で分けることだけに着目すると、そこから性別違和の子や、女子同士、男子同士でも一緒に着替えたくない子どもがとりこぼされてしまう」と指摘する。「自分の体を大切に思い、不快なことを訴える権利や、一人一人のプライベートな空間が大切にされなければいけない」
◇
<おことわり>当初配信した記事で、徳島市は、「全校・全学年で男女の更衣スペースが分かれている」と回答した自治体に含めていましたが、配信後、「分けるよう指導しているが、小学1~2年では分かれていない学校がある」とアンケートの回答を修正しました。これに伴い、記事中の各箇所の数値を修正しました。
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- 太田啓子弁護士視点
私が性的尊厳やそれを侵害する性暴力について考えるようになったのは、思えば、学校という場において、生徒である自分たちの性的尊厳が軽んじられ雑に扱われていると感じてきたことがとても大きな背景だ。子どもの時は言語化できていなかった苦痛を今言語化するならば、性的尊厳を軽んじられるということは、人としてないがしろにされていることだ、と感じていた。 私は小学生の時から、記事にあるような男女同室着替えも本当に嫌だったし(いまだにこんなにあるとはため息が出る)、下着のパンツと同じ形のブルマを体育の授業ではくのも心底嫌だった。今はブルマ着用はほとんどなくなっているようでよかったが、でもこれは生徒の性的プライバシーへの配慮からというより、ブルマに性的記号を付されるなどの社会状況を背景に、盗撮被害などが増えたことが大きいと思うが。小学校6年生にもなっていたのに身体測定の時に下着のパンツ1枚で並ばされ、男性の担任がそこにいたことも強い嫌悪感とともに忘れられない。 性的プライバシーへの配慮は、人を尊重するための基本であり、それをないがしろにすることは子どもに対してもあってはならないことだ。むしろ、性的プライバシーはこの程度に雑に扱われても我慢しなくてはならないという負の教育を学校がしてしまっていることにさえ、なると思う。 場所の制約があっても、記事にあるように様々な工夫で配慮は可能だ。田代美江子教授も的確に指摘するように、同性どうしであれ他人と同室で着替えることに抵抗がある子どももいることへの配慮も必要だ。教育にかかわるすべての人にこのテーマはよく考えてほしいし、改善が必要な状況があるなら早急に対策されるべきだと思う
2026年7月7日 09:57