VFA-01 TIPS 初段カスコードブートストラップは無いほうが音が良い?
VFA-01基板は最初期の基板以降、カスコードブートストラップ回路を追加しています。もちろんRev2基板にも搭載しています。
下図中のピンク色で塗った部分がカスコードブートストラップ回路です。
カスコードブートストラップ回路には以下の利点があります。
■■■ 利点1 ■■■
・高い電源電圧のアンプにJFETが使えるようになる。
JFETの耐圧は絶対最大定格で40Vから50V程度です。 しかしメーカー製のオーディオアンプは8Ω100Wや120Wなど謳うモデルが殆どで、電圧増幅段の電源電圧は±50Vを超えるのが普通です。 時には±80Vに達します。
そういう時はカスコード回路でJFETにかかる電圧を抑えるのが常套手段です。
■■■ 利点2 ■■■
・カスコード回路を追加することで初段の電圧ゲインがUPする。
NFB量が増えるので歪率を低減する効果があります。
■■■ 利点3 ■■■
・JFETのVdsを一定に保つことで帰還容量(Crss)のミラー効果をなくして高域特性を伸ばす。
高域までフィードバックをかけられるため、高域側の歪率を低減する効果が狙えます。
■■■ 利点4 ■■■
・JFETのゲートリーク電流の増加を防ぐことで、差動入力の入力抵抗の差による出力オフセットを低減する。
JFET入力回路の特権として入力バイアス電流=ゲートリーク電流の小ささがあるのですが、ゲートリーク電流はVds電圧に大きく依存しています。
これは2SK170のデータシートから抜粋しました。 Vdsが2.5Vほど上昇すると1桁ゲートリーク電流が増えてきます。5V上昇すると2桁増える割合です。 あまり載っていることはないのですが、JFET全般にこのような特性になっていると予想されます。
ゲートリーク電流が小さいと+入力と-入力の入力抵抗値の差を(10倍や100倍など)許容できたりします。
これはDUOベータ回路での一例です。 AC帰還部は赤線で囲ったR3,R4で、C1(フィルムコンが使える容量というのが音質的にミソ)を通して-入力端子へ帰還させています。DC帰還はR5を通して100%帰還しています。2つの帰還があるのでDUOという名称で呼ぶことが多いです。ベータは帰還回路のことを指します。
ゲートリーク電流が非常に小さい場合、R2:R5のバランスが崩れていても出力にオフセットが生じにくいのです。この回路の場合は、カップリングコンデンサを付けていないので入力抵抗のR1:R5(1kΩ:1MΩ)とのバランスになります。
Vds=8V、Id=3mAという条件でゲートリークのグラフをみると、ゲートリーク電流=約1.5pAなので、
R1両端電圧=1kΩ x 1.5pA = 1.5nV
R5両端電圧=1MΩ x 1.5pA = 1.5uV
と誤差のような電圧しか発生していません。
Vds=18V、Id=3mAという条件ではゲートリーク電流=約7nAなので、
R1両端電圧=1kΩ x 7nA = 7uV
R5両端電圧=1MΩ x 7nA = 7mV
となり、まだオフセット調整できなくもありませんがアンプのゲインが高いと温度ドリフトでバランスが少し崩れてきそうです。
ということでゲートリーク電流を抑えるためにもカスコードブートストラップが一役買っている訳です。
こうして列挙すると利点が多いですね。
ただし、
利点があれば欠点もあるというのが電子回路の世界です。
■■■ 欠点1 ■■■
・信号が通るデバイスが増えてしまう。
アンプ回路の初段は音へ影響が大きい部分です。そこに、もし必要のない素子があったとしたらどうでしょうか? 後で深堀りしていきます。
■■■ 欠点2 ■■■
・電源ラインからの電流が初段差動部へ混入する。
アンプの電源にはリップル電圧(電源整流に伴う100Hzの変動)が載っていたり、出力電力に振られた電圧変動があります。 VFA-01では定電流素子を使うことで極力影響を受けないようにしていますが、ゼロではありません。
また抵抗が発するジョンソンノイズや定電流素子が発するノイズも存在します。それらが初段差動部につながっていると考えると、ない方が良いのでは? と思う事も間違いではありません。
という訳で、カスコードブートストラップを外してみたのが、音ン場デモの前日の夜。
この時の記事には書きませんでしたが、透明感が増して見通しのよい音に変化しました。
カスコードブートストラップを外すには、下の写真のようにD50、R50、C50(裏面)、Q50、Q51を外して、
Q50、Q51のコレクタ-エミッタ間をショートします。
部品の外すのはニッパーでリードを切ってしまうのが手っ取り早いです。
※注意点
カスコードブートストラップを外すにはひとつだけ条件があります。
電源電圧は±20V程度を上限とすること。 です。
JFETである2SK2145のVgdsの最大定格は50V(2SK170は40V)ですが、故障させないためにディレーティングする必要があります。 JFETに印加される電圧は瞬間的でも25Vから30Vを上限にしておくのが望ましいです。
またゲートリーク電流もすごい勢いで増えてしまうことを考慮する必要があります。2SK170ではVds = 20V時にゲートリーク電流が10nA(0.01uA)を超えてきています。
VFA-01のR2が100kΩですので1mVがゲートリーク電流によって発生することになります。 アンプの増幅動作により約22倍(27dB)されるので22mV相当のオフセット電圧が発生します。
DCオフセット調整により解消できますが、ドリフトしやすくなることは頭の片隅に置いとくべきです。 カップリングコンデンサありで、電源ONから30分で10~15mVくらいドリフトするようになりました。(問題のない範囲です)
音質変化
あくまでも個人的な感想ですが、カスコードブートストラップありと比較すると、色ノリが増して立体感をより感じるようになりました。 声がより遠くから透き通って聴こえてくるような雰囲気。 ベールを1枚剥がして空間が鮮明に見えるようになりました。
この音質の変化は素子数の削減による効果と、ノイズ混入低減による変化なのかは何とも証明のしようがありません。理論的にはNFB量が少し減るため、ひずみ率も悪化していると考えられます。
音の変化は決して大きくはありませんが、もし、VFA-01の音にもう少し鮮やかさが欲しい、透明感が欲しいと感じているなら外してみるのもアリだと思います。
ここにきて2SK2145の「新規設計非推奨」が出てしまいました。
東芝のディスクリート部品も終わりが近づいてきているようです。
東芝のNANDメモリ部門を独立させたKIOXIAは、何やらAI需要で大変盛り上がって会長の報酬が44億円とニュースに出ていましたが、残された半導体部門は厳しいのかもしれませんね。
■■■ まとめ ■■■
・VFA-01を使っていて電源電圧が±20V以下なら、カスコードブートストラップ回路を外して音質向上が期待できる。
・初段回路をシンプルにするメリットはありそう。
・東芝のディスクリートトランジスタ、JFETは早めに確保しておく。
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コメント
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たかじんさん
興味深い記事をありがとうございます。
手元に、VFA-01 基板がステレオ2セット分あるので、何かの機会にチャレンジしたいと思います。
追伸: 現況、真空管式 CSPP アンプが宿題になっているのですが、Circletron を FET で作れないかなぁと考え始めています。 真空管でOTLは厳しいので。
投稿: n'Guin | 2026年6月28日 (日) 14時20分
n'Guin さん
BTLは、また別の挙動が起きる可能性もあるので、慎重に、、、というか安定して動いているので触らない方が良いかもしれません。
こんな記事を書いて置いて・・・ですが(笑)
故上條さんのwebサイトでCSPP アンプが掲載されていて、YAMAHAの回路っぽいなっとは思っていました。
フローティング電源を2系統使うため、ステレオでは4系統のフローティング電源が必要となり面倒くさそうだな。という感想でした。 ただ、パワートランジスタやPch MOSFETが無くてもNch MOSFETだけで構成できる点など、メリットもありそうです。
https://www.ne.jp/asahi/evo/amp/2sk183cspp/rep.htm
今見ても変態的なアンプで手が出せません・・・
投稿: たかじん | 2026年6月28日 (日) 16時48分
N-MOSのサークロトロンなら、以下のサイトにありますよ。
(https://www.passdiy.com/gallery/amplifiers/build-the-amazing-fet-circlotron)
※外国のサイトのリンクはそのまま貼れないようなのでカッコを入れています。
かのネルソン・パス氏に関係するサイトのようです。
1回路あたりたった4石で驚きの性能です。ただし、計4つのフローティング電源が必要、一種のバランス回路なのでアンバランス入力の場合は変換回路が必要になるなどちょっとハードルは高いですがチャレンジする価値はあるかも・・・です。
投稿: TOMCAT | 2026年7月 2日 (木) 19時42分
TOMCAT さん
情報ありがとうございます。 ネルソンさん、こんなアンプを作っていたのですね。
2SJ74を前段に使って、超シンプルなアンプ。 凄いですね。
いま、イサハヤ電子でPch JFETを作っているので、2SJ74が無くても秋月で売っている部品で作れそうな気がしてきました。
投稿: たかじん | 2026年7月 2日 (木) 23時58分