京都大学の卓越大認定決定のニュース、とても複雑な思いで見ています。
5月以降、スローニュースでJIP論文の研究不正問題を報じてきました。単に研究不正があったという内容ではなく、大学の研究機関としてのガバナンスに関する下記のさまざまな問題を提示しました。
・JIPが創薬シーズであることを示す最も重要な実験に明らかな瑕疵があるのに、それを公表版の調査結果に記さなかった(本来なら改ざんと認定されるべき瑕疵ですが、仮に不正と認定できなかったとしても、論文の信頼性に大きく関わる内容として公表すべきでした)
・上記の問題で、内部報告書によれば「論⽂上で基準が設けられており、これに該当しないマウ スを解析の対象から除去していたことが判明した」などとして不正ではないと判定したが、該当する記述は論文にはなかった
・上記の問題を含む複数の疑義について科学的かつ公正な調査を尽くしたとは言えないのにも関わらず、唯一認定した改ざんは論文全体の主旨に影響しない、という見解を示した
・告発者の博士研究員が被った不利益(通知時期から告発と関連があるとみられる雇い止めや、被告発者である小田裕香子教授から受けたハラスメントの可能性が高い行為)
・JIP論文の筆頭・責任著者である小田氏の本調査中の教授昇進
・不正が認定された図の本調査中の訂正
・調査委員会の人選に問題があったこと
京都大学はその後、目に見える対応は何もしていません。小田氏への処分は未公表でなされたのかどうかすら不明。告発者が受けた不利益に関する調査も進展なし。PubPeerで指摘されている数々の問題に対する小田氏からの回答もなし(京大は小田氏にPubPeer上で回答のコメントをさせると言っていました)。論文の訂正についても、現在はミスによる訂正であるかのように書かれていますが、研究不正による訂正に変更すると言っていたのに、オンライン上の論文のページを見る限り文言の修正はなされていません(もっとも、研究不正をしても論文の撤回ではなく「訂正」で済むと考えていること自体が変な話なのですが)。
こうした問題を放置する大学を国はなぜ卓越大に認定するのか、理解に苦しみます。
たった一報の論文の問題と思われるかもしれませんが、研究の公正性や信頼性、告発者の人権を軽視する大学で、本当に「卓越した」研究ができるのか、はなはだ疑問です。