流産や死産を理由に離職する女性は年間1万人を超え、その経済損失は466億円に上るとの試算を名古屋市立大などの研究チームがまとめたことが分かった。働く女性の約5人に1人が流産を経験し、5年以内に鬱病や不安障害になる女性も65%に上るとの調査結果もあるが、職場の理解や支援は不十分な実情がある。専門家は休暇制度の拡大や、職場復帰後の働き方の選択肢を広げるなど支援体制の強化を求めている。
調査は、平成29年9月~令和2年3月に名古屋市立大病院と同大医学部付属西部医療センターに来院した妊婦らを対象にアンケートを実施。流産歴や年収、健康状態などを質問し、現在の勤務状況について回答のあった1177人を分析した。
チームによると、流産経験者571人のうち、少なくとも9%の52人が流産を機に退職したと回答。52人の年収をもとに中央値の398万円を算出した。一般的な流産率の15%から、流産による退職者は年間約1万1700人、経済損失は総額466億円と推計した。
また、仕事やストレスによる流産への影響は明らかになっていないが、チームの過去の意識調査では「ストレスの多いできごと」や「長期にわたるストレス」が流産の原因と考える回答が多かった。同大産科婦人科の伴野千尋助教は「『仕事が妊娠に悪影響を与える』という考えが退職につながっている」と分析する。
全国労働組合総連合が令和7年、働く女性を対象に行った調査では約5人に1人が流産を経験していた。母体や精神的なケアが不可欠だが、労働基準法では妊娠12週未満の流産や死産の場合、産後休業(産休)の制度自体がない。
流産経験者らを支援する民間団体「iKizuku(イキヅク)」が、流産や死産経験のある働く女性271人を対象にした3年のアンケートでは、55%が当日または数日の休みで復職。妊娠12週以上でも胎児を亡くした女性の16%が産休を取得しておらず、その理由は「制度自体を知らなかった」が最も多かった。産休を取得した女性も約70%が休暇期間を不十分と回答しており、団体は休息不足も離職につながっているとみている。
伴野助教は「ほとんどの流産は母体に原因がないのに罪悪感を抱き、業務にまで支障を出すことはできないと無理をする女性もいる」と訴えている。