【時事】高市早苗 情報整理 Vol.1
実はこの前に20,000字くらいの記事を書いていたんですが、少しフラットではない感じがして没にしました。時間の無駄だったなぁ。まあ、この記事のプロトタイプVerにはなっていますが。
個別トピックを1個ずつ検証していきます。今のところ長すぎて、終わりが見えない…Vol.2で終わるのかどうか…。あと「あのトピックがないじゃん!チェリーピッキングすんな!」みたいな意見は知らん。思いつくもん片っ端からぶち込んだから、網羅はしてないし、Vol.2あたりで書く予定のものもあるしね。
なお、時系列順ではないのと肩書は当時のものという事で、そこはご了承ください。
01. Congressional Fellow
さて、安倍政権時代のお話ですが、高市氏に対して鳥越俊太郎氏が「経歴詐称している」と騒いでいたのをご存知の方も結構いらっしゃると思います。2016年の衆院選補選の時ですね。(当時のYahooニュース)「高市さんは議会立法調査官ではなく、見習い待遇で無給で未契約のフェロー。コピー取り程度、お茶くみ程度の役しかやってない」という内容ですね。高市氏は以前は「米国議会立法調査官」を経歴に使っていたのですが、正しくは「Congressional Fellow」という肩書だったとの事です。この疑惑は当時明確に否定されておられます。
01-01. そもそもCongressional Fellowって?
直訳ですと、Congressional(議会の)Fellow(仲間)って訳せばよいのでしょうか?Congressional Fellowは、議員事務所や委員会などに一定期間派遣され、調査・政策立案補助・法案準備などに携わる研修・実務参加型の制度です。配属先によって業務内容は異なります。これが「立法調査官」と翻訳されたのは「日本に類似のポジションが存在しない」が大きいかと思います。高市氏のブログ(現在削除済)の過去ページから確認してみましょう。Wayback Machineさんには今回もお世話になります。
米国連邦議会コングレッショナル・フェローとは
米国連邦議会の発行している資料によれば、コングレッショナル・フェローとは、一定の団体のスポンサーシップにより、米国連邦議会の議員事務所や委員会に派遣される制度です。フェローシップ・プログラムを提供しているAPSAやIEEE等の主要な団体によれば、プログラムは選抜が厳しく、議会にとって重要な役割を果たすものとして位置づけられています。フェローは、議員事務所や委員会において、立法のために必要な調査や分析等を行います。フェローは一般的に無給であるインターンシップとは異なるものです。
01-02. 翻訳の経緯
まあ、日本には存在しない肩書を「和訳」していた訳なのですが、誰がどういう意図で「立法調査官」と翻訳したのかを確認。
「肩書き」についての経緯
「立法調査官」という名称は、1989年に帰国後、雑誌への寄稿や出版の際に、Congressional Fellowでは読者は分かりにくいという編集者の要請から、「訳語」として使用されたものです。当時出演したTV番組等でも二次的に使用された例もあります。命名者は、評論家の桃井真氏であり、当時、松下政経塾の理事で、元NHK解説委員長であった緒方彰氏が米国における高市議員の仕事ぶりをよく知っておられることから同氏とも相談の上、考えていただいたものです。「立法調査官」という肩書きは、1993年から一切使用しておりません。このことは、当時から現在に至る高市議員のプロフィールを見れば明らかです。従って、公的な職での経歴として使用されたことはありません。
読者は分かりにくい言葉なので、編集者の要請で「訳語」として使用されたものとの事。ちなみに、命名した評論家の桃井真氏は、女優の桃井かおり氏のお父様との事です。
01-03. 過去の書籍で確認
高市さんの1989年の著書で「アズ・ア・タックスペイヤー」という書籍があり、そこで表紙に高市さんの肩書として「元米連邦議会立法調査官」と記載があります。出版社の意向というのはこのあたりの書籍にて「なんらかの日本人にイメージできる肩書が必要だった」という事情のようです。
多少の誤解が生じていましたが、若くして米国の立法の周辺スタッフとしての経験を積んでいるのは間違いないようです。当時の出版業界では、一般読者に伝わりやすい肩書が求められていた事情は理解できます。一方で、「官」という語が実際以上に公的な職務を連想させたとの批判もありました。言葉のイメージだと和訳の方が「法律に携わる小難しいお仕事」の響きがありますが。現在確認できる資料からは、少なくとも高市氏側は「読者向けの訳語だった」と説明していますし、あまり詐称の意思が読み取れるものとも言い難いですね。
01-04. 鳥越俊太郎氏の対応
これは鳥越氏からの公式回答はネット上から探すことはできなかったのですが、高市氏が記者に回答しておられました。
質問:相手からの対応はございますか。
回答:弁護士さん、またこれも鳥越さんの弁護士さんの方からでございましたけれども、長い文書ですけれども、撤回・修正するの もやぶさかではございませんといった文書は頂戴しましたから、今は、震災対応であったり、補選の最中でもありますので、こ れで何か事を荒立てるということも適切なことではないと思いましたから、ネットの削除要求ですとか、そういったことに真摯 にお応えいただけるとありがたいと思います。
一旦はここで幕引きになっている案件ではありますが、これには続きがあります。どうやって「Congressional Fellow」の座に就いたかも確認していきましょう。
02. 軍事問題の権威
Congressional Fellow関連の続きです。これも結構話題になっていました。
02-01. 発言ソースは?
これは元の雑誌を確認するのは不可能かな。1992年なので、WEB上でのアーカイブなどもなさそうですね。
’92年4月発行のファッション誌「CLASSY.」(光文社)に収録された「女であることに甘えずになんて意識しなくていいと思う」と題された4ページにわたる高市氏の単独インタビュー。記事内では高市氏の経歴として、大学卒業後に松下政経塾で学んだ後、《87年に渡米し、米民主党のパトリシア・シュローダー下院議員のもと、米連邦議会立法調査官として1年半勤務》と紹介されている。今回、注目されているのは、若き日の高市氏が、シュローダー議員の事務所で職を得るまでの経緯。インタビューの中で高市氏は、スタッフに志願する際、キャリアも実績もない中でシュローダー議員へどのようにアプローチしたかについて聞かれると、次のように回答している。
「私を雇ってくれと履歴書とかいろいろ書いたんだけど、私の英語力って大したことなかったから、その頃付き合ってた男がすっごく英語ができる男だったんで、ずいぶん添削してもらった(笑)。だいたい私、自分は日本の軍事問題の権威だって、ウソを書いたの」
自身の実績を実際以上にアピールした(日本の軍事問題の権威だって、ウソを書いたの)と本人が語っているので、その通りなのでしょう。まあ、もちろんその地位に飛び込むための誇張表現と見る向きもあれば、応募時の説明としては不適切だったと考える向きもあります。
03. 放送法関連第1ラウンド
これはなかなか長いお話になります。
03-01. 背景「文化芸術懇話会」
放送法の管轄省庁は総務省。安倍政権期は偏向報道が話題になった時期であり(まあ、辺野古転覆事件でもわかる通り、今もひどいけど)、公平を欠く、左派野党寄りの報道が多い、という印象をお持ちの方は多いかと。(興味がある方は「椿事件」も併せて知っておくといいかもですが、今回は主題からそれるので割愛)
まず、背景説明が必要かなと思います。2014〜2015年頃、第二次安倍政権では、集団的自衛権、安保法制、特定秘密保護法などをめぐってテレビ報道がかなり過熱していました。特に、TV朝日、TBS、報道ステーション、NEWS23などが政権批判的だとして、自民党内部および安倍政権の支持者の間で強い不満が高まっていました。
これについて、自民党の若手議員が立ち上げた勉強会「文化芸術懇話会」(代表:木原稔党青年局長)で「メディアの広告収入をなくすのが一番だ」という発言があったと報道されました。発言の主は大西英男議員です。「文化芸術懇話会」の講師には百田尚樹氏も名を連ねていて、「沖縄の二つの新聞はつぶさなあかん」という発言があったのがこの会合ですね。
この件はかなり問題化、厳重注意されたのは大西英男衆院議員、長尾敬衆院議員、井上貴博衆院議員の3人に「厳重注意および青年局長の役職停止」などの処分を行いました。谷垣さんも「国民の信頼を損なう」という趣旨の発言をしています。安倍総理も、野党議員の質問に「報道の自由は民主主義のまさに根幹をなすものであり、尊重されるのは当然で、報道の自由を尊重するというのは私の一貫した立場であるし、党としてもそうだ。その考え方は党内において徹底していく。今後は襟を正していく」と答弁。
03-02. 高市総務大臣の国会答弁
問題視された発言があったのは、第190回衆議院予算委員会の時です。奥野議員、NHK籾井会長、高市総務大臣のやりとりの要約を書いておきます。
【奥野議員の問題提起】
奥野氏はまず、古舘伊知郎、岸井成格、国谷裕子、大越健介など、政権に対して批判的なキャスターの交代が相次いでいることを指摘。その上で、自民党から番組への抗議、停波への言及、「放送法遵守を求める視聴者の会」などを挙げ、政権側の圧力で報道が萎縮しているのではないかと問題提起。
【政治的公平は番組単位か?】
奥野氏は、放送法4条の「政治的公平」について、一つ一つの番組で公平である必要があるのか?それとも放送局全体で判断するのか?と質問。
【籾井NHK会長の答弁】
籾井氏は「実務的には、一つ一つの番組で極力バランスを取る必要がある」と発言しましたが、併せて「全体でもバランスを取る考え方はある」とも述べました。
【奥野氏がさらに追及】
奥野氏は、「では、その公平かどうかは誰が判断するのか?」と質問。これに対し籾井氏は「最終的には視聴者」と答弁。奥野氏は「放送法で規律されるのは放送局側だ。なぜ視聴者判断なのか」と批判。
【高市答弁:法解釈説明】
奥野氏は、従来の政府解釈として、「政治的公平性は番組全体で判断する」だったはずだと指摘。しかし高市氏が、「極端な場合は個別番組でも問題になる」という“補充説明”をしたことを問題視。高市総務大臣は「解釈変更ではなく補充説明」だと主張。内容としては下記の通り。
例1:選挙期間中に特定候補だけを長時間扱う番組
例2:国論を二分する問題で、一方の見解だけを繰り返し長時間流す番組
こうした「極端なケース」は、政治的公平性を欠くと説明。
【高市答弁:停波問題へ】
奥野氏はさらに「その解釈だと、個別番組を理由に停波できるのでは?」と追及。高市氏は「放送法4条は単なる倫理規定ではなく、法規範性を持つ」と説明。さらに「行政指導しても全く改善されず、繰り返される場合に、
何の対応もしないとは約束できない」と答弁。これが「停波発言」として大炎上します。
【奥野氏の批判】
奥野氏は、総務大臣が恣意的に「偏向」と判断できてしまうと批判。さらに「政権批判番組が萎縮する。キャスター降板につながる」と主張しました。
【奥野氏の撤回要求、高市氏は撤回拒否】
奥野氏は「解釈を撤回してほしい」と求めましたが、高市氏は「撤回はいたしません」と明言。
【BPO問題】
奥野氏はさらに「BPO(放送倫理・番組向上機構)があるのだから、政府介入は不要ではないか」と主張。これに対し高市氏は「BPOは民間組織、総務省は行政として別役割」と説明しました。
高市総務大臣は、放送法4条の「政治的公平性」に著しく反し、かつ行政指導でも改善されない放送局については、最終的に電波停止命令を出す可能性を否定しなかったのです。これに対して「政府が放送内容を理由に停波をちらつかせるのは言論弾圧では?」「放送法4条は倫理規定であって、処分根拠ではない」と、ジャーナリスト、野党、放送関係者が強く反発。
03-03. 菅官房長官のフォロー
これをカバーしたのは菅官房長官でした。ここをカバーしたのが安倍総理ではなかったのは「総理本人がメディアへの行政介入について発言をする」が火に油を注ぐ形になるのを避けたかったのかなと思います。
菅氏のフォローのポイントは下記の通り。
・高市氏は新解釈を出したわけではない
・従来からの政府見解
・放送局の自主自律が基本
・一般論を言っただけ
これが安倍政権全体の「公式防御ライン」かな。
03-04. 過去の総務大臣の見解
補足的、資料的なものもせっかくなので置いておきます。これは個人ブログですが、筆者の方はBPOの委員長を務められている弁護士の小町谷育子氏。過去の答弁の抜粋をまとめてくれています。
麻生総務大臣、菅総務大臣などの記述もありますし、椿事件、過去の問題となった放送「発掘!あるある大事典Ⅱ」とか「クローズアップ現代」などの対応もここに記載されています。
高市氏が言いたかったことを整理すると、概ねこうです。
・極端な偏向を完全放置するわけにはいかない
・ただし実際には自主自律が基本
・放送法4条は法律である。したがって法規範性がある。
・法律としては業務停止規定も存在する
これは、行政法の理屈としてはちゃんと整合性があります。しかも「法規範性がある」自体は、民主党政権時代の答弁にも存在していました。そのため、高市氏や官邸側は「従来解釈の範囲内」という認識でした。批判されたポイントは「停波可能性を否定しなかった」こと。特に
・「何の対応もしないと約束するわけにはいかない」
・「将来にわたって可能性を否定できない」
これは法的には「一般論」でも、メディア側には「政権批判したら停波もあり得る」と受け止められました。
実際は過去にも停波そのものに「言及」した総務大臣はいました。
木下昌浩郵政省放送行政局長答弁
(1993年2月22日第126回国会衆議院逓信委員会会議録第4号)
「基本的な考え方は、先ほど申し上げましたように、放送事業者の自主規律ということでやっていくべきだというふうに思っております。ただいま放送法の仕組みの話としてでございますが、放送法の三条の二[注:現在の4条1項]におきまして「報道は事実をまげないですること」という規定がございますので、これに反する、事実を曲げて報道をしたということであれば、この放送法違反ということに相なるわけでございまして、それで形式論的にだけ申し上げますと、それが電波法76条において、この法律に違反した場合においては今おっしゃいましたような放送の電波の停波とかというような行政処分を行うことが法律上は可能になっているところでございます。しかしながら、冒頭申し上げましたように、やはり放送番組の適正化という点につきましては自律に基づくということを基本的な考え方としてやっていくべきであると思いますので、そういう点でこの解釈適用につきましては慎重であるべきというふうに考えます。」
菅義偉総務大臣答弁
(2007年3月20日第166回国会衆議院総務委員会会議録第4号)
※長いので前段割愛
今回このような「あるある大事典」で捏造が繰り返されたと。そういう中で私は、私どもは行政指導として再発防止策というものをそれぞれの放送事業者から受けていたわけでありますけれども、更に一歩進めまして、法的によってこの再発防止策というものは必要ではないかなというふうに、実は私は考えました。というのは、行政指導と罰則の間に余りにも開きがあるんですね。行政指導、私ども総務大臣としては厳重注意であります。しかし、その上はもう停波か免許取消ししかないわけでありますから、そこの間に再発防止策、自ら再発防止策を考えて、そして国民の皆さんにオープンにして約束してもらう、こういうことは私はあっていいのかなという、そういうことを考えまして、国民の電波を所管をする大臣として、そうしたことを再発防止策として今考えているというところであります。」
歴代の総務大臣の答弁で「停波の可能性」についての言及はこのような形です。木下氏と菅氏は「偏向やりすぎたら停波になるけど、それを避けるために自主的に頑張ろうね」というニュアンスなのですが、高市氏の場合は「停波の可能性は否定しない(=総務省が権限発動するかも)」というニュアンスで終わっているのです。「彼は不良だが、動物にやさしい」は肯定的ニュアンスを残して終わりますが「彼は動物にやさしいけど不良だ」は否定的ニュアンスを残します。「語順が違っているだけで従来の答弁と同じ」ではあるものの、受ける印象がかなり違ってくる訳です。
【なぜ歴代大臣は避けてきたのか?】
理由は単純で、憲法21条(表現の自由)に直結するからです。もし総務大臣が「偏向だから停波」を現実にやると「言論統制、検閲、報道圧力」などの問題になります。そのため歴代政権は「権限はあるが、使う前提では語らない」という姿勢だったのかなと。実際、上記の木下氏と菅氏の発言はまさにこの文脈ですね。「日本国憲法」は「放送法」よりも上位概念なので、表現の自由はなかなかに慎重な取り扱いを要求される性質があり、その上で高市総務大臣の答弁は、従来の政府答弁の幅を逸脱した形と捉える人も多かったです。高市発言問題の核心は、政府が「これは偏向報道だから停波」を簡単にやると憲法21条違反になり得てしまう点で、ここを過去の答弁では「避けてきた」のです。
メディアがやりたい放題で、罰則なしの厳重注意のみにとどまるのであれば、偏向報道は止まる事がないだろうし、見つかってもさほどお咎めなしという状況もよろしくないです。停波のペナルティは法で担保されているのだから高市発言はセーフではあります。が、確かに従来の大臣の慎重な「一線を踏み越えない答弁」のような慎重さとはニュアンスが異なるものになります。
03-05. その他留意ポイント
補足的に一応記載しておきます。
【放送法4条(政治的公平など)の違反判定は誰がやるの?】
一次判断は「放送局自身」、外部チェックとして「BPO、視聴者批判」最終的に「総務省」から司法判断を仰ぐ形。ただし「最終的に司法で確定した例」はありません。これがややこしいのは「一つの法律」では絞られない点でして、BPOは民間機関で行政機関ではない点など…。頭がこんがらがりますね。(ソース:放送法LINK、BPOLINK)
【罰則執行は誰が何をやるの?】
総務大臣が行政処分権限を持っています。具体的には「行政指導、業務停止命令、電波停止」など。ただし、放送法4条違反だけを理由に実際に停波した例はありません。
【放送法4条】
なぜややこしいのかの理由は、放送法4条が「自主自律前提」だからです。
放送法4条は「政治的公平、事実を曲げない、多角的論点」などを定めています。しかし戦後日本では「政府が内容を監督すると危険」という考えが強く、長年「放送局が自主的に守るもの」とされてきました。
【なぜ放送だけ特別扱いされるのか?】
ここが重要です。新聞やネットと違い、放送は「電波」という有限資源を使います。その性質には「誰でも無限に参入できない」や「周波数が割り当てられる」があるため、一定の公共性規制が認められてきました。ここが新聞媒体やWEBメディアとの大きな差であり、そのため放送法4条が存在します。
04. 放送法関連第2ラウンド
この放送法のトピックは政権が変わってもくすぶり続けていました。これは2023年、記憶に新しいですね。先に結論を書きますが、これは玉虫色の決着となっています。
04-01. 小西議員の「内部文書」提示
放送事業者のあり方などについて定めた放送法について、立憲民主党の小西議員は、政治的公平性確保の解釈をめぐる政府の「内部文書」とされるものを、総務省の職員から入手したとして質問。礒崎陽輔首相補佐官が総務省に「新解釈の追加」を求める過程などがこの文書には記されています。従来は「放送事業者全体で判断する」という運用説明が中心だったが、礒崎補佐官とのやり取りを経て「個別番組でも判断しうる」という説明が明確化されたとのこと。
まずは当時の報道を。しかも日テレさんのこの動画、ご丁寧に文字起こしまでしてくれてて助かります。一応、国会会議録検索システムにて当該ページの確認は可能なので、リンクを貼っておきます。
(小西議員、岸田首相、高市経済安保大臣の発言はP17あたり)
議事録全部はなかなか大変なので抜粋。(気になる方はソース確認を)
小西洋之議員 言論報道の自由の根幹である放送法の解釈が政治的な圧力によってつくられたということが、認められていいとお考えでしょうか。お答えください。
岸田首相 正確性や正当性が定かでない文書について、私から何か申し上げることはありません。
岸田首相は、本当に政府のものか定かではないと答弁。一方、小西議員は、入手した文書に「当時の安倍首相と高市総務相が電話で意見交換した内容が記載されている」と主張しました。
小西洋之議員 安倍首相からは「今までの放送法の解釈はおかしい」旨の発言。実際に問題意識を持っている番組を複数例示「サンデーモーニング」他。こうした会話、「サンデーモーニング」という言葉が安倍首相の口から発言があったのでしょうか」
高市経済安保相 放送法について、安倍首相と何か打ち合わせをしたり、レクをしたことはございません。もしも、私と安倍首相の電話の内容が文書に残っているとしたら、私の電話に盗聴器でもついているのでしょうか。全くそれは、ねつ造文書だと私は考えております。
小西洋之議員 これをねつ造の文書だとおっしゃるのであれば、仮にこれが、ねつ造の文書でなければ、大臣そして議員を辞職するということでよろしいですね?
高市経済安保相 結構ですよ
小西議員が提示した書類は下記の通りです。A4でページ数も80ページくらいあるので、なかなか読むのは大変ですね。
小西議員が公表した総務省内部文書(簡易版)
小西議員が公表した総務省内部文書(全体版)
小西議員が「仮にこれが、ねつ造の文書でなければ、大臣そして議員を辞職するということでよろしいですね?」と質問し、高市経済安保相は「結構ですよ」と回答しています。
04-02. 総務省の回答
これは総務省が数日後の3月7日に回答を出しています。
政治的公平に関する文書の公開について
3月2日、小西洋之議員が、放送法第4条第1項に定める「政治的公平」の解釈について、当時の総理補佐官と総務省との間のやりとりに関する一連の文書を公開しました。これを受けて総務省では、公開された文書について、総務省に文書として保存されているものと同一かといった点についてこれまで慎重に精査を行った結果、小西議員が公開した文書については、すべて総務省の「行政文書」であることが確認できましたのでお知らせします。なお、既に同じ内容の文書が、一般に公開されていることに鑑みて、全て公表PDFすることとしました。また、その記載内容の正確性が確認できないもの、作成の経緯が判明しないものがある点にはご留意いただければと思います。
上記のPDFリンクの中身を確認すると、高市総務大臣のレクの記録があります。FNN報道のリンクがわかりやすいので掲載。
松野官房長官も「行政文書であると確認」と述べておられます。
04-03. 行政文書としては未登録
ここでややこしいのは「これは行政文書で間違いない」までは判明したものの、その中身の文章が「正確なものかどうか」には疑問があるという点。この行政文書の一部は「行政文書管理システムへの未登録」および「決裁・発議を経ていない状態」で保管されていたもの。総務省の調査報告において、これらは行政文書の定義(組織的に用いるものとして保有しているもの)には合致するものの「行政文書ファイル管理簿への登録がなされていなかった」など、不適切な管理状態にあったようではあります。
なぜ未登録だったのか?
総務省が2023年3月に公表した精査結果によると、立憲民主党の小西洋之参院議員が告発した78ページの文書の多くは、本来行われるべき正規の手続きが抜けていました。
共有フォルダに埋もれていた
文書の多くは、情報流通行政局の担当参事官室などの「共有フォルダ(電子データ)」や、担当者の机の引き出し、キャビネットの中に紙のまま保管されていました。(つまり、オンライン管理ではなく、職員PCローカル管理でもなく、紙媒体の書類での管理)管理簿への不記載
公文書管理法で、行政文書は「行政文書ファイル管理簿」という公的なシステムに登録され、保存期間などが厳格に管理されるルール。が、今回の文書群はシステムに登録されておらず、省内で公式に存在が可視化されていない状態でした。「未発議・未決裁」のメモだった
もう一つの重要なポイントは、これらの文書が「未発議」や「決裁前のメモ」だったという点。行政機関において、正式な国の意思決定や方針として成立した文書は「決裁」を通ります。しかし、今回問題になった文書の多くは以下のような性質のものでした。
・大臣レク(説明)のための下書き・想定問答
・官邸との生々しいやり取りを記録した担当者の「備忘録メモ」
組織のトップが承認した決裁文書ではなく、その前段階の「担当者が業務のために作った書きかけ、あるいは記録」のまま放置されていた状態です。
なぜ「未登記」なのに「行政文書」と認められたのか?
ここが一番ややこしい部分ですが、日本の公文書管理法では、「システムに登録したかどうか」に関わらず、以下の条件を満たしていればすべて「行政文書」とみなすと定めています。
・職員が職務上作成・取得したもの
・組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているもの
総務省の調査では、「システムへの登録を怠っていたのは、単にうちの不適切な管理だった」と認めました。つまり、「手続きをサボって未登記だっただけで、実態としては役人が仕事のために組織で共有していた行政文書であることは間違いない」という結論になった訳ですね。
04-04. 高市経済安保相の回答
「文書が捏造か否か」というのが起点、小西議員の発言は「これを捏造の文書だとおっしゃるのであれば、仮にこれが、捏造の文書でなければ、大臣そして議員を辞職するということでよろしいですね?」というもの。高市経済安保相は「結構ですよ」と回答していますが「内容が不正確」という理由で議員辞職はしない方向で回答しておられます。
高市さんを罷免しようとする野党から「それは論理の飛躍だ」と庇ったのが当時の岸田総理でしたね。
04-05. 磯崎総理補佐官について
さて、ここも記載しておかなくてはなりません。上記の小西議員配布の資料は「総理側と総務省側のやり取り」が記載されています。そこで磯崎補佐官のお名前が出るのですが、高市さんは「私が礒崎総理補佐官について、そのお名前、放送行政に興味をお持ちだと知ったのは今年(※2023年)の3月になってからでございます。ですから、そのようなレクを受けたこともありません」と回答しています。
この発言が問題視されます。高市さんは2013年当時に磯崎氏に対してANNニュースで「この夏、礒崎さんにはホンマにお世話になりました。礒崎さんはうちの主人と割と似ていて、主人と思って手を振ったら礒崎さんだったことが2回ある」と発言していたようなのです。
高市氏側は後に「名前を知らなかったという意味ではない」「放送行政に関心を持っていたとは知らなかった」と発言の軌道修正を行っています。
04-06. 総務省の見解
これも正確性がわからない状態ではありますが、総務省の調査では、職員らへの聞き取りを踏まえ「レクが行われた可能性が高い」と報じられました。行政文書であるか否かは「行政文書である」という結論、中身も「事実である可能性が高い」としているのですが、登録自体はなされていない文書でもある。まあ、事実は永久に解明されないかもですね。
04-07. 「質問しないでください」発言
小西議員の文書を高市氏は「捏造」と断定しましたが、総務省は「行政文書」と認めました。そこで高市氏は「行政文書の中身が正確ではないから捏造」と返しましたが、ここでまた総務省は「レクがあった可能性が高い」と発表。高市氏の発言の論拠となるものがが何もなかったので、杉尾議員がそれを指摘して「発言の裏付けがないから信じられない」と言うと、高市氏は「私が信用できないなら質問しないでください」と返した形です。
これは回答として成立していません。高市氏側は否定するのみに終始し、なんら当時の記録なども提示していないので「信じるに足る根拠を出すよう」に求めている流れです。
04-08. 音喜多議員質疑
この流れの中で、音喜多議員が少し角度の変わった質疑をしていましたので、ここも要チェックです。2023年3月24日の参議院予算委員会で、日本維新の会の参議院議員だった音喜多氏が、 高市氏に対して行政文書問題の質疑を行いました。この質疑が有名なのは「高市辞職」追及よりも、行政文書・公文書管理の仕組み、官邸側の記録保存の問題」に焦点を当てたからです。
文書管理の直接責任者は、作成した職員、保管部署、文書管理者、総務省組織です。したがって「文書が適切に保存されていなかった」という問題の第一義的な責任は組織側にあります。これが小西議員に流出しているのも含めて、管理責任は総務省です。そして、ここの最終責任者は高市氏であり、マネジメント上の問題もあります。が、総務省や第三者機関が「文書管理の不備について高市氏個人に責任がある」と認定した事実はありません。「不適切保管だから高市氏の責任」とまでは整理されていないです。
04-09. 問題整理(私見入ります)
これは三者それぞれ別個に整理。
小西議員の質疑の問題点
法的に重要なのは「国会議員は辞職を強制されない」という点。議員辞職は「自発的辞職、除名、失職」などに限られます。つまり、「言質を取っても、高市さんに法的に辞める義務は生じない」です。小西議員の「挑発して議員辞職を迫る」はそもそも無理筋なのですよね。そりゃ、正当な選挙で、民意で選ばれた議員が「売り言葉に買い言葉」みたいなやり取りで辞職に至っては困ります。
高市経済安保相の問題点
多くのメディアや野党が批判したのが、高市経済安保相は、当初「捏造だと思っている。捏造でなければ辞職」と言いました。売り言葉に買い言葉で挑発に国会議員が乗ってはいけない局面かな。(ここは安倍さんにもあった悪い面です。退陣要求するメンツに乗る必要はないですからね)当然、多くの人は「文書が本物なら辞職」と理解したでしょう。その後、高市氏は、総務省が「行政文書である」と認定すると、高市氏は論点を文書の存在から内容の正確性へ移しました。ところが、総務省は「実際にレクが行われた可能性が高い」と言ってしまったのです。そして「その文書の管理責任」は総務省側、つまり当時の「高市氏の部下」です。
総務省の内部文書公開問題
これは非常に難しい問題です。小西文書が「どうやって流出したか」はかなりグレーではないかな。「誰が渡したか不明」なのですよね。総務省内部、官僚、その他関係者のどこが起点なのかはわかりません。法律違反になる可能性もあります。例えば「国家公務員法」には「守秘義務」として、職務上知り得た秘密保持があります。難しいのは「行政文書=全部秘密」ではない点。例えば、政策調整メモ、レク記録、内部協議などは機密指定されていない場合も多い。実際には「リーク文化」がある霞が関や永田町では、内部文書リークは昔からさほど珍しくありません。安保機密、個人情報、捜査情報なんかですと違法ではあるでしょうが…。
05. セキュリティ・クリアランス箝口令暴露
FNNのプライムニュース出演時のことで、当時の番組の直のリンクはもうなくなっていましたが、ご記憶の方も多いと思います。
高市経済安保大臣「大臣に就任した日に言われたのは、中国という言葉を出さないでくれというのと、来年の通常国会にセキュリティー・クリアランスを入れた経済安全保障推進法を提出するとは口が裂けても言わないでくれと言われました」
これは当時のネットでも大騒ぎになりました。これ、高市さんの説明不足で岸田総理が猛バッシングされたのですよ。
批判の文脈は「セキュリティクリアランスを成立させたくない岸田が、中国に忖度して高市さんを邪魔してる。口止めまでしたけどバラされた」という感じが多いです。「岸田 高市 口止め」で検索したリンクも貼っておきます。
これは盛大にみんな勘違いしています。問題点整理。
05-01. 箝口令を言ったのは誰?
これは検証可能でした。高市さん自身が「職員(官僚)のレク」である旨を国会で語っているのです。「就任した日に、総理に言われたのではなく、職員からそういうレクがございました」なので、岸田総理から直で指示命令があった形ではないですね。
議事録文字起こしも併せて置いておきましょう。
05-02. 中国忖度、SC法制化阻害ではない
さて、上記のリンクや議事録から、以下のこともわかります。
・中国に忖度した訳ではない。
・セキュリティクリアランス法制化阻害ではない。
あくまで法案のメインの想定相手は中国であるとは思いますが、セキュリティクリアランスは「特定の国を対象にしたものではない」のです。そんな中で、わざわざ特定の「中国」を公言すると中国の反発が予想されるし「法案提出の時期」を公言すれば左派野党の反発が予想される。特定秘密法の時みたいに、大規模デモなどで妨害工作が入ることを懸念し、普通に釘を刺しただけではないかと。公言するメリットが皆無ですし、水面下で進めたほうが外部の邪魔が入りませんし。経済安保法制って、産業界、外国政府、海外企業、外資、研究機関、省庁、与野党、メディアなど利害関係者が非常に多いです。しかも、技術規制、投資規制、サプライチェーン、機密保護、対中依存に踏み込むと、必ず強い反発が出ます。実際、日本では過去に、スパイ防止法や特定秘密保護法、土地規制法なども激しい反対運動がありました。官僚側としては「制度骨格が固まる前に騒ぎになると潰れる」という危機感は普通にあり得るでしょう。
あと、岸田総理がセキュリティクリアランスの法制化を阻害するというのも、普通に考えたら「ないやろ」です。高市さんに経済安保の担当をさせて、セキュリティクリアランスを進めるようにしたのは外ならぬ岸田総理です。これが法制化断念すれば「自身の政策を一つ頓挫させる」にしかなりません。自分の実績を自分で潰す工作する動機がないですね。
05-03. 何故箝口令を無視して発言したの?
これ、箝口令の意味を理解していなかったのではないでしょうかね?もしかしたら「これを口止めするって事は中国に遠慮している?」ってマジで考えていた可能性もなきにしもあらずです。
通常は大臣は官僚などからレクを受けます。その際、未確定情報や情勢が不透明な事案については「現時点では外に出さないでください」と言われるのは珍しくないそうです。特に経済安保は、米国との連携、半導体規制、対中輸出管理、機密共有が絡むため、普通の経済政策より秘密度が高い。
問題なのは「秘密を守ろうという法案推進の話なのに、それを進めるための秘密をTVで喋ってしまった事」ではないでしょうか。社会人に例えると「この話は社内の極秘事項だから絶対漏洩するなよ」って言われた話を「機密情報だって言われたんですけど、うちの会社はこういう事を進めてます」って全国に発信したみたいなもんです。
06. 奈良の鹿発言
これは前回の総裁選がスタートを切った日の発言ですね。
高市早苗氏「高市早苗、奈良の女です。奈良の女としては奈良公園に1460頭以上すんでいるシカのことを気にかけずにはいられません。そんな奈良のシカをですよ。足で蹴り上げるとんでもない人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているもの、わざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、皆さん、何かが行き過ぎている、そう思われませんか」
06-01. 時系列整理
これは「確認が困難」だったりはするけど、可能な限り追っていきましょう。奈良の鹿が迷惑行為を受けていた事実は普通にあったのはあったんですが、特定のクラスタに言及したことで余波が広がった案件。
その1:奈良公園での観光公害問題(以前から存在)
前提として、奈良では以前から、鹿への迷惑行為、鹿せんべい投げつけ、追い回し、尻を叩く、無理な接触などは問題になっていました。これは日本人観光客にも外国人観光客にも存在。奈良県側も多言語注意喚起を行っています。「鹿へのマナー問題そのもの」は以前からあったのは確かです。
その2:SNSで「外国人が鹿を蹴る動画」が拡散
2024〜2025年頃、TikTokやX、YouTubeショートなどで、「外国人観光客が鹿を蹴る」「鹿を殴る」ように見える動画があれこれ拡散。問題は、動画の真偽が不明瞭、撮影時期不明、編集ありなどで「事実関係が確認取れないもの」が多かった点。「外国人観光客による鹿虐待が横行」まで言える証拠とまでは言えない状況。まあ、一部では実際にあったのかもですが、日本人も一部では実際にあったかも、という何とも漠然とした形。
その3:条例改正
2025年4月、奈良県は「県立都市公園条例施行規則」の運用を一部改正
その4: 高市氏の総裁選演説
高市氏は総裁選演説で「奈良の鹿を足で蹴り上げる、とんでもない人がいる」「外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと痛めつけようとする人がいる」と発言、一気に炎上。
06-02. なぜ外国人のみピックアップ?
問題視されたのは、迷惑行為の主体について「外国人」というワードを使った事かなと。鹿問題そのものは「日本人にも、外国人にも、一部に心無い行為を行う人がいる」というものでしょうが、外国人観光客を強調したことにより、排外主義的な印象を与えてしまった事。実際、騒ぎになっている動画は「国籍がわからないもの」がかなり多いです。
これは左派野党も批判を行いました。が、撤回には至っておりません。
06-03. 鹿への暴行は横行している?
問題は、「一部事例」なのか「広範囲問題」なのかという点もあるかなと。奈良県関係者側は「日常的暴行は確認していない」としていました。
奈良公園内の暴力行為は「確認されていない」
しかし、施行規則に基づく運用改正を急がなければならないほど、奈良公園でのシカへの暴力行為が常態化していたのだろうか。「実は、動画の拡散以前も拡散以後も、鹿に対する日常的な暴力行為があったとは把握していません」(豊岡さん)
県では毎日2回の公園巡回を行い、シカの保護を担う「奈良の鹿愛護会」やボランティア団体の見守り活動も随時行われている。交通事故などで傷ついた鹿の救護体制も整っており、トラブルがあれば地元警察とも連携して対応にあたってきた。しかし、殴る・蹴るなどの行為の目撃情報や通報の事例は今のところないという。奈良の鹿愛護会の副会長・中西康博さんも、「これまで条例や施行規則が不十分だと感じたことはなく、日常業務に支障はありませんでした」と口をそろえる。今回の運用改正は、実際に頻発していた問題に対応するというより、今後の抑止と啓発を目的とした、いわば“予防的な一手”という訳だ。
06-04. 発言の根拠は?
野党議員も批判をしたのですが、わかりやすい記事としてLivedoor Newsを引用させてもらいます。
9月24日に開かれた日本記者クラブ主催の討論会では、高市氏に対し「外国観光客が鹿を蹴り上げたりという感じで批判していたが、根拠はあったのか」という質問が飛んだ。高市氏は、
「自分なりに確認した。奈良公園の鹿も被害を受けている」
「こういったものが流布されているということによる私たちの不安感、怒りがある、これは確かなことだと思う」
と自説を曲げず。だが、具体的な根拠は何も示さなかった。
06-05. 日テレなどが現地検証、炎上
日テレが「奈良の鹿は本当に外国人観光客に暴行を受けているのだろうか?」という検証を行いましたが、これが炎上します。出演者をクライシスアクター呼ばわりする人もいましたね。この辺は高市さん側というよりは「支持者層」のお話なので、話に含めるかどうか迷ったのですが、参考までに。
日本テレビは9月30日にYouTubeにて『【それって本当?】“シカ暴行は外国人観光客”高市氏の発言で波紋 現地へ』という動画を公開。高市早苗氏が「奈良の女としては奈良公園に1460頭以上住んでいる鹿のことを気に掛けずにはいられません」と、外国人観光客が奈良公園の鹿に暴行を働いているかのように発言しました。では実際にはどうなのか、同テレビ局は過去に拡散された鹿への暴行動画を確認したところ「外国人観光客と断定できず」と説明しています。実際の報道ではさらに現地でインタビューを行うシーンもあり、「奈良公園でガイド10年以上」という女性が取材を受け、暴行を加える観光客は「基本的には見かけない」と答えたところ、それがX上で「やらせだ」と誹謗中傷の的に。女性の顔が写った画像を拡散し、身元を開示するよう要求するアカウントが続出しました。
06-06. 情報整理
これも「全部ひっくるめて考える」を避ければわかりやすいお話です。
・鹿への迷惑行為・不適切接触の事例は存在(事実)
・奈良県も注意喚起(事実)
・ SNS動画も存在(事実)
・ 観光公害への不満も実在(事実)
・外国人による暴行が広く横行(確認不能)
・奈良県側も「常態化確認なし」(事実)
・迷惑行為には日本人も含まれる(事実)
記者会見等で根拠を問われた高市氏は「自分なりに確認した」「動画が流布されていることによる私たちの不安感や怒りは確かにある」と述べるに留まり、具体的なデータや公的調査の結果を提示することはなかったです。鹿への迷惑行為自体は「実在する問題」であり、彼女が文化・動物保護の文脈で語った可能性はあります。が、過度な一般化によって「外国人が一様に暴力を働いている」かのようなナラティブを政治演説に用いたことは、あまり適切とはいいがたいかもですね。オーバーツーリズムに対する世論の不満を利用した「排外主義的なアジテーション」であるとの批判を免れ得ない気もします。
07. 総理就任後も靖国参拝
これも物議をかもしますね。
07-01. 発言の変遷
2021年09月 総裁選前ですね。ここではかなり踏み込んだ表現を使っていました。討論会では、首相就任後の靖国参拝について「参拝させていただく」と明言。他の三候補が慎重さを見せているのに、高市さんだけが参拝を公言した形です。
2022年02月 東京都内で開かれた「靖国神社崇敬奉賛会」主催のシンポジウムでの発言内容は「途中で参拝を止めたり、中途半端なことをするから相手がつけあがる面はある。どんなに批判されても淡々と続ける」というもの。
2023年04月 経済安保担当大臣時代に参拝しました。
2024年4月 これはメディアへのインタビューに応じた形です。高市氏は閣僚在任中も終戦記念日などに参拝していて「これからも続けていきたい。これは私の心の問題だ」と強調しました。
2025年09月 これは直近の総裁選の時ですね。いよいよ総理の座が近づいているタイミングですが、ここは少しトーンダウンしています。「適時適切に判断する」と言及し明言を避けました。
2026年02月
「LIVE選挙サンデー」に出演、橋下徹氏から「政治のタイミングや事情で、参拝しないというのは一般兵士への冒涜の極みだと思う。いつ行かれますか?」と質問され、「その環境を整えるために努力しています」と返答。「安倍総理が行った際、アメリカ側にも根回しした。にもかかわらず、バイデンさん、当時の副大統領からクレームがついた。まず同盟国にしっかり理解を得る。周辺諸国にも理解を得る。お互いに国のために亡くなった方々に敬意を示す環境を整えるのが、私の目標」と発言。
2026年4月 総理就任後は、過去の総理同様に例大祭期間中の参拝は見送り。真榊奉納に切り替えています。
07-02. 過去の総理の靖国参拝
これを理解するには「過去の総理(在任中)の時はどうだったの?」を理解しないとですね。A級戦犯合祀後のデータはこちら。公益法人nippon.comソースですが、データは靖国公式サイトからとの事。ソース記事はそれ以前の記録や日時までしっかり記載されています。
07-03. 何故、安倍総理は1回きり?
A級戦犯合祀の前はさほど問題視もされませんでしたが、中曽根総理以後に国際問題化。小泉総理は6回も参拝していますが、最後に訪問したのは安倍総理時代。では、ここで途絶えた理由を掘ってみます。
失望を表明した主体は「在日米国大使館」ではありますが、内容としては「米国政府として」というものです。実際に、米国務省のハーフ副報道官が記者会見で「失望は明確だ」と改めて説明しており、単なる大使館独断ではないことが強調されました。
アメリカが懸念していたのは「歴史問題」としてではなく、この件で「日米韓の軍事連携が崩れる懸念」によるものです。中国や韓国から見たら「歴史問題」でしょうけど、アメリカはそうじゃないですもんね。(補足的に、当時の安倍さんのノーカット会見も置いておきます)
2013年当時、安倍晋三の靖国参拝にアメリカが強く反応した背景には「日米韓の安全保障連携を壊しかねない」というオバマ政権の危機感がありました。当時の東アジア情勢は「中国の台頭、北朝鮮の核・ミサイル、尖閣問題、米国内の戦略アジア・リバランス」が重なっていて、アメリカは「日本・韓国を対中包囲網の両輪にしたい」と考えていました。しかし安倍参拝によって、中国が強く反発、韓国も猛反発、日韓首脳会談がさらに困難化となり、アメリカの地域戦略に悪影響が出ると懸念されたんでしょう。
さて、ここまでは割と知られているお話なのですが、ここから少し後日談があります。
記事の後半にこういう文章があります。慰霊を行うなら「靖国以外にも千鳥ヶ淵墓苑がありますよ」って事ですね。
同月に日本を訪れた米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は、靖国神社ではなく、近くの千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れて献花した。同墓苑には、日本国外での無名戦没者の遺骨が埋葬されている。両長官の献花は、靖国参拝に代わる戦没者追悼の形を提案したと受け止められた。
この一連の流れを自民の議員さん、閣僚さんたちは見てきた筈ですし、その難易度、行えばどういう影響があるのかは理解されているはずです。
※ここからは私見です。
靖国参拝に対し、中国・韓国はほぼ確実に強く反発します。これはまず避けられません。で、実は安倍政権時よりも更に難易度が上がっているとも思います。ここで靖国を参拝した際の影響を考えてみますと、中国が反発するのはまあ想定できるとして、尹政権以降で円滑な交流を続けている韓国も反発しますし、対中戦略で軍事連携を進めていたのが崩壊しかねないので、米国の地域戦略に悪影響を与えると懸念されます。特に現在は、台湾有事、北朝鮮ミサイル、中国海軍拡張で、日米韓連携が2013年よりさらに重要になっています。日本国内の支持者が喜ぶとは思うのですが、海外は中国、韓国、米国のどれもがいい顔をしない。更に「代替案」的に千鳥ヶ淵墓苑に足を運んだかつての米国のサジェストも無下にする形になるのです。
08. 奈良県連問題
保守分裂選挙のトリガーが高市氏だったのでは?と責任問題になった話ですね。これも3年ほど前なので、覚えている方も多いでしょう。
08-01. 2人の推薦候補争い
現職の荒井正吾の任期満了(2023年5月2日)に伴う知事選挙についてです。まず、高市氏が2022年に奈良県連の会長に就任しますが、それに伴って自身が総務大臣だった頃の秘書官である平木氏の擁立を手動。が、任期満了の荒井氏も立候補の意向だったわけです。荒井氏は運輸省(現国交省)のキャリア官僚から参院選奈良選挙区に出馬して初当選、その後知事に転身した人。た二階俊博元幹事長ともきわめて親しい関係。
構図として朝日新聞のこれがわかりやすかったですね。
08-02. 現職優先の慣習
通常は自民は「現職優先」でいきます。特に地方自治体の選挙はその傾向がかなり強い。しかも荒井氏は、4期16年かつ自民系県政、県連と長年協調という典型的な「現職保守系知事」でした。が、高市氏主導で推薦は平木氏に決定。党内では「普通は現職を切らない」という反発がかなり出ました。
当然、票が分散する流れになります。また、この時期は前述の放送法の解釈変更、行政文書問題の時期で、高市氏はなかなか応援にも駆けつけることができませんでした。
08-03. 漁夫の利で維新の山下氏が当選
開票結果がこちら。維新推薦の山下氏が初当選です。
さて、この票数をご確認ください。
山下氏が266,404票。平木氏と荒井氏の合算だと293,762票。これは候補を一本化していたら「勝てた選挙」だった可能性が高いです。高市氏主導で平木氏擁立が進み、党本部や県連内部との温度差が生じて、結果的に保守分裂を招いて敗北。高市氏の「調整不足」との声も大きかったです。
全国人気、保守層人気、SNS人気は強い。でも、地方組織調整、候補者一本化、県連掌握、利害調整では苦戦しました。つまり、「政策・発信型政治家」と「党内調整型政治家」の差が露呈した案件です。
09. 「ヒトラー選挙戦略」推薦
これ、2014年に騒ぎになったようですが、私はその騒ぎを知らなかったので、この機会におさらいしておきます。
09-01. どんな本なの?
1994年出版、タイトルは「ヒトラー選挙戦略」というもので、著者は小粥義雄氏。絶版本なので、私は未読です。何故絶版に至ったかというと、世界的に反発されて、「サイモン・ウィーゼンタール・センター」を含む各種団体から非難を受けての事のようです。(※サイモン・ウィーゼンタール・センターについては政治界隈では時々話題に出てきますので、ご存じない方は知っておくといいかもです)表紙はこんな感じ。おっかないですね。確かに高市さんの推薦文が掲載されています。
中身の文章は検証ができかねますが、目次だけはトーハンの全国書店ネットワーク「e-hon」にて検索ができました。別にヒトラーをタイトルに使わなくても、そこに触れずに内容だけで成り立つ本だとは思うのですが…。
別にナチス万歳みたいな書籍ではなく「選挙ハウツー本」ではあるようなのですが、ヒトラーの政治手法を選挙必勝法として肯定的に利用しているように読めるとの指摘が結構あったようです。書籍の内容についての批判は、著者に向けられるべきなので、内容批判を高市氏に向けるのも違う気はしますが、「推薦文」の文責は高市氏にあるかな。まあ、波紋があるのは分かり切ってはいますしね。このタイトルの書籍に関わるべきではなかったかもですね。悪意がなくても、脇が甘いという声はあるでしょう。
これは海外にも広がってしまいます。New York Timesの記事リンクはこちらです。ナチス絡みは日本国内よりも、むしろ海外の方が厳しい目を向ける傾向がありますね。
09-02. ネオナチとの交流?
さて、この本の流れでもう一つ騒ぎがありました。2014年にネオナチ思想を掲げる団体「国家社会主義日本労働者党(NSJAP)」の代表山田一成氏と一緒に写った写真が公開されたのです。
で、この写真については、やはりここでもサイモン・ウィーゼンタール・センターが抗議の声をあげています。
高市氏は、これに関しては相手の思想信条を知らなかったと回答しておられます。まあ、実際、政治家は名刺交換も記念撮影も多くの数をこなすでしょうし、いちいち相手の思想信条を確認もしないでしょう。不可抗力というご説明も、まあその通りだろうなと思います。
ネオナチ団体関係者と写真を撮ったのは事実。が、継続的政治的交流・協力関係があったかは不明。単発かなと思います。高市氏自身がネオナチ思想を支持しているとも考えにくいかな。
10. 公明党連立離脱
高市総裁になってすぐに、長年連立与党を組んでいた公明党が連立離脱しました。ここは情報が錯綜したので、この機会に検証していきましょう。これはX上でも「公明党が一方的に連立離脱した」という論調がそこそこあります。
10-01. 斉藤代表「3つの懸念」
まずは選挙ドットコムの斉藤代表インタビューのリンクがこちら。元朝日新聞記者の今野さんが、公明党斉藤代表に連立離脱の件を色々聞いておられます。高市氏が自民党総裁就任後、公明党本部を訪れた際、斉藤鉄夫代表らが以下の「3つの懸念」を伝えました。
・企業・団体献金の抜本的な規制強化
・靖国神社参拝などの歴史認識
・外国人政策(移民・入管関連)の方向性
この3点は、公明党にとって非常に重要なテーマです。しかし、自民党はその後、1週間以上も具体的な回答を示さずでした。
10-02. 不記載疑惑のある萩生田氏起用
上記のインタビューの内容を個別トピックで検証。まずは共同通信の記事。個人的にも「これが連立離脱のトリガー」の一つという印象は強いです。
不記載問題を巡っては自民党側が党処分と選挙などで「禊が済んでいる」と説明しているのに対し、公明党側は選挙後の訴訟などで出てきた新事実にも説明が必要だと要求。今野記者は自公の連立関係を婚姻関係になぞらえて、自民党新執行部で裏金問題に関係した萩生田光一氏が幹事長代行に起用されたことが決め手になり、いわば「コップの水を溢れさせる最後の一滴」で「熟年離婚」に至ったと解説しました。
萩生田議員と公明党との間には意識の乖離があったのをご存じの方も多いと思います。まあ、萩生田氏個人的な確執というよりは、萩生田氏が都連代表だからという表現の方が適切かもですが。
具体的には2023年の衆院選が起点です。10増10減に伴い新設された東京28区について、公明党は独自候補擁立を要求しました。が、自民党東京都連会長だった萩生田氏はこれに強く反対。朝日新聞などによると、東京都連会合では「今回認めれば自民は公明の言いなり」「公明推薦はなくてもいい」という強硬論が噴出し、萩生田氏は「容認しない」方針を党本部へ伝えました。公明党側は憤慨され、公明党は「東京の全選挙区で自民候補を推薦しない」「都議会でも協力関係を解消」という強硬措置を通告します。
これ、まず都連の前に「党中央」と折衝を重ねていたようです。中央レベルでは継続協議され、公明側は前向きな感触を持っていたのに「都連が拒否した」という流れではないでしょうかね。交渉が継続していたのは、公明党の西田選対委員長の発言でうかがい知ることができます。
公明党の西田実仁(まこと)選挙対策委員長は、「内容は言えない」としながらも、記者団に「自民党とは半年近くにわたって交渉してきたが、いまさら東京28区に内定者がいる、と言われても困る。自民党からは代替案が示されたが、これまで交渉では一度も出てきたことがない選挙区で、(代替案は)飲めない」と語気を強めた。
その党中央との交渉が都連にシフトすると「地元の了解が得られない」と公明党独自候補擁立に至らなかったのです。公明党としては、そりゃ不満もたまるかなぁ…。これは逆に言うと「中央だけなら調整余地はあった」とも読める表現です。最初から完全拒否なら「党として認めない」という形の説明になるはずですが、実際は「地元が納得しない」という説明。
10-03. 不記載疑惑の余波
ここは萩生田氏以外も含むトピックでしょう。公明党は自民の不記載疑惑の余波を結構大きく受けています。裏金問題は自民だけでなく、公明にもダメージを与えたという分析は、主要メディア・政治分析でほぼ共通。
斉藤代表は選挙後に全国を歩く中で、「与党の政治とカネの問題に対する基本姿勢に敗因がある」と分析しました。自民党の問題としてだけではなく、不記載があった一部の自民党議員を推薦した公明党に対しても厳しい視線が向けられていることを痛感したといいます。
「自民党の不祥事をなぜ公明党の私たちが説明して歩かなきゃいけないんですか? もう限界です」という現場の声を聞き、「その方々の声を大事にしなきゃいけない。それが私の使命だ」と声を詰まらせながら苦渋の決断に至った経緯を説明しました。
10-04. 企業団体献金の規制強化
規制強化とは書いたものの、実質的には廃止要求ですね。
企業・団体献金の規制強化を巡っても、自民・公明・立憲民主党との3党協議で、廃止を主張してきた立憲民主党も前向きな姿勢を示していましたが、自民党での検討がなかなか進まなかったことを受けて一旦区切りをつけることになったといいます。
細かいところを読売新聞が報じていましたので、ご確認ください。まあ、自民党は結党以来ずっと企業団体献金は「あり」という組織運営を行ってきたので、
最終的に「自公連立解消」に至った要因の一つはこれですね。
10-05. 麻生太郎「公明党はがん」
2023年のホテル日航福岡での公演時に、麻生氏が「公明党はがん」と発言して大騒ぎになりましたよね。当時はまだ連立与党継続中なので「連立パートナーへの礼を失した発言」として話題になりました。
これは高市氏の発言ではないのですが、高市政権のキングメーカーが麻生氏である事は有名ですし、麻生氏は自民党の副総裁、名誉顧問なので、公明党としては思うところはあったと考えられます。
10-06. 靖国参拝問題
2021年の時点では「総理になっても靖国参拝は続ける」と言っていた高市氏も、2025年になったらある程度「現実的な路線」を見て、参拝をしない方向にシフトしましたが、それでも「数年間に渡って、幾度も強調してきた」ため、懸念を感じる方も多いと思います。公明党支持者の方々も、ここは懸念しておられたようです。
10-07. 連立離脱は一方的だったか?
まずは、自民党側、高市総裁の説明を確認してみましょう。
高市総裁は、10月7日時点では本日の会談は、9日に公明党が地方から集めた意見を報告する場のはずだったが、「政治資金規正法に関する公明党案についてこの場で賛否を示すよう求められた」とした。「総裁・幹事長だけで、法律案の細部についてお答えできない。持ち帰って協議のうえ、手続きにのっとって対応したいと返事をした。公明党からは『具体的でない』ということで、一方的に連立政権からの離脱を伝えられた」と話した。高市氏が「自身が総裁に選ばれていなかったならば連立離脱はなかったか」と問うと、公明側は「今回誰が選ばれても同じ。何度も申し上げてきた課題だが、速やかに対応されてない」と説明したという。
これは公明党の斉藤代表の説明と乖離があります。斉藤代表は「以前からこの件は話していた」という論旨の発言をしておられるのです。内容を確認してみましょう。
斉藤氏は番組で、派閥裏金事件の真相解明や企業・団体献金の規制強化について「高市総裁が選ばれた日から申し上げ、1回目の政権協議でも1時間半かけて“結論出してください”と」とし、この日の会談で明確な回答がなかったことで離脱を決断したという。高市氏は一方的に連立離脱を伝えられたしているが、「一方的に通告したわけではない。ずっと前から問題提起してきて、今回の連立政権協議で答えを出さなければもう最後ですよと、こういう思いでお話をした」と語った。
もしかしたら、これは「どちらか一方が嘘を言っている」というものではなく、認識の違い(回答を貰えるものと思っていた、回答を要求されると思っていなかった)があった、ボタンの掛け違えがあった、というものなのかもしれませんが、両代表の会談の中身は具体的にわかるものではないので、何とも言えません。
10-08. この章のまとめ(私見あり)
総合的に整理してみます。高市総裁就任以前から「麻生氏の発言」や「萩生田議員・都連との確執」があったから、自公連立は元々暗雲が垂れ込めていた訳です。そこに、靖国参拝を公言してきた高市氏が総裁就任。その高市氏は公明党を「がん」呼ばわりしていた麻生氏を副総裁に据え、不記載疑惑があるうえに都連で公明党と関係値が良好とはいえない萩生田氏を幹事長代行に据えました。
私が自公連立解消は「自民側が不義理をしている」と感じたのはこういう点です。公明党側は、これに関しては被害者だと思います。
11. 悲願の減税
※ここでは食料品の期間限定消費税ゼロの是非、実施した時の経済波及の予想などは割愛します。ご了承ください。「悲願の消費税減税」がいつからなのか、どういう変遷でここに行き着いたのかを調べます。
2026年の1月19日、解散総選挙前の会見で、食料品の消費税を2年間ゼロにすることについて、高市氏は「私自身の悲願でもありました」と発言していました。これが大きく騒がれたのは、皆さんご存じの通りだと思います。
参考までに、この記事の「各政党の消費税政策」を掲載しておきます。これは、当時は「争点潰し」と言われていましたが「あらゆる政党が減税を訴えるなら、政党ごとの政策の独自性が失われる」って話ですね。チームみらい以外は全部「消費税減税」を掲げています。
では、その「消費税減税」が「悲願」というのであれば、以前から強く訴えかけていたのでしょうか?確認してまいりましょう。
ちなみに削除されたブログについては次章で書きますが、まずはここを検索できるサイトを作ってくださった方がいるので紹介。
11-01.2024年以前
2011年12月
自民党は、昨年の参院選の折に、消費税率を10%に引き上げることを公約しています。年金、医療、子育て、障害者施策等々、その使途の内訳(金額)も、昨年中に発表済みです。消費税は低所得者にも負担がかかりますので、税率アップにはご批判もありましょうが、社会保障制度の継続性と負担の公平性を考えると、間接税を財源として重視する方が良いと判断しています。
明確に「消費税増税を肯定・支持する文脈」です。特に重要なのは後半の、「社会保障制度の継続性と負担の公平性を考えると、間接税を財源として重視する方が良いと判断しています」という部分で、これは単なる「党の方針説明」ではなく、消費税(間接税)を社会保障財源として評価、消費税率アップには批判があることを認めつつも、それでも必要だと判断しているという、自身の政策的肯定を含む表現です。
さらに「自民党は…公約しています」「使途の内訳も発表済み」という説明も「既に国民に約束した政策」「財源の用途も明確」として、増税の正当性を補強する論理になっています。文脈としては典型的な「逆進性など問題はあるが、社会保障維持のためには消費税増税が必要」という説明ですね。
2012年06月
消費税のメリットを挙げるとすると、それは「公平性」です。
所得に関係なく1度は消費に伴う税負担をしていただいた上で、真に福祉が必要な方々には、別途、生活扶助や住宅扶助等で手当をする方が順当なのではないでしょうか。
文脈としてはかなり明確な「消費税肯定・増税容認寄り」の発言です。特に「消費税のメリットを挙げるとすると、それは公平性です」という文章は、消費税そのものを肯定的に評価しています。さらに、「所得に関係なく1度は消費に伴う税負担をしていただいた上で…」という部分は「広く薄く負担する税、全員が負担すること自体に意味がある」という、典型的な消費税支持論です。
2015年03月
平成二十七年度の地方税制改正については、経済再生と財政健全化を両立するための地方消費税率の引上時期の変更等を行うとともに、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていくため、成長志向に重点を置いた法人税改革の一環として、法人事業税の所得割の税率引下げと外形標準課税の拡充等を行います。このほか、地方創生の観点から個人住民税における「ふるさと納税制度」の拡充を行うとともに、環境負荷の少ない自動車を対象とした自動車取得税及び軽自動車税の特例措置の見直し等を行うこととしており、こうした内容の地方税法等の改正案を今国会に提出いたしました。
全体としては「消費税増税(地方消費税率引上げ)を前提・肯定した文脈」と読むのが自然です。ポイントは「地方消費税率の引上時期の変更等を行う」という部分で、これは「増税をやめる」ではなく「地方消費税率を引き上げる方針自体は維持、ただし実施時期を変更(延期)」という意味です。実際、平成27年度税制改正では、当初予定されていた「消費税10%化」を延期する議論が行われていました。つまり「8%→10%への増税路線は維持、だけど景気への配慮で時期をずらす」という政策ですね。
2020年11月
このブログでは「日本の消費税は、昨秋から10%に引上げられましたが、他国の付加価値税を見ますと、スェーデンとデンマークは25%、イギリスとフランスは20%、ドイツは19%。 国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)は、日本は44.6%、スェーデンは58.9%、イギリスは47.7%、フランスは68.2%です。少子高齢化が進行している中で、将来を見据えて、給付と負担のバランスについても、責任をもって率直な議論を行うべき時が来ています。」と記載されています。これは「他国比で消費税は安い」という協調がされている文言で、この文意的には減税には繋がりません。
2022年06月
当時は自民党政調会長。野党各党が消費税減税を主張する中で「消費税は社会保障財源、税率変更には事業者負担がある」との趣旨を説明しました。この時点では、減税にかなり慎重な立場でした。
11-02. 2025年以降
2025年05月
消費税減税に否定的な石破総理に対して、減税を進める立場として「私たちの敗北かな」という発言をしておられました。この時点で「減税推進」スタンスになっていますね。
2025年10月
新総裁就任直後です。これは「やる」という意見ではなく「やらないって決まった訳じゃない」くらいのニュアンスですよね。
2025年11月
この発言には条件があって「恒久財源が5兆円あれば」ではあります。その前提条件下でなら、食料品の消費税ゼロという発言ですね。
2025年12月
これは総理就任後なのですが、一転慎重な発言をしておられます。
2026年01月
が、翌月は「悲願」として「食料品の消費税ゼロ」を掲げています。これは解散総選挙で「衆議院議員選挙」に際しての発言。野党も(チームみらいを除き)軒並み減税を主張していましたし、多くの国民が減税を希望していた証左だと思います。が、タイトルにもありますが、財源懸念で自民党内にも動揺があったようです。ここでの内容は「飲食料品の消費税率を2年間ゼロ」「赤字国債には頼らない」でした。また、時期に関しては「2026年度内」の実現を目指す考えを示しておられました。高市総理は「税外収入も含めて、租税特別措置や補助金の見直しで1年で4兆8000億円は出る。2年出ると確信している」と強調。
2026年02月
自民党が公約に掲げた「2年間に限り食料品の消費税をゼロ」について、野党にも「国民会議」への参加呼びかけ、日程や財源など諸課題の検討を進めていく考えを示しました。「補助金や租税特別措置の見直し」「税外収入などにより、特例公債の発行に頼ることなく、2年分の財源を確保した上で、出来るだけ早く実現できるよう知恵を絞っていく」と発信。ここでも赤字国債での財源確保は再度否定されています。
さて、この時期にもう一つトピックがあります。有名な「なんか意地悪やなぁ」です。爆笑問題の太田氏が
以下引用要約です。(元々の応酬は上記リンクでご確認ください)
テレビ番組で、消費税減税公約について、太田光が「実現できなかった場合の責任の取り方」を質問。
高市氏は「公約として掲げた以上、実現に向けて全力で取り組む」と強調、できなかった場合という前提に対し「最初からできないと決めつけないでほしい。他党にも協力を呼びかけながら実現を目指す」という考えを説明。
太田氏は「公約未達成時の責任が曖昧になりがち」だとして「もし実現できなかった場合、政治家としてどう責任を取るのか」と繰り返し質問。
終盤では、高市氏が「なんかいじわるやなぁ」「これから必死にやろうとしている私に対して、すごいいじわる」と応じる。
(ここは私見です)太田氏も「言質を取ろう」としている面があるように思います。確かに意地悪ではある。が、掲げた公約が未達成の場合どのようにするのかは、確かに曖昧に見過ごされている面はあります。高市氏の回答は「感情論」であって、太田氏の質問の回答としては成立していないように思います。
2026年04月
ここで話題になったのが「1%案」です。重要なのは、高市氏が「1%にしたい」と言い出したわけではないという点。テレビ朝日の報道によると「高市氏は0%を目標に。しかしレジ・POSシステム改修が大規模。0%より1%の方が対応しやすい」という実務上の理由から、与党内や実務レベルで「まず1%案」が浮上したと報じられています。
11-03. 2026年06月(現時点の最新)
政府内では、高市首相が公約していた「飲食料品の消費税0%」ではなく、「1%への引き下げ」を有力案として検討しているようです。実施時期は来年4月案が浮上。(秋の臨時国会で関連法を改正、レジ改修も半年程度で対応できるとの見方あり)減税は2年間の時限措置を想定しており、終了後の税率引き上げ方法や経済効果に疑問の声もあり、給付金案などの対案も出ています。
首相の判断時期
「社会保障国民会議」で今月中に中間取りまとめを行う予定。最終判断は欧州訪問後の今月下旬以降になるとの見方が政府内で出ているとの事。ただし、報道ベースであって、正式な方向性が打ち出された訳ではありません。
12. コラム全削除
これは10章の「減税」のトピックの続きでもあります。これ、少し整理が必要ですね。高市氏は長年、自身の公式サイトに「コラム」欄を設け、政策や政治的見解を掲載していました。2026年時点で約1000本規模の記事が蓄積されていたと報じられています。一応、Web Archiveがありました。
12-01. 時系列:ブログ掲載期間
2000年~2025年
コラム開始。2000年8月のこれが最初の記事かなと思われます。(もっと前があったらご教示ください)「勝手補佐官って何だろう」と思っていましたが、これは当時批判されていた森喜朗総理の勝手補佐官という意味合いのようですね。このコラムは2000年なので25年以上前のものなのですが、安倍さん、世耕さん、下村さんなども登場しています。小泉政権以前なのを考えると、彼女のキャリアの長さがうかがえます。
ここから25年ほど、このコラムは続いていきます。私が確認できた最新記事は2025年7月分。それまでの本数は1000本弱との事。
この頃から、次期総裁選を見据えた動きになったのかもですね。ご多忙につき、交信が途絶えます。
12-02. 時系列:国会答弁でブログに言及
2025年11月12日の参院予算委員会にて「あえて自分の政治家としての歩みや進歩を見てもらおうと思い、撤回したようなものも含め、全て掲載を続けている」と発言しておられました。当該箇所は2時間46分頃。
12-03. 時系列:ブログに対して指摘
2026年2月17日 06:00
今年に入って、この記事に「消費税減税は私の悲願ってのが嘘」だという記事がPRESIDENT Onlineにてあがりました。この記事の情報ソースは上記のコラムで、本人発言の推移を洗い出したもの。記事は「悲願と言っても、最近言い出したものだ」という論調。
12-04. 時系列:ブログ削除
2026年2月17日時刻不明
X上で公式ブログ削除が話題になったのは17日18時~19時ですが、正確にどの時点で削除になったのかは不明です。
12-05. 高市氏の説明
2026年2月24日の衆院本会議で追及された際、高市氏が行った弁明のロジックは以下の通りです。
高市氏の弁明要旨
「首相に就任して以降、極めて多忙であり、コラムを書く時間が全くなく長期間更新ができていなかった。そのため、ホームページそのものをシンプルにするための見直し(整理)として、コラム欄を削除したものである」
プレジデントオンラインの検証記事が出た「当日もしくは翌日(ここは検証不能)」というタイミングで消去発覚。この「多忙による整理」という事務的な弁明を額面通りに受け止める人はあまりおらず、「都合が悪いから消したのがバレバレ」「消せば増える(ストライサンド効果)の典型例」として失笑と批判を買うことになりました。前述の国会答弁の「あえて自分の政治家としての歩みや進歩を見てもらおうと思い、撤回したようなものも含め、全て掲載を続けている」からわずか3か月の出来事です。
13. ロシアに「招かれても行かんわい!」
これは対露経済制裁の文脈ですね。当該ポストがこちら。
13-01. 発言の背景
当時はロシアのウクライナ侵攻を受けて、日本は対露経済制裁を決めた後。ロシア側の対応は、ロシア側幹部個人を対象にした制裁への事実上の報復措置です。対象者はこちら。AIって便利ですね。綺麗に表にしてくれるw
この後も人数は増え続け、今は財界人やジャーナリストなども多数含まれています。このリストに与野党のメンツが名を連ねており、高市さんもこの中に含まれていた訳ですね。支持者からは「毅然としている」「ロシアに媚びない」という論調で高く評価されました。
13-02. 総理に就任した後
高市氏はもともと自民党内でも比較的対露強硬派でしたが、政権運営レベルになると「対露制裁の維持、G7との歩調合わせ、北方領土問題の継続提起、サハリン権益の維持」という、実務的には以前からそう大きくは変わらない路線が中心になっています。特に日本は現在もサハリン関連権益を完全には手放しておらず、LNG確保、極東地域との漁業協定、北方墓参などの実務的接点は維持しています。これは「かつてはイキった事を言ったけど、総理就任後は実務的にちゃんとしている」かな。
対露経済制裁・G7との歩調合わせ
2026年3月、経産相の赤沢亮正氏はロシア産原油について「エネルギー安全保障上極めて重要」と述べる一方で「ロシアに関してはG7との協調を維持する」いう方針を示しています。エネルギー確保のための実務対応と対露制裁は両立させる立場です。(S&P記事より)
北方領土返還要求
これも手を緩めてはいませんね。
サハリン権益の維持
2026年5月、経産省局長がロシアを訪問した件について、赤沢経産相は「日本企業の資産を守る観点からロシア側と意思疎通を図る」ためだと説明しています。報道では、訪問に合わせてサハリン2権益を持つ三井物産・三菱商事関係者も現地入りしたとされています。
14. 「外為特会でホクホク」発言
これも記憶に新しいところですね。検証してみましょう。
14-01. 2026年1月31日:元発言
今年の1月31日、川崎市の街頭演説が発端です。
発言全文確認。
国内投資がとことん低い。だからよその国は今もう何をしているかって言ったら、海外に投資してるんじゃなくて、自分の国内に投資をする。自分の国内で工場をつくる。自分の国内で研究開発拠点をつくる。だから、自分の国内で投資をしているんです。ここは日本は弱かった。ガラッと変えようとしてます。高市内閣で。だって為替変動にも強い経済構造をつくれるではないですか。国内でつくるんだから。為替が高くなったが、それがいいのか悪いのか、円高がいいのか、円安がいいのか、どっちがいいのか、皆わからないですよね。むかし、民主党政権の時、たしかドル70円台の超円高。日本で物をつくっても輸出しても売れないから、円高だったら輸出しても競争力ないですよね。日本の企業、海外にどんどん出ていっちゃった。それで、失業率もすごい高かった。そっちがいいのか。今円安だから悪いって言われるけれども、輸出産業にとっては大チャンス。食べ物を売るにも、自動車産業も、アメリカの関税があったけれども、円安がバッファーになった。ものすごくこれは助かりました。円安でもっと助かってるのが、外為特会っていうのがあるんですが、これの運用、今ホクホク状態です。だから円高がいいのか、円安がいいのかわからない。これは総理が口にすべきことじゃないけれども、為替が変動しても強い日本の経済構造を一緒に私はつくりたい。だから国内投資をもっと増やしたい。そう思ってます。
14-02. 2026年2月1日:説明
当日話題になり、翌日総理自身がこの発言の真意を説明しています。
14-03. 外為特会解説
※ここは分かっている人は読み飛ばしてOKな箇所です。
正式名称は外国為替資金特別会計、日本政府が通貨のレート安定のために持っている外貨専用資産です。為替介入の時(急激な円高・円安を緩和させる目的で、政府が市場で通貨を売買)円高の時に「円を売ってドルを買う」介入を繰り返した結果、ドルなどの外貨がかなり詰みあがっています。2025年末時点での外貨準備高は約1兆3697億ドル(日本円で約210兆円)です。日本の国家予算が100兆円前後だから、この額の大きさがわかりますよね。
政府は「政府短期証券」を発行、市場からほぼゼロに近い金利で日本円を調達。その円をドルに換え米国債などで運用。アメリカの金利は日本よりも高いため、支払利息より受取利息の方がはるかに多くなります。さらに、ここ最近の「円安」で、ドルで受け取った利息を円に換算すると、円安のおかげで金額が膨れ上がります。例えば日本政府が100億ドルの米国債を持っていたとします。
円高時:1ドル100円 → 1兆円
円安時:1ドル160円 → 1.6兆円
となります。さらに米国債の利息、ドル建て運用益も円換算では大きくなります。確かにこの発言「(円安時に)外為特会でホクホク」そのものは合っているんです。
ただ、ここで儲かっても「日本人に使えよ」はなかなか難しいのが「外貨で保有している」のと「あくまで為替介入用、円高時には一気に変動するからキープしておかなければいけない」という性質。また、外為特会の利益のかなりの部分は「円換算した評価益」であり、現金が増えたわけではありません。ただ、剰余金は一般会計財源に繰り入れ出来るから「少しは日本人のお財布に還元できるよ」という性質もありますけどね。
14-04. 高市総理発言の真意と、対する批判
高市氏が言いたかったことは「円安には悪い面だけでなく、輸出企業の利益増加や外為特会の運用益増加などのプラス面もある」という話ですね。野党や一部エコノミストからは「国民は物価高で苦しんでいるのに、ホクホクという言葉は不適切」という批判が出ていました。実際、ガソリン、電気代、食料品、輸入原材料は円安で値上がりしやすいです。円安で政府の外貨が増えても、庶民の暮らしは円安で苦しくなるというロジック。
高市氏の論理
・輸出企業は有利
・税収が増える
・外為特会の利益が増える
批判側の論理
・家計は物価高で苦しい
・実質賃金を圧迫
・エネルギー輸入国の日本には不利
・「ホクホク」は政府目線
なので、この騒動の本質は「外為特会の説明が間違いだった」ではなく、円安の恩恵を強調する文脈で「ホクホク状態」という表現を使ったことへの反発かな。だから「高市さんが間違っていた」ではないです。とはいえ、演説を聞いている聴衆は一般の方で「外為特会の恩恵は別にないけど円安が直撃している」なので、高市さんが「空気読めてない」ではあります。
14-05. メディアや市場の反応
これは円安容認と受け止められ、メディアや市場の反発は厳しかったです。実際に円売りのアクションが広がりました。
一番確認していただきたいのは野村総合研究所(NRI)木内登英氏の経済コラムです。元日銀審議委員の木内氏の分析。衆院選挙中に高市首相が「外為特会はホクホク」などと円安のメリットを強調する発言をし、円安容認発言として為替市場で円安を進めてしまったと指摘されています。さらにこの発言が、日本の円安を警戒する米国のトランプ政権(海外勢)に対しても、高市政権の経済政策への懸念を強めさせる結果になった、と言及しています。
全体の文脈では「円安も悪い事だけじゃないですよ。円安にも円高にも左右されない経済を作りましょう」ではあるし、切り取りという印象もありますが、ワードチョイスの悪さと、庶民にあまり恩恵のない要素であった事、実際にマーケットが悪い方にブレた事は事実かな。
15. 経済安保・セキュリティクリアランス
素晴らしい功績も書いておかなくてはですね。
15-01. 経済安保の経緯
これは甘利さんが起点です。そしてコバホークがそれをプランニング。初代の経済安保担当大臣はコバホークですね。
岸田首相の政策の一つの目玉となるのが、「経済安全保障政策」という新しい分野の構築と推進だ。首相は先般の自民党総裁選で、「経済安全保障推進法」の策定を公約に掲げた。そして10月4日の組閣では、経済安保相のポストを新設し、若手の小林鷹之氏をあてている。同政策の源流は、岸田首相が自民党政調会長時代に創設した「新国際秩序創造戦略本部」にある。その座長を務めたのが自民党幹事長に就いた甘利明氏であり、小林氏は事務局長として実務面から甘利氏を支えてきた。経済安全保障政策は、甘利氏の強い影響力のもとで今後進められていくだろう。
これを
経済安保時系列
第1段階:甘利明が旗を振る(2020~2021年)
コロナ禍や米中対立、半導体不足を受けて、自民内で経済安保を本格的に体系化したのが、甘利氏が座長を務めた「新国際秩序創造戦略本部」です。
第2段階:小林鷹之が制度化(2021~2022年)
岸田政権発足時に初代経済安全保障担当相となったのがコバホーク。小林氏はそれ以前から甘利氏の本部で事務局長を務めていました。そして成立したのが経済安全保障推進法です。法律の4本柱はサプライチェーン強靱化、基幹インフラ保護、先端技術支援、特許非公開制度。
第3段階:高市早苗が運用拡大(2022年以降)
2022年8月に高市氏が経済安全保障担当相を引き継ぎます。高市氏の特徴は「セキュリティクリアランス、先端技術保護、半導体、AI、宇宙、サイバー」といった分野を強く押し出したことです。
甘利明 :構想・政治的推進役
小林鷹之:制度設計・法案化
高市早苗:実装・発展・安全保障色強化
という評価が妥当でしょう。
15-02. セキュリティ・クリアランス制度
経済安保において、高市色が強かったポイントは「中国依存リスク」を強く意識した点。制度が生まれた背景に、米中対立、Huawei問題、半導体規制、台湾有事リスクがあるのはほぼ間違いないでしょう。実質的には、「中国を念頭に置きつつ、制度上は一般化」というという理解が近いと思います。高市氏は比較的ストレートに、中国への過度依存、技術流出、サイバー攻撃を警戒する立場。そのため、保守派、安保重視派、台湾重視派からは高評価。これは私も鋭意進めるべきところだとは思っておりましたし、個人的には高く評価します。
そしてそれは「セキュリティクリアランス」で大きく花開きます。高市さんにこの役割を任じた岸田総理も、それにきっちり応えた高市さんも、拍手です。これは「安保関連」なので、結構難易度が高い法案だったと思うのですよ。高市氏は就任直後から制度導入を最重要課題として掲げ、2024年には「重要経済安保情報保護・活用法」の成立につなげました。政府や経済界は「同盟国との共同研究、半導体・防衛・宇宙分野での国際協力、機微情報の共有に不可欠な制度」だと位置づけています。
もっと詳細な経緯は筆者作成記事参照。
15-03. 経済安保法を「運用段階」に推進
経済安全保障推進法そのものは小林鷹之大臣時代に成立していますが、実際に制度を動かしたのは高市氏かと思われます。高市氏の在任中に
・特定重要物資の指定拡大
・基幹インフラ審査制度の運用準備
・特許非公開制度の具体化
・重要技術育成プログラムの推進
が進められました。
本人も著書で「成立した法律に魂を入れることが使命だった」と説明しています。
15-04. 半導体・AI・量子・宇宙格上げ
高市氏の特徴は、単なる防衛論ではなく「半導体、AI、量子技術、サイバー、宇宙技術」を国家安全保障のテーマとして扱ったことです。特に経済安全保障重要技術育成プログラムについては、政府予算5000億円規模の研究開発支援を推進しました。現在では一般的になった「技術流出も安全保障問題」という考え方の普及に一定の役割を果たしたと言えます。
高市氏が半導体・AI・量子・サイバー・宇宙を重視していた根拠
高市氏は経済安全保障担当相であると同時に「科学技術政策担当、宇宙政策担当、知的財産戦略担当」も兼務していました。また、高市氏自身が「安全保障の裾野は外交・防衛だけでなく経済分野にも拡大している」として、経済と安全保障を一体的に考える必要性を繰り返し説明しています。
んー、記事が文藝春秋なのはなんとなくアイロニカル。
K Program(経済安全保障重要技術育成プログラム)
これは政府の正式事業です。内閣府によると、中長期的に我が国が国際社会で確固たる地位を確保する上で不可欠な先端的重要技術について、研究開発から技術実証までを推進する制度です。
NEDOも、国家間の覇権争いの中核となる重要技術を国が育成するための制度と説明しています。上記に記載した「政府予算5000億円規模」というのはこのK Programの基金規模です。経済安全保障推進法に基づき創設された基金は約5,000億円規模で運用され、量子、AI、宇宙、海洋、先端通信などの研究開発支援に使われています。
16. 国家情報会議設置法
これは「前政権からの引継ぎ」ではなく、高市さん主導ですね。これも安保関連なので、通常なら法制化は割とハードル高いんですが、高市人気で議席数を伸ばした効果もあり、すんなり通りました。GJだと思います。
16-01. 時系列
2025年10月21日
高市首相就任。所信表明演説で国家情報局創設を表明(LINK)
2026年03月13日
国家情報会議設置法案を閣議決定、同日法案提出(LINK)
2026年04~05月
国会審議。国家情報会議、国家情報局新設が法案の柱
2026年04月23日
衆議院通過(LINK)
2026年05月27日
参院本会議で可決・成立(LINK)
これぞ高市さんの得意分野、政権発足後から可決までが早いです。これも安全保障関連、いずれはスパイ防止法に繋がる布石かな。時系列を画像化してみる。AI有能やなぁ。私が女性なら抱かれてもいいレベル。
16-02. 国家情報会議設置法とは?
これは一言で言うと「日本政府のバラバラだった情報機関を、首相官邸主導でまとめる司令塔を作る法律」です。なぜ作られたのかと言うと、これまで日本には下記のような情報機関・組織がありました。
・内閣情報調査室(内調)
・警察庁
・公安調査庁
・外務省
・防衛省・自衛隊
上記はそれぞれ別個に動いていた訳です。が、欠点として「情報共有が不十分、分析が省庁ごと、首相官邸への報告ルートが複雑」という課題が指摘されていました。例えば「中国の軍事動向、北朝鮮のミサイル情報、サイバー攻撃、外国勢力による影響工作」などは、複数省庁の情報を統合しなければ全体像が見えませんよね。じゃあ、一括管理できる情報組織を作っちゃおうという流れ。こども家庭庁による「別個の省庁にまたがったもんを統合」みたいなイメージだとわかりやすいかな。
法律の柱:国家情報会議
法律で新設される最高意思決定機関。議長は内閣総理大臣です。
法律の柱:国家情報局
こちらが実務部隊です。従来の内閣情報調査室(内調)を再編し、国家情報局へ格上げします。役割は「情報収集、情報分析、各省庁との調整、首相官邸への報告」です。
16-03. 日本版CIAではない
これは米国のCIAの日本版という例えがなされますが、少々違うかな。元々内閣調査室はあって、そこも含めて各省庁の「ハブ」に該当する機関を設立したという事です。おそらくは中国および台湾情勢、中東の情勢、ウクライナ情勢、北朝鮮情勢、国内外のテロやカルト情報などはかなり掌握する精度が高まるでしょう。高市首相も「情報部門が政策判断を支える体制が重要」と説明しています。
17. 防災庁設立(予定)
こっちは引継ぎ案件ですね。背景として、災害対応司令塔の一元化は岸田政権期から議論されていて(この時は進展していない)、石破政権が重点政策として採用。それが完結できなかったのを高市政権下で防災庁設置準備室を設置という流れ。前任者の宿題を片付けた形ですね。現在は衆院通過、今月には参院で可決の見込みです。情報整理すると…
構想・公約化:石破政権→法案提出・法制化見込み:高市政権
です。石破さんも高市さんもGJ案件ですね。
17-01. 防災庁設立経緯
分けて書きます。
【石破政権時代】
2024年10月
石破茂首相、防災庁創設を看板政策として掲げる。(LINK)
2024年11月1日
内閣官房に「防災庁設置準備室」が発足。(LINK)
2025年1月
有識者防災庁設置準備アドバイザー会議スタート。(LINK)
2025年12月26日
「防災立国の推進に向けた基本方針」閣議決定。(LINK)
【高市政権時代】
2026年3月6日
政府が防災庁設置法案を閣議決定・国会提出。(LINK)
2026年5月19日
法案、衆議院通過。(LINK)
2026年6月
法案、参議院通過したら成立
17-02. 勧告権
この組織の最大の特徴は「勧告権」を有するところです。防災庁は、各省庁に対して「こういう対策を実施してください」と求める勧告権が与えられます。これはデジタル庁、復興庁、と同じタイプの強い権限です。勧告権についてはこちらでご確認を。
18. ガソリン暫定税率廃止
これはややこしくて「どこまでが石破政権期で、どこからが高市政権期の進展なのか」というのがあります。ぶっちゃけ私も曖昧ですので、この機会に確認していきましょう。
18-01. そもそもガソリン暫定税率って?
※この章の「前提知識」なので、念のため記載しますが、これは分かっている方は読み飛ばしOKです。
ガソリン暫定税率を理解するポイントは「道路を作るための臨時増税だったのに、50年以上続いた」という一言に尽きます。ガソリンには元々「揮発油税(国税)」と「地方揮発油税」という税金がありました。これが暫定ではない「本則」の税率。その上に1974年「道路整備の金が足りない」として追加されたのが暫定税率。
18-01-01. 暫定税率がなぜ作られたか?
1970年代の日本は高度経済成長の真っ最中。当時は自動車保有台数が急増、高速道路網の建設、地方の道路整備が国家的課題でした。が、1973年に忌まわしき第1次オイルショックが発生。インフレや景気悪化で財政事情も厳しくなります。(なんとなく現在とシンクロしますね)そこで田中角栄内閣は「2年間だけガソリン税を上乗せして道路財源を確保しよう」として暫定税率を導入しました。当時は本当に「一時的なもん」のつもりだったんでしょう。当初は1974年~1976年の2年間限定。しかし、道路整備はまだ必要、財源が足りないとして延長、さらに延長、さらに延長を繰り返しました。
18-01-02. いつから問題視されたか?
2000年代になると「もう十分道路はできただろう」という議論が強くなります。しかも道路整備目的で取っていた税金が余り始めたため、2009年には道路特定財源制度が廃止されました。(LINK)実は2009年以降は性質が変わった。ここが重要です。
1974~2008年: 道路整備のための税金
2009年以降 : 一般財源
つまり、税収は道路以外にも使われるようになりました。例えば社会保障、教育、防衛、地方交付税などですね。2010年に法律上は暫定税率が廃止されています。ただし、その代わりに「当分の間税率」という制度が作られました。つまり法律上は「暫定税率は廃止した」けど「同じ税率をそのまま残した」という状態でした。そのため近年は正確には「旧暫定税率」「当分の間税率」と呼ばれることもあります。
18-01-03. いくら上乗せされていた?
ガソリン1リットルあたりで見ますと
本則税率:28.7円
上乗せ分:25.1円
合計税額:53.8円
つまり、よく言われる「ガソリン税25円を廃止」というのは、この上乗せ分25.1円のことです。
18-01-04. なぜ廃止が難しかった?
理由は単純で、税収が巨大だから。ガソリンと軽油を合わせると、国と地方で年間約1.5兆円規模の税収があります。そのため、歴代政権は「暫定だからやめたい」といいながら、「財源がなくなるからやめられない」を50年間繰り返してきました。
ここまでがこのトピックの前提知識です。さあ、本筋に戻りましょう。
18-02. 時系列:石破政権期
結論から言うと、ガソリン暫定税率廃止については、石破政権期に「政治的合意」までは到達していましたが、「実施時期・法案成立・財源確保」までは進んでいませんでした。高市政権は、その合意を実際の法制化・実施まで持っていった、という評価になります。どっちが100%ではなく、道筋を石破政権期に作って、高市政権時にたどり着いたって理解でいいでしょう。
18-02-01, 2024.12.11 自公国三党合意
2024年12月11日、自公国3党が「廃止」で合意。石破首相の下で、自民党、公明党、国民民主党の3党幹事長が「ガソリン暫定税率を廃止する」ことで正式合意しました。下記記事は「年収の壁」がタイトル冒頭に来ていますが、暫定税率のお話も記載されていますのでご確認ください。
ただし、この段階では「いつ廃止するか、財源をどうするか、地方税減収をどう補填するか」は未定でした。
18-02-02. 2025.02.21 石破総理「時期は言えない」
国会答弁で石破首相は「約束だからやる」と述べる一方で「勝手に時期を申し上げることはできない」と答弁しています。理由は「国税減収、地方税減収、代替財源が未整理だった」ためです。
野党から「ゼロ回答」と批判がありました。
18-02-03. 2025.08.01 野党、暫定税率廃止法案提出
国民民主党や立憲民主党は「廃止法案提出、早期実施要求」を行いましたが、与党は財源問題を理由に慎重姿勢を維持。そのため「廃止合意はしたが、実施工程は決まっていない」という評価が多かったです。
18-03. 時系列:高市政権期
10月に高市内閣発足。高市早苗は就任直後の経済対策で、ガソリン暫定税率廃止、103万円の壁見直し、物価高対策を重点課題に掲げました。
18-03-01. 2025.11.28 暫定成立廃止決定
半世紀続いたガソリン暫定税率の廃止はきっちり年内に答えが出ました。廃止時期は2025年12月31日。
負担減の内容は
ガソリン:▲25.1円/L
軽油 :▲17.1円/L(経由の廃止時期は4月から)
となりました。原油高の中、自動車がないとなかなか厳しい地方民としてはありがたいです。
18-03-02. 補足:補助金
実は政府は「税率廃止まで待たずに価格を下げる」方針を採用しています。資源エネルギー庁によると「2025年11月中旬から補助金を拡充、12月中旬には暫定税率廃止と同等の値下げ効果を目指す」制度設計。(LINK)つまり、「補助金で先に下げる → 税率廃止で制度化する」という二段構えでした
なお、2026年春以降も中東情勢による原油高騰を受け、ガソリン補助を継続
必要なら増額も検討との方針を高市首相が表明。
これは執筆している6月時点でも継続中です。
18-04. 財源問題は?
ここの評価が難しいのが、ここはまだ継続審議中なのですよ。現時点では「完全に決着した財源」はありません。むしろ、ガソリン暫定税率廃止法は成立したものの「代替財源は今後協議する」という形で政治決着したのが実態です。見切り発車という評価も、まあそうなのかもです。
まず、どれくらい税収が減るのかというと、政府や財務省の試算では「ガソリン税、軽油引取税」を合わせると、国・地方で年間約1.5兆円の減収になるそうです。このため財務省は一貫して「財源面の対応が必要」という立場でした。
19. 「私に恥をかかせるな」発言
これはニュアンスが難しい問題です。言葉が強めなので、高圧的に聞こえもするし、身内の冗談のようなイメージもあるし。私もよくわかっていないので、一回検証してみましょう。
19-01. 発言の背景
2026年2月27日の衆院予算委員会で、高市首相は、米国との関税・投資交渉を担当する赤沢経産相について「私がトランプ大統領と堂々と渡り合えるように働いてくるのが赤沢大臣の仕事だと考えております。私に恥をかかせるなと言ったよね」と述べました
文脈としては、
・赤沢氏が米側(ラトニック商務長官ら)と事前交渉を行う
・その成果を踏まえて高市首相がトランプ大統領と首脳会談を行う
・事前交渉が失敗すると首脳会談も不利になる
という流れです。つまり「私の面子を守れ」というより「首脳会談で日本が不利にならないよう、事前交渉をしっかりやってくれ」という意味で使われたことは読み取れます。
19-02. 赤沢氏本人の反応
興味深いのは、赤沢氏自身はかなり軽く受け止めているように見えることです。国会でも笑顔を見せており、後の地元での講演でも「上司からよく言われている台詞なんで…」と冗談交じりに語っています。少なくとも公開の場では、強い不満を抱いていたという様子は確認できません
一見、「私に」恥をかかせるな、なので「国のため」というよりは「高市さんのため」に見える発言だし、もっとソフトなワードチョイスもあっただろうに、と思わなくもないですが「次の交渉が眼前に控えているので、その前に躓かないで」という意味合いだとも思えます。私見は色々あるでしょうが、現在確認できる情報はこのくらいかな。
20. この記事まとめ
一回総書き直ししたから、リリースにめちゃめちゃ時間がかかってしまいました。40,000字超えたなぁ…。Vol.2で終わればいいけど、まだいまいち「どこまでのトピックが出てくるかが見えないっす。

