いかにして配達員不足が起こったのか?
経緯
コロナ前まではクチコミやブロガーなどの情報により、気軽にできる副業として配達員が順調に増えていった時期だった。稼ぎは今より断然少なくアルバイトと大差なかったが、自由にできる点が魅力でどんどん参入した。
2018年当時の稼ぎは、東京都心でも真夏日に9時間半稼働して13000円、時々雨・猛暑日・土曜日という条件でも、14時間稼働して27000円程度だったという。
この頃、筆者も一時期だが稼働していたが、単価は決して高くはなく、1000円以上のものは滅多になかったと記憶している。
下記の実際のリザルトでも、時給換算すると1400~1900円程度だった。2026年の真夏日だと、9時間半稼働すれば3万円以上、時々雨・猛暑日・土曜日に14時間稼働すれば5~6万円が視野に入るだろう。それに比べるとかなり劣るし、「安くて運べない」と言われるレベルだが、アルバイトと違って仕事開始も終了も自由であるという訴求力、新しい仕事というインパクトは今よりも大きかったのではないだろうか。
2020年、コロナ禍に入ると状況が一変する。
外出自粛や時短営業で需要が増加したのである。ウーバー以外の他社も多数参入、配達員の争奪戦に入る。各社ともに配達員を紹介すると一人当たり数万円の報酬がもらえたので、紹介屋と呼ばれるようなブロガーが大活躍した。コロナによる失業者の受け皿となったことや、休業したり本業の仕事が減った人が登録したこともあり、ちょっとした配達員登録ブームが起きた。
特に出前館やフードネコなど、新たにギグワーク型のデリバリーを始めたプラットフォームでは、配達員確保のために1件715円~1000円以上と、当時としてはかなり高額な配達報酬が出るようになった。
当時のUber Eatsの報酬単価は400~600円程度(東京都心部のピークタイムで550~850円程度)だったが、出前館は距離関係なく1件715円の固定報酬となった。
フードネコは近距離でも遠距離でも1件1000円、ピーク時は1件1200円に設定された。menuやChompyも遠距離依頼では1000円以上になるケースがあったが、フードネコは間違いなく「チート」級のインパクトであったといえよう。
当時のまとめ記事から引用する。
さらにWoltなど一部のプラットフォームでは、オンライン時間中の最低時給保証(依頼が入らなくても一定程度の収入を保証する)も行った。
このように、コロナ失業・休業にデリバリー需要の増加と配達員確保のためのニンジン、各種メディアによる影響が噛み合い、配達員は一気に増加したとみられる。
その一方で、Uber Eatsは配達員が急増したことによる弊害が出始めた。特に秋以降はGoToイートによるデリバリー需要の減少もあり、配達依頼の奪い合いとなり稼ぎが減ったという。
当時の東京新聞記事から引用する。
東京・三軒茶屋のマクドナルド前。ウーバーからの配達依頼が多く、稼ぎを狙う配達員が行列するため「ウーバー配達員の聖地」と呼ばれる。「コロナが拡大した3月ごろから配達員が急増し、10月にGo To イートが始まり宅配需要が落ちた。仕事の奪い合いで収入は3割減った」。派遣会社を辞め配達員を本業にした男性(52)は肩を落とす。
配達員の人数について、ウーバーイーツ日本法人に問い合わせても回答はない。配達員らでつくる労働組合ウーバーイーツユニオンの土屋俊明執行委員長は「以前、東京エリアで1万人と言われたが、今は数倍ではないか」と語る。
新宿や池袋を中心にバイクで配達する土屋氏は「8月までは時給にして1500~2000円は稼げたが、最近は1500円に達しない」。ガソリン代を考えれば「最低賃金(東京都は1013円)を下回る」と嘆く。
実際、これは決して誇張ではない。当時の配達員のリザルトからも裏付けられている。
記事執筆の1か月ほど前のリザルトだが、時給換算が約1000円程度にとどまっていた。秋・GoToイート・晴れという逆風の条件も重なり、経費を入れれば最低賃金を下回っている可能性が高い。
半年前に配達員を始めた男性(35)は「以前のバイク便のようになってしまうのでは」と不安を抱く。バイク便はバブル期に急拡大、その後、過当競争により配達員の報酬が引き下げられ「かつては月に100万円稼ぐ人がいたが、今は20万円ぐらい」(バイク便協同組合)という経緯がある。
男性は東京の私大大学院で化学の修士号を取得。リーマン・ショックで就職に苦労し、ようやく恵まれた会社員生活を送り始めたところでコロナ禍に。在宅勤務となって労働時間の報告を何度も求められ、心身を崩して退職した。
配達員は1回の配達で約500円の収入。朝から晩まで約30件こなし、週6日で月収約35万円。さらに週2日、福祉施設で夜勤のアルバイトも。「稼げるうちに稼いでおきたい」と疲れた体にむちを打つ。
今思えば隔世の感がある内容である。まるで就職氷河期時代の労働環境を見ているようだが、これがたった6年前のことである。この頃から次第に改善していき、配達員不足に転じていくのだが、道のりは平坦ではなかった。
2021年3月の記事では、サービス地域を全国に広げれば、当時約10万人だったUber Eats配達員は最大で20万人に倍増する見通しとされていたほどである。
この頃の報酬単価は約500円と、後の「300円」に比べればマシだった。問題は、配達員が多いので「鳴る」かどうかが一番で、その次にどこに飛ばされるか(ダイナミックプライジング導入まで、配達リクエストを受諾する時点では単価も行き先もわからなかった)だったとみられる。
2021年5月、Uber Eatsはダイナミックプライジングを導入した。これにより報酬単価の設定が変わった。それまでは、簡単に言えば「距離+ブースト+ピーク報酬」で決まる仕組みだった。良く言えば平等感があるが、悪く言えば個々の依頼の状況に合わせた単価設定ができず、調理完了から時間が経った依頼も、オーダーが入ったばかりの依頼も同額になるという欠点があった。一方で、ダイナミックプライジングでは、最低単価を300円に設定(後に320円に引き上げ)するが、より柔軟に単価設定がなされるため、調理完了から時間が経った依頼は配達員を確保しやすくするために高額に設定するなどのアルゴリズムが働くようになった。
顧客満足度の向上が目的の一つと思われるが、コスト削減の意図もあったことは明らかであろう。
「コスト削減」は報酬単価に如実に現れた。ダイナミックプライジング導入早々に報酬が下がる事例が現れた。自転車では軒並み1件300円程度になった事例もあり、中には約7kmの距離で300円の事例すらあったという。こうして徐々に報酬を回収するフェーズに入ったとされた。
これによって、Uber Eatsから、より条件の良い他社での稼働に切り替える配達員が増えたことも一因であろうか、配達依頼の「鳴り」は少しずつ改善されていった。
データがある限りでは、この頃が配達員数のピークであったと思われる。
2021年10月の記事では、フリーランス協会の調査で15万7000人、うちUber Eatsの配達員は10万人を超えているとの報道もあり、フードデリバリー配達員の実数は20万人を超えていると推測された。
当然、飲食を運ぶ配達員も増加している。まとまった統計はないが、プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会の調査によると約15万7000人。しかし、最大手のウーバーイーツだけで10万人を超えているとの報道もあり、実際の配達員は20万人を超えていると推測される。
当時稼働していた筆者の記憶では、2021年10月頃は「閑散期」ではあるものの、前年2020年10月頃の見聞のような極端な鳴り渋ではなかったという印象である。これは、オーダー数が1年間で明確に増加したことが要因の一つであるとみられる。
一方、出前館は少しずつブーストを上げ始めた。土日は基本報酬×1.4倍で1001円になった。
この年の11月からは関東1都3県における送料無料キャンペーンを実施。時間帯やエリアによるが、最高で1件2000円以上などの報酬で配達員を確保した。
しかも、距離に関係なくその額が適用されるため、配達距離が0.2kmの依頼も6kmの依頼も等しく同額であった。
さらに当時は現在と違って、掲示板のような配達依頼リストから依頼をピックアップして受諾する「早押し」方式だった。
つまり、短距離依頼を回したり、同一方向の依頼を複数受諾するなど要領よく依頼を受諾すれば、かなりの報酬を得ることができた。
上記ポストにもあるが、時給5000円も可能で、筆者実例では最高で時給換算1万円近くに到達したこともある(これは最大限に要領良く立ち回り、運も味方して様々な条件が噛み合った結果だが)。月収にして約100万円やそれ以上稼ぐ配達員もいたとされ、WBSでも報じられている。
もちろん良い面ばかりではなく、依頼の受諾後キャンセル(受けキャン)がほとんど不可能だったり、自分で立ち回りを組み立てる必要性が高かったり、短距離の依頼は争奪戦であるなど、上位を狙うにはかなりの工夫・要領・努力・投資が必要で、非常にストレスフルなものだったといえよう。
先のUber Eatsの件に戻るが、この頃のUber Eatsは歴代史上最低単価であった。
2022年1月頃の報酬単価は、ポストにもあるが軒並み「300円ないし300円+α」で、出前館とは非常に大きな差があった。東京都心などではもっとマシな単価の場合も多かったとされるが、依然として非常に大きな差である。
それでも、出前館のストレスフル稼働が苦手であれば、第一の選択としてはUber Eatsでひたすら件数を回してクエスト報酬目当てで稼働するしかなかった。
foodpandaは出前館には劣るものの高報酬だったが、シフト制でシフトに入れないと稼働すらできなかったし、何よりこの年の1月末で撤退している。
menuやWoltはというと、単価はUber Eatsより概ね良いが、こちらも配達員が多くて鳴りが悪いことも多く、選択肢は限定的だった。
フードデリバリー、特にUber Eatsや出前館は、この頃が史上最も利用者数が多かった時期であった。
下記記事の資料にもそれが示されている。
加えて驚くべきことは、歴代史上最低単価の時期であったにもかかわらず、こんな広告が放映できているくらいにはオーダーが捌けていた、ということである。
裏を返せば、それだけ「低単価でも運ぶ配達員が多かった」ことを意味する。そしてそれは「利用者数は多かったし、配達員数も多かった(出前館など他社で依頼が取れなかったり、苦手であればUber Eatsで稼働するしかなかった)」ことを示唆しているといえよう。
一時期は1件2000円以上にまで設定された出前館の報酬単価は、送料無料キャンペーンが終了した2月から徐々に引き下げられた。この頃からは緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による時短営業措置なども徐々に緩和され、それに応じて利用者も漸減していった。合わせて配達員の新規流入も減少し、既存配達員も減少傾向に転じたと推測される。
ちなみに1月末に撤退したfoodpandaは、撤退の理由の一つとして「配達員の確保困難」を挙げていた。当時の筆者の感覚では、その理由はやや大袈裟に感じたが、今考えると既に「配達員不足時代到来の前兆」が現れていたのかもしれない。
Uber Eatsの配達員数は、2022年9月時点では13万人以上いた(※1年以内に1回以上配達した配達員)が、その後減少していく。
この頃のUber Eatsの報酬は、エリアによるものの自転車の場合は依然として厳しい低単価が続いたとされるが、バイクの場合は多少改善され、筆者の感覚では500~750円程度なら日常的にみられるようになった。(1000円以上は悪天候時や大量注文などがメインで、レアだった)
これもあり、配達員は自転車からバイクなどに乗り換えるようになった。
このことは、フリーランス協会の第一回調査と第二回調査での変化からもうかがえる。
https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2022/03/202302FreelanceSurvey2022.pdf
https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2025/04/FreelanceSurvey2025.pdf
変化を表にすると、以下のようになる。(東京など都市部に限らず地方部も含むため、軽貨物などの割合が高めに出る)
配達手段
第1回(2021年) 第2回(2024年)
自転車 約50% 23.4%
原付バイク 約40% 53.1%
軽貨物(軽自動車)約10% 21.2%
しかし、春や秋などは配達員が充足どころか余るために「鳴り」が悪く、ある配達員は朝から夜まで丸一日稼働して16000円程度しか稼げなかったことさえあったという。
一方で、悪天候時や日曜祝日などは需要が多くなるため、当時としては充分に稼ぐことができた。
Uber Eatsについてはすでに「低報酬化していてオワコン」的な論調の記事も増え始めており、新規参入は2020~21年と比較して格段に減っていたものと推測される。
転機が訪れたのは2022年11月である。アプリ上での表示から、俗に「シミ」と呼ばれたピーク料金が廃止されたのだ。これによってダイナミックプライジングがより働くようになり、1件2000円以上の高額依頼が来るようになった。丸一日稼働したときの売上もクエスト抜きで3万円以上となるケースが次第に見られるようになった。
ただし自転車のオフピーク時1件300円などはそのままで、高額依頼が来るようになったことはニュースなどでは全く報じられなかった。
翌2023年に入ると、悪天候時などには次第に明確に報酬が上がるようになり、鳴りも「爆鳴り」に次第に近づくようになった。出前館など他社でも、上がり幅が以前より上がった。この年の5月のGW最終日は丸一日雨が降り続いたこともあり、筆者自身7万5000円近くを稼いだこともある。
ただし春や秋などの閑散期は以前と変わらず、鳴りも稼ぎも良くなかった。
これが変わりだしたのが2023年末頃である。これまでとうって変わって悪天候時などでなくても単価相場が目に見えて上がり、自転車の単価も改善された。配達員が減少し、月間利用者数は横ばいなのに鳴りも良くなってきた。
翌2024年の2月には、1日で10万円を稼ぐ配達員まで出現している。今ではロケットナウの高単価ばら撒きもあり、一日中雨の土日だと誰か一人は10万円稼ぐ配達員がいるし、今ならもっと短時間(14時間等)で達成するケースが多いが、当時この数字はチート級だった。
にもかかわらず、「報酬が改善されてきている」といった事実はきちんと報じられず、ネガキャンのような内容ばかりがネットメディアに上がっていた。
むしろ、単価相場がじわじわと上がり続けたことで配達員の感覚が変化し、閑散期などに一時的に単価が落ちた(実際には上がる前と同じくらいになっただけ)際に「単価が下がった!」と声を上げる者が増えたし、ニュースなどはほとんど全てが「報酬が下がった」というものだったので、当然新規配達員は増えなかったとみられる。
2023年9月時点で、アクティブな配達パートナー数は10万人に減少している。これ自体は2022年9月の「13万人以上」と異なり、定義の違いがある可能性があるので断言はできないが、その後2026年に至るまでエリアは拡大を続けているにもかかわらず「10万人」のままであるため、実質的な減少は現在に至るまで続いているといえる。
2024年春には、一時的に「閑散期」らしい鳴り渋が訪れたが、閑散期らしい閑散期はこのシーズンが最後となった。
ポストコロナでも需要は減少せず、ウーバーのエリアや展開業種は増え続けるのに、新規配達員が充分に増えず配達員不足傾向は悪化の一途をたどった。そして、最繁忙期である真夏にオーダーストップによる低単価化が発生する。
具体的には、2024年7月下旬ごろ、それまで神奈川県などを中心に異常な高単価相場が続いていたウーバーだったが、突然単価相場が急落したのだ。
概ね分単価21円から25円という水準にまで下がってしまった。見積もり15分の依頼であれば概ね320-375円になる水準である。
※その年の5月にアルゴリズムが変わったため、他方では6000円から9000円の超高単価案件も特定条件下で出現するようになったため、2021年-22年の事例に比べると遥かにマシであるといえる。
当然、多くの配達員は依頼を拒否するようになり、他社で稼働する配達員が増えたのは言うまでもない。
これは、オーダーストップ→注文数が減る→ダイナミックプライジングのファクターの一つである「注文数」の働きが弱くなる→単価が上がらない、という構造であると推測される。
単価相場が以前と同じような水準にまで回復するには約3週間を要した。
年末年始もこれに類似した事態が発生しており、年末年始の事例では「需給バランスの崩れ」が原因であると代表本人が述べている。
「今回のトラブルの原因は、年末年始に需要が非常に大きく伸び、供給とのバランスが崩れたことにあります。結果、配達パートナーはいても、調整が間に合わずに今回の事態となってしまいました。我々もここまで需要が伸びるとは思っておらず、下に読み過ぎたというのが大きな反省点です。もちろん、現在は通常通りに戻っています」(中川氏)
「需要が増えれば増えるほど配達単価が上がっていくというシステムになっていますので、そこのバランスの取り方ですね。これも基本的にシステムでリアルタイム対応しているのですが、一部で極端なバランスの崩れ方をして正しく動けなかったというのが今回のトラブルの要因ですから、事前に『もう少し極端になるかもよ』とAIに学ばせておくというアクションを取っています」(中川氏)
経過やメカニズムが類似していることから、この事例も需給バランスの極端な崩れによって報酬を計算するアルゴリズムが正しく働かなかったことが原因だと推測できる。ここでは「配達パートナーはいても調整が間に合わず」とあるが、単価や鳴りの変化から推測すると、この年の6月ごろから配達員不足が深刻さを増していたことに先回りしてアルゴリズムを調整するなどの対処がなされなかったことが要因と思われ、配達員不足が原因(遠因)にあることは間違いないと思われる。
いずれにせよ酷暑の中やるには低い単価だったので、それを訴える者が続出、ネットメディアでも「報酬が下がった」と報じられる。
当然、新規が増えないので配達員不足がますます加速する悪循環。9月ごろからは高単価に戻ったし、この年の秋は閑散期とは思えないような鳴りだったし、10月に月収100万円稼ぐ人もいたほどである。
しかし、当然そのことは報じられず。
逆に、こんな記事が書かれたりもした。
なので当然配達員は減り続けるしかない。実際には自分含め年収が上がった配達員が多かったのだが…
2024年のあらすじとしては、
需給バランスの変化などもあり、単価や鳴りが以前より改善される→配達員はより稼げるようになる→
しかしそのことは外部には伝わらず、「悪化した」という情報ばかり発信される→
新規配達員が増えない→
配達員不足が原因で最繁忙期にBOし、アルゴの問題で単価ダウン→
配達員が拒否しまくる→
料理が届かない→
原因は「単価ダウン」と報じられる(事実といえば事実だけど)→
ますます新規配達員は増えないし既存の配達員も離れていく
という流れ。
配達員不足が解消されないまま年末を迎え、再び真夏の事件の再来を迎えてしまう。
さらに大きく報じられ、テレビでも取り上げられた。
ここでも原因は「単価ダウン」と報じられた。Uberはもはや「ポストコロナで低報酬化している」とレッテルを貼られてしまった。
2月に入って、年末年始によくみられた「渋谷道玄坂でのクジラ案件」が朝日新聞で報じられるようにはなった。
しかし、これはある種のハッキングのようなやり方だし、今は当時に比べると出現率が下がっているので、効果は限定的だろう。
こうして完全に負のスパイラルで、無策なままでは配達員不足による遅延の増加や送料の増額による利用者離れが進み、やがて事業の継続が困難になるだろう。
この流れを食い止めないといけないのだが、Uberは相変わらず無策なまま。
Uberはクエストの見直しや増額で配達員を引き付ける考えのようだが、これまでの流れを見る限り、これもその場しのぎでしかないだろう。
1年持てばいいほうで、それからは元通りの惨状になると断言していい。
(追記:後述するが、追記時点(2026年7月初頭)時点ですでにそのような惨状になってきている)
2025年5月からは新たにロケットナウが東京23区全域にサービス範囲を拡大し、送料無料・サービス料無料・クーポン5000円分配布に加え、高報酬などの破格の条件でシェアを一気に奪いに来ている。
Uberも負けじと都心部などで配達報酬を増額し、「配達員の争奪戦」の形相を呈している。
実際、都心部ではバイクのみならず自転車配達員でも、いずれかのプラットフォームで1度に2000円~4000円の単価の依頼が来ることは全く珍しくなく、日常風景になっているほどだ。
8月には月収190万円を達成した配達員もいたし、月収100万円以上達成した者は少なくとも2桁に及ぶ。
この流れは2026年にも続き、例年だとむしろ閑散期扱いされることすら多かった6月に、神奈川・自転車という条件でも月収110万円以上を稼ぐ者が現れたほどである。
言うまでもなく、今までで一番配達員が稼げる時代が到来しており、これは2026年においても変わらない。
2026年2月頃からは、「送料・サービス料無料」をうたうロケットナウに追従して各社が送料無料や「お店と同価格」を本格的に開始。利用者確保に努めている一方で、それまで黒字だったUber EatsもUber One適用時の条件をロケットナウ並みにしたことで、赤字転落する可能性が高いとみられる。
ロケットナウはさらに高い報酬(雨の日は一回の配達で約7000円という、非常に高額な報酬の依頼もあった)で配達員を囲い込み始めている。
Uberもクエストをより細分化してクエスト報酬を高額化(以前は120件で2万円程度だったのを、週前半と後半で合わせて260件で5万円以上、高い時期は10万円以上)し、ピークタイムのクエスト(6件で600~900円等、高い時はより高い)を導入し、配達員を囲い込もうとしている。
出前館もついに「雨クエスト」を出すようになったという。
それでもUber Eatsや出前館の配達員不足は深刻化の一途をたどっている。
Uber Eatsはロケットナウの囲い込みにより、稼働する配達員がさらに速いペースで減少としたとみられ、しまいには6月末に悪天候時のオーダー制限に由来する「単価が他社に対抗できるほど上がらない」現象が発生。「1時間以上待たされた」「届かない」などの事例も出てきている。
https://x.com/osakesuki114/status/2072160720251449666
出前館は、すでに「ドライバーを確保できなかったためキャンセルされました」という事例が続出している。今年4月の時点でもすでに続出していたほどである。
このような状況は、フードデリバリーを「生活インフラ」としたいプラットフォーム各社にとっては致命的な信用毀損事態であると言わざるを得ない。
だが、それにもかかわらず「配達員を募集するPR」はほとんど行われてこなかった。ここ最近になって、ようやく出前館やロケットナウ、WoltがWEB広告を出し始めたが、報酬や自由度などを全面的に押し出した訴求力のある内容ではなく、訴求力ではタクシー会社はもちろん、バイク便企業にすら負けていると言わざるを得ない。詳しくは筆者別記事を参照されたい。
以前よりもさらに高報酬になって利用者も増えているのなら、配達員を積極的に募集して新規参入を増やすほうがwin-winではないだろうか?
配達員不足が起こった「4つの要因」
いかにして配達員不足が起こったかについて、個人的な考えとしてあるのは
①報酬の低下(主に'21-23年頃)による既存配達員の減少
きっかけはこれだろう。21年5月のUberのDP導入で、特に自転車は報酬が下がった。バイクも以前より上がった事例は少なかった。ちょうどこの時期はコロナによる求人減から回復が進んでいた時期なので、Uberをやめて雇用される仕事に戻った人も多かったのかもしれない。
ただし22年11月以降は徐々に上昇傾向に転じたし、24年以降は閑散期も含めて上昇が続いている。25年に入ると、東京を中心に過去最高レベルの報酬水準になった。その後も全体的な報酬水準は概ね緩やかな上昇傾向にある。
問題はこれがきちんと一般に報じられていないこと。そのため②の流れに歯止めがかからず。
②新規配達員の減少
コロナ禍の諸々が落ち着くにつれて配達員になる人が減ったこと。これは①により悪い口コミが広がったのもあるが、ここ最近の場合はメディアなどで「稼げなくなっている」と報じられ続けたことが最大の原因だろう。
たとえば、こんな記事があった。
神戸市の事例だが、神戸市は人口150万人を抱える大都市であり、2時間待って注文ゼロとか時給300円台などは、意図的にそうなるように注文を拒否するか、市域の端の農村部(神戸市は広大なので農村部も存在する)に行かない限りあり得ないと断言していい。
だが、実情を知らない一般人は、これを見て「こんなに稼げなくなったんだ」「配達員興味あったけど、やめておこう」「みんな報酬下がったと言ってるけど、ここまでだとは…」と感じるのではないか。特に新規配達員の減少には絶大な影響を及ぼしているものと推測される。
一方で、タクシー会社などの広告は「月収70万円以上可能」「月収保証」など、高報酬を直接的にアピールしたものが多いため、どれくらい稼げるかが誰でもわかりやすく、「それならフーデリじゃなくてタクドラをやるわ」と考えても全くおかしくない。事実、大阪府内だけで2025年7月末日時点で前年同期比で50歳未満の法人ドライバーが1,018人も増加したという。(リンク先はこちら)
加えて、タクシー関係だとこんな記事もあるほどだ。内容は「高収入」と「休日の多さ」をアピールポイントとした、20代向けの記事である。
一方で、フードデリバリー各社の広告にこのような要素はほとんど見られない。このことが、新規配達員の減少傾向に歯止めがかかっていない要因の一つだろう。
「こんなにたくさん稼げている」「副業なのに月収50万円超え」というような報じられ方がメインだったら、配達員不足はここまで問題化せず、2025年の真夏や年末年始の事件はなかったはず。
これは④も原因として大きい。とにかく一定以上の新規配達員を確保しないといけないのに、それが出来ていない。
③利用者数がそこまで減っていない(むしろ増えている?)
簡単に言うと「利用者数に対して配達員が減りすぎている」ことを意味する。デリバリーアプリのユーザー数について、2020年から2024年までの統計がある。
この統計によると、
Uber Eatsの配達員が「13万人」と公式Xアカウントでポストされていた2022年9月の利用者数は約475万人だったが、10万人と代表が語った(この月のテレ東BIZの番組で、代表が実際に述べていた人数である)2024年5月時点では424万人である。すなわち、利用者数は11%減少したが、配達員数は23%も減少していることになる。
出前館の場合はIR資料を見る限り、むしろ2024年以降利用者数が明確に減少傾向にあるが、「配達員がいなくてキャンセルされた」というポストはより目立つようになってきている。出前館で稼働する筆者友人の配達員によると、以前より明確に「爆鳴り」の傾向が現れているとのことであり、配達員不足が急ピッチで進行しているものとみられる。
これにより、送料無料・店頭価格などの大胆な施策による注文増加の効果を労働供給制約によって台無しにし、経営環境を悪化させている可能性が高い。(これは7月15日の四半期決算発表で明らかになるだろう)
東京都心部やその周辺エリアでは、そこに追い打ちをかけるように破格の条件でロケットナウが参入してきたので、減少を続ける配達員数に対してフードデリバリーの利用者数は増加していると推測され、現に配達員の争奪戦のような形相を示しつつある。
2025年の記事でも、代表は「配達パートナーは10万人で推移している」と述べているし、2026年の記事でも同様である。
しかしロケットナウの参入もあり、東京都心部におけるここ最近の体感の限りでは、Uber Eatsを稼働する配達員数はより少なく、ここ最近は減少幅が強くなっているように感じられる。
④会社側の誤った判断や無策
これは両方あるが、まずは前者について述べる。
前者は出前館が代表事例、後者はUber Eatsなどが代表事例である。
まず前者について述べる。
出前館は2020~2021年ごろに他社より高い報酬で配達員を惹きつけたが、配達員が多く、日系企業でもあるため、品質維持を理由とした制裁措置も強力だった。
2022年春頃までは、「トラブルカウント」(受けキャンしたり苦情が入ったりするとカウントされる)が一定期間内に3回入ると永久アカウント停止になる仕組みだった。現金払いの精算が一定期間遅れると、それだけで永久アカウント停止になるケースもあった。
後に5回に緩和され、2025年6月頃からはトラブルカウント制は廃止されているが、永久停止されたアカウントの「恩赦」はなされていない。
この強力な制裁措置によって稼働する配達員が減少し、後の「キャンセル祭り」が起きるほどの深刻な配達員不足の原因を作ってしまった面は決して小さくないだろう。
後者について述べる。
「稼げなくなっている」と報じられたら、当然新規配達員は減るしかないわけで、会社側としては「そんなことないよ、こんなに稼げているよ」というメッセージを発信するとか、もしくは稼ぎをそこまで求めない層にスキマ時間で出来る自由な働き方をアピールするなどして配達員を確保する必要がある。
が、Uber側はそれを怠っている。
発信したとしても軽く代表が発言してネット記事になったくらい。
それも、
「配達パートナーが減っているであるとか、持続可能性に懸念があるといった旨の報道も拝見しましたが、そういったことは一切ございません。稼働している配達パートナーさまの人数は安定しており、月間アクティブ10万人で推移しております。年末・年始は稼働人数が減る時期ではあるのですが、それは例年同様であり、大きく数を減らしたということもありません」(中川氏)
さすがに危機感なさすぎじゃないのか。実際の稼働人員は明らかに10万人もいないはずだ。
別の記事ではこう。
――ポストコロナで配達員数は減っていませんか。
減っていない。アクティブな配達パートナー数は10万人おり、規模は維持している。今後、新たなサービス対象エリアを拡大していけば、その分だけ配達パートナー数は増加していくだろう。
実際には「減っている」。先述したように、2022年7月には13万人いたのが、約3万人減少している。
こりゃ駄目だ(諦観)。
当時よりエリアが広がっていることを考慮すると、配達員が減っていることは危機的な状況ともいえ、あまりにも楽観的すぎるように思う。
はっきり言って、配達員不足に歯止めがかかる要因が見当たらないし、どんどん悪化する未来しかない。
まるで「令和の牟田口廉也」ではないか。
現在は雨クエの額を増額したり(ここ最近は1件100-150円だったが、1件400円など)、ピークタイムのクエストを設定したり、日跨ぎクエも週前半と後半で二分割した上で、増額・選択制への移行・件数上限の引き上げ(それぞれ最高130件・130件達成時の追加報酬は2万6000円~7万円以上)などで配達員を引き付けているようだ。
だが、これも先述したように「その場しのぎ」で、1年持てばいいほうだろう、と2025年時点で予想したが、すでにそうなってきている。
都心部以外の地域でも、ロケットナウが依頼によって1件数千円、場合によっては1件7000円以上などの高報酬を出し始めて囲い込みを始めたことに発する「配達員の争奪戦」となり、単価が上昇傾向にある。
それをもってしてもピークタイムや悪天候の日には配達員を確保できない状況である。
筆者自身、ピークタイムに稼働していて数千円などの「これは単価高いな」と思った依頼を受けると、調理完了から数十分経過した依頼であることはザラである。
一時期、Uberは配達パートナーの紹介報酬を3万円から5万円に増額したが、そもそも「美味しい仕事を人に教えようとしない」傾向があるのだから、はっきり言って無意味に等しいだろうし、実際にこれによって配達員不足が改善されたようには全く感じられなかった。
Uber自らがアピールして人を増やす路線に変えない限り、1年すら持たないのではないか。
その時、彼がどう動くのか。
ようやく配達員確保のために本腰を入れるのか、送料増額とオーダー制限でリピーターを減らしつつごまかすのか。
令和の牟田口廉也のようなやり方を彷彿とさせる彼が、きちんと動くかと言われると、自分は頷くことは出来ない。
代表が変わらないと、Uberの姿勢もかわらないのかもしれない。
とはいえ、他社も「配達員の高収入や自由度をアピールして配達員確保に努める」ことを積極的に行っているものは一社もない。業界全体レベルでの危機感のなさが問題なのかもしれない。
ロケットナウもそうで、報酬設定などから推測すると「新規配達員を広告して増やす」よりも「金の力で他社から配達員を奪い、囲い込む」という考え方であるとみられる。そのしわ寄せが、Uber Eatsや出前館の配達員不足のさらなる悪化、
いずれにせよ、今のままでは事業の展開や採算性に重大な悪影響を及ぼす問題に発展することは確実だ。
我々配達員にも、そのしっぺ返しが確実に来るだろう。
※2025年8・9月追記。配達員不足を高報酬と囲い込みのようなクエスト設定で無理やりカバーしているように思われるが、相変わらずその場しのぎでしかないように思える。
※2026年7月再追記。


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