選挙後も目を向けて――政治家を育てる“育政”の視点2021年11月5日

  • 電子版連載【駒崎弘樹の「半径5メートルから社会を変える」】〈15〉

 連載「駒崎弘樹の『半径5メートルから社会を変える』」では、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんに、さまざまな社会課題について聞きます。
  
 今回のテーマは、「選挙後も目を向けて――政治家を育てる“育政”の視点」です。衆議院議員選挙が終わった今だからこそ、求められる政治への関わり方とは――。皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
  
 ※今後、取り上げてほしいテーマを募集します。記事の最後に記載したメールアドレス宛てにお送りください。

■政治家を育てる“育政”が大切

 ――選挙が終わると、政治への関心が薄まってしまう風潮があるように感じます。駒崎さんは、選挙後の政治との関わりについてどう思いますか。
  
 駒崎 結局のところ、選挙というのは「政治家を選ぶ」ことですから、言ってみれば、料理店でシェフを選ぶようなものです。大事なことは、選んだシェフが注文した料理をちゃんと作ってくれるのかどうかです。さらに、実際に提供された料理がおいしいかどうか。
 そこまでがしっかりとかなえられて、初めて満足が得られます。シェフを選んだだけでは、満足度は高まりません。

 ――つまり、政治も選挙で選んだ後が大事ということでしょうか。
  
 駒崎 そうです。特に政治の場合、選挙の時にやると言っていたこと(=公約)をやらないことが、往々にしてあります。もしくは、頼んでいたものとは違った政策が提供されることも、しばしばありますね。
 考えてみください。もし料理店でカレーライスを注文したのに、天丼が出されたら困ってしまいますよね(笑い)。あるいはカツカレーを頼んだのに、カツが入っていなかったら「大事なものが入っていない」って、ツッコミますよね。
 政治も同じです。選挙の時に掲げた公約が実現されたのか、あるいは公約実現に向けてアクションを起こしているのか。選挙後も政治に目を向けながら、しっかりとチェックしていくことが大事なんです。
  
 ――選挙後も政治に関わることで、より良い政治が生まれるのですね。
  
 駒崎 選挙後も関心を向け続けることで、政治家は鍛えられ、育っていきます。その意味では、育児や人材育成にも通じると思うので、僕はよく“育政”という言葉を使います。
 子育てでも、会社の人材育成でも、子どもや社員は日常的な関わりを通じて育っていくものです。同じように政治家も、数年に一度の選挙の時のみ視線を向けるだけでは、良い政治家に育ちません。選挙で選んだからといって、自動的に良い政治が行われるわけではないのです。
 政治家を鍛え、育てていくためにも、日頃から時には叱ったり、褒めたりしながら育てていくことが大切です。

■政治家に声を届ける方法とは?

 ――しかし、多くの人にとって政治家は身近には感じにくい存在だと思います。具体的には、どのように関わっていけばよいのでしょうか。
  
 駒崎 良い政治がちゃんと行われるように、政治家に“フィードバック”をしていくことが大切だと思います。
 具体的にいえば、一つは直接、政治家に声を掛けることです。議員が駅頭に立って話をしていても、話し掛けてくるのは数人ほどです。ましてや議員への質問や議会で訴えてほしいことを伝えてくるといったことは、ほとんどありません。
 こうした環境にずっといると、政治家はチェックされないために、緊張感が持ちづらくなります。一方で、声を掛けられれば、しっかりと受け止めるはずです。
  
 ――他には、どんな方法がありますか。
  
 駒崎 一般的にはあまり知られていませんが、「陳情」という手法もあります。議会に対して取り上げてほしいことや地域の課題などについて声を届けるという点で、誰にでもできる仕組みです。
 陳情は、かなりフレキシブルな(柔軟性がある)仕組みで、実は、その地域に住んでいない人でもできるんです。以前、松江市議会に対して、市外在住のある一人が陳情を提出したことがありました。陳情の内容は、広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」を小中学校の図書室で閲覧できないように制限を求める内容でした。これについては賛否両論がありましたが、それでも一人の人が提出した陳情が議会での議論につながったことを考えると、陳情の効力は結構あることがわかります。
 一人の意見であっても議会に対して物申すことができるので、陳情という手法を活用するのも、一つの声の届け方です。

 ――今は、SNS上で政治家と関わることもできる時代になりました。
  
 駒崎 最近は、政治家が自身のSNSアカウントを作って発信することも増えています。SNSを通じて直接、政治家に声を届けていくのもよいと思います。
 ただ、その時のポイントは、フィードバックをすることです。SNS上では、政治家に対して、罵詈雑言にまみれた誹謗中傷が浴びせられることもあります。しかし、それでは政治家も人だから傷つくこともありますし、当然やる気も向上しないでしょう。
 現場で感じた課題や建設的な意見をしっかりとフィードバックすることが良い鍛錬となり、育政につながります。

■平時のコミュニケーションが有事にも役立つ

 ――それでも「政治について詳しくないから……」と感じて、意見を伝えづらいと思う人もいると思います。
  
 駒崎 今回の衆院選では、著名人が投票を呼び掛ける「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画が公開され、話題になりました。
 この動画は、投票に行くという本来、民主主義において当たり前の行動について発信したわけです。それでも話題になったのは、やはり業界内で政治的な発言をすることがタブー視されてきたからだと思います。そこを打ち破る意味でも、こうしたアクションは画期的なことでした。
 いずれにしても、政治について発言することは、全ての国民の権利です。政治に詳しくないからといって、気にすることなく、どんどん声を掛けていってほしいですね。

 ――こうした著名人による発信は、コロナ禍を通じて政治が自分事になったことの表れでしょうか。
  
 駒崎 エンターテインメントの業界は、これまで過剰に政治を遠ざけてきたことで、言いづらい雰囲気が醸成されてきたと思います。
 それがコロナ禍を通じて、政治的に声を上げないことで、結果的に業界にとって厳しい状態が政治によって作られてしまった側面もあるのではないでしょうか。飲食店業界についても、同じことが言えるかもしれません。
 その意味で、コロナ禍を通して改めて“政治から逃げても、政治はあなたを逃さない”ということが浮き彫りになったともいえます。
 大事なことは、平時のうちに政治とのコミュニケーションを取っておくこと。それがなければ、いざ有事の際に政治と上手にコミュニケーションができなくなってしまいます。
  
 ――特定の業界だけでなく、若い世代についても同じことが言えそうですね。
  
 駒崎 新型コロナの感染が拡大した時、「若者のせいだ」という風潮がありました。あれも結局は、政治の力関係が如実に出たもので、政治に関心の低い世代がスケープゴート(特定の人を悪者に仕立て上げる現象)にされてしまった。
 若者が投票権を行使しながら、良い意味で政治に対してプレッシャーをかけていかないといけない。同時に、選挙だけでなく日頃から政治とコミュニケーションを取るリテラシーを身につけておくことも大事だと思います。
  
  
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