たとえば、女性が二人しかいない部署で、誰もやりたがらない雑用を20代の若い女性社員にやらせればいいと30代の女性社員が言っていたと、Aさんが発言したことがあるそうだ。その話をまた聞きした20代の女性が30代の女性に「どうしてそんなこと言うんですか」と詰め寄ったという。それに対して、30代の女性は「そんなこと言ってないわ」と怒り出し、大喧嘩になったらしい。
この場合、Aさんには雑用を20代の女性に押しつけたい思惑があったが、それを自分自身の意向として伝えると、恨まれそうだったので、30代の女性が言ったことにして責任転嫁した可能性が高い。
あくまでも自分は"いい人"のふりをするために、30代の女性を憎まれ役に仕立て上げようとしたわけで、似たようなことは誰でも多かれ少なかれやっているかもしれない。たとえば、おもちゃを買ってほしいと駄々をこねる子どもに母親が「お父さんの許しがないと買えない。お父さんは厳しいから、たぶんダメだと言うと思うよ」と言って、あきらめさせようとするのは、よく使う手だろう。
あるいは、部下が嫌がりそうな仕事を押しつける際に、上司が「これは上の命令だから仕方がない。会社の方針として、どうしても君にやってほしいということだ」と言って説得することもあるかもしれない。上司が部下から恨まれたくなくて、自分より"偉い人"や会社を憎まれ役に仕立て上げるわけである。
一方、「勉強会なんかやってもミスは減らないのに……」と30代の男性が愚痴をこぼしていたという嘘の話をでっち上げ、50代の同僚に伝えたことに、雑用を押しつけたいといった類いの思惑があったとは考えにくい。それでは、あえて不和の種をまくようなことをAさんがしたのは一体なぜだろうか。
つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。