幸せは「強度」でなく「頻度」。幸福研究の第一人者が教える「後悔のない人生」のヒント
多様な体験が心理的に豊かな人生につながる
──今回のお話の核心的テーマである「心理的な豊かさ」についてお聞きします。日本では、あまり馴染みがない概念ですが、どういった意味がありますか? 誰もがご存じの「物質的な豊かさ」は、収入や貯金がたくさんあって、家や車を持っているなど、文字どおり物質面で恵まれていることを指しますね。 対して、「心理的な豊かさ」とは、これまでの人生で、どれほど多様な体験をしてきたか、体験を通してどれほど学び、成長し、考え方が変わってきたかを表します。 同窓会で皆と話をすると、とてもおもしろくてユニークな経験を重ねた人もいれば、経験が乏しい人生を送ってきた人もいますよね。心理的に豊かな人生は前者、おもしろい人生を指します。そうした経験には、転職、引っ越し、離婚などさまざまな事柄が含まれます。自分では意図しなかった、予想もつかないような人生であるほど、心理的に豊かな人生です。 💡ポイント:経験の多さが「心理的な豊かさ」につながる
困難もあるが後悔は少ない人生
──不本意な転職や望まぬ離婚などもあるでしょうから、心理的に豊かな人生=楽しいだけの人生ではなく、辛いこともある人生だととらえるべきでしょうか? そうです。だから、困難に立ち向かう勇気が必要です。そこが、ただ幸福な人生とは違うところです。 幸福を求める人生は、幸福に焦点を当てて最大化しようとする生き方。対して、心理的な豊かさを求めるのは、起こることにオープンである生き方です。何が起こるかわからないけれども、とにかくチャンスがあったらやってみようというスタンス。予測はなかなかつかないし、全部がうまくいくわけでもない。でも、後悔は少ない人生です。 💡ポイント:オープンなスタンスで生きることが、後悔しない秘訣
日常で小さなチャレンジを積み重ねよ
──最後に、これから心理的に豊かな人生を目指すなら、具体的にすべきことを教えていただけますか? 第一に、チャレンジ精神を持つことです。と言っても、なにも大きなことにチャレンジする必要はありません。たとえば、日曜日に朝ご飯を食べながらふと、「今日これやろうかな」と思うことがあるでしょう。普段なら、「でも、めんどくさいからやめておこう」となるところを、あえてやってみる。とにかく迷ったら、やる方向へ。それで、いろいろと新しい体験が広がっていきます。 社会心理学の調査で、「人生で最大の後悔は何でしたか?」と、シニアの人たちに聞くと、一様にやらなかったことを後悔していると言います。転職の機会があったのにしなかった、旅行の機会があったのに行かなかった、といったことを後悔するのです。 重い腰を上げるヒントは、誰かに何かを誘われたら、とにかくイエスの返事をすることです。それから、日常に小さな新しい体験を持ち込むこと。たとえば通勤時に、最寄り駅へのいつもの最短距離で歩いていくのではなく、通り道を変えてみる。景色が変わると、新しい発見につながることもあります。それ以外にも、図書館に行って本を読んでもいいし、映画を観るのでもいい。 こういった小さなことでもいいので、とにかく探索してみましょう。やがて、自分の世界が広がり、心理的な豊かさを増やすことにもつながっていくでしょう。 💡ポイント:行動できる時に行動すること、そして自分から変化を起こすこと お話を伺った方:大石繁宏さん 福岡県出身。1993年、国際基督教大学教養学部卒業後に渡米。心理学の研究者としての道を歩む。シカゴ大学マーシャル・フィールド心理学教授。幸福、意味、文化研究に関する第一人者として数々の賞を受賞。日本語で書かれた著書に『幸せを科学する』(新曜社)と『Rich Life まだ知らない景色が人生を豊かにする』(日経BP)がある。 ▼ちょっとした工夫で心を軽やかに 執筆:鈴木拓也 ──2026年1月1日の記事を再編集のうえ、再掲しています。
ライフハッカー・ジャパン編集部,鈴木拓也