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国会の審議拒否はダメなのか?

臨時国会が始まりました。次の衆院選で野党第一党を目指す維新としては、準備のための最後の国会かもしれません。そこで昨年一年間務めた衆議院の予算委員会理事の経験をもとに、大事なことを一つ書き残しておこうと思います。国会において野党が行う「審議拒否」についてです。

のっけから、「何言ってるんだ、ダメに決まってるだろ。」、「立憲か共産にでも行け!」と言われそうですが、少々お話を聞いていただきたく。

野党が「審議拒否」と言いながら国会を欠席する様子を見て、うんざりしている方は多いと思います。国会議員がズル休みしている、国会議員として国民の血税から給料をもらっているのに、仕事をしないとはとんでもない、と。

見た目は確かにそうです。しかし、背景にある事情はそれほど単純ではありません。審議拒否に対して反対するのはもちろん良いと思いますが、「ダメだ!」と言うのであれば、しっかり全体像を理解した上で反対していただく方が、よりよい政治や国会を創るために役に立つと思います。

そもそも、審議拒否とは何でしょうか?簡単に言うと、国会における委員会(審議の場)を会派全員で欠席する行為です。国会審議に必要な最低人数を満たさないことで法案審議を止めたり、強行採決を演出したりできます。与党は当然嫌がるため、与野党の交渉材料となっています。

立憲や共産など、古くからある野党では一般的な手法です。一方、維新は原則的に行わない方針を持っています。また、れいわ新選組やNHK党など、あまりにも少数の政党は行っても効果がないので、やりません。

私は審議拒否はできるだけすべきでないとは思いますが、絶対にダメだとは思っていません。正確には、野党は政府与党に対峙するにあたり、手段にタブーを設けるべきでないと思います。

日本の国会では、与党は数の力による権力を振りかざし、国民の方を向いていない意思決定をしばしば行います。特に自民党は、言葉を選ばずに言えば、権力維持が最優先の集団です。その意思決定はしばしば国民や国家のためでなく、権力の基盤となる既得権のために行われます。国民から見て不可解な政策決定の背景にはそうした事情があります。

この権力の腐敗を正すのが国会であり、野党の役割です。言い換えれば、国会を正常に機能させるには、野党には与党が嫌がることをやらせる力が必要です。しかし、国会における与党と野党の間には見た目以上に圧倒的な力の差があり、正規の手続きを通して野党が状況を変えることはほぼ不可能といえます。

日本は三権分立を謳っていますが、実際には立法府の多数を占める与党が国会のルールを含む決定権を持ち、その同じ与党のメンバーが行政府の内閣を構成し、政府を動かす権力を持っています。立法府と行政府のルールをつくる力と、それを審査して成立させる力を、「自民党」という憲法に規定も何もない一組織が持ち続けています。こうした状況は先進国では日本だけです。

与党はその気になれば、野党が何を言おうと、法案や政策を強行採決できます。一方で、やりたくないものは、「野党が反対している」という言い訳をして、採決はできるのに、やろうとしません。憲法改正や旧文通費改革が典型的な例です。野党の審議拒否はしばしば茶番と批判されますが、与党の国会対応こそ茶番といえます。

日本では国会に提出される全ての法案は、その前に与党による「事前審査」と呼ばれる手続きを経ています。本来、政府が起案し、国会に提出されて国民の代表者により審査されるべき法案は、実際は、政府が作成して自民党に提出し、そこで部会と総務会による決裁を経て、国会へ提出されます。

そして、この事前審査が法案の内容を詰める最大の山場になっているのが実態です。国会へ提出された後の法案が修正されるのは、旧統一教会の時のように注目の事件を受けて国民世論が盛り上がったり、与党が野党に譲歩しなければならない特別な事情があったりといった場合に限られます。また、その際も修正幅も小さく、政府与党案が根本から変わることはまずありません。

つまり、多くの場合、与党の決めた国会のルールの中でいくら議論しても、結果にはほとんど影響しないのです。これでは、与党の嫌がることを野党がやらせることなんてできません。

この状況を何とかするには、ちゃぶ台をひっくり返すしかありません。そのちゃぶ台返しが審議拒否なのです。与党にとって、国会の決められたルールの中での野党の批判など、テレビに直接映る予算委員会以外は、ちっとも恐くありません。

しかし、審議拒否は困ります。国会の日程に影響しますし、何より、与党がおかしなことをしようとしていることが、メディアを通して国民に伝わってしまうからです。

だからこそ、あらゆる方法で「審議拒否はダメだ」という印象を主権者であに植え付けようとします。国会運営にかかる税金の無駄だ、官僚が残業することになりかわいそうだ、大臣にはもっと他にもっと大事な仕事がある等々。もっともらしい主張ですが、意図的な印象操作も多く含まれています。

そもそも、「審議拒否はダメだ」と言う自民党自身が、野党の時は審議拒否を常套手段にしていました。さらに、今でも、審議拒否をするなといいながら、例えば、私の所属する外務委員会では、与党議員のズル休みのために定数が足りずに委員会が止まったりしています。騙されてはいけません。

審議拒否がダメだというなら、まずは与党が国会の審議をあるべき姿に戻すのが筋です。国会を政府から法案が提出され、国会で賛否両論の実質的な議論が行われ、そこで本物の知恵と提案が生まれて法案が修正され、国民と国家のための法律が生まれる場として機能させるべきです。

己の権力維持のために国会を形骸化させておきながら、その範囲内でのみ意見を言えという自民党の主張はご都合主義が過ぎます。

日本維新の会は次の衆院選で野党第一党を目指しています。その時に国民と国家のためになる国会を実現しようと思ったら、政府与党に強烈に対峙する力が求められます。

「審議拒否をしない野党第一党」とは、簡単なことではありません。審議拒否という武器を手放す選択をするならば、それ以外の新しい方法を見出していかなければ、単に「与党にとって都合の良い野党」になってしまいます。

審議拒否をしないことは、それをすることよりも、はるかに知恵と忍耐と努力、そして議員の能力と党の組織力が必要になります。

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衆議院議員(大阪14区)。日本維新の会政調会長、衆議院予算委理事、IPU国連委理事などを歴任。国連、JICA、PwCにて、アフガンの紛争地や米国に赴任。社会課題解決コンサルを経営。早大、デューク大院卒。1978年生。3児の父。国会と八尾・柏原・羽曳野・藤井寺で活動中。
国会の審議拒否はダメなのか?|青柳仁士(衆議院議員)
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