慶大のエース左腕、渡辺和大が三冠投手へ覚醒したワケ 「おかげで今の僕がある」 成長を後押しした恩師と〝魔球〟とは…
【球界ここだけの話】息をするように三振を量産する「令和のドクターK」が、慶大の5季ぶりとなる優勝の原動力となった。絶対的エースとして君臨する渡辺和大投手(4年、高松商業)は今春のリーグ戦でタイトルを総なめにした。 9試合の登板でリーグトップの7勝(2敗)を挙げ、最優秀防御率(1.28)に輝いた。さらにリーグMVP(最優秀選手)と投手部門のベストナインも獲得。表彰タイトルではないものの65奪三振もリーグ最多で、他の規定投球回到達者が20個台だった中で群を抜く三振数を誇った。 渡辺は2024年秋にも最優秀防御率に輝くなど、もともと実力はあったが、この春で才能がさらに開花した。後押しした存在が慶大OBで、慶応高の監督も務めた上田誠コーチだった。昨年まで四国IL・香川の球団社長を務め、今年からコーチとして入閣。主に投手の指導にあたっており、渡辺は上田氏の助言によって進化を遂げた。 一番の要因に「コマンド(制球力)の向上」を挙げ、「ストライクを取りたいときに捕手の構えたところに投げ切れる比率が大きくなった」と手応えを語る。そのきっかけとなったのが、今年から始めた2段モーションの投球フォームだ。上田コーチから「ゆっくり間を取った方がいいんじゃないか」と勧められ、投球練習を重ねるなかでリリースが安定。「ためをしっかり作れるようになった」と自己分析し、投手としての成長を後押ししてくれた恩師には「引き出しの多い方。上田さんのおかげで今の僕がある。本当にいい出会いだった」と感謝した。 制球力が増したことで得意球にも磨きがかかった。本人も「ストレート(の軌道)と似ている」と語るスライダーで三振を奪う場面が増えた。打者の手元で変化する〝魔球〟はあくまで「直球のイメージで」投げているという。握りは同じで、コツは手首の角度を変えるだけ。そんな伝家の宝刀が最大の効力を発揮したのが、今月13日の大学野球選手権準決勝(神宮)の東北福祉大戦だった。序盤からハイペースで三振を重ね、八回先頭で中前打を許すまで無安打投球を続けた。八回途中1安打1失点で勝利に導いただけでなく、大会記録に並ぶ8者連続を含む計15奪三振と圧倒。敵将も「プロの投手かと思った」と舌を巻くほどのパフォーマンスを見せた。 今秋のドラフト会議は立命大の有馬伽久、関大の米沢友翔、沖縄尚学高の末吉良丞ら好左腕ぞろい。上位指名が予想される最速151キロの渡辺もサウスポー〝豊作年〟の注目株になりそうだ。(織原祥平)