ニュース

再エネ転換で消費者にコストメリット、IEA報告書

太陽光・風力は世界中で最も安い電源に

2024/06/04 23:16
工藤宗介=技術ライター
印刷用ページ
再エネ転換はエネルギー利用の不平等解消に役立つが、積極的な推進政策が重要という
再エネ転換はエネルギー利用の不平等解消に役立つが、積極的な推進政策が重要という
(出所:IEAのホームページ)
クリックすると拡大した画像が開きます

 国際エネルギー機関(IEA)は5月30日、特別報告書「安価で公正なクリーンエネルギー転換に向けた戦略(Strategies for Affordable and Fair Clean Energy Transition)」を発表した。2050年までに世界でネットゼロ・エミッション達成の軌道に乗せるには追加投資が必要となるが、現在の政策に基づく軌道と比べて今後10年間で世界のエネルギーシステムの運用コストを半分以上削減できることを示し、消費者にとって安価で公正なエネルギーシステムが実現すると説明する。

 同報告書によると、クリーンエネルギー技術は多くの場合、石炭・天然ガス・石油といった従来型燃料に依存する技術より、すでにライフスパン全体でコスト競争力があり、太陽光発電や風力発電は、最も安価な選択肢となっているという。また、電気自動車(EV)など初期費用が高い場合も運転経費の削減により節約につながり、エアコンのようなエネルギー効率の高い家電製品も耐用年数を通じて同様のコストメリットをもたらす。

 一方、クリーンエネルギー転換によるメリットを実現するには、より高いレベルの先行投資を引き出す必要があり、これは特に、クリーンエネルギー投資が遅れている新興国や発展途上国に当てはまるとし、これらの国々では、実際もしくは認識されたリスクが新規プロジェクトや資金調達の妨げとなっているという。

 さらに、化石燃料への補助金などの既存燃料に対する優遇が、現在のエネルギーシステムに歪みを生じさせ、クリーンエネルギー転換への投資をより困難にしていると指摘する。IEAの報告書によると、世界各国の政府は、2023年に化石燃料の使用に総額約6200億ドルの補助金を支出したが、これは消費者向けクリーンエネルギー投資の支援に使われた700億ドルを大きく上回る。

 2022年の世界的なエネルギー危機のなか、世界の消費者はエネルギーに10兆ドル近くを費やした。これは、政府からの補助金や緊急支援を織り込んでも、地球上の一人あたり平均1200ドル以上に相当する。これは過去5年間の平均を20%上回るもので、発展途上国でも先進国でも、最も弱い立場にある人々が価格高騰により大きな打撃を受けた。

 最も根本的な不平等に直面しているのは、新興国や発展途上国で電気を利用できない約7億5000万人と、クリーンな調理技術や燃料を持たない20億人以上になる。また、先進国の最貧困層10%は、最富裕層10%の半分以下のエネルギーしか消費してないにも関わらず、可処分所得の4分の1を家庭や交通機関のエネルギーに費やしている。安価で持続可能なエネルギー技術が、こうした現在のエネルギーシステムの深刻な不平等に対処するには、政策による介入が極めて重要と指摘する。

 エネルギー転換が早まり、化石燃料の代替としてより運転コストの低い太陽光や風力などの自然エネルギーのシェアが拡大すれば、その恩恵は消費者にも波及する。電力価格は通常、石油価格より変動が少なく、より予測可能なコストになる。現在の消費者のエネルギー支出全体の約半分は石油に、さらに3分の1は電力に使われている。エネルギー転換により石油は電気に取って代わられ、2035年までには電気が石油を抜いて主要なエネルギー源になるという(7月17日開催・ペロブスカイト太陽電池セミナーの案内サイト)。