役員報酬の相場はいくら?最新ランキングと損をしない決め方を完全解説

役員報酬の相場はいくら?最新ランキングと損をしない決め方を完全解説 財務・会計・資金調達

経営者やこれから役員に就任される方にとって、自社の「役員報酬」をいくらに設定すべきかは非常に悩ましい問題ですよね。

高すぎれば会社の資金繰りを圧迫し、税務署から目をつけられるリスクが生じます。逆に低すぎるとモチベーションの低下を招き、経営者個人の生活基盤にも影響が出てしまいます。会社と個人のバランスをどう取るかが、経営の腕の見せ所とも言えるでしょう。

この記事では、国税庁のデータに基づいた最新の「役員報酬の相場」や、世間を賑わせる上場企業の「役員報酬ランキング」を詳しく解説します。さらに、税金や社会保険料の負担を最適化し、損をしないための役員報酬の決め方、そして絶対に守るべき税務上の厳格なルールについても網羅しました。

自社の状況に合った、もっとも適切な役員報酬の金額を見つけるためのガイドとして、ぜひ最後までお役立てください。

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  1. 役員報酬の相場はいくら?企業規模別の平均額を解説
    1. 資本金別の役員報酬相場(国税庁データ)
    2. 役職別の役員報酬相場(社長、専務、常務など)
    3. 従業員規模・売上規模による相場の違い
    4. 同業他社の相場を調べる方法と重要性
  2. 【最新版】役員報酬ランキング!1億円超えの上場企業経営者は誰?
    1. 役員報酬1億円以上の企業・人数は過去最多を更新
    2. 日本企業トップ層の役員報酬ランキングTOP5
    3. 役員四季報データに見る配当込みの年収ランキング
    4. なぜ上場企業の役員報酬は近年高騰しているのか?
  3. 役員報酬の決め方と絶対に外せない3つの重要ポイント
    1. ポイント1:会社の利益やキャッシュフローとのバランス
    2. ポイント2:税負担(法人税・所得税)と社会保険料の最適化
    3. ポイント3:従業員の給与水準や世間の相場からの逸脱を防ぐ
  4. 役員報酬を決める際の税務上のルール(損金算入の条件)
    1. 定期同額給与とは?毎月一定額を支給する大原則
    2. 事前確定届出給与(役員賞与)の正しい活用方法
    3. 業績連動給与の仕組みと対象となる企業の条件
    4. 実質基準と形式基準!過大とみなされ否認されるリスク
  5. 役員報酬を変更する適切なタイミングと法的な手続き
    1. 役員報酬の変更は「事業年度開始から3ヶ月以内」が原則
    2. 株主総会の決議と議事録の作成・保管が必須
    3. 年の中途で変更できる特例(業績悪化改定事由など)
  6. 役員報酬に関するよくある疑問(Q&A)
    1. 役員報酬がゼロ(無報酬)でも税務上・法律上問題ない?
    2. 家族を役員にする場合(家族役員)の報酬相場と注意点は?
    3. 役員報酬が高すぎると税務署から否認され追徴課税になる?
  7. まとめ

役員報酬の相場はいくら?企業規模別の平均額を解説

役員報酬の金額は、法律によって「いくらにしなさい」と一律に決まっているわけではありません。しかし、世間の相場から大きくかけ離れた金額を設定すると、税務上のトラブルを招く恐れがあります。まずは、国税庁の公的な統計データなどを参考に、一般的な相場感をしっかりと把握しておきましょう。

資本金別の役員報酬相場(国税庁データ)

役員報酬の相場を知る上で、もっとも信頼性が高くベースとなるデータが、国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査」です。このデータを見ると、会社の体力や規模を示す「資本金」に比例して、役員報酬の平均額が高くなっていることがはっきりとわかります。

たとえば、最新の「令和5年分 民間給与実態統計調査」をもとに資本金別の傾向を見ると、資本金が2,000万円未満の中小企業の場合、役員報酬の平均は年間で約634万円となっています。これが資本金5,000万円未満になると約801万円に上がり、資本金が5,000万円以上1億円未満の企業になると、平均で約1,147万円と1,000万円の大台を超えてきます。

さらに資本金10億円以上の大企業ともなれば、平均は年間約1,946万円という高い水準に達します。このように、資本金は会社の安定性を示す指標のひとつであるため、報酬額を決める際の重要な目安となります。自社の資本金と照らし合わせて、現在の報酬額が平均に対して高いのか低いのか、一度チェックしてみることをおすすめします。もちろん、これはあくまで平均値ですので、実際の業績に合わせて柔軟に調整することが大切です。
参考:令和5年分 民間給与実態統計調査結果(国税庁)

役職別の役員報酬相場(社長、専務、常務など)

役員と一口に言っても、会社のトップである代表取締役社長から平の取締役まで、その責任の重さや職務内容は大きく異なります。そのため、それぞれの役職によっても報酬の相場は明確なグラデーションを描く傾向にあります。各種の労務調査機関のデータや実態調査によれば、社長の報酬を基準とした場合、他の役員の報酬額には一定の比率が存在することが多いです。

一般的な中小企業における相場感として、社長の年間報酬が約1,500万円だった場合、ナンバー2である副社長や専務取締役は、社長の7割〜8割程度(約1,050万円〜1,200万円)に設定されるケースが目立ちます。続く常務取締役は社長の6割〜7割程度、役付ではないヒラの取締役は5割〜6割程度がひとつの目安となるでしょう。

社内に複数の役員がいる場合、社長だけが飛び抜けて高い報酬を受け取り、他の役員が極端に低いといったアンバランスな設定は、社内の不満やモチベーション低下につながりかねません。役職に応じた責任と権限の重さを明確に定義し、それに比例する形で納得感のある報酬額を配分することが、円滑な組織運営の秘訣と言えます。

従業員規模・売上規模による相場の違い

資本金や役職に加えて、「従業員数」や「売上規模」も役員報酬の相場を大きく左右する要因です。従業員数が多く、会社の売上が大きければ、それだけ役員が動かすビジネスの規模やマネジメントの負担、負うべきリスクも大きくなります。そのため、責任に対する対価として報酬が高くなるのは自然な流れです。

従業員数が数名から10名未満の小規模な企業の場合、社長の報酬額は500万円〜800万円程度に落ち着くことが多い傾向にあります。これは、会社としての利益がまだそれほど大きくなく、資金繰りを安定させることが最優先されるフェーズだからです。一方で、従業員数が100名を超え、売上が数十億円規模に成長した企業では、社長の報酬が2,000万円〜3,000万円を超えるケースも決して珍しくありません。

とくに急成長しているベンチャー企業などの場合、売上は大きくても先行投資がかさみ、あえて役員報酬を低く抑えているケースもあります。売上が大きいからといって無闇に報酬を上げるのではなく、「最終的な営業利益やキャッシュがどれくらい残るか」という視点を持つことが、会社を長く存続させるためには不可欠な姿勢です。

同業他社の相場を調べる方法と重要性

自社の役員報酬を決める際、「同業他社がどれくらい支払っているのか」を知ることは非常に重要です。なぜなら、後述する税務上のルールのなかで、役員報酬が「同業種・同規模の他社水準と比較して高すぎないか」という点が、税務調査における厳しいチェックポイントになるからです。

同業他社の役員報酬の相場を調べる方法として、もっとも身近なのは税理士などの専門家に相談することです。税理士は数多くの企業の財務状況を把握しているため、地域や業種ごとのリアルな相場感を教えてもらうことができます。また、民間の中小企業向けリサーチレポートや、労務行政研究所などが発行する給与調査のデータを参考にするのも有効な手段です。

もし自社が上場を目指している、あるいはすでに上場している場合は、競合となる上場企業の「有価証券報告書」を確認しましょう。有価証券報告書には役員報酬の総額や人数が記載されており、一人あたりの平均額を簡単に割り出すことができます。業界の標準的な水準から大きく逸脱していないか、定期的にモニタリングする習慣をつけておくと安心です。

【最新版】役員報酬ランキング!1億円超えの上場企業経営者は誰?

自社の役員報酬を検討する際、世の中のトップ経営者たちがどれくらいの報酬を得ているのか、好奇心も含めて気になる方は多いのではないでしょうか。ここでは、有価証券報告書などの公的な開示データに基づいた、上場企業の最新の役員報酬ランキングの動向をご紹介します。

役員報酬1億円以上の企業・人数は過去最多を更新

日本の上場企業では、年間1億円以上の役員報酬を受け取っている役員について、有価証券報告書での「個別開示」が義務付けられています。東京商工リサーチの集計調査によると、2023年度(2023年4月期〜2024年3月期)に役員報酬1億円以上を開示した上場企業は509社、対象となった人数は1,120人にのぼりました。これは社数・人数ともに過去最多の記録となっています。

この「1,000人超え」という数字は、日本企業のトップ層における報酬水準が年々上昇傾向にあることを明確に示しています。かつて日本企業の役員報酬は、欧米のグローバル企業と比較して「安すぎる」と指摘されてきました。しかし近年では、優秀な経営人材を確保・維持し、企業価値を向上させるため、各社が報酬制度の見直しを図っています。

業績が好調な企業では、基本となる固定報酬に加えて多額の賞与や株式報酬が上乗せされ、1億円の大台を突破する役員が続出しているのです。この傾向は、日本企業が少しずつグローバルスタンダードな報酬体系へと移行しつつある過渡期であることを象徴する現象と言えるでしょう。
参考:上場企業の役員報酬1億円以上509社 1,120人(東京商工リサーチ)

日本企業トップ層の役員報酬ランキングTOP5

それでは、実際に日本の上場企業でトップクラスの報酬を得ている経営者は誰なのでしょうか。有価証券報告書の開示データに基づくランキング(2023年度〜2024年の直近データ)を見ると、一部の経営者が突出した巨額の報酬を得ていることがわかります。

順位企業名氏名役員報酬額(年額・概算)
1位セブン&アイ・ホールディングスジョセフ・マイケル・デピント氏約77億3,200万円
2位ソフトバンクグループレネ・ハース氏約49億400万円
3位ダイキン工業井上礼之氏約44億500万円(※特別功績金含む)
4位ソニーグループ吉田憲一郎氏約20億8,300万円
5位武田薬品工業クリストフ・ウェバー氏約17億2,300万円

※ランキングと金額は、各社の有価証券報告書の開示などに基づく過去実績の概算値です。

このランキングの顔ぶれを見ると、グローバル展開を強力に進める巨大企業のトップや、外国人経営者が上位に名を連ねているのが特徴的です。とくにセブン&アイHDやソフトバンクグループなどは、世界水準の報酬パッケージを用意しており、一般的な日本のサラリーマン経営者とは一線を画す金額規模となっています。

役員四季報データに見る配当込みの年収ランキング

先ほどのランキングは「会社から支払われる役員報酬のみ」を集計したものですが、経営者の実質的な収入を見るにはもう一つの視点が必要です。それが、自社株の保有によって得られる「配当収入」を含めたランキングです。東洋経済新報社の『役員四季報』などの調査では、配当を含めた驚愕の「年収」の実態が明らかになっています。

配当を含めた総収入ランキングで見ると、上位の顔ぶれは大きく変わります。最新の調査データ等によると、1位はユニクロやジーユーを展開するファーストリテイリングの柳井正氏で、役員報酬自体は数億円規模ですが、莫大な配当収入を合わせると総額で約217億円にも上ります。続く2位には、ソフトバンクグループの孫正義氏がランクインし、こちらも配当収入を含めて総額約188億円というケタ違いの収入を得ています。

このように、企業の創業者(オーナー経営者)は、役員報酬そのものよりも保有する株式からの配当金が収入の大部分を占めているケースが多々あります。自社を大きく成長させ、その果実として配当を得るという構造は、経営者としてのひとつの究極の成功モデルと言えるかもしれません。
参考:配当含む「年収1億円超」上場企業役員ランキング(東洋経済オンライン)

なぜ上場企業の役員報酬は近年高騰しているのか?

日本の上場企業でこれほどまでに役員報酬が高騰している背景には、単なる「企業の儲けが増えたから」という以上の、深い構造的な理由が存在します。もっとも大きな要因は、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の進展と、海外の機関投資家などからの強いプレッシャーです。

従来のような固定給中心の保守的な報酬体系では、「経営者が会社の業績を上げようと努力するインセンティブ(動機付け)になりにくい」という批判がありました。そこで、会社の株価や中長期的な業績と役員報酬をダイレクトに連動させる「業績連動型報酬」や、自社の株を付与する「株式報酬」の導入が国を挙げて推進されるようになったのです。

これにより、経営者は会社の利益を上げ、株価を高くすればするほど、自身のリターンも青天井で増える仕組みを手に入れました。さらに、優秀な経営のプロフェッショナルを外部や海外から招へいするためには、国際的な相場に合わせた数十億円単位のオファーを出さざるを得ないという人材獲得競争の激化も、報酬の高騰に拍車をかけている大きな要因となっています。

役員報酬の決め方と絶対に外せない3つの重要ポイント

ここからは、中小企業やスタートアップの経営者が、実際に自社の役員報酬を決める際の「実践的なアプローチ」について解説します。役員報酬は一度決めると年度の途中で簡単には変えられないため、以下の3つの視点から慎重にシミュレーションを行う必要があります。

ポイント1:会社の利益やキャッシュフローとのバランス

役員報酬を決めるうえで、何よりも優先すべきなのは「会社の資金繰りをショートさせないこと」です。役員報酬は毎月必ず発生する重い固定費となります。売上目標や楽観的な見込み利益だけを皮算用して高い報酬を設定してしまうと、思わぬ業績悪化に見舞われた際、たちまち会社から現金(キャッシュ)が枯渇してしまいます。

適切な額を見極めるためには、決算期の初めに精緻な「資金繰り表」と「事業計画書」を作成する作業が欠かせません。年間の固定費、仕入れの支払い、借入金の返済額などをすべて差し引いた上で、「手元にどれだけの現金を残せるか」をシビアにシミュレーションします。

一般的には、将来の設備投資や不測の事態に備えて、会社の利益(内部留保)を一定水準残せる範囲内で役員報酬の上限を決めるのが鉄則とされています。税理士などの専門家と二人三脚で相談しながら、会社の成長を阻害しない、安全圏の金額を算定することがすべての第一歩となります。

ポイント2:税負担(法人税・所得税)と社会保険料の最適化

役員報酬を決める際、多くの経営者を悩ませるもっとも厄介な問題が「税金」と「社会保険料」の存在です。会社の利益をそのまま残せば会社に「法人税等(約30%弱)」がかかりますし、役員報酬として個人に支給すれば、個人に対して「所得税・住民税」がかかる仕組みになっています。

日本の所得税は所得が高くなるほど税率が上がる「累進課税制度」を採用しているため、役員報酬を高く設定しすぎると、最高で約55%(所得税+住民税)もの税金をごっそりと持っていかれます。さらに忘れてはならないのが、給与に連動して高くなる「社会保険料(健康保険・厚生年金)」です。社会保険料は労使折半で会社も半分を負担するため、報酬を上げれば会社と個人の両方から容赦なくキャッシュが流出します。

そのため、役員報酬を決める際は「法人税」と「個人の所得税等+社会保険料」の合計額が、もっとも少なくなる(=手元に残るお金が最大化する)スイートスポットを探すことが非常に重要です。個人の扶養家族の有無などによってもシミュレーション結果は変わるため、複数のパターンの試算を行い、最適な着地点を見つける努力が求められます。

ポイント3:従業員の給与水準や世間の相場からの逸脱を防ぐ

自社の利益が十分に出ていて、税金のシミュレーションが完璧だったとしても、無制限に役員報酬を高く設定して良いわけではありません。ここで重要になるのが、「従業員の給与水準や世間の相場と比べて不当に高額すぎないか?」という客観的な視点です。

会社を支えているのは現場の従業員です。従業員の給与水準が低いまま据え置かれているのに、経営者だけが数千万円の役員報酬を取っているような状態では、社内のモチベーションは著しく低下し、優秀な人材の離職を招きかねません。東京商工リサーチの調査でも、役員報酬1億円以上の層と従業員給与の格差は中央値で約10倍以上に開いているというデータがあり、格差問題はしばしば議論の的になります。

また、税務署からの目線も厳しくなります。同業他社と比較して不自然に高額な役員報酬は、税務調査において「過大役員報酬」とみなされ、経費への算入が否認されるリスクが高まります。自社の従業員給与とのバランス、そして業界の平均的な相場感から逸脱しない範囲で、常識的かつ説得力のある報酬額を設定することが、健全な経営を続けるための重要なポイントです。

役員報酬を決める際の税務上のルール(損金算入の条件)

役員の報酬を会社の経費(税務上の専門用語で「損金」と呼びます)として落として節税するためには、法人税法で定められた厳格なルールを守る必要があります。従業員の給料のように、社長の気分次第で自由に増減させることは認められていません。ここでは、絶対に知っておくべき3つのルールを解説します。

定期同額給与とは?毎月一定額を支給する大原則

中小企業において、役員報酬を経費にするためにもっとも一般的に使われるルールが「定期同額給与」です。これは文字通り、毎月の支給時期が同じで、かつ「1年間、毎月まったく同じ金額を支給し続ける」というルールのことを指します。

たとえば、事業年度が4月から翌年3月までの会社で、役員報酬を月額100万円と決めた場合、1年間は絶対に月額100万円を払い続けなければなりません。途中で「今月は業績が良いから200万円にしよう」「今月は厳しいから50万円に減らそう」と変更してしまうと、定期同額給与の要件から外れてしまいます。その結果、増減した差額分が会社の経費として認められなくなり、法人税が高くなってしまいます。

このようにルールが厳しい理由は、経営者が期末の利益状況を見て、駆け込みで役員報酬を増やして法人税を不当に逃れる(利益操作をする)のを防ぐためです。だからこそ、期首の段階で1年間の業績を慎重に予測し、無理なく支払い続けられる「定額」を決めることが非常に重要になります。

事前確定届出給与(役員賞与)の正しい活用方法

「役員にも、頑張った見返りとして従業員のようにボーナス(賞与)を出したい」と考える経営者の方も多いでしょう。しかし、役員に対して単発で支払う賞与は、原則として会社の経費(損金)にすることができません。ただし、「事前確定届出給与」という制度を正しく活用すれば、役員賞与を経費に落とすことが可能になります。

事前確定届出給与とは、「いつ」「誰に」「いくら」の賞与を支払うかをあらかじめ決めておき、所定の期限までに税務署へ届出書を提出するという制度です。たとえば「12月10日に、社長に200万円を支払う」と事前に届け出て、その通りに寸分違わず支給すれば、全額を経費として認められます。

この制度の最大の注意点は、届け出た日時や金額が「1円でも、1日でも」ズレて支給してしまうと、全額が経費として認められなくなるというペナルティの厳しさにあります。業績が予想より悪かったからといって、届け出た金額を減額して支給することも原則として許されません。そのため、確実に支払える見通しが立つ範囲で金額を設定する、極めて慎重な判断が求められます。

業績連動給与の仕組みと対象となる企業の条件

前述した2つの方法に加えて、3つ目のルールとして「業績連動給与」というものがあります。これは、会社の利益や株価などの客観的な業績指標にあらかじめ連動する算定方法を決めておき、その算定式に基づいて支給される役員報酬のことです。

利益が出れば報酬が増え、利益が減れば報酬も減るという、経営者にとって非常にモチベーションが上がる仕組みです。しかし、この業績連動給与を税務上の経費(損金)として認められるためには、非常に厳しい要件が設定されています。

原則として、業績連動給与を損金算入できるのは、「同族会社以外の法人(主に非同族の上場企業など)」に限られています。つまり、社長やその親族で株の大部分を保有しているような一般的な中小企業(同族会社)では、この制度を使って役員報酬を経費にすることは実質的にできません。中小企業の場合は、前述の「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の2つのルールの枠内で報酬を設計していくことになります。

実質基準と形式基準!過大とみなされ否認されるリスク

定期同額給与などのルールを守っていても、役員報酬が会社の経費として認められないケースが存在します。それが、税務署から「不相当に高額である」と判断された場合です。税務調査において役員報酬が過大かどうかを判定する基準として、「形式基準」と「実質基準」の2つが設けられています。

「形式基準」とは、株主総会や定款で決められた役員報酬の総額(枠)を超えて支給していないかどうかの基準です。たとえば、株主総会で「役員報酬の総額は年額5,000万円以内」と決議したのに、実際には6,000万円を支給していた場合、超過した1,000万円は即座に経費として否認されます。

一方の「実質基準」は、その役員の実際の職務内容、会社の収益状況、従業員への給与支給状況、そして同業種・同規模の他社水準と照らし合わせて、妥当な金額かどうかを総合的に判断する基準です。仮に形式基準を守っていても、社長がまったく出社していないのに年間1億円の報酬を得ているような場合は、実質基準で否認される可能性が極めて高くなります。適正な金額設定を心がけることが不可欠です。
参考:法人税法における役員給与税制の背後にある考え方(論文)

役員報酬を変更する適切なタイミングと法的な手続き

「業績が順調に伸びたから来期は報酬を上げたい」「想定外の赤字になりそうだから報酬を下げたい」。経営をしていれば、このような状況は頻繁に起こります。しかし、役員報酬はいつでも自由に変更できるわけではありません。税務上の不利益を被らないための、正しい変更タイミングと法的な手続き方法を解説します。

役員報酬の変更は「事業年度開始から3ヶ月以内」が原則

役員報酬の金額(定期同額給与)を変更できるタイミングは、税法上、「新しい事業年度の開始日から3ヶ月以内」と厳格に定められています。この限られた期間内に変更の手続きを完了させ、新しい報酬額での支給をスタートさせなければなりません。

たとえば、3月決算法人(4月1日から新しい事業年度が始まる会社)の場合、4月・5月・6月のいずれかの月の給与支払いタイミングで変更を行う必要があります。もし、事業年度開始から4ヶ月目以降(たとえば8月や10月など)に報酬を増額変更してしまうと、期首から増額した月までの差額分が「定期同額給与ではない」とみなされ、その部分が会社の経費に算入できなくなってしまいます。

このように期間が非常に短く限定されているため、決算月を迎えたら速やかに前期の業績を締め、来期の事業計画と資金繰りを立てる必要があります。そして、3ヶ月のタイムリミット内に素早く役員報酬の改定額を決定するという、スピーディーな経営判断が求められるのです。

株主総会の決議と議事録の作成・保管が必須

役員報酬の金額を変更するには、税務上のルールの前に、会社法で定められた法的な手続きをしっかりとクリアする必要があります。役員報酬の総額(枠)は、必ず「株主総会の決議」によって決定しなければなりません。社長一人が独断で勝手に決めることは法律違反となってしまいます。

具体的な手順としては、まず定時株主総会を開催し、「取締役全員の報酬総額の上限(例:年額5,000万円以内とするなど)」を決議します。その後、その総額の枠内で、各役員への具体的な配分額(社長は月額100万円、専務は月額70万円など)を、取締役会の決議(取締役会がない会社は取締役の過半数の同意)によって決定するのが一般的な流れです。

そして、これらの決定事項を証明するために、必ず「株主総会議事録」および「取締役会議事録(または同意書)」を作成し、会社に保管しておく必要があります。税務調査が入った際、調査官は役員報酬の変更が正当な手続きを経て行われたかを確認するため、真っ先にこれらの議事録の提示を求めてくるからです。

年の中途で変更できる特例(業績悪化改定事由など)

原則として事業年度開始から3ヶ月以内でしか変更できない役員報酬ですが、会社の存続に関わるような例外的な事態が起きた場合に限り、年度の途中で報酬額を変更(主に減額)することが認められています。この特別なルールを「業績悪化改定事由」と呼びます。

業績悪化改定事由が認められるのは、「会社の経営状況が著しく悪化し、やむを得ず役員報酬を減額しなければならない客観的な事情がある場合」に限られます。たとえば、主要な取引先が倒産して連鎖倒産の危機にある場合や、銀行との間でリスケジュール(借入金の返済猶予)の協議を行い、再建計画の一環として役員報酬のカットが絶対条件とされた場合などが該当します。

注意すべきは、「一時的に売上が落ちて資金繰りが少し苦しい」といった一時的な理由や、「期末に赤字になりそうだから税金対策で報酬を下げたい」といった会社側の自己都合の理由では、絶対に認められないということです。客観的に見て第三者が納得するだけの深刻な経営危機と、それを証明する財務データや事業計画書などの確たる証拠書類が必要となります。

役員報酬に関するよくある疑問(Q&A)

最後に、起業したばかりの経営者や、初めて役員報酬を決める方が抱きがちな「よくある疑問」について、Q&A形式でわかりやすくお答えします。

役員報酬がゼロ(無報酬)でも税務上・法律上問題ない?

会社を設立した直後など、まだ事業の売上が立っておらず資金にまったく余裕がない時期は、「役員報酬を0円(無報酬)に設定したい」と考えるケースは少なくありません。結論から言えば、役員報酬をゼロにすること自体は、法律上も税務上もまったく問題ありません。

役員報酬をゼロに設定すれば、会社から貴重な現金が流出するのを防ぐことができますし、当然ながら個人の所得税や住民税も一切かかりません。社会保険の加入義務についても、報酬がゼロであれば保険料を徴収する基準額が存在しないため、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することができなくなります。

ただし注意点として、役員報酬がゼロの場合、経営者の生活費は自分自身の個人的な貯金を切り崩すことになります。また、将来会社が急成長して大きな利益が出たとしても、期中からは役員報酬を増やせない(経費にできない)ため、最初の1年間は無給のまま耐え忍ぶ覚悟が必要になります。創業融資などを受けてある程度の手元資金がある場合は、最低限の生活費レベルの報酬(月額10万円〜20万円など)は設定しておくのが無難な選択と言えるでしょう。

家族を役員にする場合(家族役員)の報酬相場と注意点は?

配偶者や親族を自社の役員(いわゆる家族役員)に迎え入れ、報酬を支払うことで世帯全体の所得を分散させ、税金負担を減らしたいと考える中小企業の経営者は多くいます。家族への役員報酬も、要件を満たせば会社の経費として認められますが、金額設定には細心の注意が必要です。

家族役員の報酬相場は、その家族が「会社で実際にどのような業務を行い、どれだけ貢献しているか」という実態に完全に依存します。たとえば、経理や総務の責任者として毎日フルタイムで懸命に働いているのであれば、相応の報酬(月額30万円〜50万円など)を支払っても税務署から問題視されにくいでしょう。

しかし、名前だけ役員に名を連ねており、実際には週に数時間程度の手伝いしかしていない、あるいは全く出社すらしていないにもかかわらず、高額な報酬(月額100万円など)を支払っている場合は非常に危険です。税務調査で「勤務実態が伴っていない不当に高額な報酬」とみなされ、経費への算入を否認されるリスクが跳ね上がります。家族役員の報酬は、仕事内容と労働時間に見合った「従業員として雇った場合の妥当な給与水準」をベースに設定することが、思わぬトラブルを防ぐ鉄則です。

役員報酬が高すぎると税務署から否認され追徴課税になる?

これまでの解説でも触れてきましたが、税務署の調査によって「役員報酬が不相当に高額である」と否認された場合、会社と経営者には非常に厳しいペナルティが待ち受けています。過大と判断された部分の金額は、会社の経費(損金)から除外されるため、その分だけ会社の利益が増えたとみなされます。

利益が増えれば、当然ながらその利益に対して法人税が課せられることになります。これが「追徴課税」です。さらに恐ろしいのは、会社側で経費として認められなかったからといって、すでに経営者個人に支払われた報酬が取り消されるわけではないという点です。つまり、個人としては高い役員報酬を受け取った前提で、最高税率の所得税・住民税をそのまま支払わなければならないのです。

結果として、同じ金額に対して「法人の利益としての法人税」と「個人の給与としての所得税」が二重に課税されるような状態に陥り、キャッシュフローに壊滅的なダメージを与えかねません。高額な役員報酬を設定する場合は、税理士と入念に協議し、その金額が事業への多大な貢献によるものであるという合理的な説明資料を常に準備しておくことが求められます。

まとめ

今回は、役員報酬の最新の相場や上場企業のランキング、そして税金で損をしないための最適な決め方や税務ルールについて詳しく解説しました。最後に、とくに重要なポイントを簡単におさらいしておきましょう。

  • 役員報酬の相場は資本金や従業員規模に比例し、中小企業では年額600万〜1,500万円前後が一つの目安となる。
  • 最新の調査では、1億円以上の報酬を得る上場企業の役員数が過去最多を更新しており、トップ層は数十億円規模に達している。
  • 報酬を決める際は、「会社の資金繰り」「税金・社会保険料の最適化」「世間の相場とのバランス」の3点が極めて重要。
  • 経費にするためには、「定期同額給与」などのルールを厳守し、事業年度開始から3ヶ月以内に株主総会を経て決定する必要がある。

役員報酬は、経営者自身のモチベーションを保つインセンティブであると同時に、会社の健全な成長を左右する「要(かなめ)」となる重要な数字です。目先の節税ばかりにとらわれすぎず、会社にしっかりとお金(内部留保)を残しつつ、適切な対価を受け取れるベストなバランスを見つけ出してください。

自社にとって最適な金額のシミュレーションや、複雑な税務上のルールに不安がある場合は、決して一人で抱え込まず、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

役員報酬とは?従業員給与との決定的な違いや決め方・税金ルールをわかりやすく解説

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