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2022年7月の記事

2022年7月31日 (日)

機関車工学:上巻(その97)タンク機関車:種々の形式

【 種々の形式 】

 以上陳べたるものの他、0-6-4、2-6-4、4-6-4、0-8-4、2-8-2、0-10-0 等、種々重量大なる「タンク」機関車ありて各々地方的特別の目的に供せらる。

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 第 148図ないし第 159図はこれらの実例を示す。

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2022年7月30日 (土)

機関車工学:上巻(その96)タンク機関車:2-6-2形式

【 2-6-2 形式 】

 この形式は 0-6-2 形式の前部に導輪を付加したる設計にして、6輪連結「ダブル・エンダー」と称せらる。前後の小車輪は 2-4-2 形式と等しく、「ビッセル・トラック」または「ラジアル・アクスルボックス」を有するをもって 0-6-2 形式に比すれば運転の具合良好なり。

 英国にては「ランカシャー及びヨークシャー」鉄道、及びグレート・ウェスタン鉄道において採用せらるるの外、広く用ひられずと言えどもその他各国にてはこれを使用するもの少なからず。米国にては多く入換用として用ひらる。

 第 142図ないし第 147図はその実例を示す。

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2022年7月29日 (金)

機関車工学:上巻(その95)タンク機関車:2-6-0形式

【 2-6-0 形式 】

 この形式は 0-6-2 形式の車輪の配置を前後したるものにして、前部に「ビッセル・トラック」を有するをもって、0-6-2 形式のごとく前部連結車輪の「タイヤ」が速かに滅磨するの憂いなく、運転上良好なる設計に属すと言えども、「タンク」機関車にしてこの車輪配置法は構造上やや困難なる設計たるを免れず。

 ドイツにはこの形式を使用するものあれども、英米にてはこれを採用するものはなはだ稀なり。

 第 141図はその一例を示す。

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2022年7月28日 (木)

機関車工学:上巻(その94)タンク機関車:0-6-2形式

【 0-6-2 形式 】

 この形式は前部に6輪連結車輪を有し、後部に「ラジアル・アクスル・ボックス」を備え、短区間における重き列車を牽引せしむるの必要上設計せられたるものにして、英国において多く使用せらる。

 本邦にても各鉄道に採用せられ、従来 40分の1 勾配線に専用せられたりしが近来は貨物列車用にも使用せらる。

 この形式は簡約にして経済なる設計に属すれども、前進運転にては前部連結車輪の「タイヤ」の滅磨すること著しきをもって、曲線多き線路にては後進運転にて使用せらるるを例とす。

 第 139図及び第 140図はその実例を示す。

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2022年7月27日 (水)

機関車工学:上巻(その93)タンク機関車:2-4-4形式

【 2-4-4 形式 】

 この形式は 4-4-2 形式の車輪の配置を転倒したるものにして、後部に4輪「ボギー」を置きたるは「タンク」機関車の設計上適当なる配置なりと言えども、旅客列車用機関車として前部に4輪「ボギー」を有せざるは多少の欠点たるを免れず。第 138図はその一例を示す。

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2022年7月26日 (火)

機関車工学:上巻(その92)タンク機関車:2-4-2形式

【 2-4-2 形式 】

 この形式は欧米各国において最も広く採用せられたる、4輪連結「ダブル・エンダー」と称するものにして、第 135図に示せるがごとく前後に「ビッセル・トラック」、または「ラジアル・アクスル・ボックス」を有するをもって、曲線を通過するに便なるのみならず前進後進共に運転の具合はなはだ円滑なり。またこの形式は重量の配置上良好なる設計なり。

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 この形式は近郊鉄道用として最も広く採用せられ、本邦にても短区間の運転に多く用ひらる。小鉄道会社においては全然この形式を採用し各種の列車を牽引せしむるものあり。しかれども主要なる区間にては主として混合列車用に供せられ、重要なる列車には使用せられず。

 

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2022年7月25日 (月)

機関車工学:上巻(その91)タンク機関車:4-4-2形式

【 4-4-2 形式 】

 この形式は英国にて多く使用せらるる 10輪「タンク」機関車と称するものにして、その大形なるものはあたかも 4-4-0「テンダー」機関車と同じく旅客列車用に供せられてはなはだ良好なり。

 第136図及び第137図はその実例を示す。

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2022年7月24日 (日)

機関車工学:上巻(その90)タンク機関車:4-4-0形式

【 4-4-0 形式 】

 この形式は4輪「ボギー」を前部に、連結車輪を後部に置き、あたかも 0-4-4 形式の転向したるものにして、比較的良好なる設計に属するがごとしと言えども、重量の配置上後部に大形なる「コール・バンカー」を備ふるに不便なり。

 この形式は英国ノース「ロンドン」鉄道に多数採用せられ、その他2~3鉄道にも採用せられたる事ありと言えども広く使用せらるるに至らず。

 

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2022年7月23日 (土)

機関車工学:上巻(その89)タンク機関車:0-4-4形式

【 0-4-4 形式 】

 この形式は英国においてのみ発達したる旅客列車用「タンク」機関車にして、短区間の運転用として多数採用せらる。

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 第 134図に示せるがごとく前部に連結車輪を有し、後部「ファイア・ボックス」の下部に4輪「ボギー」を有するをもって大形なる動輪を使用し得べく、また「ファイア・ボックス」を後部に延長するに便利なり。その構造簡単にして良好なる設計に属すと言えども、前部に連結車輪を有する機関車は前部車輪の「タイヤ」の滅磨速かにして、しばしばこれを削直すの不便あるを免れざるべし。

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 「ババリア」官有鉄道においては第 138図に示せるごとく、この形式の前部に「ビッセル・トラック」を有する 2-4-4 形式を採用せり。

 

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2022年7月22日 (金)

機関車工学:上巻(その88)タンク機関車

第5章 「タンク」機関車

 「タンク」機関車とは前にも述たるがごとく機関車上に石炭と水とを搭載し、別に「テンダー」を伴はざるものなり。「タンク」機関車は「テンダー」機関車のごとく、多量の水または石炭を搭載する事あたわざるをもって遠距離の運転に適せざれども、短距離の運転にははなはだ便利なりなるものなり。

 「タンク」機関車の利用の範囲ははなはだ広く、旅客列車用にも用ひられ時として地方的急行列車用にも供せられ、貨物列車用または入換用にも適当なる形式なり。

 その主なる利益を挙ぐれば、第1 その設計簡約なること。第2 各種の列車に使用せられて利益の範囲広きこと。第3 前後いずれの方向にも同一の便利をもって運転し得るをもって、終端駅において必ずしも機関車の転向を要せざること。第4 「テンダー」機関車に比してその総重量軽く、しかも同一の牽引力を有すること。第5 降雪多き区間においては機関手室内を防護するに便利なること。ならびに必要に応じ排雪器を前部または後部に取付け得ること。第6 機関車の元価低廉なること。第7 機関庫内においてこれを収容するに便利なること等なり。

 しかしてその欠点とするところは石炭と水との貯蔵少なきをもって、しばしばこれを補給せざるべからざること。また石炭と水との増減によりて著しく車輪上の重量の配置を乱し、「バルブ・ギア」の正確を害すること。高速度の運転には動揺多きこと。「タンク」及び「コール・バンカー」のため機関手は前途を注視するに不便なること。および「サイド・ステー」の修繕に際し、そのつど「タンク」を取除くの不便あること等なり。

 「タンク」機関車は英国において最も多く利用せられ、欧州大陸これに次ぎ、米国にては少数の入替用及び郊外用機関車を除くの外は一般にこれを使用せざるを例とす。けだし「タンク」機関車の主要なる利益は短区間の運転に使用せらるるにあるをもって、米国のごとき広大なる国柄としては短区間の運転はほとんど稀なればなり。

 本邦においては「タンク」機関車の利用はなはだ盛んにして、小鉄道のごときは全然これを採用し、大鉄道においても貨物列車、混合列車、その他短区間の旅客列車用として採用せり。

 

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2022年7月21日 (木)

機関車工学:上巻(その87)貨物列車用機関車:2-8-2,0-10-0,2-10-0及び2-10-2形式

【 2-8-2,0-10-0,2-10-0 及び 2-10-2 形式 】

 これらの形式は勾配線における貨物列車用機関車として、米国における一部の鉄道に採用せられたりと言えども、かかる大形なる機関車は未だ広く用ひられず。

 第 131図ないし 133図はその実例を示す。

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2022年7月20日 (水)

機関車工学:上巻(その86)貨物列車用機関車:2-8-0形式

【 2-8-0 形式 】

 この形式は 0-8-0 形式の発達したるものにして、前部に「ビッセル・トラック」を有するをもって、0-8-0 形式に比すれば曲線を通過するに便なるのみならず、前部連結車輪の「タイヤ」の滅磨を軽減し得ること、あたかも 0-6-0 形式が 2-6-0 形式におけると同じ関係を有するものなり。

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 動輪は通常小にして第 114図に示せるごとく、「ファイア・ボックス」はこれを超えて自由に左右に拡大し得るをもって大形なる汽缶を使用するに便なり。機関車の重量は5対の車輪に分配せられ、一対の車輪に負担する重量を軽減し得るをもって大形なる機関車の設計に適せり。

 この形式は通常大なる「シリンダー」を有し緩速度の重き列車を牽引し、または勾配線用として採用せらる。この形式もまた米国にその基原を有するものにして同国において最も広く歓迎せられ、これを貨物列車用機関車の基本の形式とせり。

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 英国にはこれを採用するものはなはだ稀なりと言えども、欧州大陸にては 0-8-0 形と共に多く使用せらる。本邦にても重量なる貨物列車、または勾配線における貨物列車用として使用せらる。

 第 122図ないし第 130図は 2-8-0 形式の実例を示す。

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2022年7月19日 (火)

機関車工学:上巻(その85)貨物列車用機関車:0-8-0形式

【 0-8-0 形式 】

 8輪連結式は6輪連結式の発達せるものにしていっそう強大なる設計とす。ふつう小き動輪と大なる「シリンダー」とを有するをもって、速度緩慢なる重き列車を牽引するに適当なり。また勾配線用として使用せらる動輪小なるをもって大形なる汽缶を使用するに便なり。

 この形式は 0-6-0 形と同じく機関車の全重量を粘着力に利用し得べしと言えども、固定輪軸距長くして曲線を通過するに不便なるのみならず、全部連結車輪の「タイヤ」の磨滅すること速なり。

 英国及び大陸にては緩速度の貨物列車用として多く使用すれども、米国にては 0-6-0 形と同じく入替用または短区間の貨物列車用「タンク」機関車に用ひらるるの外、一般に大形なる機関車には採用せられず。けだし米国にては大形なる機関車には、前部に「ボギー」または「「ビッセル・トラック」を用ふるを慣例とす。

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 第 121図は英国における 0-8-0 形式の一例を示す。

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2022年7月18日 (月)

機関車工学:上巻(その84)貨物列車用機関車:2-6-0形式

【 2-6-0 形式 】

 この形式は 0-6-0 形式の前部に「ビッセル・トラック」と称する導輪を付加したるものにして、この導輪は左右に遊動し得るをもって曲線において円滑に機関車を案内すべく、且つこれがため前部連結車輪の「タイヤ」の滅磨を減少し得べし。

 英国にてはこの形式を採用せるものはなはだ稀なりと言えども、欧米各国には広く使用せらる。この形式もまた米国にその基原を有するものにして、外観良く且つ重量の配置上都合良き設計なり。

 米国にては「ビッセル・トラック」と前部連結車輪との重量を「バランス・ビーム」にて平均せるもの多し。この形式は多く急速度の貨物列車用として用いられ、時として混合列車または緩速度の旅客列車にも使用せらるることあり。

 米国にては貨物列車用機関車として近来 2-8-0 形を採用するもの多けれども、軌条の堅牢なる線路においては 2-6-0 形式を選択するを得策とする場合少しとせず。けだし車輪の数を省減するは、機関車の修繕または保存の経費を節約するの一条件なればなり。

 第 116図ないし第 120図は 2-6-0 形の実例を示す。

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2022年7月17日 (日)

機関車工学:上巻(その83)貨物列車用機関車:0-6-0形式

【 0-6-0 形式 】

 この形式は車輪の数を節約し最も簡単にして比較的大形なる装置を施し得べく、且つ機関車全部の重量をことごとく粘着力に利用せるをもってはなはだ経済なる設計なり。

 しかれども大形なる機関車にありては1軸上に支ふる重量重きに過ぐべく、且つ固定輪軸距長きに失し急曲線を有する線路には不適当なり。加えこれ前部連結車輪の「タイヤ」の滅磨すること速かにしてしばしば連結車輪を削り直す不便あるものなり。

 欧州各国にてはこの形式にして大形なるもの多しと言えども、米国にては入替用その他小形なる機関車にのみ採用せらる。

 第 115図は英国における 0-6-0 形式の一例を示す。

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2022年7月16日 (土)

機関車工学:上巻(その82)貨物列車用機関車

第4章 貨物列車用機関車

 貨物列車は一般に旅客列車よりもその重量はるかに大なりと言えども、その速度は大いに遅緩なるを例とす。けだし貨物列車は軽量にして快速ならんよりは、速度遅緩なるも一時に多量の車両を牽引するをもって運転上経済なるものとす。故にこれに用ふる機関車は一般に牽引力の大なるを要すべし。

 牽引力を増大するに要する直接の条件は、「シリンダー」の直径及び「ストローク」を増大すること、及び動輪の直径を減縮することこれなり。また牽引力の増加に伴ひ汽缶の容積を増大するを要すべし。

 大形なる汽缶を使用するには設計上動輪の直径を縮小するの必要もありて、自然の結果その速度を制限せらるる事となるべし。牽引力を増大せんには粘着重量を増加せざるべからず。故に貨物列車用機関車は通常連結車輪を増加し、6輪または8輪連結式を採用するもの多し。

 英国にては 0-6-0 または 0-8-0 形を用ふるもの多く、大陸にては 0-6-0 、2-6-0、0-8-0、2-8-0 等を用い、米国にては 2-6-0 または 2-8-0 形を用ふるもの多く、時として 2-10-0 または 2-10-2 形を用ふるものあり。

 

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2022年7月15日 (金)

機関車工学:上巻(その81)旅客列車用機関車:4-6-2形式

【 4-6-2 形式 】

 この形式は 4-6-0 形式の発達したるものにして、汽缶の容量をいっそう増大せんがために後部に小車輪一対を増置し、大幅「ファイア・ボックス」を応用したるものとす。この形式が 4-6-0 形式に対する関係は、あたかも 4-4-2 形式が 4-4-0 形式におけるがごとし。近来米国にては盛んにこの形式を使用し、これを急行列車用機関車の基本となすに至れり。

 けだし旅客列車の発達は年々客車の設備に改良を促し、従って益々その重量を増加するの傾向あるをもって、かかる大形なる機関車の必要を生ずるに至りたるは自然の趨勢と言ふべく、目下米国においてこの種の機関車をもって牽引せる旅客列車は 400トンないし 500トンを算するもの多し。

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 この形式は輪軸距長きをもって後部の小車輪には、第108ないし 110図に示せるごとき「ラジアル・アクスル・ボックス」を応用せるものあれども、多くは第 111ないし 113図に示せるごとく「アクスル・ボックス」を車輪の外部に有する、一種「ビッセル・トラック」に類せるものを応用せり。

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 後者は注油「パッド」の入替え、その他「スプリング」、「ジャーナル」等の修理、前者に比して大いに便利なり。また外部に「アクスル・ボックス」を有するものは重量の支点広きをもって機関車の動揺を減少すべし。

 第 98図ないし第 107図は 4-6-2 形式の実例を示すものとす。

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2022年7月14日 (木)

機関車工学:上巻(その80)旅客列車用機関車:2-6-2形式

【 2-6-2 形式 】

 この形式は第 71図に示せるごとく「ファイア・ボックス」の前に連結動輪を置き、前部に「ビッセル・トラック」を有し、後部には小車輪を備え大幅「ファイア・ボックス」を応用する様設計せらる。

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 車輪の配置は設計上はなはだ便利なれども、前部に「ビッセル・トラック」を有するものは4輪「ボギー」を備ふるものに比すれば、運転上多少平滑を欠くの嫌いありて曲線多き線路には適当ならず。

 この形式は米国にては「レイクショア及びミシガン」南部鉄道を始めとし、「シカゴ・バーリントン及びクインシー」鉄道、「サンタフェ」鉄道、「シカゴ・ミルウォーキー及びセントポール」鉄道等に採用せられたれどもその数未だ多からず。また近来オーストリアにて「ゲルスドルフ」氏の4個「シリンダー」平均複式機関車に採用されたり。

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 第 96図及び第 97図は 2-6-2 形式の実例を示す。

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2022年7月13日 (水)

機関車工学:上巻(その79)旅客列車用機関車:4-6-0形式

【 4-6-0 形式 】

 この形式は 4-4-2 形式の後部小車輪を変じて連結車輪となしたるものにして、牽引力を増大せんがために車輪の粘着力を増加するの設計とす。

 米国にては従来この形式を採用せるもの多かりしが、大幅「ファイア・ボックス」を応用するに不便なるをもって、近来はこれを枝線または小鉄道に用ふるの外、主要なる列車に使用するものはなはだ稀なり。

 フランスにては従来この形式を採用せるものあれども、英国にては 1899年ノース・イースタン鉄道にこれを採用せるを始めとし、爾来主要なる鉄道に漸次採用せられ、今日にてはこれを旅客列車用機関車の基本の形式と称するに至りたり。

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 この形式にては第 69図に示せるごとく、後部連結車輪が「ファイア・ボックス」の下に置かるるをもって、「ファイア・ボックス」は自然その深さを削減せらるべく、且つ汽缶を多少高上せざるを得ざるをもって大形なる車輪を使用するに不便なり。

 米国にてはこの形式にして小形なる動輪を有するものに、大幅「ファイア・ボックス」を応用するものあり。またこの形式にして直径 70インチ以下の動輪を有するものは、旅客または貨物列車に共用せらるるをもって便利なり。

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 通常中間の連結車輪を動輪となすもの多けれども、時として第 70図のごとく前部の連結車輪を動輪となすものあり。

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 第 89図ないし第 95図は 4-6-0 形式の実例を示す。


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2022年7月12日 (火)

機関車工学:上巻(その78)旅客列車用機関車:4-4-2形式

【 4-4-2 形式 】

 この形式は前に述べたるがごとく 4-4-0 形式の発達したるものにして、汽缶の容積を増大せんがため後部に小車輪一対を付加したるものなり。

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 4-4-0 形式においては「ファイア・ボックス」の長さが連結車輪の間に制限せらるるに反し、この形式においては第 68図に示せるごとく、連結車輪は「ファイア・ボックス」の前部に置かるるをもって、「ファイア・ボックス」は後部の小車輪を超えて自由に後部に延長することを得べし。またこの小車輪を超えて左右にも拡大し得べく、いわゆる大幅「ファイア・ボックス」を応用し得るをもって「グレート」面積を増加し、また大形なる動輪を兼備せしむるに適当なる設計なり。

 4-4-2 形式は後部の連結車輪を動輪となすものと、前部の連結車輪を動輪となすものとの二種あり。前者の場合には「コネクティング・ロッド」長きに過ぎ、後者の場合には短きに過ぐべし。

 「コネクティング・ロッド」短きに失すれば傾斜大にして不利益なるはもちろんなりと言えども、長きに失すればその重量を増加し機関車の平均上不利益なるを免れず。加えこれ後部の連結車輪を動輪となすものは、「コネクティング・ロッド」を「カップリング・ロッド」の外側に置くの必要あるをもって、為めに左右「シリンダー」の距間を遠大しこれまた機関車平均上多少不利益たるを免れず。

 これに反してこの形式は一般に連結車輪の輪軸距短きをもって、「カップリング・ロッド」を短縮し得るの利益あり。後部の小車輪は通常固定せらるるものにして、「アクスル・ボックス」を車輪の外部に有するものと、これを内部に有するものとの二種あり。前者は左右における重量の支点広きをもって動揺少かるべし。且つ注油「パッド」の入替え、「スプリング」、「ジャーナル」等の修理容易なり。

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 米国にてはつとにこの形式を採用したりしが、近来は 4-6-2 形式をもってこれに換えたり。欧州にては 1898年ドイツの「パラチネート」鉄道及び、英国のグレート・ノーザン鉄道に採用せられたるを始めとし、爾来これを採用するもの漸次増加したれども、一般にこの形式は機関車の総重量増加せる割合に連結車輪上の重量少なくして、粘着力に乏しきをもって近来は 4-6-0 形式をもってこれに換ふるに至れり。

 第 81図ないし第 88図は 4-4-2 形式の実例を示す。

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2022年7月11日 (月)

機関車工学:上巻(その77)旅客列車用機関車:4-4-0形式

【 4-4-0 形式 】

 4-4-0 形式は前部に4輪「ボギー」を有する4輪連結式にして、外観良く且つ簡約なる設計に属し、比較的短き輪軸距をもって比較的大形なる装置を施し得べく、構造も簡単にして付属品少なく運転の具合またはなはだ良好なり。

 この形式は米国にて最も広く採用せられたるをもって米国式と称せらる。欧州各国にてもまた盛んに使用せられ、ほとんど世界を通じて旅客列車用機関車の基本と称せられたるもの、この形式のごときはその例はなはだ稀なり。しかれども比較的小形なる設計に属するをもって、近来は一部の鉄道に歓迎せらるるの外、漸次その使用範囲を縮小せられ主要なる鉄道にはさらに大形なる形式を採用するに至りたり。

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 欧州各国にては一般に鋼板製「フレーム」を用ひ、「ファイア・ボックス」をこの「フレーム」の間に深く垂下するの慣例なるをもって、大形なる動輪を有するものは従輪を「ファイアボックス」の下部に置くこと困難なれば、第 66図に示せるごとくこれをその後部に置き、連結車輪の軸間に「ファイア・ボックス」を垂下するもの多し。

 故に長き「ファイア・ボックス」をこの軸間に納めんとせば固定輪軸距を延長し、且つ長き「カップリング・ロッド」を用ふるの不便あり。また構造上従輪上の重量乏しきをもって、通常重き鋳鉄製「フット・プレート」を「フレーム」の後部に取付くるを要す。

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 米国にては一般に棒形「フレーム」を用ひ、「ファイア・ボックス」をこの「フレーム」の上に搭載するを例とす。故に「ファイア・ボックス」の深さ比較的浅くして、第 67図に示せるごとく後部連結車輪の軸をその下部に横ふることを得て、設計上固定輪軸距を短縮し得べく、且つ「ファイア・ボックス」を後部に延長するに便利なり。加えこれ重量の配置上、英国機関車のごとく後部に無益の死量を付加するの必要なかるべし。

 第 73図ないし第 80図は 4-4-0 形式の実例を示す。

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2022年7月10日 (日)

機関車工学:上巻(その76)旅客列車用機関車

第3章 旅客列車用機関車

 旅客列車は交通機関上最も重きを置かれ最も安全にして、しかも最も快速に運転すべきものなれば、これに用ふる機関車の設計もまた最も重きを置かれたり。

 旅客列車用機関車にして短区間の運転には通常、機関車が自ら水と石炭とを搭載せる「タンク」機関車と称するものを使用すれども、長距離の運転には石炭と水との充分なる貯蔵を要すべきをもって、別に「テンダー」と称する炭水車を伴うを例とす。

 急行列車は通常小駅を通過して長距離の運転をなすものなれば、これに用ふる機関車は特に大形なる「テンダー」を伴うを要すべし。急行列車用機関車は旅客列車用機関車中、最も主要なるものにして常にその標本として論ぜらるるものなり。

 その形式種々ありて英国の一部には今なお、単一動輪式 2-2-2 または 4-2-2 形を使用しつつありと言えども、かかる旧式機関車は単に前世紀の遺物たるに過ぎざるをもって、ここには近世機関車の代表者として計上すべき 4-4-0、4-4-2、4-6-0 または 4-6-2 等、主要なる形式のみに付いてその構造の概略を記述せんとす。

 

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2022年7月 9日 (土)

機関車工学:上巻(その75)最近における機関車発達の概要:高速度列車の実例

【 高速度列車の実例 】

 今日まで欧米において、蒸気機関車を用ひて試みられたる最高速度は1時間に付き約 100マイルなり。ただし多くは一時の試運転に止まり、この速度をもって平素の運転に供したることなし。しかれども1時間 80マイルないし 85マイルの速度は小距離の間においてしばしば起こり得る最高速度にして、今日世界の最急行列車として目せらるる米国「カムデン」市と「アトランティック」市との間の急行列車は、その最高速度を1時間 90マイルとなせるは他に比して一頭地を抜けるものなり。

 高速度運転に関して有名なるは 1901年より 1903年に渡りて、ベルリン「ツォッセン」間 14マイルの軍用鉄道において電車の試運転を行いたることなり。この時の最高速度は1時間 130マイルにして、運転区間なお長ければなお早き速度を出すことを得たりしならん。電車は「アルゲマイネ」会社及び「シーメンス」会社より1両ずつ出品したるものにして、その成績左のごとくなりし。

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 列車の速度1時間 100マイルを超過する場合においては、その線路は平坦にして直線なるを要し、且つ最も完全に維持せらるるにあらざれば脱線の危険多く、急遽列車に危険を報知するに際しても信号の現示時機を失する等のことありて、安全の運転を保し難く実行上極めて困難なりとす。しかして今をもって未来を推すに、基本軌道における急行列車は平均速度 60マイルをもって当分はその極点となすべく、途中処々において起こり得る最高速度は1時間 85マイルをもって極度となすべし。

 しかして我が国における3フィート6インチ軌間の鉄道にありては、そのやや平坦なる区間において平均速度 40マイル、最高速度 60マイルを超過することは困難なるべし。

 1908年(明治41年)における、英米仏独の有名なる急行列車の速度を挙ぐれば左のごとし。

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2022年7月 8日 (金)

機関車工学:上巻(その74)最近における機関車発達の概要:機関車重心の高さ

【 機関車重心の高さ 】

 機関車の重心は簡単にこれを算出する事あたわざるをもって、通常汽缶の中心の高さをもって機関車の高さを言い表はすの標準となせり。汽缶中心の高さは従来軌間の2倍、すなわち4フィート8インチ半の軌間においては9フィート7インチ、3フィート6インチの軌間においては7フィートをもって極限となし居たりしが、近来大形なる汽缶を使用するの結果、往々この範囲を脱してその高さ軌間の2倍2分に達するものあり。けだし現今建築定規の範囲内に機関車の高さを増大するは、転覆を来すがごとき危険なきもののごとし。

 重心の高き機関車は「ローリング」と称する、左右に交互に傾斜する動揺大なるを免れざれとも、「タイヤ」が軌条の内面を横に打撃する力を軽減すべく、特に曲線において遠心力に帰因するその作用を減少し、平滑なる運転を遂ぐることを得べし。また「タイヤ」の「フランジ」及び軌条の摩耗を軽減し、且つ脱線の恐れを避くることを得るは実験に徴してはなはだ明らかなり。

 米国において従来背高き機関車を使用するは、大形なる汽缶を使用するの結果なりと言えども、またつとにこの理を応用したるに他ならず。故に速度と曲線との関係が機関車の転覆を醸さざる範囲において汽缶を高上し、または動輪の直径を増大するは設計上決して避くべき事にあらざるべし。

 電気機関車は一般にその重心低きをもって、「タイヤ」の「フランジ」と軌条の内面とを損傷すること、蒸気機関車に比してはなはだ大なるのみならず、曲線を通過するに当たり比較的脱線し易きものとす。その実例としては 1907年2月米国ニューヨーク「セントラル」鉄道における電気機関車が、半径 29チェーンの曲線を 45マイルの速度をもって進行中、外側軌条に属する「スパイク」を折損し軌間を拡大し、機関車及び客車の脱線転覆を来したるの事故あり。

 この線路は平素蒸気機関車をもって、60マイル以上の速度もって安全に仕業せられつつありしものにして、重量もまた蒸気機関車に比して重きにあらず。また曲線における外側軌条の高度は4インチ半にして、あたかも平均速度 46マイルに対する計算に相当し少しも普通の慣例を脱したる点なかりしをもって、事故の原因は全く電気機関車の重心が蒸気機関車に比して著しく低きに帰因するものと認められたり。

 けだしこの事故は機関車の重心を高上するの必要あることを証したるものにして、電気機関車の発達上著しき改良を促したるものとす。

 

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2022年7月 7日 (木)

機関車工学:上巻(その73)最近における機関車発達の概要:速度の発達

【 速度の発達 】

 機関車の速度を迅速ならしむるに要する直接の条件は、動輪の回転数を増加すること、及び動輪の直径を増大する事これなり。しかして動輪の回転を増加するときは車軸その他、機械部の摩擦を増進するのみならず、「ピストン」の速度迅速に過ぐるときは蒸気節約上不利益たるを免れず。

 また動輪の直径を増大するは、すなわち回転数を減少し、且つ「ピストン」の速度を緩慢ならしむるに必要なる条件なりと言えども、大形なる動輪を応用するは汽缶を高上し、従って機関車の重心を高上する事となり、その度を過ぐれば運転上危険なるのみならず大形なる汽缶を使用するに不便なり。近来大形なる機関車において動輪の直径を縮小するの傾向あるは、牽引力の膨張に伴って大形なる汽缶を採用するの結果にして構造上止むを得ざるにあり。

 実験に徴すれば普通の機関車において、「ピストン」の速度1分時間に 700ないし 800フィートなるときは、蒸気利用上最も有効なるを認むべし。この速度はあたかも 24インチ「ストローク」のものにありて、動輪の回転数 175ないし 200に相当すべし。しかれども動輪の直径に限りありて、列車の速度は益々大なるを要求せらるるの結果、必ずしもこの経済的速度をもって運転することを得ずして、「ピストン」の速度1分時間に 1500フィートに達し、動輪の回転数 350を超ゆるものその実例少なからず。

 近来注油の方法大いに改良せられ、動輪の回転益々増加せらるるに至り、「ピストン」の速度を減少するの必要上「ストローク」を縮小するの傾向あるは、高速度機関の設計上また止むを得ざるの結果なりとす。

 米国にては動輪の直径をインチにて示し、その数字をもってその機関車の最高速度(1時間に付きマイル)と仮定せり。たとえば動輪の直径 60インチなるときは、1時間 60マイルをもってその機関車の最高速度とするがごとし。斯のごとく仮定するときは動輪の1分時間における回転数は、直径の大小にこだわらず常に 336に当たるべし。

 英国にては従来動輪の直径をフィートにて示し、これに 10を乗じたる数をもって1時間における最高マイル数と仮定したり。この計算は1分時間 280回転に相当すれども、近来は 350回転をもって設計の標準とするに至れり。

 機関車の速度をしてその度を過ぐるに至らしめば動揺及び空気の抵抗を増加し、汽缶及び機関の効率を減少し修繕費を増加する等、機関車の経済上ほとんど得るところなきものとす。しかれども各国共忍んでこれを実行するは、あるいは競走上より、あるいは一般の要求上より刺激せらるるによるをもって、高速度列車に関しては単に機関車の効率のみに付いて論ずる事あたわざるの事情あり。

 

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2022年7月 6日 (水)

機関車工学:上巻(その72)最近における機関車発達の概要:過熱蒸気の利用

【 過熱蒸気の利用 】

 汽缶において発生したる飽和蒸気を過熱してその熱量を利用するは、近来において発見せられたるものにあらず。西暦 1828年イギリス人「リチャード・トレビシック」氏が、「コーン・ウォール」地方の「バーニー・ダウンス」炭坑において使用せるポンプ機関の「シリンダー」、及び蒸気管を耐火煉瓦にて包み別に装置したる火炉より火気をもってこれを熱したる方法は、過熱蒸気の歴史においてその起源と称すべし。

 この機関は凝結器付きにして1分時間の回転数わずかに4回、蒸気の圧力 45ポンドのものなりしが、この過熱器により従来一昼夜に 9000ポンドを費やしたる石炭を 6000ポンドに減少するを得たり。

 同氏はこの経験に基づきさらに他の汽缶を設計し、やや近来の式と類似せる過熱器を製造したりしも、蒸気の温度を加減するの装置無かりしをもってその結果不明に属したり。その後これを研究する者ままありしと言えども、広く世間にその効能を示したる者はフランス「アルザス」州の「イルン」氏とす。

 1857年同氏が「コルマール」市において実験したる結果の報告によれば、55ポンドの圧力を有する蒸気を華氏 100度ないし 190度ほど過熱するときは、蒸気使用高において 20なし 47「パーセント」の節約を得たりと言う。1860年代には舶用機関に多く採用せられ蒸気の節約大よそ 20「パーセント」なりと称したり。

 しかして当時使用せる蒸気の圧力はわずかに 20ポンドないし 40ポンドにして、100度ないし 125度の過熱をもって限度とせり。けだし当時は「シリンダー」に獣脂を使用せるをもって、熱度高き蒸気には注油上大いに困難を感ぜしなり。しかるに 1865年頃より蒸気圧力の増加と共に複式機関の発達を促し、過熱式機関はかえって故障多しとして斥けられ、1870年代には「アルザス」州の「イルン」氏一門の他はこれを顧みる者なきに至れり。

 1880年に至り、砿油、「バランス・バルブ」、及び金属製「パッキン」等の使用と共に、過熱蒸気機関は再び大陸に現われ、ひいて各国の注意を惹起し、プロイセン「カッセル」市の「ウィルヘルム・シュミット」氏は、ついに華氏 700度に達せる突飛なる過熱蒸気の利用すべきを証かし、1895年に至り同氏はこれを機関車にも応用するの方法を案出したり。

 しかしてこれを実用的に機関車に応用したるは、1898年プロイセン官有鉄道の「ガルベ」及び「ミュラー」両氏が、「シュミット」氏式過熱器を2両の機関車に装置したるをもって嚆矢とす。爾来同国にては盛んにこれを研究しその効能を認め、1902年末には 30両、1904年末には 127両、1907年末には 1931両を算するに至れり。1907年末にプロイセン鉄道における機関車総数は 17006両なれば、過熱蒸気機関車は全機関車数の1割1分余に当たる。また複式機関車の総数は 5237両にして全数の3割余に当たる。複式機関車は過去 20年以上においてこの数に達せるに比し、過熱蒸気機関車は数年間において一躍して非常の増加をなし続々製造せられつつあり。

 米国においては 1901年以来「カナディアン・パシフィック」鉄道会社において主としてこれを採用し、同会社は 1907年にはその数 352両に達せり。

 その他大陸における各国もこれを応用せるもの少なからず。英国もまたこれを研究するに至れり。けだし過熱蒸気利用の成績は、近来複式を凌駕するの傾向あり。

 

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2022年7月 5日 (火)

機関車工学:上巻(その71)最近における機関車発達の概要:複式機関車

【 複式機関車 】

 複式機関の応用は蒸気の膨張力を利用し、従って汽缶の負担を軽減するものにして、高圧蒸気の利用上有利の方法なるをもって従来各国において広く試用せられ、多くはその成績の見るべきものあれども構造複雑なるものは取扱いの不便なるものあり。また使用の目的によりては時としてその成績、単式に及ばざることあり。

 しかれども一般には成績良好にして、石炭約1割5分、水約2割を節約し得ること明らかなれば、将来これを採用するもの益々増加せんとするの傾向あり。特に近来各国において歓迎せられつつある4個「シリンダー」機関車には、複式の応用最も適当にして大いにその効能を発揮するに至れり。

 複式機関車の世に出でてよりほとんど 30年その間数多の変遷あり。しかしてその種類もほとんど 30種以上に渡れり。英国においてはロンドン・ノースウェスタン、ならびにノース・イースタンの両鉄道において一時盛んにこれを使用したりしも、その後多くは単式機関車に改造せられ、一時はアイルランドに少数を残せるの外、全英国にはほとんどその跡を断つに至りたり。

 しかるに最近に至りノース・イースタン、「ミッドランド」、グレート・ウェスタン、グレート・ノーザン、グレート・セントラル共に「ランカシャ―及びヨークシャー」各鉄道会社は、各数台の4個「シリンダー」もしくは3個「シリンダー」の複式機関車を試用し始めたり。ことに「ミッドランド」鉄道において3個「シリンダー」複式機関車 40台を製造したると、グレート・ウェスタン鉄道がフランスより3台の「ド・グレン」氏形4個「シリンダー」複式機関車を輸入したるは、やや世人の注目を惹けり。

 従来複式機関車を最もよく利用したるものはフランスにして、オーストリアこれに次ぎ、主要なる鉄道はほとんど全てこれを採用せり。けだし石炭の産出少なくして多くはこれを外国に仰ぎ、その価不廉なるに基づくものなり。

 「マレー」氏複式機関車と言ひ4個「シリンダー」平均機関車と言ひ、いずれも皆なフランスの創成に係わり諸部の設計精巧を極め、乗務員もまたその取扱いに熟練せり。

 米国にては 1905年において機関車総数 47696両のうち 2663両の複式機関車を有せり。特に「サンタフェ」鉄道会社は最も多数の複式機関車を有し、1907年において同会社の有する機関車総数 1798両のうち 689両は複式に属し、その後なお益々これを増加しつつあり。しかして2個「シリンダー」複式は既に旧式に属し、近来は4個「シリンダー」複式を採用するもの多し。

 またロシア・シベリア鉄道には、近来多数の「マレー」氏複式機関車を採用せり。けだし「サンタフェ」鉄道のごとき、シベリア鉄道のごとき、空漠たる原野を通過する鉄道にありては、給水及び載炭の設備を多数に置くは不利なるをもって、特に水及び石炭を節約するの必要に迫まられ、複式機関車を選択するに至りたるものなるべし。

 プロイセンにありても従来複式機関車を利用することあえて他国に譲らず、現に 1907年において機関車総数 17006両のうち 5237両の複式機関車を有せり。しかれども同国にては近来過熱蒸気機関車の進歩著しくして大いに複式の発達を厭するの傾向あり。

 本邦にては明治 26年鉄道廠神戸工場において1両の複式機関車を製造したるを始めとし、山陽間西日本等諸鉄道において米国製複式機関車を使用せりと言えどもその数はなはだ僅少なり。その成績は概ね石炭及び水の節約を証しつつありと言えども、牽引列車の一定せざること、構造やや複雑にして取扱いの不便なること等は、未だ充分にその効能を発揮せしむるの機運に達せず。

 元来狭軌鉄道における機関車は一般に汽缶の容量比較的小にして、牽引力を増加する上に特に困難を感ずるものなり。蒸気を節し石炭を減ずるは、すなわち汽缶を増大するの方法に外ならざれば、複式もしくは次に陳ぶるところの過熱蒸気の応用は、牽引力の問題と共に将来必ず本邦において歓迎せらるるの時期なかる可らず。

 

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2022年7月 4日 (月)

機関車工学:上巻(その70)最近における機関車発達の概要:高圧蒸気の利用

【 高圧蒸気の利用 】

 蒸気の常用圧力は製鋼術の進歩の伴ひ大いに高進しつつありて、19世紀の終わりにおいては毎平方インチ 160ポンドないし 175ポンドを普通となせしが、20世紀に入りては 180ポンドないし 200ポンドを採用し、今日にては 220ポンド以上の高圧力を使用するものあり。

 高圧蒸気を使用するは汽缶の力を増加するのみならず、蒸気使用上の経済を計るものなり。しかれども 200ポンド以上の高圧力は蒸気の漏洩を増進し、または「ステー」の折損を助長し、保存上または修繕上不利益の点少なからず。且つ用水不良なる時は「インゼクター」より送入する水の温度を高上するがため、「チェック・バルブ」及び「デリバリー・パイプ」等に「スケール」の堆積を促し、「インゼクター」の故障を多からしむるを免れず。

 元来高圧蒸気の利用は 200ポンド以上の圧力に至りてはその効能極めて僅少なるをもって、220ポンド以上の圧力は未だにわかに一般に採用せらるるに至らず。けだし近来流行の過熱蒸気の利用は、かかる高圧力を用ひずしてその効率を増進するの方法なりとす。

 

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2022年7月 3日 (日)

機関車工学:上巻(その69)最近における機関車発達の概要:鋳鋼の応用

【 鋳鋼の応用 】

 製鋼術の進歩に伴い鋳鋼法もまた大いに改良せられ、柔軟にしてしかも緻密なる鋳造品を製することを得るに至り。従来、錬鉄火造法によって製作せられたる物品は、概ね鋳鋼をもって代用せらるる事となり。また形大にして且つ破砕しやすき鋳鉄品は、軽量にして強靭なる鋳鋼をもって代用せらるるもの大いに増加したり。

 機関車製造上、鋳鋼品の著きものは車輪にして、英国及び欧州大陸にては従来数片の鉄片を熔着して成形し、米国にては鋳鉄をもって製するの慣例なりしが、前者はその製作に手数を要することおびただしく、後者は鋳造困難にして、その方法宜しきを得ざれば亀裂するの患あり。且つ強さの関係上その重量を増加せざるを得ざるべし。これらの方法は近来全く廃絶し、軽量にしてしかも安全なる車輪は、柔軟なる鋼をもって容易に鋳造せらるるに至りたるは機関車製造上の一進歩なりとす。

 また米国における構成「フレーム」は、従来棒形の錬鉄をもって製せられたりしが、近来は鋳鋼製を採用するもの漸次増加しつつあり。

 しかして今なお錬鉄製を使用するもの多きは、これまたその設備を有する工場あるがためにして、近き将来においては全然鋳鋼製をもって代用せらるるに至らんとす。また機関車製造上著しき改良の一つなりとす。第65図は鋳鋼製「フレーム」の一例なり。

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 その他製作構成に手数を要するものにして鋳鋼品をもって代用せらるるものは、「モーション・プレート」のごとき、「シリンダー・カバー」のごとき、諸種「ブラケット」付属品等その類少なからず。けだし鋳鋼法は最近十年間に長足の進歩をなし、将来ますます発達して錬鉄と鋳鉄との使用を圧するの傾向あり。

 

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2022年7月 2日 (土)

機関車工学:上巻(その68)最近における機関車発達の概要:汽缶用材料

【 汽缶用材料 】

 汽缶の材料として以前はもっぱら鉄板を使用したるものなり。けだし鋼板は品質平等ならず、且つ堅剛にして往々亀裂を生ずることあればなり。しかるに製鋼術は最近十数年間に著しく進歩して、平等柔軟しかも伸張力の強き善良なる鋼板を製出することを得。且つ汽缶の工作法にも種々の改良を加えられたるをもって、近来はもはや鉄板を使用するものその跡を断つに至りたり。鋼板は鉄板に比すれば伸張力強きをもってその厚さを省減し得べく、軽量にして高圧に堪うべき安全なる汽缶を製造するに適せり。

 「ファイア・ボックス」の材料として、米国にては以前はもっぱら鉄板を使用したりしが、近来は善良なる薄き鋼板をもってこれに代えたり。

 英国及び欧州大陸にては従来銅板を使用するもの多し。銅は鋼に比すれば伝熱力に富み蒸気発生上有利なるのみならず、柔軟にして容易に亀裂するの患なしと言えども、鋼板もまたその厚さを減じて伝熱力を補償し得べく、且つ銅板に比すれば大いに廉価なるをもって、善良なる鋼板は「ファイア・ボックス」の材料として最も適当なり。

 また「チューブ」の材料として英国及び欧州大陸にては、銅管または真鍮管を用うるもの多かりしが、近来は鋼管を使用するもの漸次増加せり。

 米国にては従来鉄管を用ふるを慣例とす。鉄管は竪に鎔着して製造せらるる旧式の方法にして、鋼管は引出法によって製造せらるる新式の方法に属す。

 鋼管は薄く且つ強きをもって「チューブ」として最も適当なり。米国及びドイツにおいて今なお鉄管を用ふるもの多きは、その価廉なるにあらず。また鋼管に優れるにもあらず。

 従来盛んに発達したる鉄管製造業を保護するの必要なるによるものなれば、鋼管をもってこれに代ふるに至るは、けだし遠き将来にあらざるべし。要するに鋼板および鋼管の応用は汽缶の設計上、多大の改良を加えたるものとす。

 

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2022年7月 1日 (金)

機関車工学:上巻(その67)最近における機関車発達の概要:水管式汽缶

【 水管式汽缶 】

 英国サウス・ウェスタン鉄道の汽車課長「ディー・ドラモンド」氏は、「ファイア・ボックス」内に多数の水管を斜めに設置し、これを同鉄道の多数の機関車に応用せり。本邦にも数十台の機関車にこれを試用しつつあり、同氏はその後第 62及び 63図に示せるごとくこれを改良し、「バレル」内に直径2フィート9インチの1個の焔管を入れ、これに多数の水管を交互に挿入し、もって一種の水管式汽缶を発明せり。

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 この汽缶は伝熱面を減少すれどもガスの燃焼比較的良好にして、石炭1割5分を節約し得ると称せらる。しかれどもその欠点は煤煙及び水垢の掃除に不便なることにして、同鉄道においても水質善良なる地方に使用しつつあり、その他構造も複雑なるをもって他の鉄道には採用せらるるに至らず。

 その他水管式汽缶としてやや進歩せるものは、オーストリア鉄道局の技師「ブロタン」氏の発明に係る「ブロタン」汽缶と称するものとす。その形式は第 64図に示せるごとく水管をもって「ファイア・ボックス」の側壁を構成し、水管の上端は「ファイア・ボックス」の頂天における蒸気室に取り付けられ、下端は底管に挿入せらる。

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 氏は多年研究及び試験の後 1901年初めてこれを実用に供したり。その後しばしば実地試験の結果、普通の汽缶に比して2割内外の石炭を節約し得る事を証したり。

 この形式は「ファイア・ボックス」における伝熱面積を増加する事およそ5割にして、且つ管の厚さ薄きをもって蒸気の騰発はなはだ速やかなり。けだし汽缶の容積を増加せずしてその容量を増加することを得るは、水管式汽缶の特長なりとす。

 普通の汽缶において常に困難を感ずるは「ファイア・ボックス・ステー」の折損するにありて、汽缶の破裂もこの「ステー」の折損に帰因するにするもの多し。

 水管式「ファイア・ボックス」は全然「ステー」の使用を廃したるものにして、かかる危険の虞れなきのみならず修理もはなはだ簡単なり。しかれども水管中の水垢を掃除するには多少の手数を要するを免れず、この形式は目下オーストリア、プロイセン、米国等にて試用中に属し、日なお浅きをもって未だ精確なる成績を発表するに至らずと言えども、これまた汽缶の改良上注目すべき設計の一つなりとす。

 

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