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2024年7月の記事

2024年7月31日 (水)

機関車工学:下巻(その28)列車時刻表及び運行表:列車運行表時刻表作製(2)

 列車の間隔及び行違時刻の法則を守り、急行列車、長距離列車、地方旅客列車等を順次列車運行表に記入するに当り留意すべき事項は概ね左のごとし。

 1.旅客列車発着時刻は常に多数乗客の希望を容るること。

 2.旅客列車発着時刻は殊に主要駅においては何人も記憶し易き時分を選ぶべきこと。例へば新橋発神戸行急行列車の出発時刻は午後5時 37分とするよりも5時 40分とするをもって記憶に便なるべく、6時2分とするよりも6時発とするをもっていっそう便利なるがごとし。その到着時刻またしかり。

 3.主要なる旅客列車は時間改正に際しても主要駅の出発時刻をかなり変更せざること。例へば新橋発神戸行急行列車の出発時刻が従前午後6時なりとせば、時間改正に際してもかなりこれを尊重して保持すること。

 4.通勤者通学者の乗車する列車は、多数乗客の希望あるにあらざればみだりに従来の発着時刻を変更せざるを要し、且つ他列車の妨害を受けて遅延すること無きよう時刻を調製すべし。ただし夏季と冬季と時刻を変更するはむしろ当然にして、また乗客の希望するところなり。

 5.急行旅客列車はその性質上中間駅を通過するものなれば、中間駅に出入する旅客をして急行列車を利用するの方法を講じ置かざるべからず。すなわち中間駅より急行列車に乗らんとする旅客は、先発の地方旅客列車にて急行列車の停車する最近の主要駅に到らしむべく、また急行列車より降車したる旅客は、後発の地方旅客列車にて目的地へ向はしめざるべからず。すなわち急行列車の前後にはこれら地方旅客列車を相当に分配し置かざるべからず。しかしてこれら列車の継承に際し手荷物ならびに小荷物の積換へあることは注意すべきことなり。

 6.連絡停車場における接続時間は最も注意を要すべきものなり。鉄道網の不完全なる時代においては、連絡停車場における乗換及びその待合時間も軽視せられたりと言えども、鉄道網漸次稠密となり長距離行旅客の増加するに従ひその乗換時間の多少は大なる問題となるに至れり。従って列車の分配に関し均一時間の間隔をもって列車を出発せしむるよりも、むしろ列車の接続を尊重するを便利とす。

 7.主要なる旅客列車は相当なる設備を有する客車をもって編成すべきが故に、一編成の列車をよく利用するの方法を考へざるべからず。すなわち客車運行表なるものを同時に調製するの必要あり。

 8.旅客列車の機関車と貨物列車の機関車とはかなり区別すべきはもちろん、車掌及び機関手等列車乗務員もかなり旅客列車と貨物列車とに区別するをもって適当となすが故に、時刻表作製の際それらを充分顧慮するを要す。

 9.いずれの区間においても、いったん旅客列車の回数を増加したる以上は容易にこれを削減すべきものにあらず。旅客列車の速度を増加したる場合においてもまた然り。故に旅客列車の回数増加及び速度増加は最も慎重の調査を経て決定すべきものなり。ただし避暑もしくば海水浴等のため、ある時期を限りて列車を増発するはこの限りにあらず。

 10.降雪多き区間においては列車遅延すること多きをもって、夏時刻と冬時刻とに分ちて列車を運転するをもって便利となすべし。もちろん冬時刻は列車運転速度を減し停車及び行違時間を充分に見積るものなり。これ殊に長距離列車においてその必要を見る。

 11.貨物列車は急行、直通、不定期及び地方等の各種に分類して時刻を調製すべきものにして、急行及び直通貨物列車は連絡所における接続の時間、主要停車場における貨車解結の状態を明かにし、旅客列車と同じく最も定時に運転し得べき方法をもって時刻を制定するを要す。

 12.急行直通及び不定期貨物列車は事情の許す限り中間駅を通過するをもって得策とす。これ貨物の速達と定時運転を期する上においてはなはだ必要の事なり。地方貨物列車は中間駅対主要駅、ならびに中間駅対中間駅の貨車を輸送するをもって主眼とし、中間各駅に最も便宜なる時刻にこれを配列すべし。中間駅にては人手少なきをもって、かなり毎日午前中に空車を配給し夕刻にこれを発送せしむるを得ば最も便宜を得べし。不定期貨物列車は多くは長距離行貨物の輻湊したるときに運転するものなれば、長距離に渡りてよくその連絡系統を正して配列し置くべし。

 13.新聞紙輸送列車は世の進運に伴ひますます重要視せらるるに至れり。しかして旅客及び貨物列車にて輸送するをもって比較的その利用すべき列車回数多しと言えども、新聞紙の発送時刻は午後9時以後なると配達時刻は午前5時前後をもって最良とするにより、午後9時以後に出発したる列車をもってかなり速に長距離に達せんことを望むと同時に、主要駅より速に便宜の列車に積換へて中間駅に送り得らるるよう要求あるを常とす。

 14.貨物列車にして最も発着時刻に紛議あるものは鮮魚の積込時刻と到着時刻なりとす。漁船は普通夕刻に帰着し魚類は早朝の市場に持出だすを要するをもって、停車場より市場の距離を見計らひ早朝相当の時刻に到着せしむるを要す。牛乳、果実、及び野菜類の運搬も鮮魚に次ぎ相当の配慮を要す。

 15.運輸閑散なる地方または相当運輸の発達したる地方においても、中間駅における旅客貨物の輸送上に混合列車を利用するに当り、混合列車には左の制限あることを忘るべからず。

 鉄道運転規程  第15条

 「列車の軸数は連結具の強度に応じこれを定むべし。いかなる場合と言えども旅客列車にありては機関車を除き 70軸を超ふることを得ず。」

 鉄道運転規程  第19条

 「2車以上に跨る貨物を積載したる貨車は旅客列車に連結することを得ず。ただし2車を超へざる場合にして特別の装置を施し監督官庁の許可を得たるときはこの限りにあらず。

 発火し易き貨物を積載したる貨車は旅客列車に連結することを得ず。ただし貨物または貨車に充分なる防火の施設を為したる場合において、該貨車を客車より2両以上隔つるときはこの限にあらず。」

 すなわち多数の貨車を連結するには、または石油、火薬、あるいは長大なる木材等を運搬するには、混合列車は不完全なる貨物列車なれば、これをもって貨物輸送上直接の衝路に当らしむることは不可能なりとす。

 16.主要駅発着の初列車、及び終列車(終列車は演劇場解散の時刻を標準とすることあり)は、乗客少数なるをもって混合列車を利用するをもって便利となすことあり。

 17.時刻表調製及び列車運転の衝に当る者は従前の経験により、各運転区間における貨車の日常の輸送力と最大の輸送力とを知悉し、必要に応じてこれを輸送するの成案を有すべし。従って各運転区間において定期貨物列車と不定期貨物列車の調合を加減し、且つ必要に応じてなお若干の臨時貨物列車を運転し得べきやを調査し置くを要す。且つまた不定期列車に対して各関係区間においてその系統を正し、一区間の不定期貨物列車若干を運転せば、直ちに他の区間において相当の不定期貨物列車を運転し互いに相応ずるの準備なかるべからず。一列車の牽引定数の異なる区間においては、それに反比例して列車数を増加せざるべからず。

 18.列車時刻表調製は紙上の空論にあらず。世間の要求と、鉄道の経済と、線路及び諸車両の状態と、駅員及び列車乗務員の適否、及び定員等を考慮し、その実行上に関し些少の疑義あるべからず。

 従来一組の駅員にて昼間勤務のみをなせる駅に対して夜行列車を課せば駅員を増加せざれば事行はれざるべく、いかに多数の不定期列車を設け置くも、必要に応じそれに対する機関車及び列車乗務員を供給するの成案なくんば全く無用のものに帰すべし。終端駅の設備ようやくもって1日に 300両の貨車を取さばくに過ぎざるものに対し、500両の貨車を輸送し来るも何らの効果なきのみならず却って貨車の利用を妨げ有用なる側線を閉塞するに過ぎざる事となるべし。中間主要駅における貨物列車出入の割合もまた然り。よくその出入の時刻を調和せざれば、ある時刻には数個列車を駅内に包有するの結果を生じ駅構内の混乱を来たすべし。

2024年7月29日 (月)

機関車工学:下巻(その27)列車時刻表及び運行表:列車運行表時刻表作製(1)

【 列車運行表時刻表作製 】

 列車運行の系統、列車の種類、各列車の運転及び停止時間、各種機関車の牽引定数、列車の組成、運転保安上の設備、その他一般に線路上の設備、停車場の側線等を知悉し、従来の関係歴史と向後の要求とを顧慮し、始めて列車時刻表作製の計画に着手すべきものとす。

 前にも陳べたるがごとく、列車の等級は列車の速度によりて定まるものとも見なし得べきものにして、その順序は左のごとし。

  1 急行旅客列車
  2 旅客列車
  3 混合列車
  4 急行貨物列車
  5 貨物列車
  6 工事用列車、単行機関車または試運転

 列車運行表を作製するときは必ずこの順序より始め、まず急行旅客列車に優先権を付与して最も便宜の時刻にこれを定むべし。列車は常に上下一対をなすべきを本則とするが故に、一方の列車を取定めたるときは同時にその反対列車を定め且つ客車の運用を考慮すべし。

 急行旅客列車を必要の回数だけ取定めたる後は普通旅客列車の選定に移り、旅客列車の内においても長距離行旅客列車をまず選定し順次劣等の列車に及ぼすべし。故に列車の種類劣るに従ひ自然にその計画不自由となり、時刻も自然また遷延するを免れず。殊に貨物列車に至りては他列車の後を受け窮屈なる運転を行ふを常とす。

 時刻表作製の際は別に取調べたる各駅間運転時分及び停車時分によりて、まず列車運行表に総ての列車を記入し、総ての取調完了したる上にて時刻表にこれを掲記するを便利とす。時刻表作製のとき使用する列車運行表は、1時間を 30等分に分ちたる二分目の特別の用紙をもってするを常とす。

 時刻表を作製するとき最も注意を要するは、隣接せる停車場間において一の列車とその次に出発すべき続行列車の間隔時分なり。これ当該線路の状態と信号保安装置のいかんにより加減を要すべきものにして、我国現行の規定中これに関して左の条項あり。

 鉄道運転規程  第21条

 「隣接せる停車場、連絡所及び信号所間において、同一軌道に同時に一列車の外運転することを得ず。

 単線においては左の場合に限り、隣接せる停車場、連絡所及び信号所間において続行列車を運転することを得。

 1 最急勾配が 50分の1 より緩なるとき。

 2 最急勾配が 50分の1 にして、その延長 50チェーンに達せざるとき。

 3 最急勾配が 50分の1 より急なるも、その付近 50チェーン間の距離において最大の高低を示す2点を連接する直線の勾配が 50分の1 より緩なるとき。

 前項の場合において、先発列車の速度が後発列車の速度に比し少なるかまたは同一なるとき、後発列車は少くとも 15分間を経たる後。また先発列車の速度が後発列車の速度より大なるときは、後発列車は少くとも 10分間を経たる後にあらざれば出発せしむることを得ず。」

 鉄道列車保安規程  第10条 

 「停車場、連絡所、もしくば信号所においては、後方の停車場、連絡所、もしくば信号所より前条により「列車区間に入る」の信号を受け、これに承認を与へむとするときは、電気指針もしくば標識をもって承認の信号を該停車場、連絡所、もしくば信号所に送示し、左の動作を具備するに至るまでは、次に受領する「列車区間に入る」の信号に対し承認を与ふることを得ず。ただし線路の状況により第2号の条件を省略することを得。

 1 列車全部無事に到着す。

 2 列車他線もしくば次の区間に入る。」

 前記鉄道運転規程第 21条第1項にも明記するごとく、隣接の停車場間においてその複線たると単線たるとを問はず、同時に一列車の外は同一軌道上にあるを許さざるは各国共に列車運転の原則とするところなり。

 これすなわち距離間隔(space interval)法により列車を進むるの方法にして最も安全なる方法に属す。我国においては従来は単線区間において票券式を用ひ、勾配線もしくば特別の区間に限り票券式に閉塞式を併用して距離間隔法を利用したれども、比較的簡易なる線路には票券式を専用し、隣接せる停車場間において先発列車と続行列車とは 15分もしくは 10分以上の間隔をもって列車を出発せしめたり。すなわち時間間隔(time interval)法により列車を進めたり。しかれども最近には票券式に代ふるに「タイヤー」氏「タブレット」式単線用閉塞器を使用するもの多し。

 要するに複線区間においては前発列車が次駅に到着したる後、または前発列車が次駅に無事に到着したるのみならず、さらに側線もしくば次の区間に入りたる後(この場合は特に停車場名を指定するを常とす)にあらざれば、後発列車を出発せしむることを得ざるが故に時間表作製に際してよくここに留意するを要す。また後発列車が急行列車にしてある駅を通過する場合には、普通停車の場合よりも2分以上の余裕を存ずるを必要とす。これ閉塞器または信号機等の取扱後れて通過列車を停車せしむるの恐れあればなり。

 単線区間における先後列車の間隔は、単線用閉塞器を使用する場合、もしくば票券式に閉塞式を併用する場合には複線区間におけると同様なれども、票券式のみ施行の区間において続行列車運転の場合には、前記第 21条の間隔時間を要することを忘るべからず。

 次に注意すべきは各停車場における列車発着順序なり。第1に列車はいずれの乗降場に着せしむべきや。第2に列車はいかなる線路より出発せしむべきや。第3に列車は甲線路に着せしめたる後いかなる線路及び転轍を渡りて乙線路に入るべきや。第4に列車は直ちにいかなる側線に導くべきや。第5に列車の貨車解放連結はいかなる線路においてすべきや。第6に列車の機関車の付換はいかなる順序によるべきや、はたまた支線を有する停車場においては支線列車がいかに本線を横断することあるや。

 これらの順序は各停車場、殊に連絡所及び行止り停車場においてよく研究するを要するものにして、これらの事情を顧慮せず粗漏なる時刻表を作成したる結果は、停車場内の同一線路に2個列車を容れんとするの不都合を来すことあり。為めに後方停車場にある列車の出発時刻に際しても後方停車場に列車を抑留することあり。また進入列車を停車場内に導く事あたわずして場内信号機外に停車を命ずることあり。

 単線における行違停車場においては上下列車を同時刻に進入せしむるよう時刻表を調製すべからず。また複線においても相互その運転線路を支障する恐れある場合には同時に進入または出発せしむべからず。これに関し左の規程あり。

 列車運転及び信号取扱心得 第180条

 「単線における行違停車場においては最初進入の列車が相当位置に停止したる後にあらざれば、反対列車に対し場内及び遠方信号機に無難信号を現示すべからず。

 単線と複線との境界停車場、及び相互線路を支障する連絡停車場においてまた同じ。」

 列車運転及び信号取扱心得 第67条

 「2列車以上着発に際し相互その運転線路を支障し、もしくば支障する恐れある場合には、同時に進入または出発せしむべからず。」

 

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2024年7月26日 (金)

機関車工学:下巻(その26)列車時刻表及び運行表:列車運行表

【 列車運行表 】

 列車運行表は列車時刻表の図解にして各列車の関係を知るにはこれに如くものなし。

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 第 1535図及び第 1536図はすなわち列車運行表にして一つは東海道線沼津浜松間、他は北陸線米原今庄間の分を示す。第 31ページ第 83表の時刻表は第 1535図中に図解せらるるを見るべし。

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 列車運行表の縦欄は各1時間の間隔を示し、夜半の零時より始まりて一昼夜の時間を示し、横欄は各停車場間の距離を示す。左方より斜めに右方へ走る線は下り列車にして、左方より斜めに右方に上る線は上り列車を示す。しかして列車の種類を区別するために、実線、破線、及び点線等を用ふること図に説明せるごとし。

 第 1535図中に示せる区間の内にて、富士川岩淵間、用宗焼津間、島田金谷間、及び天龍橋天竜川間の4区間は複線未竣工のために、未だ単線区間として残されたるものにして他の区間は総て複線なり。第 1536図、米原今庄間は全区間単線なり。

 東海道及び北陸線の各区間には保安装置として列車の運転に閉塞式を用ひ、その単線区間には「タイヤー」氏「タブレット」式閉塞器を採用す。列車運行表の最終縦欄中 1、2、3 の数字は、この「タブレット」式閉塞器の第一種、第二種、及び第三種を当該区間に使用せることを示す。けだし第一種、第二種、第三種とは閉塞器より取り出だす円板、すなわち「タブレット」の形状及び着色により区別せらるるものにして、その白色のものを第一種とし、赤色のものを第二種とし、緑色のものを第三種とす。各形状は円板の中央にある孔の形、及び外縁における一部の欠陥の形により区別す。

 運行表中総て2線の交叉する点は上下両列車の行違ふ所なり。この交点は複線区間においてはその位置を選ばずと言えども、単線区間においては必ず停車場においてするを見るべし。けだし複線においては上り列車と下り列車とは、各その線路を異にするをもって両列車はいかなる場所においても行違ひ得ると言えども、単線においては停車場の外は行違をなす事あたわざるをもってなり。

 しかして単線区間においては殊に貨物列車はこの行違のために制せられて、反対列車の到着を待つため停車場に停止する時間比較的長きをもって、これらの列車を示せる線は所々に階段をなすを見るべし。また複線区間においては列車の運転回数頻繁なるがため、先発の緩速度列車は途中において後発高速度列車に追及せらるるをもって、貨物列車はしばしば停車場内の側線に潜伏し後発の旅客列車に線路を譲りてこれを先に出発せしむる事となり、貨物列車は同じく所々に階段をなすに至る。この待避列車は単線にも起り得ることにして貨物列車は旅客列車のために待避し、地方旅客列車は急行旅客列車のために待避すること止むを得えざるなり。

 

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2024年7月25日 (木)

機関車工学:下巻(その25)列車時刻表及び運行表:列車時刻表

第4章 列車時刻表及び運行表

【 列車時刻表 】

 列車時刻表は各列車の停車場発着の時刻を明示したるものなり。通常上り列車と下り列車とを分類一括し、記載事項は停車場名、その距離、列車番号、及び列車発着時刻等にして、通過駅における時刻は単に出発時刻のみを示せり。しかして単線区間の時刻表においては、行違駅における行違列車は双方共特に太文字にて標記するを常とす。第 83表は東海道線沼津浜松間の下り列車の時刻表の一部を示す。

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 欧米各国における時刻表中その最も特色を有するはプロイセン官有鉄道の時刻表にして、一列車の時刻表に1ページを費やすものありて、その記載事項は各列車ごとに、(1) 停車場間の距離、(2) 停車場名、(3) 隣接停車場間の運転時分、(4) 停車場発着の時刻、(5) 停車時分、(6) 停車場出発の時刻、(7) 行違列車名、(8) 追及列車名、(9) 被追及列車名、(10) 隣接停車場間の最短運転時分、(11) 100軸に付き制動機付車軸数の割合及びそれに相当する速度、(12) 当該区別に使用する数種の機関車に対する牽引トン数または軸数等を列挙せり。

 しかして時刻表中昼夜の区別を示すがため夕方6時より朝5時59分までの時分に対して、分の数字の下に一線を引きてこれを区別す。例へば 11:34 と記するものは夜分の11時34分なることを示す。

 また各列車番号の下には各区間に対するその列車の基本速度を記入せり。基本速度とはその列車の運転時間を維持するため平坦線において適用する列車の速度にして、列車発着の際、及び急勾配急曲線、その他特別の場合には応用せず。

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 第 84表はプロイセン官有鉄道「ステンダル」「ライプチッヒ」間、第 467旅客列車の時刻表を示す。第 11欄中カッコ内の数字は制動機付車軸数の計算に際し使用したる平均速度にして、第 12欄の S6 P3 等は機関車の種類なり。

 

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2024年7月23日 (火)

機関車工学:下巻(その24)列車運転及び停車時間:プロイセン官有鉄道列車制動機付軸数の割合

【 プロイセン官有鉄道列車制動機付軸数の割合 】

 速度の制限は機関車の構造にも関すと言えども、同時に列車の備ふる制動機付の軸数いかんに関するものなり。

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 前記プロイセン官有鉄道における列車速度の制限は、第 81表及び第 82表の制動機付軸数の割合をもってその基礎となせるものなり。これら制動機付軸数の表は 1904年に改正したるものにして、以前には幹線列車に対しては第9編第1章第 54表によりたけれども、それを第 81表の通り改正し幾分か制動機付軸数の割合を増加せり。

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2024年7月22日 (月)

機関車工学:下巻(その23)列車運転及び停車時間:ドイツにおける列車速度の制限

【 ドイツにおける列車速度の制限 】

 プロイセン官有鉄道においては各種列車の最大速度を左の通り制限せり(1キロメートルは 0.62マイルに当る)。

 貫通制動機を有する旅客列車  1時間 100キロメートル(62マイル)
  ただし特別の場合には、さらに速度を早むることを得。

 貫通制動機を有せざる旅客列車  1時間 60キロメートル(37.2マイル)

 貨物列車  1時間 45キロメートル(27.9マイル)
  ただし特別の場合には、1時間 60キロメートル(37.2マイル)まで速度を早むることを得。

 職工列車  1時間 45キロメートル(27.9マイル)

 機関車単独運転のとき  1時間 50キロメートル(31マイル)
  ただし特別の場合には、その機関車の許されいる最大速度まで出だすことを得。

 試運転列車  制限なし

 また勾配線においては、勾配の度に応じ列車の最大速度を左の通り制限せり。

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 また曲線においては、曲線の度に応じ列車の最大速度を左の通り制限せり。

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 勾配線にして曲線を有する場合には、列車の速度は勾配または曲線にて制限するものを比較してその僅少なる速度による。

 列車を推進するときは、その速度は1時間 25キロメートル(15.5マイル)を超ゆることを得ず。
 
 炭水車を有する機関車を逆向して運転するときは、その速度1時間 45キロメートル(27.9マイル)を超ふることを得ず。

 臨時列車等の場合において、予めその運転時刻を踏切に通知する事あたわざるときは、踏切通過の速度は1時間 30キロメートル(18.6マイル)を超ふることを得ず。

 枝線における列車速度の制限は左のごとし。

  一般の列車  1時間 30キロメートル(18.6マイル)
  専用線路にして貫通制動機を有する列車  1時間 40キロメートル(24.8マイル)
  特に地方監督庁の許可を得たる列車  1時間 50キロメートル(31マイル)

 枝線における勾配線列車速度の制限左のごとし。

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 枝線における曲線列車速度の制限左のごとし。

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 枝線において踏切門の設備ある個所は最高速度 25キロメートル(15.5マイル)とし、踏切門の設備なければ 15キロメートル(9.3マイル)とす。

 

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2024年7月19日 (金)

機関車工学:下巻(その22)列車運転及び停車時間:運転時間の実例

【 運転時間の実例 】

 東海道線においては諸種の列車が種々の速度をもって運転しつつあり、その各区間において速度の異なるべきはもちろんなれども、同一の区間においても数種の速度をもって運転せり。その最もはなはだしきは新橋横浜間の線路にして、その速度を区別すれば実に10種の多きに達せり(明治44年現行)。これはなはだ複雑なりと言えども時勢の要求止むを得ざるに出づ。しかして列車によりその仕業に難易の差あるを免れず。

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 第 73表、第 74表、及び第 75表は東海道線新橋静岡間における各種列車の各駅間の運転時分、及びそれらに対する平均速度(1時間に付きマイル)を示す。駅名欄の左方にある数字は下り列車の運転時分及び平均速度にして、右方にあるものは上り列車の分を示す。

 表中の A B C D E F G I 等は各種旅客列車の速度の区別を示すものにして、それら列車の性質、及び最大牽引車数(換算車数と言う)は左のごとし。

 貨物、混合、及び A 速度列車は最も普通の列車にして、区間列車なるが故に各区間により線路の勾配に応じ牽引定数を異にすると言えども、他は全区間を通じて同一編成により運転するものとす。

   列車の種類              牽引定数

 貨物列車               第6章第 85表の牽引定数表による
 混合列車               第6章第 85表の牽引定数表による
 A 速度列車(地方旅客)        第6章第 85表の牽引定数表による
 B 速度列車(東海道直行旅客)     25両
 C 速度列車(新橋国府津間普通旅客)  20両
 D 速度列車(東海道普通急行旅客)   20両
 E 速度列車(東海道夜行急行旅客)   20両
 F 速度列車(東海道最急行旅客)    17両半
 G 速度列車(京浜間普通急行旅客)     17両半
 I  速度列車(京浜間最急行旅客)       17両半

 各駅間の距離、及びその間の標準勾配(一区間において最急勾配 50チェーン以上続くときは、その勾配をもって標準勾配と称す)は表に示すがごとし。ただしこれらの区間において最も著しき勾配線は下り列車の方向にて言へば、国府津山北間の上り 100分の1 勾配、山北御殿場間の上り 40分の1 勾配と、御殿場沼津間の下り 40分の1 勾配にして、上り列車の方向にて言へばこの反対にて、沼津御殿場間の上り 40分の1 勾配、御殿場山北間の下り 40分の1 勾配、山北国府津間の下り 100分の1 勾配なり。しかして他は概ね平坦線と称し得べし。読者は表中においてこれら勾配線間における上り列車及び下り列車の運転時分、及びその平均速度を対照せば勾配線における速度の変化の概念を得べし。

 当時使用の機関車は、山北沼津間 40分の1 勾配線には6輪連結「タンク」機関車(上巻 149ページ第 139図)、及び「コンソリデーション」機関車(上巻第 135ページ第 122図)をもってし、多くは機関車2両にて一列車を運転す。しかして他は平坦線用4輪連結「テンダー」機関車(上巻第 109ページ第 73及び 74図)を使用するものとせり。ただし平坦線においても貨物列車用としては勾配線と同じく6輪連結「タンク」機関車を使用すること多し。もちろん機関車及び線路の進歩改良に伴ひて列車の車数及び速度も漸次増進することは疑を容れず。

 表中停と称するは停車にして各駅停車して運転するものを示し、通と称するは通過にして一駅もしくば両駅を通過して運転するものを言ふ。一駅を通過する場合と二駅を通過する場合とは運転時分に相違ある事もちろんなるをもって、これを区別するを正当となせども緩速度列車はそれほどの影響なく、高速度列車は大抵停車及び通過駅一定せるをもって、実地経験よりこれらを斟酌して繁雑を避け表中にこれを区別せざるものなり。

 読者はまた表により各駅間マイル程の長き区間と短き区間とにおいて、列車の停車と通過とがいかに運転時分及び平均速度に影響するかを対比せば大に興味あるべし。

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 第 76表は北陸線(単線)における列車運転時間及び平均速度を示す。ここには列車の種類は三種に過ぎず、且つ列車が総ての駅に停車するをもって通過時分なるものを設けず、線路の勾配は中ノ郷今庄間は概ね 40分の1 勾配、細呂木大聖寺間は 100分の1 勾配、津幡石動間は 50分の1 勾配、他は概ね平坦線なりとす。

 

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2024年7月18日 (木)

機関車工学:下巻(その21)列車運転及び停車時間:制動機の多少

【 制動機の多少 】

 完全なる貫通せる制動機を有すると否とは停車の際に要する時間に遅速あるのみならず、下り勾配線において速度の節制に対し制動機の不完全なるものは、絶対的に速度を相当のマイル数以下に制限せざるべからず。しかしていかなる場合においても列車は制動機を使用し始めてより、少なくとも 4分の1 マイル以内において列車を停止し得べき速度に保つこと必要なるべし。

 鉄道運転規程においては隣接停車場間において列車が1時間 30マイル以上の平均速度をもって運転するときは、その列車には貫通せる制動機を備へ付くべしとなせり。現に東海道線箱根における 40分の1 下り勾配線においては、貨物及び混合列車は1時間約 15マイル、普通旅客列車は約 25マイル、急行旅客列車は約 30マイルの平均速度をもって運転しつつあり。これ全くそれら列車の備ふる制動機の強弱によるものなり。もし機関手をしてこれを無視して運転するときは制動力を無視するものにして危険これに伴ふものとす。

 鉄道運転規程第 16条には各列車の制動機数を規定し、各種の勾配及び速度に応じこれを増減せり。故に貨物列車のごときは一区間の平均速度をわずか増加すると否とにより、列車に備ふべき制動機数に増減を来たすべきことあるを忘るべからず。

 

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2024年7月17日 (水)

機関車工学:下巻(その20)列車運転及び停車時間:停車場の状況

【 停車場の状況 】

 停車場の位置及び状況は進入速度に大差あるものにして、下り勾配ある線路により進入する停車場、見透し難き停車場、及び行止り停車場に進入する場合、ならびに数多の「ポイント」「クロッシング」を通過し、且つ入換車両の進退に注意するを要する停車場に進入する場合には、列車の速度を特に減殺せざるべからざるをもって、これがため相当の運転時間を設くるを要す。

 

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2024年7月16日 (火)

機関車工学:下巻(その19)列車運転及び停車時間:勾配線の距離及び位置

【 勾配線の距離及び位置 】

 勾配線の距離及びその位置は運転時間に大なる影響を及ぼすものとす。短小なる上り勾配線は列車進行の隋力を利用して容易く通過し得べしと言えども、長距離の上り勾配線はこの隋力をその全部に利用する事あたわず。勾配を上るに従ひ漸次その速度を減ぜらるるに至るべし。また停車場出発後間もなく上り勾配線に掛かるときは、その距離短きものと言えども発車後未だ充分なる速度を有せざるに当り勾配線に進入するをもって、列車の隋力を利用する事あたわず。速度増進上非常の困難を感ずべし。

 また汽缶の蒸気発生力は勾配の長短に関すること著しきものにして、勾配線に達するの前において炭火を増し缶内に充分の水を貯へ、しかる後勾配線を上るときはその後送水する水量を省略し得て蒸気発生上便利にして当分の間は速度を維持し得れども、勾配線長きときは汽缶の蒸気力及ばずして為に速度を減殺せらるるに至ることあり。しかして汽缶の蒸気発生力はその使用石炭の良否に関ること大なる事もまた顧みざるべからず。

 

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2024年7月15日 (月)

機関車工学:下巻(その18)列車運転及び停車時間:両駅間の距離

【 両駅間の距離 】

 いま甲乙両駅間の距離を6マイルとし、乙丙両駅間の距離を3マイルとし、旅客列車が1時間3 0マイルの平均速度にて走行するものとせば、運転時間は甲乙両駅間にては 12分となり、乙丙両駅間にては6分となるべし。しかしてまた乙駅だけ通過するものとせば、甲丙両駅間にては 18分の運転となるべし。

 今これにより時刻表を作製し、6分、12分、18分の運転時間とし、この列車は1時間 30マイルの速度を有する列車と称すれば一見怪むべきかどなきがごとくなれども、実際の運転に際すれば非常の難易あることを知るべし。すなわち乙駅を通過して甲駅と丙駅の間を一区間とし18分にて運転するはもっとも容易にして、乙駅停止の場合甲乙両駅間 12分の運転これに次ぎ、乙駅に停止の後さらに丙駅に至る6分間の運転に至りては最も困難を感ずべし。

 けだし発車のとき速度を早むるに要する時間、及び停車のとき速度を緩むるに要する時間は区間の長短に関せざるをもって、区間短かければ短きほど列車の高速度を利用するの時間短かきをもってなり。故に実際時刻表を作製するに当り各駅に停車するがためには、通過時分の外に列車の速度及び重量に応じて2分ないし4分を加へ、その一半は速度を緩むるがためとし、他の一半は発車の際速度を早むる間に費やさるるものとすべし。すなわち前例甲乙丙3駅間の運転時分は、3駅共通過する場合に 12分及び6分を相当とすれば、3駅に停車する場合には甲乙両駅間は 14分、乙丙両駅間は8分とするをもって相当となすべし。

 

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2024年7月12日 (金)

機関車工学:下巻(その17)列車運転及び停車時間:各駅間の運転時間

【 各駅間の運転時間 】

 各駅間の運転時間は、機関車及び牽引車数、車両の種類構造、線路の勾配、各駅間の距離、ならびに通過駅の有無等により定むべきものにして、線路の強弱、及び曲線における外側軌条の高度は、また列車の速度と親密なる関係を有するをもって列車の速度は線路の設備とも相一致するを要す。

 列車が停車場を出発したる後相当速度に達するまでは、機関車の牽引力は主としてその速度を早むることに費やされ、列車が停車場に着せんとして蒸気を閉塞したる後は、列車の抵抗力と制動機の力とは列車の隋力を減殺して漸次列車の速度を緩むることに費さるるをもって、列車が停車場着発の際はその前後において意外に時間を費やすものなり。しかして途中における線路の難易は速度に至大なる関係を有す。すなわち上り勾配線においては機関車の牽引力の多少、下り勾配線においては機関車及び列車に備ふる制動機の強弱によりてその速度を異にすべし。

 1時間何マイルの速度をもって平坦線を進行する列車がある上り勾配線に臨みたるときは、その速度は何マイルに減ずべきものなるやとは吾人のしばしば質問せらるる問題にして、ある実用公式も提出せらるる事ありと言えども、最も安全なる方法は相当の車両を牽引せる機関車にて数回の試運転を行ひてこれを定むるにあり。

 けだし速度に影響する諸種の事情を斟酌して、計算上速度の変化を推定する事はあえて難きにあらざれども、その計算には種々の事項を仮定せざるべからずゆえ一般に応用し難き事情あり。また同時に実際機関車の取扱はある範囲内においては操縦自在にして、緩急の調度時と場合とに応じ加減すべきものにして乗務員の熟不錬もこれを顧みるの必要あり。

 列車の速度は1時間何マイルなるべきやに就ては前に陳べたるがごとく選択の範囲はなはだ広く、時と場合とに応じ決定すべきものに属すと言えども、その間やや漠然たる標準なきにあらず。実例を尋ぬれば平坦線走行中における列車の速度はおおむね左表のごとし。

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 米国における緩速度貨物列車は平坦線を1時間 10マイルないし 15マイルの速度にて、出来得る限り多数の貨車を牽引して運転するを見る。しかれどもこのごとき運転は米国のごとく平坦なる線路が長く連続せる区間において実行し得らるるものにして、所々に一部の勾配ある区間においてはその区間において牽引車数を制限せらるるをもって、平坦線に出づれば牽引力に余裕を有し勾配線におけるよりも高速度をもって運転するを常とす。

 上り勾配線においてはこのごとく常に牽引車数を制限せらるるをもって、上り勾配線における貨物列車はなるべく多数の貨車を連結し、その速度を約1時間 10マイルに保つことは普通の慣例なり(一般に列車の速度に関しては、上巻第 92ページないし 99ページを参照すべし)。

 いま運転時間の計画に関して注意すべき2~3の簡単なる実例を挙ぐれば左のごとし。

 

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2024年7月11日 (木)

機関車工学:下巻(その16)列車運転及び停車時間:各駅停車時間

【 各駅停車時間 】

 各駅停車時間は、旅客の昇降、貨物の積卸し、列車行違、または待避の有無、他列車に接続の関係、車両の解結、検査注油、ならびに機関車付換、あるいは機関車に給水搭炭を行ふこと等、種々の事情により各駅の状況に応じて定むべきものとす。

 単に旅客の乗降のみに付いて見れば普通の場合にては1分間をもって足れりとし、多人数群集するときにおいても3分以上を要すること稀れなり。列車回数多き大都会付近の各駅にては、旅客は乗降に慣るるもの多きをもって1分以内において乗降を取扱ひ得ることあるをもって、職用時刻表中にも別に停車時間なるものを挿入せずして、単に出発時刻のみを記入することあり。または 2分の1 分、4分の1 分等の停車時間を記入することあり。殊にいわゆる通勤列車なるものにおいて然りとす。

 旅客列車の停車時間は旅客の昇降に要する時間よりも、むしろ手荷物、小荷物、ならびに郵便物の受授に要する時間のために延長せらるること多し。すなわちこれがために3分ないし5分を費やさるること少なからず。特に本線支線の連絡駅、及び急行列車と地方列車との乗換駅において然りとす。普通の中間駅において1分の停車時間は短かきに過ぐるとなすものあれども、取扱緩慢のために時間を徒費するもの多し。

 鉄道運輸規程第 32条の命ずる所によれば、便所の備なき客車をもって旅客列車を編成するときは、その列車は3時間以内に少なくとも1回5分以上停車せざるべからず。

 貨物列車の停車時間はその駅の種々の状況に応するものにして、ほとんど一定の数字を与ふること難けれども、貨物及び貨車の集散地を除きたる中間停車場においては5分ないし 15分を普通となす。貨物列車においては貨物の積卸しをなすのみならず、貨車の解放連結を行ひ、しかもある駅内においては貨車の仕別け、すなわち貨車の連結位置をその行先順序に応じて整正せざるべからざるをもって、その停車場内にある時間は、取扱貨物の種類及び数量、構内線路の設備、牽引車数の多数、及び総て入換方法のいかん等により著しく相違を来たすべきは論を待たず。

 機関車付換に要する時間は少くも5分を要し、中間駅において給水に要する時間は多くは3分を要す。ただし給水設備のいかんにより3分以上を要することあれどもそれらは改築を要すべきものなり。

 その他一般に列車の停車時間は運転上の関係、すなわち主として他列車の関係上より止むを得ずしてこれを増減することあり。貨物列車は旅客列車に対しては途を譲るをもって普通となすが故に、しばしば停車場においてそれ自身には無用なる時間を費やすことあり。または前途行違及び待避の関係により必要の時間をも短縮して早く出発することあり。

 各駅における貨物列車の停車時間は1年を通じて同一なるを要せず。むしろ季節によりその駅における貨物の状況に応じて変更すべきものなり。また各貨物列車の停車時間を同一にするの必要なし。貨物の状況に応じて2~3の貨物列車に充分の時間を与へ、他の貨物列車の停車時間を制限して可なり。

 

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2024年7月10日 (水)

機関車工学:下巻(その15)列車運転及び停車時間

第3章 列車運転及び停車時間

 各駅間の列車運転時間及び各駅における列車停止時間は時刻表の基礎となるものにして、これを定むるにはよく実際の事情を洞察すべく、もって実行し得べき適当なる時間を設くるを要す。しからざれば絶えず運転の正確を害し、一区間の遅延は引て他区間に影響し一般の列車を棄乱せしむべし。しかして一度これらを定めたる上は、運転実行者はそれらの時間を厳守するの責任あることは論を待たず。

 駅内における停車時間(駅内入換作業を含む)は、出来得る限りこれを短縮すべきことは総ての点より見るも利益なり。また常に駅内における諸設備を改良し客貨取扱及び諸車入換を敏捷にして、常に停車時間短縮の方法を講ずべきものなり。

 各駅間の運転時間は種々の状態に応じ選択の範囲はなはだ広し。速度の早やからんことを必要とするものあり。牽引車数の多からんことを目的とするものあり。経済的運搬方法を主眼とするものあり。機関車及び車両の種類及び線路の状況によりて速度を制限するものあり。列車配列上の都合よりして速度を指定するの必要あるものあり。

 

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2024年7月 9日 (火)

機関車工学:下巻(その14)列車の種類:列車番号

【 列車番号 】

 各列車には必ず相当の番号を付するを常とす。これ例へば第 100列車と称するときは時刻表により直ちにその列車の性質はいかなるものなるやを知り得べく、且つ何時何分にいかなる停車場にあるものなるやを知り得るの便利あるをもってなり。

 同一の番号を有する列車の車両は、その始発駅より終端駅までその主要なる編成を持続するをもって本位とす。すなわち旅客列車の場合においては、始発駅において乗込みたる旅客は、乗換を要せずしてその列車の終端駅まで旅行し得らるべく、貨物列車の場合においては、同一番号の列車に連結したる貨車は、その列車によりその終端駅まで直送し得らるべきものなるを示す。

 列車に番号を付するには、下り列車には1、3、5、等の奇数を用ひ、上り列車には2、4、6、等の偶数を用ひ、同性質の列車にはなるべく類似の番号を与ふるは一般の慣例なり。故に列車の番号は必ず数を追ふて連続せしむるを要せず。例へば第 500列車より第 599列車までは新橋より横須賀直通の旅客列車の番号と定め置き、その列車数第 500より始まり第 540に終るときは以下の番号は欠位として保留し、さらに第 600列車よりは他種類の列車に応用するがごとし。

 

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2024年7月 8日 (月)

機関車工学:下巻(その13)列車の種類:試運転列車その他

【 試運転列車その他 】

 旅客、貨物、混合、及び工事用の四種列車の外に、試運転列車、単行機関車、及び軍用列車等の名称を付するものあり。

 試運転列車は、修繕もしくば新製の機関車及び諸車両を試運転して加工後の状態を試験するもの。

 単行機関車は、機関車回送のため機関車のみ運転するものにして、共に貨物列車の一種と見なし得べし。

 軍用列車は、軍隊及び軍用品を運搬するがため特にその名称を付したるものして、荷重の性質により、旅客、貨物、及び混合列車の一種たるに過ぎず、ただその特点とするところは各線において殊にその連絡を取り、一定の個所において人馬の休養時間を設けあることなり。

 

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2024年7月 5日 (金)

機関車工学:下巻(その12)列車の種類:工事用列車

【 工事用列車 】

 工事用列車は建築保線用の諸材料を運搬するがため運転する列車なり。その材料を一停車場より他停車場まで運搬する場合においては普通の貨物列車と異なることなしと言えども、多くの場合においては石材もしくは土砂を積込みまたは取卸すに、停車場と停車場との間においてするをもって他の列車とその性質を異にするなり。

 

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2024年7月 4日 (木)

機関車工学:下巻(その11)列車の種類:混合列車

【 混合列車 】

 混合列車は客車と貨車とを混合連結したる列車にして、途中貨物の解結等に時間を要し、且つその保安設備も不充分なるが故に旅客列車のごとく快速度にて運転する事あたわず。また貨物列車のごとく緩速度をもって多数の車両を経済的に運搬するの利を有せず。しかれども運輸閑散の線路においては特に旅客列車のみにて搭載すべき旅客なく、貨物列車のみにて運搬すべき貨物に乏しく、しかも相当時間の間隔を保ちて便利の時刻に旅客貨物を運搬するの必要あるときは、勢ひこの混合列車によらざれば営業上諸般の不利益を来すべく。

 混合列車は相当運輸の発達したる線路を除くの外はその存在を必要とせり。我国においては従来混合列車は急勾配線を除くの外は貨車を前部に連結し、もって途中各駅における貨車の解放連結を便にしたりと言えども、時勢の進歩は漸次混合列車をして各駅に長く停止せしむるを許さず。混合列車に連結すべき貨車は主要駅対主要駅のものをもってし、中間停車場における停車時間を節約せしむるの傾向あり。この場合においては貨車を客車の前部に連結するの必要なし。

 我国においては普通旅客列車の後部に貨車を連結しこれを後付貨車と称し、その列車はなお旅客列車と称すれども、英国においてはかかる列車は総て混合列車と称せり。

 

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2024年7月 3日 (水)

機関車工学:下巻(その10)列車の種類:米国における貨物列車の種別

【 米国における貨物列車の種別 】

 貨物列車の種別及び運転は米国において最も著しき発達をなし、貨物列車の種類を四種に分ちて世間の需要に応じ併せて経済的運転をなしつつあり。その種類は急行貨物(Quick Dispatch Freight)、時間貨物(Time Freight)、緩速度貨物(Slow Freight)、及び地方貨物(Local Freight)の四種にして、急行、時間、及び地方の三種貨物列車は特別任務の貨物列車としてその時刻表作製に付き最も重きを置き、緩速度貨物列車は貨車の集散状態により運転係員が毎日便宜運転時刻を指定す。

 急行貨物列車は、鮮魚、野菜、果実、肉類、及び動物その他、急達を要する商品を輸送し、冷蔵車、温室車等、特別装置の貨車を連結すること多く、また途中相当駅において牛馬等に対し飼養食料を供給するの方法あり。

 時間貨物列車は急送を必要とせざるも、むしろ規則正しき輸送を希望する普通の商品を輸送するものにして、托送者は指を屈して商品の到達時期を数へ得るものなり。時間正しく輸送するが故にこれを時間貨物列車と称す。

 急行貨物列車の速度は平均1時間 20マイルなれども、時間貨物列車は平均1時間 12マイルの速度に過ぎず。しかして急行貨物列車の牽引トン数は時間貨物列車の牽引トン数よりも3割低減するを常とし、時間貨物列車と緩速度貨物列車とはその運転速度及び牽引トン数とも相類似せり。

 緩速度貨物列車は主として、石炭、鉱石、木材、及び石類その他、前二者に属せざる貨物を運搬するものにして、托送者側においては一定の時間の間隔をもってその貨物を受納すれば満足すべきものを輸送するを常とす。

 地方貨物列車は主要駅と中間駅との間の貨車の輸送を司どるものにして、中間駅より発送したる貨車を主要駅に持込みそこにおいて貨車の仕別けをなし、便宜急行、時間、もしくば緩速度貨物列車の便により輸送し、同時に急行、時間、及び緩速度貨物列車にて主要駅に解放せられたる貨車を集めて中間駅に分配することを司どる。故に総ての貨車は主要駅発着のものを除き、他はいったん発送の初めもしくは到着前において地方貨物列車により輸送せらるるものなり。

 

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2024年7月 2日 (火)

機関車工学:下巻(その9)列車の種類:旅客及び貨物列車

【 旅客及び貨物列車 】

 旅客列車は時間の節約を主とするが故に少数の車両を連結し急速度をもって運転するを要す。なかんずく急行列車は中間駅における停車を廃して主要駅にのみ停車し速かに目的地に達するを期す。

 これに反して貨物列車はかなり多数の貨車を連結し緩速度にて運転するを常とす。もちろん貨物の種類によりては急達を要するものありて、特に急行貨物列車を設くることありと言えども、一般に貨物運搬の方法は旅客列車とその趣を異にし営業上かなりその経費を節約するをもって得策とす。これ鉄道経営上自家の利得たるに止まらず貨物運賃を低減することを得るをもってなり。

 

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2024年7月 1日 (月)

機関車工学:下巻(その8)列車の種類:列車の種類

第2章 列車の種類

【 列車の種類 】

 列車の種類は荷重の性質より類別すれば、旅客、貨物、混合、及び工事用の四種となすべく。日々の運転時刻の定不定より見れば、定期、不定期、臨時の三種となすべく。距離の関係より論ずれば、直行、直通、及び区間の三種となすべく。速度より区別すれば、急行、普通の二種となすべく。

 方向を正だすときは、上り、下り、東行、西行、あるいは南行、北行の名を付すべきものにして、下り急行旅客列車と言ひ、または上り不定期貨物列車と言ふがごとし。

 しかして直行と言へば、主として一線路の一極端より他極端に同一車両をもって運転するものを示し、直通と称すれば、主として支線と本線、または一会社線路と他会社線路とを同一車両をもって直通運転する列車を言ふ。

 

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