« 2021年3月 | トップページ | 2021年5月 »

2021年4月の記事

2021年4月30日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その344)石炭押寄装置(2)

(2)門鉄考案石炭押寄装置(第323図参照)

323_20210404230201

 本装置は第3動輪のクランクピンに返りクランクを取り付けて、動輪の回転力を取って動力として装置を動かすもので、多くの傘歯車、その他のギアを有し、構造複雑でしかも高速度運転において取扱い上不備の点があるが、石炭のかき寄せ作用は確実である。

(3)大宮機関区考案石炭押寄装置(第324図参照)

324450

 本装置は動力を炭水車車軸の第1および第2軸より取り、第1車軸よりの動力は、炭庫凹部のスクリュー・コンベアを動かし、第2動輪より取った動力は、かき寄せ板を移動せしむるもので、いずれもベルト、傘歯車等の複雑なギアの組合せからなっているのであるが、その使用成績は相当良好の様である。

(4)スクリュー式石炭押寄装置

325_20210404230301

 これは外国で使用されている石炭押寄装置で、第325図のごとく炭庫中央下部のスクリューを蒸気力で回転し、スクリューの回転に伴われて炭庫内の石炭が前方に搬送される。本装置は機械焚火装置(メカニカル・ストーカー)等においても、石炭搬送用として採用されている。

 

531p472
531p473_20210404225701
531p474
541p475

2021年4月29日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その343)石炭押寄装置(1)

第3章 石炭押寄装置

 炭水車における炭庫の石炭を、何時も掬出口(取出口)の箇所にかき寄せておき、投炭作業の便を図ることは最も望ましいことである。現在は主要駅に炭水手を派遣しおき、わずかの停車時間を利用して石炭かき寄せの作業を成さしめているが、なお途中において不足すれば、乗務員自らが石炭かき寄せの作業に当たらねばならぬ。

 乗務員としては機関士も同助手もそれぞれ重要な作業継続中で、例えば僅少な時間であっても一時これを中断することは、運転の完遂上遺憾なことである。かかる不都合を救済するため考察されたものが石炭押寄装置で、現在まで種々のものが考案され、試用されている。

(1)名鉄考案石炭押寄装置

322_20210404121601

 これは第322図に見るような構造で、蒸気を利用して機械的に石炭を押寄せる装置であって、操縦用ハンドルの取り扱いによって付属シリンダー内に給気し、ピストンを動かし、ピストン棒の一端に取り付けられた押寄器の押出し力により、石炭を取出口の方に移動させる装置である。また、炭庫の側板および後板に傾斜を付し、石炭がなるべく多く押寄器の移動する溝形中に落ち込み、押寄せに便なる様になっている。

321_20210404121701

 本装置は比較的成績良好なるため、本省工作局において一部改良し、本省式押寄装置(第321図)として現車試験施行の結果、多少の改良意見はあるが大体満足な成績を得たので、一部機関車(C55流線形およびD50形式の一部)に採用され、将来も本形式が一般に普及されるものと思われる。

 本装置で欠点とするところは、押寄せ力の不足する事である。すなわち石炭が運転中の振動にて漸次引き締まり、長い間使用しないといっそう固く、いかに給気するも押寄器の動かない事である。故に本装置はなるべく常時使用し、石炭を固結せしめない様にすると共に、使用後は押寄器を押出し位置に置き、使用に先立ってピストンを引っ込ませ、しかる後、押寄せる方法を採り、石炭固結の弊を除去することが肝要である。

 

531p471
531p472
531p473

2021年4月28日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その342)コロ軸受

6.コロ軸受

 鉄道車両にコロ軸受を採用すれば種々の利益がある。その主なるものは

(イ)車軸と受金との摩擦抵抗を減少せしめる。すなわち出発抵抗や走行抵抗が減少する。

(ロ)保守に要する手数と経費が減少する。グリースを1回補給すれば1ヵ年位はそのまま使用できる。

(ハ)高速運転をする場合、従来の装置では発熱しやすが、コロ軸受を使用すればその心配がない。

 鉄道省では現在ガソリン動車に使用されているのみであるが、機関車や炭水車等に使用される時代も遠くはないと思われる。現に満鉄アジア号の客車やパシハ形機関車には、コロ軸受が全軸に使用されている。

 コロ軸受は従来のものに比し高価なこと、および少し大形となるのが欠点である。

320_20210404094001

 現在ガソリン動車に使用されているコロ軸受は、日本精工会社およびNTN製作所のもので、国産としては最初のものである。その構造は第320図のごとくで、塵除座は車軸に焼きばめされ、これを基準としてコロ軸受を押し込み、これを軸箱前蓋と後蓋とで締付ける。

 この締め加減は、軸受の回転の硬さに直接影響するもので、前蓋と軸箱との間に 0.5, 0.25, 0.125ミリの3種の黄銅または鋼板のシムを数枚入れて、その締め加減を適当に調節している。

 軸箱内にはグリースを使用しているが、一度詰め込めば1年位は使用できる。コロ軸受関係が摩耗すれば、前蓋を開いてシムを適当に取り去り、再び締付けておけば良い。

 

526p469_20210404093701
526p470

2021年4月27日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その341)炭水車ボギー台車

5.炭水車ボギー台車

 炭水車ボギー台車の構造は第319図のごとく、機関車の台車とは趣きが異なっている。すなわち復元装置がなく、また重量負荷の状態が多少相違しているのである。

319_20210402214201

 1組のボギーを成す2軸の車輪群は、圧延鋼板製または鋳鋼製の側梁および横控によって形成する台車台枠の所定位置に、軸箱を介して配置され、台車台枠の中央部に左右側梁をつなぐ台車中心控があって、この控両側端には下部側受が取付けられ、中央部には台車下部中心鋳物の凹所に納まっている。

 しかしてその上方には、炭水車主台枠に取り付けられた横控があって、横控の両端には上部側受が、中央部には台車上部中心鋳物が取付けられ、これと台車横控上の台車下部中心鋳物とが、台車中心ピンで接合されているのである。故に炭水車台枠上の重量は、台車上下中心鋳物の面によって、台車に伝えられることとなるのである。

 従って前後にボギー台車を用いれば、2点支持となるのであるが、動揺および遠心力の影響等で炭水車がローリングする場合には、水槽は傾斜して片側の上下の側受が当たって、それ以上の傾きが許容されない様になっており、上下側受間の間隔は大体10ミリ内外である。ただしボギー台車の心皿は比較的直径が大きく、相当の面積を有しているから、少し位の荷重偏倚では側受が作用するに至らない。

 この式の台車は、台車中心控(横梁)の疵入りが多いため、最近新製の12-17A炭水車では、ボギー客車に使用されるものと全く同一構造で、枕バネおよび軸箱上に巻バネを設けた、第319図(ロ)の様な台車が使用されている。


319_20210402214301
319_20210402214302

 この台車では車体の荷重は上揺枕(2)から枕バネ(18)に至り、下揺枕(20)、揺枕釣(6)、台枠(1)、軸バネ(17)を経て軸箱に伝達される。従って車輪に受ける衝撃は軸バネおよび容量の大なる枕バネの二者より緩和されるため、台車はもちろん炭水車の各部に受ける衝撃が少ないから、乗り心地も良く疵入り等も少ない。

 しかしながら枕バネや軸バネを使用したものは、バネの調整に不便なるため、最近のD51,C57,C58形式の炭水車には、再び前述のごとき担バネ使用の台車が採用されている。

 

525p466_20210402213501
525p467
525p468
526p469

2021年4月26日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その340)炭水車 軸箱、軸箱守および軸箱守控

4.軸箱、軸箱守および軸箱守控

 炭水車の車軸は全て長軸を用い、台枠の外側に軸箱を置く方法を採っているから、軸箱部分の検修および給油には便利である。

317_20210331104001

 軸箱装置の構造は第317図の様な簡単な箱で、硬鋳鉄で作られ、前面には開閉自在な蓋が取付けてある。車軸上に荷重のかかる具合は、台枠以上の重量は担バネ胴締下部のバネ座、軸箱および受金を経てジャーナルに伝わる様になっているのである。

318_20210331104001

 軸箱守は左右別々に硬鋳鉄で作られ、台枠または台車の台枠にボルトをもって取付けられ、軸箱を上下に案内し、軸箱守控は第318図のように極めて簡単なもので、軸箱守の両足をつなぎ、台枠または台車台枠の補強となっているのである。

 

524p465_20210331103801
525p466

2021年4月25日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その339)炭水車の支持方法(2)

(2)3点支持式

 3点支持は、3軸炭水車の一部、すなわち8850,8860形式等の炭水車に採用されている方法であって、ふつう前部の1軸は左右側の担バネ(すなわち2点)で、後部2軸はボギー台車を形成して、その台車の中央1点で各重量を支持するものである。(第314図参照)

314_20210330222401

(3)4点支持式

 これもまた、3軸炭水車に用いられる方法の一つであって、前記の形式を除く最多数のものが、この方式を採用しているのである。

 すなわち代表的のものを挙げると、450立方フィート(8620および9600形式付属)および6-13(C50形式付属)炭水車がそれであって、前1軸は独立しているから左右の2軸で受け、後2軸は左右別に各釣合梁によって各担バネがつながれているから、2軸ではあるが左右各2点で支持されていることになる。故に4点支持である。(第315図および第316図参照)

315
316_20210330222501

(4)6点支持式

 3軸炭水車で全然釣合梁を用いない5500形式付属炭水車のごときは、各軸の左右別に重量を負担するもので、いわゆる6点支持式である。

 

523p464_20210330222201
524p465

2021年4月24日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その338)炭水車の支持方法(1)

3.炭水車の支持方法

 機関車の重量支持は、主として3点支持法が原則的に採用されているのであるが、炭水車の場合は機関車と異なり構造も簡単であり、自動力も有せず、往復部の不釣合い重量、または過剰釣合錘(カウンターウェイト)のごときものも無いから、機関車ほど重量配分も面倒ではなく、2点、3点4点および6点支持の4種がある。

 我が国で最も多く用いられているものは、2点および4点支持である。しかしながら4点支持または6点支持のものは運転整備の場合、空車または貯炭水減少等の場合は荷重の変化がはなはだしいから、そのバネ調整は最も困難とするところで、しばしば脱線事故の原因ともなっている。

(1)2点支持式

313_20210329213901

 2点支持式は 8-20,6-17,12-17,17および20立方メートル炭水車等、最近の炭水車の様に4個の車軸が、2組のボギー台車を形成する場合の支持方法であって、炭水車の重量は各ボギー台車の中心鋳物によって車軸に負荷されているのであるが、中心鋳物の心皿は相当の面積を有しているから、理論的の2点で支持するものではなく、且つ左右に各2個の側受を有し、曲線路等を運転する場合、遠心力に起因する傾斜偏倚に備えている。(第313図参照)

 

523p463_20210329213701
523p464

2021年4月23日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その337)炭水車 台枠の構造と水槽取付方法

2.台枠の構造と水槽取付方法

 炭水車台枠の構造は、水槽の容量、車輪の配置または台車装置の有無等によって相違しているのであって、我が国おける主なる炭水車の台枠の構造は、大体第311図の通りである。

311_20210328101501

 すなわち4軸のもので台車装置を有するものは、溝形鋼(チャンネル材)の2本の中央梁が縦方向の主骨格となっていて、これに鋼板製端梁をその前後部に取付けて、台枠を形成しているのに対し、3軸のものは主として左右側の板台枠と端梁で成立ち、補強のために中央縦に溝形鋼を通しているのである。

 しかしていずれの形式も、横または斜め方向に隅鉄(ガゼット鋼)または鋼板で相当の補強を施して、台枠をいっそう強固なものにしている。

312

 水槽と台枠との取付け方法にも幾多の種類がある。鉄道省における炭水車に付いてこれを見ると第312図の通りであって、最も両数の多い炭水車の取付法は第312図(A)の通り、水槽底部に山形鋼を鋲付け(最近は溶接)し、この山形鋼と台枠とをボルトで結合したものであって、最近作られた主要炭水車は全てこの方法を採用しているのである。

 その他の方法には、水槽の前後板にL形の止金具を鋲付けし、これを台枠にボルト締めしたもの(第312図 B 参照)、水槽の前後板に山形鋼を鋲付けし、これを台枠にボルト締めしたもの(第312図 C参照)、水槽底板の外周縁を台枠にボルトで結合したもの(第312図 E参照)等いろいろあるが、水槽の底部を直接台枠に取り付けたものはもちろん、底部に山形鋼を鋲付けし、これを台枠にボルト締めしたものも、動揺等によってボルトまたは取付鋲の弛緩による漏水が割合多いので、これが対策として一般に溶接される様になった。

 

522p460_20210328093301
522p461
522p462
523p463

2021年4月22日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その336)炭水車 水槽

第2章 炭水車の構造

1.水 槽

 我が国における炭水車水槽の構造を一瞥すると、大体第309図の様なものであって、水槽を構成する各板は共に圧延鋼板(SS41)をもって作られているが、底板は支持の方法にもよるが一般に亀裂漏洩が多いから、他の板よりも少し厚いものを使用している。

309_20210327212801

 また水槽の容量等によって多少の相違はあるが、その内部に鋼板隅鉄(ガゼット鋼)の控(ひかえ)を横、縦または斜め方向に入れて補強し、一面動揺および制動による水の移動をも防止しているのである。

 現在用いられている外形は矩形の箱の様なもので、いずれの炭水車も大体同様な形状であるが、最近新製されたC56形式機関車の5-10炭水車は、後進運転の際の見通しの便宜上、第310図の様に中央に炭庫を設け両側水槽を低くして、後方の見通しに都合のよい形状となっている。

310c56

 しかして一般に水槽は低部に、炭庫は上部に設け、石炭を積載し、且つその供給を容易ならしめるために、炭庫の底はおよそ前半部は前方に傾斜し、後半部は水平になっている。炭庫の後方には水を補給するための給水穴が設けられ、水槽内部の検修および掃除等に、人の出入りもできる程度の大きさに作られている。

 炭庫の前方運転室に面する壁の中央部には、上下に開閉し得る戸があって、戸の前には石炭掬出口(すくい出し口:取出口)が設けられている。石炭取出口の取付け位置は、投炭作業に密接不離の関係があるので、火室焚口との距離、床板上の高さ等は大体次の様な標準に従っている。

 床板上より取出口までの高さ  350~450ミリ
 火室焚口より取出口先端までの距離  1350ミリ前後

 

521p458_20210327212201
521p459
522p460

2021年4月21日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その335)炭水車の容量

2.炭水車の容量

 炭水車の水および石炭の積載容量は、機関車の形式、運転区間の線路の状態および連続運転距離、仕業の種別、燃料の種類、給炭水設備箇所間の距離、ならびに機関区の所在地等を考慮に入れて決定すべきものである。かような事を考えて決定するとすれば、炭水車容量の種類はいたずらに増加するから、所要の量を数種に限定して統一されている。

 しからば幾ばくの容量が果たして適当であるかと言えば、見方によって多少の相違はあるが、国有鉄道全般的にこれを見ると、丙線を運転するものは、その全距離が大体80キロ以内で、しかも輸送量も比較的閑散であるからタンク機関車で用は足りるが、乙線以上の線路区間では、C10,C11形のごとく近郊旅客列車用という特殊な任務を有する機関車の他、炭水車を付属せしめるのを原則としている。

P457

 先年調査した省全般の機関車一作業(入換を除く)の平均走行キロは、大体150キロであって、このうちには小運転等の仕業がかなり含まれているが、炭水車の容量を考える場合には、C53形式のごとき急行旅客列車用を除き、機関車一仕業の最小走行キロ、200キロ(片道100キロ)と仮定するのが妥当であると思われる。

3081217a

 

512p457_20210325224301
521p458

2021年4月20日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その334)炭水車の称呼

第5編 炭水車

第1章 炭水車一般

1.炭水車の称呼

 炭水車はテンダーとも称し、燃料および水を搭載し、これを機関車に供給するの用を成すものであって、炭水車自体を称呼する場合、昔は単に水槽容量をガロンで言い表し、例えば3500ガロン炭水車等と称していたが、その後水槽容量を他の単位で表現し、初め立法呎(フィート)により450立方フィート炭水車等と称していたが、メートル法の実施に伴い、これを立法メートルで表わす方法が採用されて、17立方メートルまたは20立方メートル炭水車等と称する様になった。

 しかしこれらはいずれも水槽の容量のみは直ぐわかるが、石炭の積載量は不明であって、炭水車の本質を明らかにするものではない。よって最近作られた炭水車はこの点を考えて、炭水積載容量を簡明に表現する方法を採ることになった。

 すなわち6-13炭水車といえば、石炭6トン、水13立方メートルの積載容量の炭水車を称するのであって、前書きの数字は石炭容量をトンで、後書きの数字は水容量を立方メートルで言い表す仕組みである。故に石炭12トン、水17立方メートルの積載容量の炭水車は、12-17炭水車と称するのである。

 しなしながらこの方法によるとき、同一容量の炭水車が全部同一構造であれば問題はないが、その構造が異なるときは判別ができないので、同一容量で構造を異にするときは、これらの数字の末尾にA,B等の記号を付記して区別している。

 例えば最近新製されたC55形式機関車の炭水容量は12-17で、C53形式機関車の炭水車と同一の容量であるが、その構造が少しばかり異なるので、C55形式の炭水車は12-17Aなる記号で、C53形式機関車の12-17炭水車と区別している。

 

511p456
512p457

2021年4月19日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その333)運転室

第4編 運転室

307_20210323222501

 運転室は機関車乗務員の作業するところで、操縦、焚火、注水等に必要なる諸装置が設けられている。故に運転室は乗務員の作業を中心として設計されているが、機関車全体の構造からその位置はほとんど決定的であり、一般の形状としてもほぼ同様で、缶の後方に設けられ、焚火作業を中心として発達してきた。

 最近においては速度向上ならびに運転上の繁雑さから、前途の見通しが重要視され、この方面に注意が払われ、一面機械焚火(ストーカー)等の発達から焚火作業は比較的余裕を存するに至ったので、運転室を缶の前方に移した特殊なもの(キャブフォワード)が外国には出現している。

 運転室としては、乗務員の作業を中心として見通し、操縦、焚火等の容易なるよう設計されるべきものであるが、最近においては灯火管制(戦時体制)等にも好都合なるごとく考慮さるべきである。

 

411p454
411p455

2021年4月18日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その332)笛装置

第8章 笛装置

 笛はその要件としては蒸気消費量少なく、音響が前後に遠く聞こえ、且つ付近で聞いた場合、耳を強く刺激しないようなものが望ましい。また音響は単音とせず2種類以上の音を同時に発せしめ、その音色を良く調和せしめるため、各々異なる音響を出す共鳴箱を3個または5個備えているものが用いられる。

306

 第306図(イ)は、従来の旧基本形の構造を示したもので、笛ベル(1)、笛体(2)、弁(3)の主要部分より成立ち、笛ベルは砲金製の円筒で、内部を周囲に沿って3つに分割し、各室はその高さを異にするから音色も当然相違する。この3音が調和して適当な音律を発するので、これを3室復音笛(3室ベル)という。

 笛体も砲金製で内部に弁を備え、弁はバネによってその座に圧し付けられているが、笛を吹鳴(すいめい)せんとする時は、テコ(7)を引っ張ればバネを圧して弁を開き、缶からの蒸気を笛体の周囲から箱ベルに向かって吹出し、音を発するものである。コック(6)は笛に故障を生じたとき、蒸気を締切るのに使用する。

306_20210321232001

 第306図(ロ)(※原文はイと表記)は5室諧和(かいわ)笛(5室ベル)と称し、現在、省基本形として最近の機関車、C10,C53,C54,C55,C57,C58,およびD51形式等に取付けられているものである。

 

381p452
381p453

2021年4月17日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その331)暖房装置

第7章 暖房装置

1.暖房安全弁

 冬季客車に暖房用蒸気を送る場合、あまり高圧過ぎると暖房管や同ホースの裂損を来すから、暖房の送気圧力は 5.5キロ/平方センチメートル以下に定められている。

304_20210321104001

 すなわち暖房安全弁は、送気管中の途中に設けられ、第304図のごとく弁体(1)の内部に安全弁(6)があり、弁体上部の安全弁胴(3)の内部には、バネ座金(7)および(8) バネ(9)バネ加減ネジ(20)等が納められている。

 弁は座金およびバネを介して、安全弁胴に取り付けられた加減ネジにより座に押し付けられているが、蒸気圧力が所定の 5.5キロ/平方センチメートル以上になると押し上げられて、蒸気を噴出する。

2.蒸気暖房ホース

305
305_20210321104101

 これは車両間の暖房用蒸気管を連絡するゴム製のホースで V形を成し、中央のホース接手(1)には、小なる凝水排水弁が取り付けられているが、この弁は管内に蒸気圧力の無い場合は、自動的に開いて凝水を排出し、圧力のある場合には、自動的に弁座に圧着して漏気を防ぐ構造になっている。

 

371p450
372p451

 

2021年4月16日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その330)煙除け装置

第6章 煙除け装置(デフレクター)

 煙突より排出する煤煙は、進行方向の前方を覆って前途の見透かしを妨げ、且つ運転室にまで流れて乗務員に苦痛を与えるが、ことに冬季において外気が湿気を帯びているとき、または隧道内ではこの弊がいっそうはなはだしいので、これらの弊害を除くために、いろいろな煙除け装置が案出されたが、漸次改良されて現在広く採用せられているのは、第303図(イ)および(ロ)のごとき屏風形の煙除け装置で、構造簡単で前途の見透かしを支障する恐れもなく、効果が顕著であるため、主要形式機関車の全般にわたり広く装置されつつある。

303
303_20210321094901

 屏風形煙除け装置は機関車の進行に伴い、缶胴部分で左右および下方に押し除けられた空気が、その進行速度と煙室前のデッキおよび左右の屏風形板のため、巧みに誘導されて、煙突からの煙を上方に導く気流を作るものである。

 

361p449
371p450

2021年4月15日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その329)記録速度計

6.記録速度計

 普通の速度計は、指針の動きにより運転中の速度知り得るのみであるが、記録速度計は速度指針のほかに速度記録装置を備え、一定の記録用紙に対し、時々刻々変化する運転速度を自動的に記録することのできる速度計である。

302_20210320220501

 第302図に示する速度計は、記録速度計の内部機構を示す写真であって、普通の速度計と同様に、ギア装置を介して動輪の回転運動を元軸に取り、歯車により軸 cを回転し、さらに歯車を介し記録用紙の送りを行う軸 dを回転せしめる。

 送り軸 dには上、下および中央の3箇所に小針が突出して設けられ、軸の回転によりこの小針で記録紙を押え、送り作用をする。

 一方記録用鉛筆は、ラックの上端 bの部分に取り付けられている歯車と噛み合い、これによって上方に押し上げられるので、紙の横道と鉛筆の上下動との相互運動により、記録用紙に速度図表記録することになる。

 送り軸 dは元軸により回転せられるため、記録用紙の送りも従って距離ベースとなり、その送りは1キロ20ミリ、速度の縮尺高さは 10キロ/時・・・10ミリで表わされている。また記録速度計に付設せられているフレキシブル管は、停車場通過の場合または必要のあるとき、この管端に付属するゴム球を握ると、記録用紙にその位置がマークされる様な構造となっている。

 

356p447
356p448

2021年4月14日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その328)速度計 速度指示装置

5.速度指示装置

294_20210320082601

 第294図において主軸(14)の回転運動は、歯車(15)および(29)を経て巻上げ軸(28)に伝えられ、滑り子(31)と噛み合っている巻上げ歯車(4)(第300図参照)は、動輪の回転数すなわち速度に比例して回転されているわけである。

300

 一方滑り子軸(30)は、時計装置によって3.6秒ごとに1回転するから、各滑り子(滑り子は滑り子軸の周囲に取り付けられ3等分に分割されている)が巻き上げられる高さは、機関車が3分の3.6秒、すなわち1.2秒ごとに走行する距離に比例することとなる。

299_20210320082701

 今1個の滑り子に付いて説明するに、これが巻上げ歯車と噛み合い始めてより1.2秒経過し、両者の接触が外れる瞬間、滑り子支え車に接触し、これによりその高さに保たれ、さらに1.2秒経過すれば滑り子と支え車との噛合いが外れ、滑り子は自身の重量とバネ(10)(第299図)の力によって落下し、最初の位置に戻る。

 3個の滑り子は1.2秒おきに順次巻き上げられ、次に保持車によって支えられるから、滑り子の上部にはめられた金物(15)と同一体のラック(21)(第299図)を、速度に比例した高さに持ち上げる事となる。

 しかしてラックの面には歯が刻んであって、これが指針の軸に取り付けられている指針歯車と噛み合っているから、滑り子の高さ、すなわち速度に比例して指針を回転させる事になり、指針は1.2秒間の平均速度を示す。すなわち速度計においては、1.2秒間の平均速度を次の1.2秒間表示しているものである。

301

 最高速度を示す指針は、速度を指す指針のノック(6)(以下第301図)によって回転させられ、逆止歯車(22)と爪(25)によって降下するのを防いでいる。

 この指針を降下せんとする時は、外部にあるボタンを押すと、爪(25)が押されて逆止歯車(22)との噛合いが外れるから、指針はバネ(24)によって戻され、ゼロの位置に帰る。

 

355p445_20210320082201
355p446
356p447

2021年4月13日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その327)速度計 時計装置

4.時計装置

 一定時間内における元軸の回転数は、運転速度の大小に応じ変化するのは当然であるが、この元軸の回転と、ある一定時間ごとに正確に1回転する滑り子軸の回転とを、相互に関係付け、この両軸の回転速度の差を利用して速度の指示を誘導するのが、GS14形速度計の根本機構である。

294_20210317102201

 第294図に示す時計装置は、この時間的の作用をするため設けられたもので、バネ箱(13)および第295図バネ箱(2)の外側は歯車となっており、この箱は主軸(14)の回りに自由に回転するよう取り付けられ、バネ箱内のバネの弾力により自動的に回転し、これと噛み合っている中間歯車軸(17)および歯車(18)により、時計歯車軸(20)を回転させ、この軸の一端に取り付けられた傘歯車(22)により、傘歯車(41)を回転させ、この傘歯車が取り付けられた滑り子軸(30)を、3.6秒ごとに1回転させる。

295_20210317102301

 バネ箱は第295図のごとく、バネ箱(歯車)(2)を回転させるバネ(6)と、このバネを運転中自動的に巻き、時計装置の停まることを防ぐ巻上げ装置とから成っている。

296_20210317102301

 バネ(6)の内側端はブッシュ(8)に、外側端はバネ箱(2)に取り付けられ、逆止歯車(7)によってバネの巻上げを行う。この逆止歯車は爪(18)により、主軸の巻上歯車(2)(第296図)と噛み合っており、主軸の回転により爪を介して逆止歯車を回転する様になっているから、機関車の運転により自動的に絶えずバネの巻上げが行われる。

 かく絶えず運転に伴い巻き上げる時は、ついにはバネを巻き切る様になるので、ある程度まで巻き上げられるときは、自動的に主軸の巻上げ歯車と、逆止歯車の爪とが滑り合い、それ以上巻き上げぬ様にしてある。

 すなわち逆止歯車(7)が1回転し、バネが巻上られた時は爪(18)の一端を押すから、爪(18)は取付点を中心として外方に動かされ、クラッチピン(19)の切り欠きと、爪(10)の切り欠きと噛み合い、同時に爪(18)が主軸のバネ巻き歯車から外れ、両者は関係なくなるのでバネを巻き上げない事となる。

 その以後は、時計装置の運動と共にバネは漸次戻り、バネが戻るときは、バネ箱のクラッチピン(3)が爪(10)の外側に乗り上がり、バネ(12)の力に反対して爪を内側に押すから、爪(10)とクラッチピンの噛み合いが外れ、爪(18)が巻上げ歯車に再び噛み合うので、再びバネの巻き上げが行われる様になる。

297_20210317102501

 第297図のアンクルは、テンプバネの等時性伸縮により働くテンプ軸(第298図)の作用により、アンクル軸(1)を軸として動き、第294図の時計歯車(21)の回転送りを司り、同図の滑り子軸(30)の回転時間を正確に保たしめるものである。

298_20210317102501

 

354p441_20210317101101
354p442
354p443
354p444
355p445

2021年4月12日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その326)速度計 元軸および逆転装置

3.元軸および逆転装置(第293図)

293_20210316224001

 元軸(1)は動輪の回転運動より、前述せるごとき歯車装置を経て運動を取り、速度計を回転せしめる軸であって、その下端は箱の下部に突出し、第292図の回転棒(3)に取り付けられ、軸の上部には図に示すような逆転装置が設けられている。

 逆転装置は機関車の進行方向にかかわらず、すなわち元軸の回転方向に関係なく、機械装置を常に一定の方向に回転せしめる特色ある装置であって、この作用は爪クラッチ付傘歯車(14)により行われるのである。

 すなわち爪クラッチ付傘歯車(14)は、図のように元軸の上下に向い合せて取り付けられ、この2つの歯車は主軸の傘歯車(16)(第294図参照)と噛み合い、主軸を回転させる。

 中巻筒(13)は、上下2個の傘歯車の間隔を保たしめるため入れられた隔て筒で、上下の傘歯車(14)には、左側の図に示すような爪クラッチ付傘歯車受(6)が設けられ、上部傘歯車受の爪(8)は、元軸が右回りに回転するとき、歯車は爪によって受けに固定せられて主軸を回転し、(反対に左回りの時は滑る)下部傘歯車は、反対に元軸の左回りの時、爪により受けに止められ、主軸を回転させる構造となっているから、元軸の右回りの時は上部傘歯車が働き、左回りの時は下部傘歯車により主軸を回転させるから、元軸の回転方向、すなわち機関車の進行方向には関係なく、主軸(第294図の14)の回転方向は常に一定である。

 

353p440_20210316223701
354p441

2021年4月11日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その325)速度計 回転伝達装置

2.回転伝達装置

 速度計元軸の回転運動は、ふつうクランクピンまたは従輪軸等からその運動を取るのであって、第292図はこのギア装置を示すものである。

292_20210315221101

 図において返りクランク(6)の回転運動は(5)の回転腕を介し、第1歯車箱の小形歯車を回転せしめ、大形傘歯車により回転数を落とし、自在接手(9)を介し、再び第2歯車箱により回転数を落とし、回転棒(3)に、回転棒は元軸に回転運動を伝えるのであって、機関車の車輪直径に応じた歯車比の傘歯車を組合わせる構造となっている。

 指針は元軸毎分1回転に付き毎時1キロの速度を示す構造となっている。故に毎分1回転して1時間に1キロ走行する動輪直径(換言すると60回転して1キロ走行する動輪直径)ならば、傘歯車で回転数を落とす必要は全然ないわけである。

 ところが実際においては動輪直径がそれよりも小さく、1キロ走行するに60回転よりも多く回転するために、傘歯車で回転数をとして元軸の回転に合わせる必要が起こるのである。

 仮に1回転5メートルの動輪直径があったとすれば、1キロ走行するに要する回転数は、1000メートル÷5=200回転であるから、これを60回転に合わせるためには 200÷60=3.33 すなわち 3.33分の1 に回転を落とす必要があり、これを2組の傘歯車で落とすのであるから、傘歯車1組における歯車比は

 歯車比 x分の1 とすれば

P438_20210315220701

 すなわち 1.82分の1 とすれば良い。しかしながら時としては同一歯車比のもの2組を用いず、異なったものを組合わせて使用する事もある。

 しかして動輪直径は漸次摩耗するものであるから、その摩耗に応じて歯車比の異なったものを変えるべきであるが、それは繁雑であり、速度計自体も実用的には左程の精密さを必要としないから、動輪直径が40~70ミリ位摩耗(タイヤ厚さとしては20~35ミリ摩耗)せる場合に、正確なる速度を指示するよう歯車比が決められている。

 故に正確なる速度計と言えども、タイヤの厚薄によりある程度の誤差は免れ難いもので、この誤差は直径の小なるものほど大きいわけである。

 従来はもっぱら動輪から回転を取っていたが、空転などの際、速度計に悪影響を及ぼすので、最近の新製機関車はいずれも従輪から回転を取っている。従輪は動輪に比し直径が小さいから、タイヤの厚薄による誤差が多くなる欠点は免れない。

 従輪より回転を取るものは、回転伝達装置として軸端に1本のノックをクランクのごとく突出せしめ、これによってウォーム・ギアを回転するもので、ウォームは二重ネジになっており、13枚のウォーム歯車に噛み合って速度計の元軸を回転する装置になっている。

P439_20210315221201

 現在使用されている車輪直径、歯車比および誤差等は前表のごとくであり、なおこの歯車比から逆算して、正しい速度を示す場合の動輪直径を算出し、同表に示し参考とした。

(計算例)

 動輪直径1750ミリの場合の歯車比は 1:3.114、毎時1キロの速度を指示させるためには、元軸を毎分1回転の速さで回す必要がある。すなわち速度を毎分に直すと

 1000メートル÷60=16.667メートルとなり

 Dπ×3.114=16.667 の式が成り立つので、

この式から動輪直径 Dを求めれば良い。

P440_20210315221001

 すなわちこの歯車比に相応する動輪直径は1703ミリで、この場合に正しい速度を指示することがわかる。

 

352p437_20210315220101
352p438
352p439
353p440

 

2021年4月10日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その324)省基本形速度計装置

第5章 速度計

1.省基本形速度計装置

 速度計は列車の速度を指示する装置で、正確な速度を知り、常に安全にして且つ正確な運転を成さしめるために必要なものである。

 速度計には極めて種類が多く、現在鉄道省において使用せられているものはハスラー式、テロック式、ハウスヘルター・レツニー式、ドイタ式および省基本形速度計等がある。

 このうちドイタ式は電気式であるが、その他はいずれも機械式で、クランクピンまたは車軸等より運動を取り、車輪の回転数に応じ列車の速度を示す様にしてある。機械式速度計の構造は各式により多少異なるが、その原理はいずれも全く同一である。

 自動記録装置はハスラー式は時間ベースであるが、その他はいずれも距離ベースである。今後装置されるものは、いずれも省基本形であるから、以下これのみに付いて構造および作用を述べよう。

291gs14

 速度計装置としては回転伝達装置と、速度計との2主要部より成っており、速度計としては逆転装置、時計装置および指示装置の3主要部から成っている。

 

351p436
352p437

2021年4月 9日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その323)前照灯

3.前照灯

 前照灯(ヘッドライト)について最も注意を要すべきは、電灯と反射鏡との関係位置であって、この位置が適当でないと、いかに大なる電灯を使用しても照明の効果が少ない。

290_20210314105301

(1)前照灯箱

 前照灯箱は鉄板で作られ、その両側には蝶番戸があってこれを開き、内部の検収を行うことができる。発電機よりの導線は、箱の後部に設けられた穴から入っている。

(2)前照灯用電球

 前照灯用電球は第290図に示す様に、反射鏡の凹んだ底に水平方向に取り付けられ、電球の発光点がちょうど反射鏡の焦点となる様にし、なお電球受口にはバネを用い、電球が動揺しない様になっている。

 電球は在来250ワット(約200燭光:カンデラ)のものを用いていたが、現在は電気機関車と同様100ワット(約80カンデラ)のものに統一されている。

(3)反射鏡

 反射鏡はガラス板によって作り、その表面には水銀メッキを施したものであって、放物線状に形成され、焦点に合わせれば平行光線を放射する様になっている。その裏面は銅板で包まれ、なお前端は反射鏡受同押えによって支えられ、ネジにて箱に固定される。反射鏡と蓋ガラスとの間は密閉されて煤煙や塵埃が進入しないようにしてある。

(4)焦点調整装置

 最近の前照灯(第290図)では、単に電球を挿し込めばそれで焦点が合う様になっており、特に調整して焦点を合わす必要は無いが、前照灯採用当初のものは焦点の調整装置を有しているから、電球の発光点が常に焦点にあるよう調整しなければならぬ。

 また以前のものでは蓋ガラスが単なる板ガラスであったが、最近のものは円弧形のものと成し、上半部に凹凸のある段を付し、上空方向に放射される無駄な光線を下方に屈折して、線路上を有効に照明するごとくなっている。

 

343p434_20210314104801
343p435
351p436

2021年4月 8日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その322)発電機

2.発電機

 発電機中、重要なるものは磁界を作るものと、その磁界内で回転する線輪(せんりん:コイル)とであって、磁界を作るものを界磁と称し、磁界内で回転し起電力を誘発するものを発電子という。発電子は薄い鉄板を多数重ね合わせて形成した鉄心上に、線輪を巻き付けたものである。この発電機は直流発電機で二極複巻式である。

289_20210313223801

(1)界磁

 界磁は磁界を作るための装置で、界磁線輪支えと複巻界磁線輪とから成り、界磁線輪に電流が通じる時には、界磁線輪支えに磁力を発生して磁力線を作るのである。界磁線輪は直列線輪と分巻線輪とから成り、これらはいっしょに組み合わせてあるが、全体では四つの磁界の作用をしている。界磁線輪支えは二つあって、発電子を包んで相対している。

(2)発電子

 発電子は鼓輪状巻線形で、鉄心は最良の電気機器用鉄板を正確に打ち抜いたものを多数積み重ねて形成し、軸には直接キーをもって固定している。鉄心には18個の溝があって、各溝には16本ずつの導線を巻いて線輪を形成している。

 発電子線輪は耐火性の絶縁物で絶縁せられ、鉄心の両端では確実にロウ付けされている。また鉄心の両側には保護板が付せられ、ネジによりて締付けられている。

(3)整流子および刷子

 整流子と刷子(ブラシ)とは、発電子線輪中に誘発せられた交流電気を直流電気に変える役目を有するもので、整流子は互いに絶縁された銅片、すなわち整流子片から成り、円筒形であって、キーによりて軸の上に取り付けられている。

 刷子は整流子に接触して電流を外部に導き出す働きを成すもので、火花を発せず且つ摩擦を少なくするために堅い炭素をもって作られ、刷子支持器により支えられ、刷子が整流子上を押す圧力はバネによって適当に調整する。

 

342p433_20210313223301
343p434

2021年4月 7日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その321)電気点灯装置 蒸気タービン(3)

(2)速度調整装置

287_20210312215801

 速度調整装置は第288図(注:第287図タービン発電機)に示すごとく、軸に装置せられた調速機(4)、タービン前殻(2)にはさまれている調速弁(7)と、この両者を連絡するテコ(3)から成り立っている。

287_20210312215802

 羽根に蒸気が噴き付けられて回転し始め、漸次速度が高まってくると、軸と共に回転している調速機(4)は、遠心力のためピン(13)を支点として段々開き、調速機バネ(5)を圧縮して調速機心棒(6)を押し出して、テコによって調速弁を右に動かし、第287図における蒸気の通路(N)を絞り、Lから Nに流れる蒸気量を減ずるからタービンの速度は遅くなる。

 速度が減じて来ると、バネの力が調速機の遠心力に打ち勝って、調速機心棒を左に動かし、従って Nの通路を開くから速度は再び増してくる。それ故に調速機バネを適当に調整して、規定の速度が出る様にしておく。調速機バネは調速装置に使用する唯一のバネで、重要部分であるから錆を生じない特殊の材料で作られる。

 調速弁は平均せるピストン弁で、テコ加減ネジ(8)により、弁の働きが6ミリになる様に取付けられ、Pおよび Rの二つのピストン弁は同一心棒に取付けられている。また弁カゴ(9)、弁心棒および調速弁は、ふつうリン青銅(銅とスズの合金である青銅にリンを加え、青銅内部に含まれる酸化銅を脱酸した金属)で作られる。

 缶から来る蒸気は第288図においてまず Lに入り、調速弁 Pおよび Rの通路を通り Nから噴射口を経て羽根車を回転する。C室と A室とは調速弁の内部に貫通した穴 Mによって相通じ、共に排気の圧力となっている。

 しかしてピストン Rは直径14.5ミリ、ピストン Pはこれよりも約1ミリ直径が小さいから、蒸気が通っている間は、その圧力差で左方へ押し付けられる傾向を有し、この傾向は調速機の遠心力と反対に働いているから、タービン用蒸気止弁が閉じられ、タービンが停止して遠心力が無くなった時は、弁は左方に圧し付けられて Lからの蒸気通路を適当に絞り、次の始動に差し支えない様になっている。

(3)タービンの速度調整法

 タービンの回転数は毎分2400回転が適当である。速度の調整を行うには調速機バネ(5)の張力を加減すれば良いのである。しかし、ふつうわずかの調整にはこのネジを用いず、調速弁を加減する事が多い。調速弁を加減するには、たんにテコ加減ネジ(8)を調整すれば良い。

(4)自動安全装置

 調速機に故障を生じて調速弁の機能を失った場合は、前述のごとく Rピストンは Pピストンよりも直径が大きいから、この圧力差によって自動的に蒸気通路 Lを絞り、過大な回転数とならぬ様、確実な安全装置としての作用を成す。

(5)軸および球軸受

 タービンおよび発電子が取付けられている軸(45)は、良質の炭素鋼製で、適当に焼き入れしてある。軸受は容易に手入れができて簡単に取り替えることができる様な構造となっており、摩耗を少なくするために比較的大形の球軸受(ボールベアリング)とし、且つ十分な給油装置が施されている。パッキンは黒鉛と銅線とを織合せたもので、蒸気が軸周から発電機側に漏洩するを防いでいる。

(6)給油装置

 軸受は全て球軸受であるから、滑剤は少量でよいが良質のものを必要とし、タービン発電機は激しい振動と、温度の変化の影響を受けるから、滑剤には酸またはアルカリその他の残滓を生ずるような、不純物を含むものを使用してはならない。

 

341p430_20210312214901
341p431
341p432
342p433

2021年4月 6日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その320)電気点灯装置 蒸気タービン(2)

(1)回転輪

285_20210311220201

 回転輪はタービンの最も主要なる部分であって鍛鋼で作られ、その周縁には三日月形の断面を有する羽根が植え付けられたラジアル二段衝動タービンであるが、羽根はただ一列で、タービン殻に取付けられた噴射口は二段になっている。

286_20210311220201

 すなわち第286図において、第一の噴射口から出た蒸気は、外側より中心に向って羽根を衝撃して内側に入り、巧みに設計された通路を通って方向を変じ第二の噴射口に入り、内側から外側に向かって再び羽根を衝撃して大気中に放出される。

 羽根は遠心力に対して十分耐え得る様に取り付けるため、鈎状部(こうじょうぶ:かぎの様に曲がった場所)で確実に包まれるごとく回転部にはめ込まれ、縁押えによって確実に支持せられている。なおこのタービンに用いる羽根は、錆および腐食を防ぐため真鍮で作られている。

 

341p429_20210311220001
341p430

2021年4月 5日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その319)電気点灯装置 蒸気タービン(1)

第4章 電気点灯装置

 電気点灯装置の主要部分は蒸気タービン、発電機および照灯より成り、さらに列車標識として点灯するばかりではなく、運転室内の照明にも用いられ、作業上最も便利なものである。

 機関車の電気点灯装置としては蓄電池によるもの、または客車のごとき構造の発電機による場合等が考えられるが、これらを比較調査した結果によれば、現在使用のタービン発電機が最も経済的である。

 タービン発電機には種々の形式のものがあり、国有鉄道においても最初のうちは試験的に川崎造船所製、パイルナショナル製K2形、ゼネラル・エレクトリック製CY-32-C形、サンスビーム・エレクトリック製R-E-3形等が使用せられていたが、漸次川崎製のものに統一され、現在ではこの形式が省基本となっている。従って以下、この式に付いて構造および作用を述べる事とする。

1.蒸気タービン

 蒸気タービンの主要部分は円板状を成せる回転輪、その周縁に取り付けられた断面三日月形の羽根、これを包む殻に取り付けられた蒸気噴射口であって、噴射口より噴出した蒸気は回転輪の周縁にある羽根に突き当たり、その噴射力で回転輪に回転運動を起こさせる。

 その標準回転数は毎分2400回転で、回転速度を適当に調整するために調速装置を有し、自動的にタービンの速度を一手に保たしめる。それ故、缶蒸気圧力の変化ならびに電灯の一部点滅による負荷の変化に対しても、常に一定回転数を保ち、一定の電圧32ボルトを発電する様になっている。タービンはふつう負荷の状態で1時間に蒸気約40キロ(石炭6キロ位)を要する。

 

341p428_20210310184701
341p429

2021年4月 4日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その318)水まき装置

第3章 水まき装置

1.石炭水まき装置

 石炭に散水するため運転室屋根の後方に水まき管を設け、注水器繰出部分(ノズル蓋)より支管にて連接し、散水を要する場合、注水器を使用し圧力水を送り出すものである。

2.運転室内水まき装置

 これは運転室内に散水する装置で、前項の石炭散水用支管の途中に三方コックを設け、これより支管によって温水を導き、管端に細きノズル付ホースを取付け、室内へ自由に散水し得る構造となっている。石炭水まき装置の無い旧式機関車では石炭水まきにも兼用している。

3.レール水まき装置

 これはレールに散水する装置で、その目的とするところは、レールに撒かれた砂を洗い流して列車全体の走行抵抗を少なくする場合、またはレールに散水してレールとタイヤフランジとの摩擦を軽減し、フランジの摩耗を防止せんとするにある。

 故に先輪の前および従輪の次位に散水管を設けて散水するもので、運転室内に水コックを設け、水槽内より水の落差を利用して流出するが、最近では蒸気ノズルを送水管の途中に設け、蒸気の噴出力を利用して散水するものも多い。

4.タイヤ水まき装置

 これはタイヤおよび制輪子の両者に散水し、ブレーキ操作によって加熱された場合、これを冷却させるものである。タイヤおよび制輪子が加熱されると、ブレーキの効果が減殺されるのみならず、タイヤとしては弛緩の原因ともなり、制輪子としてはその摩耗が大となる。水まきの方法としてはレール水まき装置と同様である。

5.灰箱内水まき装置

 流灰装置付きの灰箱には必ず灰箱内に水まき管を有し、灰箱内に散水し、焚殻の消化に使用すると共に、灰の流出を成すもので、水まきの方法としてはレール水まき装置と同様である。

 

331p427_20210308095101
341p428

2021年4月 3日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その317)空気砂まき装置

2.空気砂まき装置

 空気圧力によって砂を吹き出すもので、手動式に比し撒砂が確実で、且つ弁を取り扱うにわずかの労力しか要しない利益があるので、最近の新製車はもちろん、従来のものも主要形式機関車は全部改造してこの装置を採用している。この装置は砂箱、砂まき器、砂まき管、砂まき空気管および作用コックから成り立っている。

282_20210306231801

 砂箱は手動式と同様な形をなし、箱の両側底部には砂まき器取付座を備え、砂まき器は第282図に示す様に砲金製の砂まき器体、帽、栓および空気吹出し装置からなる。

 作用コックから空気管を通って来た空気は砂まき器体内に入り、空気吹出し口から噴出し、体内に留まっている砂を吹き上げる。吹上げられた砂は帽に突き当たってその方向を変え、砂まき管に送られるのである。

 帽の内面は砂の衝突によって摩耗することが多いから、鉛の裏張りを成し必要のつど詰め替える。また空気量を加減するには加減ナットを弛め、空気加減弁により行う。

 砂まき管は直径25ミリのガス管で、その曲がりを少なくし、且つ接目から雨水の侵入しないことが必要で、なお管端はバネのたわみを考え、レール面上25ミリ以上を隔て、砂がタイヤとレール面と相接する部分に吹き付ける様に管端を向ける。

 砂まき空気管は銅管を用い T接手から後方は2分の1インチ管を、前方は4分の1インチ管を使用する。しかしながら4分の1インチの管は砂が逆流して管口が閉塞することが多く、且つ折損し易いので、最近の新製車には8分の3インチ管を使用したものが多い。

283

 作用コックは第283図に示す通りで、体は鋳鉄製で前部下方に後砂まき器、後部下方に前砂まき器用空気管を取付け、中央下部に元空気溜に通ずる空気管を接続する。コックは中空で下方に2個の穴を穿ち、背後からバネで圧し付け、その座に密着せしめる。

 ハンドルには内部にピンおよびバネがあって、ハンドルの中央位置で体の凹みに落ち込む。この中央位置にハンドルを置くときは砂まき器には圧力空気を通じないが、ハンドルを前方に倒せば空気を前砂まき器に送り、また後方に倒せば後砂まき器に圧力空気を送る。

284_20210306231801

 最近新製のC55,C57,D51,C58形式は砂箱を蒸気溜に接近して設け、同一被いで包み、また砂まき作用コックは脇路弁シリンダー排水弁等の作用コックと共に一カ所にまとめた、第284図の様な横式操作コックが使用されている。

 空気の噴出量があまり多過ぎると、砂をも高い速度で噴出させる事となり、せっかくの砂がレール上に落ち着かず飛散するの結果となるから、空気はなるべく少量にして、所定量の砂を誘出するよう注意せねばならぬ。出砂量は砂まき管1本に付き毎分1.5リットル以上で、大体2リットル/分位が標準である。

 

321p424_20210306231101
322p425
322p426
331p427

2021年4月 2日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その316)手動式砂まき装置

第2章 砂まき装置

 動輪が空転するのは粘着力が牽引力よりも小さいからであり、また動輪が滑走するのは粘着力よりも制動力が大きいためであるから、空転または滑走を防止するには粘着力を増加しなければならない。これがためレールと車輪間に撒砂を成す必要がある。この装置を砂まき装置と称し、これには手動式と空気式とがある。

1.手動式砂まき装置

 この装置は砂箱、弁、砂まき管および操縦棒等から成り、砂箱はふつう缶胴上部に蒸気溜と縦に列べておく。これは常に砂を高温の缶によって乾燥し、且つ高所に置いて弁を開いた場合、砂の落下を容易ならしめるためと、1個の砂箱で左右の動輪に撒砂し得るためである。

281_20210303101001

 第281図はこの装置を示したもので、砂箱は圧延鋼板(SS34またはSS41)で作られ、その容量は機関車の大きさによって相違し、8620形式は240リットルであるが、D50形式においては650リットルである。弁は砂箱の内部にあって水平あるいは垂直の2種あるが、ふつうは垂直式のものが用いられる。

 

321p424

2021年4月 1日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その315)潤滑油の使用現況

22.潤滑油の使用現況

 内部用(シリンダー油)と外部用(機械用油)との使用量は、各局とも使用標準を制定しているが、機関車の形式、使用状況、新製車というような条件に支配されて、実際には相当の開きがある。

 内部油の使用状況をまず年度別局別で見るも、機関車走行1000キロ当たり、少なきは5リットル内外なるに対し、多きは10リットルを超過するものもあり、またこれを機関区別に付いて見ると、同一局管内においても少なきものに対し多きは50%以上の相違がある。

 またこの事は外部油についても同様であったが、最近では各局ともほぼ接近し、機関車1000キロ当たり7~10リットルの範囲にある。しかしながら、これを機関区別に付いて見てみると少なきは4リットルなるに対し、多きは17リットルにも及び、一般的に見るも少なきものに対し50~100%程度の差異がある。

 これらはもちろん、特殊の条件に支配される結果ならんも、関係従事員の研究、給油に対する関心の程度にも、少なからざる差異のある事は見逃せないと考えられる。

 しかしながらここに注意すべきは、せっかく油脂の節約に努力するの結果、機械抵抗の増加や摩擦の増大を誘発し、燃料の節約に反しては何もならぬ事である。すなわち油脂の節約は一目瞭然であるに反し、燃料の増加、摩耗の増大等は認識に困難なる関係上、不知不識の間に油脂節約に重点を置き動きもすれば、他方を犠牲にするがごとき傾向なしとしない。

 かくのごとく比較困難なる両者の適正を見出す事は困難な事であり、機械技術者の悩みでもあるが、いちめん奥行の深い所で興味の存する所でもあるから、せっかくの全国的成績の状態を睨み合わせて、適正給油の発見に資せられたい。

  (注)内部油使用量の減少せる時代は乳化油使用に起因するものである。

280_20210303093001
280_20210303093101
280_20210303093102
280_20210303093103

 

3122p420_20210303092701
3122p421
3122p422
3122p423

« 2021年3月 | トップページ | 2021年5月 »

2026年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

最近のコメント

252312