機関車工学:下巻(その197)汽缶取扱:インジェクター取扱/水の吸上げ不良
インジェクター取扱/水の吸上げ不良
【 水の吸上げ不良 】
「インジェクター」に「タンク」より適宜に水を吸上げ得ざることは、主として左の理由に帰因す。
1.「サクション・パイプ」閉塞
これ「ストレーナー」に塵埃、泥砂、木葉の類停泊して、その網目を閉塞するによること最も多く、その他「ホース」の折れ重なり、または「パイプ」がある点において閉塞せらるることあるにより、水道を絶ち水を「インジェクター」に送らざるものにして、障害物の場合には「オーバーフロー・バルブ」を閉ぢ「スチーム・バルブ」を開き、蒸気を「タンク」内に逆流せしむれば障害物を除去することを得ることあり。
注意粗漏のため愚かなる失敗をなすことあり。「タンク・バルブ」の閉塞しあるに心付かず、または「タンク」内に水の欠乏せるに心付かず切りに水を「インジェクター」に吸出さんと試みたる実例あり。
2.「サクション・パイプ」内に空気漏洩すること
この場合には「サクション・パイプ」内に真空を作る事あたわざるをもって水を呼ぶ事あたわず。
3.「サクション・パイプ」内の水が熱せらるること
これ「ボイラー・チェック・バルブ」より蒸気漏洩すること、ならびに「インジェクター」の「スチーム・バルブ」、及び「ライン・チェック・バルブ」より蒸気漏洩するに基づくものなり。「ライン・チェック・バルブ」の目的は、「ボイラー・チェック・バルブ」不工合のとき反流し来れる缶水をそこに食ひ止めんとするものなり。
「サクション・パイプ」内の水が熱せらるるときは、何故に水の吸上げを害するやは下の理由に基づくものなり。実験によれば水の沸騰点は圧力のいかんにより変ずるものにして、水は 180ポンドの圧力の下にては華氏 380度にて沸騰し、14ポンド7 分の普通の大気の圧力の下にては華氏 212度にて沸騰し、真空 10インチの場合には華氏 160度にて沸騰すべし。
今「インジェクター」を掛け始むるため蒸気を通ずるに、その蒸気の誘導により「サクション・パイプ」内に一部の真空を作るべきも、その内の水が 160度ないし 175度に熱せられいるものとすれば、たちまち沸騰して蒸気を発生し、その真空を破り水の吸上げを害するの理なり。
この場合に処して「インジェクター」を取扱ふには、まず少量の蒸気を送り「オーバー・フロー・バルブ」を閉ぢ、「サクション・パイプ」に蒸気を通じ、その内の温かき水を「タンク」内に反流せしめ、直ちにまた「オーバー・フロー・バルブ」を開くべし。しかるときは冷水はさらに「サクション・パイプ」を経て上り来り「オーバー・フロー」より出づるに至るべし。
4.「タンク」内の水が熱せらるること
「ウォーター・タンク」内の水が高温度に熱せられたるときは「インジェクター」はその作用を失すべし。かかる場合には冷水を「タンク」内に加ふるをもって良策となすこと疑を容れずと言えども、汽缶の「ストップ・バルブ」を少しく開きて蒸気を絞りて低圧力となし、それにて「インジェクター」を試むべし。これ「タンク」内の水の温度高きときは、「インジェクター」を掛るに蒸気は低圧のものほど都合好きをもってなり。
総て「セーフティー・バルブ」より蒸気の噴出するを防ぐため、または停車中に水を温むるため、「インジェクター」より蒸気を「タンク」内に反流するときは一方の「インジェクター」のみを使用すべし。これ「タンク」の一脚のみにおける水を温むるをもってなり。
5.「チューブ」の故障
「リフティング・チューブ」または「コンバイニング・チューブ」に障害物あるときは、蒸気が自由に「オーバー・フロー」に通ずる事あたわざるのみならず、「サクション・パイプ」内に真空の代りに蒸気の圧力を与ふる事となり水の吸上を害す。
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