第4章 伝 熱
火室内に投入せられた石炭の有する熱は前述のごとく、これをことごとく利用し得るのではなく、一部の熱は
(1)燃焼ガスと共に大気中に捨てられる。
(2)水分の蒸発に費やされる。
(3)シンダーとなって飛散し、あるいは灰と共に未燃焼のまま捨てられる。
(4)不完全燃焼により、十分熱量を発することなく捨てられる。
(5)缶の表面より輻射によって失われる。
等の種々の原因により損失を生じ、これらを差し引いた残りの部分が、蒸気を作るのに利用し得る熱であって、第8図は各々の損失の割合を示す実績である。
火室内における熱ガスが缶板に触れるときは、熱ガスと缶板との間に薄い(厚さ0.06~0.05ミリ)ガス膜を生じ、同様に水の側にもまた、水と缶板との間に薄い水膜を生ずるものである。
第9図は缶板を通って熱の伝わって行く状態を示したもので、Aはガス膜、Bは缶板、Dは水膜で、a,b,c,d は温度の降下する状態を示したものである。
すなわち最初ガス膜の外側 a の温度 T₁ のものが、ガス膜 Aを通過する間に T₂ に降下し、缶板を通過する間に T₂ より T₃ に降り、さらに水膜を通過する間に温度は T₃ より T₄ に下るから、結局 T₁ より T₄ まで降下するのであって、この間 T₁-T₄ は全く伝導によって熱が水に伝えられるまでの損失である。
ガス膜はその厚さが極めて薄いのにかかわらず、伝熱抵抗が非常に大で、全体の抵抗の98%であって、これに比較すれば水膜の抵抗は極めて小さなものである。
今、
Q =Z時間の間に面積 S平方メートルを通って伝えられる熱量(カロリー)
S =伝熱面積(平方メートル)
Z =伝熱時間
K₁ =ガス膜の温度差1度に付き、面積1平方メートルを通り1時間に通過する熱量(カロリー)
K₂ =水膜の温度差1度に付き、面積1平方メートルを通り1時間に通過する熱量(カロリー)
K₀ =缶板の面積1平方メートル、厚さ1メートルの板を通り温度差1度に付き、1時間に流れる熱量(カロリー)
b =缶板の厚さ(ミリ)
とすれば、その逆数
は、それぞれガス膜、缶板および水膜の伝熱抵抗の比で、全体の抵抗を Kc分の1 とおけば、
で、Kc はガス膜および水膜の両側 d 間の温度差1度に付き、面積1平方メートルより1時間に通過する熱量(カロリー)である。よって缶水に伝えられる熱量 Qは、
缶において燃焼によって生じた熱量が缶水に伝わるには、火室内での輻射によるものが最も多く、伝導によるものこれに次ぐ。しかして内火室板では輻射と伝導の両者によって伝熱されるが、煙管では熱ガスの伝導によるもののみで、輻射によるものはほとんど無い。
第8図は缶水や蒸気中に吸収される熱量と、各損失熱量との関係を燃焼率別に表した、C51およびC53形式機関車の実験による熱の釣合図で、燃焼率の高くなるに従って缶効率は低下するが、この主なる損失は何に起因するかを見るに、未燃炭損失(主としてシンダー損失)によるものが大部分で、可燃ガス損失その他によるものは比較的少ないことがよくわかる。
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