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2021年7月の記事

2021年7月31日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その58)重クロム酸カリとソーダ灰の併用

7.重クロム酸カリとソーダ灰の併用

 重クロム酸カリは、主として缶板腐食防止として作用し、ソーダ灰は硬質缶石の生成防止として使用するものであって、両剤はあらかじめ少量の熱湯に溶解せしめたる後、洗缶または缶水張替の際、洗口から注入するのである。

 しかしてこれが取扱上注意せねばならぬ点は、次の通りである。

 (1)重クローム酸カリは有毒性のものであるから、取扱担当者を指定し、担当者以外にはこれを取扱わしめないこと。

 (2)油気ある缶に使用するときは、気水共発を誘発する恐れがあるから、本剤を入れる前に十分油気を除去すること。

 (3)本剤使用の缶水は、飲料または洗顔用等に使用しないこと。

 (4)本剤はよく被蓋(おおいふた)せる容器に貯え、空気中より水分を吸収しない様にすること。

 (5)ソーダ分を含まない用水に、重クロム酸カリのみを缶に入れてはならぬこと。

 清缶剤の使用量は水質、使用水量、缶の大きさ、および洗缶回帰キロ等を考量して定むべきものであって、鉄道省官房研究における実際試験によると、缶張込水量10萬グラムに対し50グラムを含む程度に入れ、洗缶の際、排水中におけるこれが残留量は20グラム以上を可とし、ソーダ灰は気水共発を誘起しない範囲内で、なるべく多量なるを可とするのであって、大体一洗缶ごとに重クロム酸カリは1~2キロ、ソーダ灰は約2キロ使用するのが良いという結果になっている。

 

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2021年7月30日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その57)清缶剤

6.清缶剤

 清缶剤は、機関車用水の缶内処理を成す薬剤で、缶の腐食を防ぐと同時に、硬質缶石の生成を防止し、軟質釜石としてその除去を容易ならしめるものである。

 缶板の腐食予防法としては、耐蝕性な合金材の使用、鉄面の鍍金(メッキ)、鉄材の成分または加工法の改善、鉛のメッキ、缶内の塗料、水中炭酸ガスの除去、水質の改善および清缶剤(防サビ)の使用等が考えられたが、実行に困難を伴うものが多く、このうち清缶剤は機関区において容易に使用され得る便があるので、現在清缶剤が広く用いられている。

 清缶剤には極めて種類が多く、以前エスケールおよびボイラ・インゼクチオンK等を試用したが、その成績はあまり良好ではななかった。満鉄ではボイラ・ペイントを塗布する事により、非常に好成績を挙げたと言われるのに鑑み、先年、各鉄道局において試用せられたが、その成績も良好ではなかった。

 現在、鉄道省における清缶剤としては、重クロム酸カリとソーダ灰の併用、またはソーダ灰単独にて使用され、相当の成績を収めているが、三ツ目印清缶剤(内外化学製品株式会社)のごときも一部に試用されており、またソーダ灰の代わりに、リン酸ソーダを使用する事も考えられている。

 

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2021年7月29日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その56)水の改良

5.水の改良

 水は一見純粋に見えても、必ず缶石となる物質、または缶板を腐食せしむる酸類等を含んでおり、その量が極めて微量な時はそのまま使用しても差し支えなく、含有量の多いものは使用を禁止せねなならぬが、土地の状況によっては止むを得ず使用せねばならぬことがあり、従ってこの場合は水を改良せねばならぬ。

 泥砂等を含む濁水は、単に濾過槽または沈殿池等を使用することにより、容易に清浄な水となす事ができるが、水中に溶解している不純物は、この方法では除去する事ができない。

 湯垢を生成する物質、または缶板を腐食させる物質を溶解している水は、薬品を入れ水質を改良することができるが、気水共発を起こす物質を含んでいる水の改良は極めて困難で、ことに塩分を含んでいる水は、蒸留するより他に改良方法がない。

 缶石の予防剤はその種類がはなはだ多いが、多くはソーダまたは石灰を主成分とするもので、これらは缶石の予防剤として相当の効果はあるが、却って気水共発を起こさせしめる新たな化合物を生ず。それ故、缶板を腐食させる物質は、ぜひこれを除去する要あるも、湯垢を生成する諸塩類が10万分の150以内なる時は、そのまま使用するのが普通である。

 酸類、塩化石灰および塩化マグネシウム等を含んでいる水には石灰、ソーダ灰またはアルカリ性の物質を加えるのが良い。水に含まれている酸類はふつう僅少であるから、これを中和させるアルカリもまた少量で足りるから、これがため気水共発を起こす恐れはない。

 炭酸石灰または炭酸マグネシウム等を含んでいる水には、石灰が良い。石灰を加えるときは水中の炭酸ガスと化合するをもって、炭酸石灰または炭酸マグネシウムは、自然に炭酸ガスと分離し水底に沈殿してしまうから、これを取り除くことができる。

 硫酸石灰または硫酸マグネシウムを含んでいる水には、ソーダ灰を加えるのが良い。しかる時は炭酸石灰もしくは炭酸マグネシウムと硫酸ソーダとを作り、この炭酸石灰と炭酸マグネシウムとは、炭酸ガスが逃げ出すと自然に沈殿してしまうが、硫酸ソーダが残り、これが多量になれば、ついに気水共発を起こす様になるので、缶水をしばしば取り替えねばならぬ。

 薬品により水質を改良するには、貯水池または貯水槽を設け、水に薬品を加え改良された良水を機関車に使用するのが、最も理想的であるから、欧米各国では大規模な設備を成し、この方法により水の改良を成している所もあるが、我が国では、一般に清缶剤を缶に入れる方法を採っている。

 缶用水を改良するに2種の方法がある。すなわち機関車に給水する以前において、薬品または特殊操作によって水質の改良を成す事を、缶外処理と称し、清缶剤使用のごとく給水後、缶内において水質の改良を成すものを、缶内処理と称する。

 用水の改良としては、缶外処理の方法によるを理想とするが、経費その他の関係で、現在は缶内処理の方法によっているものが多い。

 

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2021年7月28日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その55)水質が缶に及ぼす影響(3)

(3)湯 垢

 湯垢を生成するものは大別して2種ある。その一つは水中に浮遊している缶泥と称され、缶水の汚濁を来たすもので、他の一つは水中に溶解している化合物が熱によって水より分離して、缶板に付着する缶石(かんせき:スケール)と称するものである。

 濁水の使用によって生じた湯垢はいわゆる缶泥で、化合物により生じた缶石には軟質のものと硬質のものとがある。軟質釜石は洗缶の際、容易に除去することができるから缶自体にはあまり害はないが、硬質のものは洗缶位にては到底除去することができなく、一般修繕の際、鎚(つち:ハンマー)等にてはぎ取る必要がある。

 缶石は熱の伝導が非常に不良で、金属の約30分の1であるという。それ故、缶石の付着は熱が水に伝わるのを妨げ、蒸気の騰発を不良ならしめて石炭消費量を増加する。実験によると缶石の圧さ0.8ミリなるときは9%、1.8ミリなるときは実に16%の石炭消費量を増加するという。

 かく缶石は石炭消費量を増加するのみならず、時として缶板が過熱される様な事が起きる。ことに控の部分はその付着が最もはなはだしく、過熱によりこの部分の缶板を膨出せしめ、または控より漏水せしめ、あるいは控の折損を招く等の悪結果を伴うものである。

 缶石を生成する重なる化合物は炭酸石灰、炭酸マグネシウム、硫酸石灰および硫酸マグネシウム等で、このほかケイ酸塩類、塩化石灰および塩化マグネシウム等をも含んでいる。

 炭酸石灰と炭酸マグネシウムは、いずれも純粋な水には溶解するものではないが、水に炭酸ガスを含んでいるときは容易に溶解するものである。しかして水を沸騰する時は炭酸ガスは水より分離して逃げ去るから、後に残された炭酸石灰、炭酸マグネシウムが缶石となる。

 この缶石は軟質であるから、洗缶の際、容易に除去し得るも、硫酸石灰および硫酸マグネシウムは極めて硬く、陶器に類する缶石を生ずるから最も忌むべきものである。

 

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2021年7月27日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その54)水質が缶に及ぼす影響(2)

(2)気水共発

 気水共発とは、蒸気と共に缶水の一部がシリンダー内へ進入することで、気水共発を起こすときは缶水の減少がはなだしく、これを補うため盛んに注水するから、所定缶圧を保つことは不可能となり、缶圧の低下が余技なくされる。

 また気水がシリンダー内で作用する結果、蒸気の膨張性も失われるので牽引力が低下し、ついには遅運転または運転不能等に陥るものである。

 缶水中に硫酸ソーダ、塩化石灰または塩化ソーダ等を熔解しているもの、または苛性ソーダ等のごときアルカリ物を含んでいる場合は、泡立ちて沸騰し、また泥、砂、塵埃等のごとき浮遊物、油類等を含んでいる場合にもまた泡立ち、沸騰を成しその結果、気水共発を起こす。気水共発は沸騰の盛んなる時、すなわち燃焼率の高く、強い牽引馬力を発生するとき特に起こりやすいものである。

 気水共発は、これをプライミングとフォーミングの2種に区別し、缶水過多に起因するものをプライミングと称し、前述のごとく泡立ち沸騰を成し、缶水の濃度過多によるものをフォーミングと称し区別することもあるが、近ごろでは両者を一様に気水共発またはプライミングと称し、フォーミングと称することは少ない。

 

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2021年7月26日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その53)水質が缶に及ぼす影響(1)

4.水質が缶に及ぼす影響

 水は純粋なるものではなく、常に多少の鉱物その他の不純物を含んでいるから、水質の良否は直ちに缶の腐食、寿命等に影響を及ぼすのみならず、缶石の生成は缶効率を低下せしめ、石炭消費量を増加し、あるいは塩類、缶泥等のため気水共発(溶解している固形物がボイラ外へ持ち出される現象:キャリーオーバー)を起こし、運転に支障を及ぼす等、少なからざる損失を招来するものである。

 故に缶用水としては ①缶板を腐食せしむる水、②気水共発を起こす水、③湯垢の生成多量なる水、等はでき得る限り使用を避けねばならぬ。

(1)缶板の腐食

 水中に硫酸硝酸または炭酸等のごとき酸類を含有し、あるいは塩化マグネシウムまたは塩化石灰等の塩類を含有するものは、缶板および煙管を腐食せしめる作用が最もはなはだしく、局部的にはピッチングまたはグルービングを生ず。ピッチングとは痘痕のごとく深く腐食する事であり、グルービングとは溝形に腐食する事である。

 かく酸性と塩類は缶を腐食せしめる作用をなし、水中に10万分の5の酸類を含む水は努めて使用を避けねばならない。洗缶の際、洗口穴から流出する水が暗赤色を帯びるものは、水中に酸類の含まれている事を示す。

 なお、水中に空気を含む時はピッチングを起こすもので、その理由は空気中の酸素と鉄と化合して錆を生じ、錆の剥脱によりその痕跡を生じ、これがさらに腐食し漸次深き穴となるがためである。

 

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2021年7月25日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その52)水の分析(2)

(ハ)硬 度

 水は軟水と硬水の2種に区別せられ、石灰塩類および苦土塩類を多量に含むものを硬水と言い、これらの塩類を全く含有しないか、または含むとしてのその量が極めて少ないものを軟水という。

 硬水は、一時硬水と永久硬水に区別せらる。一時硬水とは水が炭酸ガスを含むために、炭酸石灰および炭酸マグネシアを溶解するものを言い、硫酸石灰、硫酸マグネシア(マグネシウム)、塩化物および硝酸塩類等を溶解するものを永久硬水と言う、硬水のこれら含有物の多寡を比較するため、硬度何度と称してその程度を表している。

 水の硬度は前述のごとく、石灰およびマグネシウムの酸性炭酸塩および硫酸塩によるものであるが、酸性炭酸塩は熱すると炭酸ガスを放出して炭酸塩となる。しかしてこれら石灰およびマグネシウムの炭酸塩は、ほとんど水に溶けない固体となるから、水を過熱することによって取り除くことができる。

 すなわち酸性炭酸塩による硬度は、水を熱して取り除くことのできる硬度であるから、これを一時硬度と称し、硫酸塩によるものは熱しても取り除くことができないから、これを永久硬度と呼んでいる。

 フランスでは、水1リットル中に10ミリグラムの炭酸石灰を含むものを、硬度1度と定め、ドイツでは、水中に10万分の1だけ石灰を溶解したものに相当したものを、硬度1度と称しているが、我が国ではドイツ式によっている。

 永久硬度は一時硬度を実際に測って、これを総硬度から引き去った残りである。

(二)缶用水としての可否

 分析の結果から、大体機関車用水として標準を定めるため、鉄道省では次のごとき判定標準を設けているが、もちろん大体の目安と見るべきである。現在「使用禁止」の判定を受けている水は、一般に硝酸の項で判定標準に触れているものである。

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備 考

1.総硬度とは酸化石灰および酸化苦土(くど:マグネシウム)の含有量なり
2.永久硬度とは総硬度中硫酸体を示す
3.缶石生成分とは固形物中のケイ酸、酸化鉄、礬土(ばんど:アルミナ)、硫酸、炭酸石灰および苦土の含有なり
4.沫泡アルカリ塩とは炭酸およびクロールソーダ類を言う
5.遊離酸またはアンモニアを痕跡以上含むものは不良とす
6.10万分の0.4以上硝酸を含むものは使用を禁止す(符号G)
7.やや不良以下のものを使用する場合は洗缶その他に注意するを要す
8.最不良のものは使用せざるを可とす

 各成分は10万分中グラムにて示す
 有機物はカメレオン消費量による

 

 

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2021年7月24日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その51)水の分析(1)

3.水の分析

 水は水素2原子と酸素1原子が化合してできたもので、H₂Oという分子式で示される。しかし水は物質を溶解する性質が非常に強いので、純粋の水を作ることは実験室でも容易なことでない。

 故に天然水として純粋なものは全く存在せず、必ず若干の不純物を含んでいる。水の分析とはこの不純物の量を測ることで、鉄道省においては主として研究所や用品試験所で分析している。

【分析表の見方】

 鉄道省缶用水の分析試験成績の一例を示すと、次表(60ページ)の通りであるが、これらの内容をいかに見るかに付き、概要を述べる事とする。

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(イ)固形分と缶石生成分

 固形分は、水を実際に煮詰めて残った固形分を100~105度の間で乾燥して測った量で、水の中に溶解されている不純物(蒸発しない)の合計である。塵埃や泥のごときものは予め濾過して試験に掛かるのであるから、かかるものは固形分としては計上されない。

 缶石生成分は分析成績中の石灰、苦土(マグネシウム)、炭酸、硫酸、ケイ酸、鉄および礬土(アルミナ)の量を合計したものである。缶石不生成分は固形分の量から缶石生成分の量を引き去った量である。

(ロ)有機物の測定

 有機物を直接に測定する方法が無いので一定の量の水に、綺麗な赤色をした過マンガン酸カリのごとく淡い溶液を徐々に加え、色が消失しなくなるまで加えた量を、有機物の量として表示している。故に実際の有機物の量ではなく、過マンガン酸カリの消費量で、カメレオン消費量とも言う。

 

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2021年7月23日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その50)水の分類(3)

(3)河 水

 一般に河水は鉱泉等に比較すると混濁しているので、固形分総量も多い様に思われるが実際ははるかに少量で、缶水用としては井戸水よりも、むしろ良好なる場合が多い。

 河水中に溶解物が少ないのは

(イ)通気が良いのでCO₂ が失われ酸性炭酸塩の分解を起こし、不溶性の炭酸塩に変じ沈殿する。

(ロ)アンモニアのごときは蒸発作用によって失われる。

(ハ)硫化水素、硫化物、第一鉄塩等は酸化によって除かれる。

等、自己清浄作用が働いて不純物の量が減ずる。

 河水の不純物の量は季節的に相違するが、一般に夏季において溶解物質の量は最大である。なお缶用水として河水を使用する場合、河口の近い所に取入れ口を置くときは、潮の満干により河水に海水の含まれることがあるから注意を要する。

(4)海 水

 海水は塩類を多量に溶解しているためにしょっぱいのであるが、その塩類を含む量は、海水の蒸発と河水の流入によってかなり相違する。海水の塩分含有量の一例を示すと、世界で最も有名な死海は22%、地中海3.9%、大西洋3.5%、バルチック海0.5%である。

 海水中の塩類中、大部分はNaCl(塩化ナトリウム)でMgCl₂、MgSO₄、CaSO₄ 等が3~10%位である。

 

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2021年7月22日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その49)水の分類(2)

(2)地下水

 気象水が地上に達すると、約3分の1は地表水となって河川を流れて海に入り、残り3分の2のうち大部分は蒸発し、一部は地中に浸み込んで地下水になると言われている。

 地下水の成分は、その付近の地質により非常に異なるが、その深浅によってもはなはだしく相違する。

 地表に近い部分は土地が多孔質で、空気の供給が比較的潤沢であるから、有機物は地中にある微生物の作用によって分解され、さらに酸化されやすいので炭酸、硝酸、亜硝酸ができるが、深所で空気の少ない時は、水および温度の関係で還元作用(腐敗)が起こり、アンモニア、硫化水素が作られると言われている。ふつう井戸水の固形分は10万分の5~10位である。

 地下水が地層の間を流れるとき、地層の可溶成分は水に溶け込み、特に水の温度の高い場合は溶解される量が多い。

 また炭酸ガスを多量に溶解する水(空気中の炭酸ガスも多少は溶け込むが、主として地中で有機物が分解酸化されて、炭酸ガスができ、これが空気中に逸散せざる場合、地下水に逢うと多量の炭酸ガスが水中に溶解する)が、石灰質の地層を流れると難溶性の炭酸石灰(石灰岩の主成分)が、可溶性の酸性炭酸石灰になって、水に溶け込む故、水の一時硬度は非常に増加する。

 一方、石灰岩中には水の流れ沿って巨大な洞窟を作り、これが鍾乳洞のできる原因である。

 地下水で鉱物質を特に多量に含んだものを鉱泉と言い、鉱泉の温度が人の体温以上になるとき温泉と称す。我が国の鉱泉および温泉の含有固形分の一例を挙げると、

 有馬池の坊温泉  10万分中  6570(日本最大)

 箱根塔の沢温泉  10万分中   59
 
 熱海大湯温泉   10万分中   924

 鳴 子 温 泉  10万分中   352

 温度は熱海の108度を最高として、鳴子の103度、登別97度等である。温泉が医療上効果のあるのは含有鉱物または温度のためのみではなく、温泉中に含まれるラジウム・エマナチオン(Radiumemanation)、すなわちラジウムより出る放射性の気体のためと言われている。

 

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2021年7月21日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その48)水の分類(1)

2.水の分類

 水が多少とも不純物を含んでいることは後述する通りであるが、この不純物の影響は、水を使用する目的によって十分考慮しなくてはならぬ。例えば飲料水として最も良いのは適当な鉱物質を溶解し、清冷透明であり軽快な味を有する地下水で、有害なるばい菌や汚物等を含まぬことである。

 しかして缶用水としては不純物の含まないものを理想とし、硬度の大なるを最も嫌うのであるが、飲料水の場合は10~20℃の硬度の水が味もよく、健康上にも良いと言われている。

 使用上から水を分類すると次のごとく大別できる。

 飲料水

 工業用水

 蒸留水

 缶用水は工業用水に属し、全て天然水である。天然水は存在する場所により非常にその性質を異にするが、次の4種に大別することができる。

(1)気象水

 雨、雪、露、霜、霧などは、海水または地表より発散した蒸気が凝結して再び水となるもので、天然の蒸留水とも称すべく、一見純粋のごとく考えられるが、実際はかなり多量の不純物を含むことが多い。

 ことに夕立のごとき雨水は不純物が多く、長く降り続いた後の雨水は比較的不純物が少ない。雨水は一般に河水よりもはるかに多い不純物を含んでいる。

 

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2021年7月20日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その47)缶用水一般

第5章 缶の用水

1.缶用水一般

 機関区における缶用水は、石炭と共に必要欠くべからざるものである。缶用水の良否が機関車の運転上、ならびに保守上、至大の影響あることは一般の認めるところであるが、用水に対する具体的処理の方法が経済的に且つ簡易に実行され難いため、水質不良に対する関心は、諦めの懸念に支配され、缶用水の研究がやや等閑視(軽視)されていることは遺憾な事である。

 満鉄等においては缶用水の研究に着手し、既に昭和3年頃より用水の缶外処理を実施し、相当の成績を挙げつつある由である。鉄道省においても最近、燃料油脂研究会において缶用水の問題を取り上げ研究すると共に、一般の缶用水に対する関心を喚起しているが、1日も早く水質改良の施設の実現を希望してやまぬ。

 水質改良による主なる利益として、次の各項を挙げることができる。

(1)洗缶回帰の延長により機関車の使用効率を高め、且つ洗缶に要する人工燃料、洗浄水等の節約ができる。

(2)缶石(湯垢、スケール)付着による伝熱効率の低下を防ぎ、燃料の節約ができる。しかして伝熱の低下を防止することは、機関車出力の低下の防止を意味する事になる。

(3)缶の修繕費は、機関車修繕費中の主要項目であるが、缶板、煙管控等の腐食、亀裂、漏洩を減じ、これが修繕費を節約し得る。

 

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2021年7月19日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その46)伝 熱

第4章 伝 熱

 火室内に投入せられた石炭の有する熱は前述のごとく、これをことごとく利用し得るのではなく、一部の熱は

 (1)燃焼ガスと共に大気中に捨てられる。

 (2)水分の蒸発に費やされる。

 (3)シンダーとなって飛散し、あるいは灰と共に未燃焼のまま捨てられる。

 (4)不完全燃焼により、十分熱量を発することなく捨てられる。

 (5)缶の表面より輻射によって失われる。

等の種々の原因により損失を生じ、これらを差し引いた残りの部分が、蒸気を作るのに利用し得る熱であって、第8図は各々の損失の割合を示す実績である。

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 火室内における熱ガスが缶板に触れるときは、熱ガスと缶板との間に薄い(厚さ0.06~0.05ミリ)ガス膜を生じ、同様に水の側にもまた、水と缶板との間に薄い水膜を生ずるものである。

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 第9図は缶板を通って熱の伝わって行く状態を示したもので、Aはガス膜、Bは缶板、Dは水膜で、a,b,c,d は温度の降下する状態を示したものである。

 すなわち最初ガス膜の外側 a の温度 T₁ のものが、ガス膜 Aを通過する間に T₂ に降下し、缶板を通過する間に T₂ より T₃ に降り、さらに水膜を通過する間に温度は T₃ より T₄ に下るから、結局 T₁ より T₄ まで降下するのであって、この間 T₁-T₄ は全く伝導によって熱が水に伝えられるまでの損失である。

 ガス膜はその厚さが極めて薄いのにかかわらず、伝熱抵抗が非常に大で、全体の抵抗の98%であって、これに比較すれば水膜の抵抗は極めて小さなものである。

 今、

 Q =Z時間の間に面積 S平方メートルを通って伝えられる熱量(カロリー)
 S =伝熱面積(平方メートル)
 Z =伝熱時間
 K₁ =ガス膜の温度差1度に付き、面積1平方メートルを通り1時間に通過する熱量(カロリー)
 K₂ =水膜の温度差1度に付き、面積1平方メートルを通り1時間に通過する熱量(カロリー)
 K₀ =缶板の面積1平方メートル、厚さ1メートルの板を通り温度差1度に付き、1時間に流れる熱量(カロリー)
 b =缶板の厚さ(ミリ)

とすれば、その逆数

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は、それぞれガス膜、缶板および水膜の伝熱抵抗の比で、全体の抵抗を Kc分の1 とおけば、

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で、Kc はガス膜および水膜の両側 d 間の温度差1度に付き、面積1平方メートルより1時間に通過する熱量(カロリー)である。よって缶水に伝えられる熱量 Qは、

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 缶において燃焼によって生じた熱量が缶水に伝わるには、火室内での輻射によるものが最も多く、伝導によるものこれに次ぐ。しかして内火室板では輻射と伝導の両者によって伝熱されるが、煙管では熱ガスの伝導によるもののみで、輻射によるものはほとんど無い。

 第8図は缶水や蒸気中に吸収される熱量と、各損失熱量との関係を燃焼率別に表した、C51およびC53形式機関車の実験による熱の釣合図で、燃焼率の高くなるに従って缶効率は低下するが、この主なる損失は何に起因するかを見るに、未燃炭損失(主としてシンダー損失)によるものが大部分で、可燃ガス損失その他によるものは比較的少ないことがよくわかる。

 

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2021年7月18日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その45)火焔の色と温度の関係

13.火焔の色と温度の関係

 焚口戸を開き火格子上の燃焼状態を見るに、石炭は種々の色の焔を発して燃えている。すなわち点火の際のごとく、火室内の温度が低く通風も弱いときは、わずかに赤味を帯びたる暗紅色を呈するも、全部燃え切ったときは暗桜色となり、通風を与え燃焼を盛んならしめるときは、ついに眩(まばゆ)き白熱状態を呈す。

 かように焔の色を異にするは、火室内の温度と石炭の燃焼状態によるもので、焔の色が多少黒味を帯びるのは、主として揮発分中の炭水化合物が不完全燃焼を成しつつあるがためで、従って火室内の温度も低く黒煙の噴出もはなはだしい。

 これに反し白熱状態を呈するのは、石炭がほとんど完全燃焼を成しつつある事を示し、従って火室内の温度は極めて高く、この状態の場合は既に大部分の揮発分は燃え尽くし、固定炭素が盛んに燃焼しつつあるのである。かように焔の色は燃焼状態と、その温度に関係するものであるから、焔の色により大体の燃焼温度を推定することができる。仏人ブュレー(Fourier)氏は焔の色により、その温度を次の10種に鑑別する方法を案出した。

 (1)ようやく識別し得る紅色 525 ℃

   (2)暗 紅 色 700 ℃

 (3)暗桜色を呈する紅色 800 ℃

 (4)桜色を呈する紅色 900 ℃

 (5)満 紅 色 1000 ℃

 (6)深 橙 色 1100 ℃

 (7)満 橙 色 1200 ℃

 (8)白 熱 1300 ℃

 (9)光輝ある白熱 1400 ℃

 (10)眩き白熱 1500 ℃ 

 

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2021年7月17日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その44)燃焼ガスの温度(2)

【 例 】

 下記成分の石炭を燃焼した時の温度を求めよ。

 ただし、過剰空気の量を60%とし、ガスの平均比熱を0.26、ガスの重量を18.8キロとす。

 炭 素  79.31 %
 水 素   6.71 %
 酸 素   7.06 %

【 解 】

P49_20210623170701

 よって

P50

 以上の例題でもわかる様に、計算上の温度は相当の過剰空気を考えても、なお1650度以上になるのであるが、実際石炭が火室内で燃焼するときの焔の温度は、石炭の種類その他の事情により一定するものではないが、大体1400度以下、最高1500度位で、1600度を超すことは極めて稀で、煙管に入るガスの温度はその燃焼温度、燃焼率、火室の広狭その他によって相違するが、大体800度前後である。

 火室内の温度は燃焼率に大なる関係を有し、燃焼率の増加に伴い漸次高くなる。これは燃焼率が増加すればシンダーの損失は大となり、且つ不完全燃焼等により石炭の実際の発生熱量も減少するが、その反対に過剰空気の量が減少し、且つ不完全燃焼等に基きガスの重量も減じ、燃焼による生成ガスの量が、石炭の発生熱量の減少割合以上に減ずるがためである。

 この見地よりゴス氏(William F M Goss)は、燃焼ガスの温度を燃焼率で表わす、次の様な実験式を導いた。

P50_20210623170801

 T =火室燃焼ガスの温度 (℃)
 B =燃焼率(キロ/平方メートル/時)

 

【 例 】

 ゴス氏の実験式を用い、燃焼率400、500および550キロの場合における、火室内の温度を求めよ。

【 解 】

 ゴス氏の式は T=975+B であるから

 燃焼率400キロの場合は T=975+400=1375 ℃

 燃焼率500キロの場合は T=975+500=1475 ℃

 燃焼率550キロの場合は T=975+550=1525 ℃

 

1312p49
1313p50

2021年7月16日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その43)燃焼ガスの温度(1)

12.燃焼ガスの温度

 燃焼ガスの温度は石炭の発熱量、燃焼によって生ずるガス、および灰分の重量ならびに比熱等を知れば、計算により求めることができる。

 燃焼の温度を計算するに当たり、燃焼によって生ずるガスの成分より求めるのは、非常に複雑であるばかりでなく、その結果は実際の温度と非常に相違したものになる。

P48cp

 その理由は、石炭は瞬間的に燃焼するものではなく、且つ不完全燃焼を成すこと、発生したる熱の一部は、直ちに輻射および伝導によって缶水に伝えられるがためである。それ故、燃焼温度は前表に示すガスの平均比熱により計算するのが、簡単で実用的である。

 燃焼ガス Wキロを摂氏1度上昇するに要する熱量は(W×ガスの平均比熱)カロリーであるから、石炭の発熱量が全部このガスを温めるのに費やされるものとすれば、燃焼ガスの温度 Tは次式にて表される。

P49

 T =燃焼ガスの温度(度)
 Cp=燃焼ガスの平均比熱
 W =石炭1キロの燃焼によって生ずるガスの重量(キロ)
 C =百分率で表わした石炭1キロ中の炭素の量
 H =百分率で表わした石炭1キロ中の水素の量
 S =百分率で表わした石炭1キロ中の硫黄の量
 w =百分率で表わした石炭1キロ中の水分の量

上式において硫黄と水分を省略すれば

P49_20210623093901

 

 

1312p48_20210623093501
1312p49

2021年7月15日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その42)黒煙の識別

11.黒煙の識別

 煙の色を表すには種々の方法があるが、次の5種に区別するのが最も普通である。

 (1)白色透明のガス
 (2)淡褐煙
 (3)褐灰煙
 (4)黒 煙
 (5)濃黒煙

 これらの色は観察者の判断によるもので、あいまいな点が多いから、リンゲルマン氏は次の4種に区別し、第7図のごとき碁盤目の黒線図と比較対照して、煙色の程度を識別する様にした(Ringelmann smoke chart)。

    無 煙 ---  白 紙

第1号 淡灰煙---黒線の太さ  1ミリ、黒線の間隔 9ミリ(20%黒相当)

第2号 濃灰煙---黒線の太さ  2.3ミリ、黒線の間隔 7.7ミリ(40%黒相当)

第3号 深濃灰煙---黒線の太さ  3.7ミリ、黒線の間隔 6.3ミリ(60%黒相当)

第4号 黒 煙---黒線の太さ  5.5ミリ、黒線の間隔 4.5ミリ(80%黒相当)

    深濃黒煙 --- 黒 紙

 我が国では第7図の様に、左右にそれぞれ白紙および黒紙を添え、左より順に第1号、第2号、第3号および第4号と呼んでいるが、白紙を第0号とし、以下順次1~4号と呼び、黒紙を第5号と呼ぶ事もある。

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 この比較紙は煤煙出口の付近に掲げ、これを50尺(16.4メートル)の距離から見て比較するのが適当である。

 

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2021年7月14日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その41)黒 煙

10.黒 煙

 燃焼の際の生成物として、空気中に飛散するガスは、目に見えると否とを問わず煙と言い、目に見えるものを特に黒煙また煤煙と言う。煙突から排出する黒煙中には酸素、窒素、炭素、水蒸気、炭酸ガス、一酸化炭素、亜硫酸ガス、炭化水素、灰、骸炭(コークス)および未燃焼炭等を含んでいる。

 煙に色を与えるのは主として遊離炭素であって、これに次ぐものは不完全燃焼の炭化水素である。煤煙が黒くなるのは多数の遊離炭素が存在するためで、炭化水素が未燃焼のときは青色を示し、また黄色なるは最も分解し易い炭化水素、すなわちコールタール等が逃げ出しつつあることを示すもので、青色または黄色は火室内の温度が特に低い場合に起こる現象である。

 総じて黒煙は揮発分中の炭化水素が、不完全燃焼をしていることを示すもので、空気の供給が不足する場合、および火室内の温度が低い場合に発生するもので、空気の供給が不足するときは炭化水素のうち、燃焼速度の速い水素が先に燃焼して遊離炭素を生じ、これが不完全燃焼または未燃焼状態で排出せられ、また火室内の温度が低い場合は、炭化水素が不完全燃焼を成すためである。

 遊離炭素は火室内の温度が低い場合は、直ちに多数集合して煤となる性質を有し、いったん煤となれば、もはやこれを再び燃焼せしめる事は極めて困難であって、煙突から排出されるガスの黒く見えるのは、実に多数の未燃焼炭素の粒子が存在するがためである。

 それゆえ無煙燃焼、すなわち黒煙を出さない様に燃焼せしめるには、火室内の温度を可及的高く保ち、十分な空気を供給し、遊離炭素が集合せぬ間に燃焼せしめる様にせねばならぬ。これがためには、石炭は可及的少量ずつ投入するのが理想的である。

 

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2021年7月13日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その40)シンダーによる損失

9.シンダーによる損失

 缶における石炭燃焼上、もっとも大なる損失がシンダー損失である事は、前述せる通りであるが、その内容に付いて述べる事とする。

 煉炭を使用する事ならびに石炭に撒水する事は、このシンダー損失の防止に起因するところが多い。

 シンダー損失は炭種により、機関車の形式等によっても一様でないが、煙室内通風力の大小に密接な関係がある。煙室内通風力の強弱は、単位時間当たりの蒸気消費量に支配される。

 すなわち蒸気消費量は、缶における蒸気発生量にほぼ等しいのであるから結局、燃焼率の大小に支配されるわけである。しかしながら同一燃焼率の場合は、蒸気締切の大きいほどシンダーの量は多い。また、蒸気締切の一定なる場合は、運転速度の高いほど多量である。

 発生したシンダーは、相当の発熱量を有する未燃炭で、その発熱量は使用石炭やその機関車の運転条件により一様ではないが、大体使用石炭発熱量の60~90%内外であり、その発生量は大体燃焼率に比例するとして見るときは、燃焼率550キロ/平方メートル/時の場合、使用石炭量の10~15%に達することが少なくない。

 しかしここに言うシンダー発生量とは、煙室内へ溜まったものだけの量であるが、研究所試験台における試験の場合には、さらに煙突中途に付設されたシンダー溜め内にも溜まるから、これを合すると15~20%にも達する。

 ただし煉炭使用の場合には、発生するシンダー量は極めて少なく、多くとも5%以下であり、且つその発熱量は問題とならないくらい低位なものである。

 シンダーの発生はかくのごとく相当の量に達するものであるが、さらに煙突よりスパークとして、あるいは極く小粒のシンダーとして噴出される量をも考えると、いっそう多量になるものと考えられる。

 第8図(52ページ)において、C51形式で燃焼率550キロ/平方メートル/時の場合を見るに、未燃炭損失として30%をやや越しており、C53形式で25%余りの値になっているが、この未燃炭損失の大部分はシンダー損失と見るべきである。

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2021年7月12日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その39)水分による損失

8.水分による損失

 石炭に撒水して焚火する事の利益は、シンダーとしての飛散を防止するからで、燃焼率の極めて低くシンダー損失の無い据付缶のごとき場合には、明らかに熱損失を来たすものである。

 すなわち、かかる水分は火室内で水蒸気となり、高い温度で煙突から逃げ去り、その熱量は火室内より奪い去るからである。また石炭中に含まれている水素も燃焼すると水分となり、水蒸気となって逃げて行くから、これも同様の熱損失となる。

 これを例題に付いて次に説明してみる。

【 例 】

 水素6%を含み、水分10%を含んだ石炭の発熱量を6000カロリーとし、煙突から逃げ出す熱ガス(含水蒸気)の温度を340度とすれば、水分による熱損失はいくばくとなるか。

【 解 】

 水素6%が酸素と化合して水分となる量は、H₂Oの分子式から(原子量 H=1、O=16)水素2に対し、酸素16が化合し、18の水を作る事になるから、水素の9倍に相当する水分ができる。

 すなわち6%の水素によって生ずる水分は 6%×9=54%となる。これに10%の水分を加えると、10%+54%=64%となり、1キロの石炭から640グラムの水分が生ずる事になる。

 この水分が340度の過熱蒸気となって煙突から逃げ去るわけで、340度の過熱蒸気1キロの全熱量は646カロリーであるから、石炭の投炭前の温度を10度とすれば、水分関係によって生ずる熱損失の合計は

 (646-10)×0.64=407カロリー

となる。故に発熱量6000カロリーの約6.8%に達する熱量を失うわけである。なおこの場合、石炭の燃焼効率を80%と仮定すると、実際火室内に生ずる発熱量は

 6000×0.8=4800カロリー

であるから、この4800カロリーに対する407カロリーは、約8.5%に相当する損失となる。

(注)なお、火室内に投入された水分の一部は、高温なる火室内炭火に触れて、水素と酸素とに分解され、その水素は燃焼して発熱し再び水となるが、分解するときに吸収した熱量と、燃焼によって生じた熱量とは等しいものであるから、火室内における、かかる化学変化による熱の損失はゼロである。

 

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2021年7月11日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その38)一酸化炭素による損失

7.一酸化炭素による損失

 一酸化炭素を生ずる原因は、空気の供給不足または不注意、不熟練なる焚火により、火室内の温度が比較的低いこと等によるものである。

 一酸化炭素となった場合の発熱量は、炭酸ガスとなった場合に比し、約3分の1で2473カロリー/キロである。もし焚火法を誤り、あるいは不注意のため供給空気が不足し、または火室内の温度が低下するときは、炭素の一部が不完全燃焼となって一酸化炭素となるばかりでなく、さらに炭化水素や遊離炭素等は未燃焼のまま煤煙として、いたずらに煙突から排出される。

 煙室内におけるガス中に1%(重量比)の一酸化炭素を有する時は、実に投入石炭の4%を損失する事になるから、仮に煙室内の3%の一酸化炭素を有するものとすれば、消費石炭の12%が空費せられる事になり、いかに不完全燃焼により石炭が不経済になるかがわかる。

 実績によると、焚火に注意すれば煙室内における一酸化炭素の量は、よく1%以下に保つことができると言われるも、燃焼率の増加に伴い、その量がある程度増加するのは止むを得ないことである。

 

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2021年7月10日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その37)不完全燃焼に基く損失

6.不完全燃焼に基く損失

 石炭の完全燃焼という語には広狭二様の意義がある。広義における石炭の完全燃焼とは、石炭中に含まれている可燃物の全部が完全に燃焼し、100%の発熱量を発揮することであり、不完全燃焼とは可燃物の一部が未燃焼、または半燃焼の状態にある事である。

 狭義における完全燃焼とは、主として炭素の燃焼のみに付いて考えたもので、炭素と酸素とが化合して炭酸ガス(CO2)となることを完全燃焼と称し、一酸化炭素(CO)となることを不完全燃焼と称する。

 一般に不完全燃焼と称せされるのは広義における不完全燃焼で、その主なるものは次のごとくである。
 
 (イ)黒煙として煙突から噴出される炭素

 (ロ)黒煙と共に煙突から噴出される一酸化炭素および炭化水素の一部

 (ハ)シンダーとして未燃のまま噴出されるもの

 (ニ)未燃まま灰箱へ落下するもの

 しかしてこれら各項は、いずれもせっかくの可燃物が、熱量を十分に発揮することなくして飛散する損失である。かくのごとく火室に投入された石炭は、その有する可燃物の全発熱量が発揮されるのではなく、その何%かは損失となり、実際に燃焼して有効に熱量を出すのはその残りの部分である。この石炭の有する全熱量と実際に燃焼して生じた熱量との比を、石炭の燃焼効率と称する。

 ふつう缶効率60%という事は、投入された石炭の発熱量と缶水や蒸気に伝熱された熱量の比が60%なる事で、これはさらに石炭の燃焼効率と缶の伝熱効率の二つに分けて考えるべきもので、缶効率はこれら両効率の相乗積に相当する。

 燃焼効率を低下させる主要なるものはシンダー損失、黒煙および一酸化炭素等の損失である。燃焼率の高くなるに伴って缶効率の低下するのは、この燃焼効率の低下するのが主因で、しかも燃焼効率低下の主因はシンダー損失である。

 灰箱中に未燃のまま落下するのは、強い通風が火床をあおり動揺させる結果、粉炭または燃焼に際して塊炭が崩壊し、その微細なものが、火床の隙間から半燃、または未燃状態で落下するもの、およびクリンカーとなるもので、全発熱量に対する割合は4%内外と称されている。

 一酸化炭素、黒煙等による損失に付いては、項をあらためて述べる事とする。

 

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2021年7月 9日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その36)石炭の発熱量(3)

【例 1】

 夕張炭は下記成分を有す。その発熱量を求めよ。

 炭素 79.31 %
 水素  6.71 %
 酸素  7.06 %
 硫黄  0.25 %
 水分  1.89 %

【 解 】

 (6)式により計算せんに、この場合には水分 wの量を求めねばならぬ。この水分は石炭が含んでいる水分と、燃焼する際生成する水分との和である。

 水素と酸素と化合して水となるには、水素2原子と酸素1原子とが化合し、水素の原子量は1、酸素の原子量は16であるから、化合後の水の分子量は(2×1
+1×16)=18 である。それ故、燃焼によって生ずる水の量は

P40_20210616133901

 よって全体の水分の量 w=1.89+9.95=11.84%

従って石炭の発熱量(W)は

P41_20210616134001

【例 2】

 次の石炭の発熱量を求めよ。

 揮発分  33 %
 固定炭素 50 %

【 解 】

 揮発分33%、固定炭素50%なる時は、

P41_20210616134002

 この比39.8に対する aの値は比例により求めれば81.6である。

 よって石炭の発熱量は(7)式により

 鉄道省研究所においては、発熱量算式として次式を提唱している。

P41_20210616134101

 W =石炭1キロの発熱量(カロリー/キロ)
 C =百分率で表わした固定炭素の量
 V =百分率で表わした揮発分の量
 w =百分率で表わした水分量

 a =骸炭性質による定数(次表)

P41_20210616134102

 

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2021年7月 8日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その35)石炭の発熱量(2)

 分析表により石炭の発熱量を推定する場合、硫黄、灰分および水分等の分量まで計算に入れる事もあるが、前に述べたごとく燃焼の際の化学変化は、極めて複雑なものであるから到底精確な値を得ることができなく、単に近似数を得るに過ぎないから、デューロン氏(Pierre Louis Dulong)は石炭中にある酸素は、全部石炭中の水素と化合して水となり多少の熱を生ずるも、この熱は石炭の分解に費やされる熱と差し引かれ、別に燃焼熱には関係がないものとし、単にその残りの水素と炭素とにより発熱量を計算すべきであると主張した。

 今、氏の説に従い発熱量の公式を求めるに、分析表中、炭素の量を C%、水素の量を H%、酸素の量を O%とすれば、炭素1キロが完全燃焼によって生ずる発熱量は8100カロリーであるから、C%の炭素が発生する熱量は、C÷100×8100=81C カロリーである。

 次に O%なる酸素が化合して水になるために要する水素の量は、石炭の燃焼に要する空気量のところで述べたごとく O÷8% であるから、実際燃焼に利用される水素の量は(H-O÷8)%で、水素1キロの発熱量は34180カロリーであるから、水素が燃焼して生ずる熱量は、

P39

 従って石炭1キロの発熱量は次式で表わされ、これをデューロンの公式という。

P39_20210616094401

 W =石炭1キロの発熱量(カロリー/キロ)
 C =百分率で表わした炭素量
 H =百分率で表わした水素量
 O =百分率で表わした酸素量

 上式は水素が燃焼して水になった場合の発熱量を示すものであるが、実際の場合は水蒸気の状態にあるから、水素の発熱量を29350カロリーとせねばならぬ。なお、硫黄および水分等の量を考えに入れた場合等を考慮すると、石炭の発熱量は(5)式の代わりに次式で表わすの妥当で、これをマツラー式(Mahler's method)として提唱されている。

P39_20210616094402

 W =石炭1キロの発熱量(カロリー/キロ)
 C =百分率で表わした炭素量
 H =百分率で表わした水素量
 O =百分率で表わした酸素量
 S =百分率で表わした硫黄量
 w =百分率で表わした水分量

 上式において硫黄の発熱量は小であるから、これを省略することがある。

 工業上では主として工業分析を使用するから、工業分析の結果より発熱量を計算することができれば非常に便利である。次式はゴータール氏公式(Goutal's method)の一例を示すものである。

P40

 W =石炭1キロの発熱量(カロリー/キロ)
 C =百分率で示した固定炭素の量
 V =百分率で示した揮発分の量
 
 a は(100×V)÷(C+V)の比により変化する常数にして、その値は次表のごとし。

P40cva

 

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2021年7月 7日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その34)石炭の発熱量(1)

5.石炭の発熱量

 普通に言う石炭の発熱量とは一定量、すなわち1キロの石炭を一定容器の中で完全燃焼せしめた時、発生する総熱量を言うもので、全く理想的燃焼によって発生する熱量を言うものであるから、実際石炭が火室内において発生する熱量は、いく分これより小である。

 石炭が燃焼する際発生する熱量は、その燃焼行程が一段に行われる場合も、また二段あるいは数段に行われる場合も、その到達する最後の状態が同一なる時は、いずれの場合も全く同一で、これをヘスの法則(Hess'law)と言う。

 例えば炭素が燃焼する際、最初一酸化炭素(CO)となり、さらに空気の供給を得て炭酸ガス(CO₂)になった時の発熱量は、炭素が最初から炭酸ガス(CO₂)になった時の発熱量と全く同一である。

 石炭の発熱量を測定するには、カロリー・メーター(calorimeter:熱量計)を用いるのが最も正確であるが、分析の結果に基づき理論的に計算する事もできる。カロリー・メーターで発熱量を測定するには、石炭を究めて微細な粉末と成し、これをカロリー・メーター内にて燃焼させ、その熱を水に吸収せしめ水の温度により熱量を求める。

 その分析表を基として計算するには石炭を炭素、水素、酸素、硫黄等の各元素に分析し、これらの各元素の発熱量を基として計算するのであるが、石炭中にはこれら各元素の化合物が存在し、燃焼の際、新たに化合物を生じて多量の熱を発生すると同時に、また化合物を分解するために多量の熱が費やされる等、極めて複雑な化学変化を起こし、しかもそれらの化合状態が今なお明らかでないから、例えば石炭中の成分をことごとく知り得たとしても、理論上正確な発熱量を求めることは困難で、ただ真の発熱量に近い値を推定するに過ぎないのである。

P38

 上表は石炭の主成分1キロの燃焼により発生する熱量を示すもので、水素およびメタン、エチレン中の水素が燃焼して水となった場合の発熱量を高位発熱量(またはグロス発熱量)と言い、水蒸気となる場合の発熱量を低位発熱量(またはネット発熱量)と言う。

 

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2021年7月 6日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その33)燃焼に必要な空気量(3)

【例】
 
 ある石炭を分析したるに炭素70%、水素6%、酸素8%なりしという。この石炭1キロを燃焼するに要する空気の量を求めよ。

 もし予熱器により空気の温度を摂氏80度として供給すれば、その容積は何ほどか。

【解】

 この例題では、C=70、H=6、O=8 であるから、空気の重量 Wは(3)式により

P35_20210609112001

 空気の容積は 0度、すなわち標準状態のとき

P35_20210609112101

 空気の温度が80度のときは(4)式によって

P36

 以上求めた空気量は全く理論上の値であって、実際石炭を火室内で燃焼せしめる場合には、さらに20~50%の過剰空気を供給せねば、完全な燃焼をさせることができない。

 過剰空気の量は石炭の種類および燃焼率によって相違し、揮発分の大なる石炭は多量の過剰空気を必要とする。実験によると燃料率を高めるに従い、過剰空気の量は漸次減少するものである。

 これは強き通風により火床が攪乱されるのを防止するため、火床を厚くし、そのうえ多量の石炭を燃焼するため、石炭1キロ当たりに対する空気の供給割合が、漸次減少するためである。

 これがため燃焼率が大となるに従い、供給空気量に不足を来たし、不完全燃焼により黒煙の量が増加するばかりでなく、石炭の使用量もまたいっそう増加するから、上り勾配等のごとく燃焼率大なる場合には、焚口等から相当な二次空気を補給することが必要である。

 過剰空気は燃焼上ある程度までは必要なものであるが、一面、火室内の温度を降下し、且つ過剰空気そのものを熱するため熱を浪費し、この高温の空気が燃焼ガスと共に煙突から排出せられる事になるから、著しく石炭の消費量を増加することになる故、過大な過剰空気の供給は避けねばならぬ。

P36_20210609112201

 実際、運転試験場における過剰空気は、前表のごとくである。

 

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2021年7月 5日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その32)燃焼に必要な空気量(2)

(3)硫黄を燃焼せしめるに要する空気量

 硫黄が燃焼するときは亜硫酸ガス(SO₂)となり、硫黄の原子量は32であるから、前に述べたのと同様の理由により、硫黄1キロを燃焼せしめるに要する酸素の量は 16×2÷32=1キロで、また酸素1キロを得るに要する空気量は4.35キロであるから、硫黄1キロを燃焼せしめるに要する空気の量は4.35キロとなる。

 石炭中にある酸素は、既に水素と化合して水になっているものと考えられ、水素1キロを燃焼させるに要する酸素の量は8キロであるから、石炭中の酸素 Oキロが全部水になるために要する水素の量は O×1÷8キロである。それゆえ石炭中の水素 Hキロのうち、実際に燃焼する量は(H-O÷8)キロである。

 以上により石炭1キロ中に含有する炭素量を C%、水素の量を H%、硫黄の量を S%とすれば、石炭1キロが燃焼するに要する空気の重量 Wキロは、次式により計算することができる。

P34

 硫黄に対する空気の量は考えないのが普通であるから、これを省略すると

P34_20210609103901

 W=石炭1キロを燃焼せしめるに要する空気の重量(キロ)

 C=百分率で表わした炭素量

 H=百分率で表わした水素量

 O=百分率で表わした酸素量

 以上は石炭の燃焼による空気の量を重量で求めたものであるが、これを容積で表わせば摂氏ゼロ度、圧力大気圧のときの空気1キロの容積は 0.7734立方メートルであるから、これに上式を乗じ Wキロの空気容積 V(立方メートル)は

 V=W×0.7734

 故に(2)式から

P35

 この式で求めた空気の容積は圧力大気圧、温度 0度の場合、すなわち標準状態における時の容積であるから、ある任意の温度 T度におけるときの空気量 VT(立法メートル)は、次式により換算せねばならぬ。

P35_20210609104101

 VT=空気の温度が T度の時、石炭1キロを燃焼させるに要する空気の容積(立法メートル)

 V=石炭1キロを燃焼させるに要する標準状態、すなわち 0度の空気の容積(立法メートル)

 T=空気の温度(度)

 

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2021年7月 4日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その31)燃焼に必要な空気量(1)

4.燃焼に必要な空気量

 石炭は炭素、水素、酸素および硫黄等より成っているものであるが、燃焼を考える場合には、石炭中の酸素は、ことごとく水素と化合し水の状態となるものと考え、残りの炭素、水素および硫黄等に付いて考えれば良い。しかし硫黄に付いては、これを考えに入れる場合とさらざる場合とがあるが、考えに入れないのが普通である。

(1)炭素が燃焼するに要する空気量

 炭素が完全燃焼をする時は次の式で示すがごとく、炭素の1原子と酸素2原子とが化合して炭酸ガス(CO₂)となる。炭素(C)の原子量は12、酸素(O)の原子量は16であるから

  C+O₂=CO₂

  12  32  44        原子量

  1:2.67:3.67 炭素の重量を1とした時の比

 この式で示すがごとく、12キロの炭素を燃焼させるには酸素32キロを要し、従って1キロの炭素を燃焼せしめるには 32÷12=2.67キロの酸素を要するのである。

 空気は酸素23%、窒素77%(重量比)の気体であるから、酸素1キロを得る空気の重量は 100÷23=4.35キロである。従って炭素1キロを燃焼させるに要する空気の重量W₁は

 W₁=2.67×4.35=11.60キロ

(2)水素を燃焼せしめるに要する空気量

 水素が燃焼する場合は、次の式で示すがごとく、水素2原子と酸素1原子とが化合するのであるから

 H₂+O=H₂O

  2   16  18  原子量

  1: 8: 9   水素の重量を1とした時の比

 水素1キロが燃焼するに要する酸素の量は 16÷2=8キロである。従って水素1キロの燃焼に要する空気の重量W₂は

 W₂=8×4.35=34.80キロ

 

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2021年7月 3日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その30)石炭の燃焼

3.石炭の燃焼

 火室内に投入せられた石炭は、約370度に達したとき揮発分が蒸発を始め、410度(瀝青炭の場合)に達したとき固定炭素が燃焼を始め、不完全燃焼のときは一酸化炭素(CO)、完全燃焼のときは炭酸ガス(CO₂)となる。

 揮発分中の炭水化合物のうちアセチレン(C₂H₂)は483度、オレフィアントガス(C₂H₄)は550度、沼気(CH₄)は650度に達したとき、水素と炭素に分解せられ、燃焼速度の大なる水素がまず酸素と化合して水となり、遊離炭素を生じ、この遊離炭素は酸素と化合して固定炭素の場合と同様、燃焼状態により一酸化炭素または炭酸ガスとなる。

 石炭が完全燃焼を成すときは固定炭素も、また炭水化合物も共に2200度以上に達する能力を有するものであるが、実際石炭が火室内で燃焼する場合は不完全燃焼、過剰空気および輻射等のため、その温度は非常に低く最高1500~1600度、平均1200度位にして、煙管に入る時の温度は大体800~1000度前後である。

 揮発分を完全燃焼させることは極めて困難で、その理由は

(1)揮発分中の可燃物と空気とを完全に混合させることができない事。

(2)ガスの火室内に止まる時間が極めて短い事。

(3)燃焼に必要な温度を燃料の各部に等しく与えることが不可能な事。

等である。

 さらにこれを詳しく説明せんに、揮発分中の可燃物と空気とが完全に混合しないと、空気の供給は部分的に過不足を生じ、ある部分は過剰空気を有するに反し、他の部分は不足を来たし、不完全燃焼のまま煙管に入ってしまう結果となるためである。

 それ故、揮発分を完全に燃焼させるには、理論上必要とする空気量以上に供給し、空気とガスが十分に混じり合う様にせねばならぬ。理論上必要とする以上の空気を過剰空気といい、過剰空気を供給すれば火室内の温度を降下せしめ、しかも石炭から発した揮発分が煙管に入るまでの時間は極めて短く、この短時間の間に良く空気と混合し、燃え尽くさしめるということは極めて困難な事で、燃焼率の大となるに従いガスの発生量が増加するから、いっそう困難となる。

 また各部の温度が不均一であると、温度の低い部分が不完全燃焼を起こすため、これまた損失を免れない。

 揮発分の燃焼は火室の容積と密接な関係を有し、良く燃焼させるにはその容積を大ならしめ、ガスの火室内を通過するに要する時間を長くすると共に、空気との混合を良好ならしめ、火室内の温度を高く保ち、火格子より適度の空気量を供給するのはもちろん、なお必要の場合は焚口より適当の二次空気を補給し、揮発分の燃焼を助けることが必要である。

 

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2021年7月 2日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その29)燃焼に必要な化学(2)

(4)分子量および原子量

 分子の絶対重量を測ることは困難であるが、アボガドロー氏の仮説(Avogadro's law)によると、気体では温度と圧力とが等しければ、同一体積中には同数の分子を含んでいるから、任意の気体分子の重量を標準とし、同温度同圧力の下における気体の比重を測り、気体分子の相対的重量を知ることができる。その標準として酸素の一分子の重量を32と定め、これに比較して定めた他の分子の重量を、その物質の分子量という。

 分子の絶対重量が求められない以上は、原子の絶対重量もまた求められないが、比較の標準として酸素原子の重量を16と定め、これに比較して定めた原子の重量を原子量という。

(5)化学式

 水を分解すると酸素と水素の2元素に分かれ、生じたる水素の容積は常に酸素の容積の2倍である。逆に水素の2容積と酸素1容積とを化合させると水となる。これにより水の1分子は、水素2原子と酸素1原子とから成っている事がわかる。

 よって水素を H、酸素を O なる記号で表し、原子の数を記号の右下に付記すれば、水の分子は H₂O なる式で表され、かようにして元素の記号を用いて、物質の組成とその1分子量とを表す式を分子式と言い、水素と酸素と化合して水となる変化を次のごとき式で表わし、この式を化学方程式と言う。

P30

 この式は、水素2原子と酸素1原子と化合して、水となる事を示すのみならず、化学変化による物質の重量の割合および変化の際、重量に増減なき事をも示すもので、酸素と水素と化合して水となるには、必ず水素2原子と酸素1原子なる事を要し、水素の1原子量は1,酸素の1原子量は16であるから、水素2原子と酸素1原子と化合して生じた水の1分子量は、

(1×2+16)=18 であることを示す。

P31

 次式は、石炭が燃焼する際、空気中の酸素との化合を示す方程式である。

 C+O=CO    炭素と酸素と化合して一酸化炭素を生ず

 C+O₂=CO₂   炭素と酸素と化合して炭酸ガスを生ず

 CO+O=CO₂   一酸化炭素と酸素と化合して炭酸ガスを生ず

 S+O₂=SO₂   硫黄と酸素と化合して亜硫酸ガスを生ず

 CH₄+2O₂=CO₂+2H₂O       沼気(メタンガス)と酸素と化合して炭酸ガスと水を生ず 

 C₂H₄+3O₂=2CO₂+2H₂O   オレフィアントガス(エチレンガス)と酸素とが化合して炭酸ガスと水を生ず

 

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2021年7月 1日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その28)燃焼に必要な化学(1)

2.燃焼に必要な化学

(1)化合と分解

 2種以上の物質が結合して、性質の全く異なる新しい物質を生ずる化学変化を化合と言い、これと反対に一つの物質が消失して、2種以上の新しい物質を生ずる変化を分解と言う。

 石炭が燃焼する際、水素が空気中の酸素と結合して水を作るごときは化合で、これと反対に水を酸素と水素に分けるのは分解である。

(2)元 素

 全ての物質を種々の方法により分解していけば、ついには如何なる方法をもってするも、もはやそれ以上に分解する事のできない物質に到着するもので、この分解する事のできない最後の物質を元素という。

 今日発見されている元素の数はわずかに90足らずで、全ての物体はこれら少数の元素の単体または化合物、あるいはそれらの化合物の混合物である。元素はこれを金属元素と非金属元素とに分かたれ、金、銀、鉄、錫、鉛、亜鉛、ニッケル等のごきは金属元素にして、酸素、窒素、水素等のごときは非金属元素である。

(3)分子および原子

 元素であると、また化合物であるとを問わず、全ての物質は極めて微細な小粒子からなり、この小粒子を分子という。機械的には物質は分子以上に分かつ事ができなく、同一物質の分子は、形状大小重量等全ての性質が相等しく、物質の性質はその分子の性質と全く同じである。しかして物質が異なれば分子の形状、大きさ重量等の異なるのはもちろんである。

 次に分子をその実質の変化を顧みないで、さらにこれを細分すると、もはやこれ以上分かつ事のできない微粒となり、これを原子と言う。

 元素の分子は同種の原子より成り、化合物の分子は異種の原子より成り、原子は常にそれ自身独立して存在することができなく、必ず分子を組成して存在するものである。例えば酸素の分子は酸素原子2個、水素の分子は水素原子2個から成り、また水の分子は水素原子2個と酸素原子1個とより成っている。

 かように物質は分子より成り、分子はさらに原子より成るものであるという説を、分子説および原子説と言う。

 

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