機関車工学:中巻(その258)汽缶の支柱:サイドステー
【 「サイド・ステー」(Side Stay) 】
第 1360図は「サイド・ステー」の一般の形状を示すものにして、その両端は「ファイア・ボックス」及び「シェル」に螺ぢ込み、頭部を鋲形に締めたるものなり。「サイド・ステー」の頭部を鋲形に形成するは、いく分その支持力を増加することを得べし言えども、完全なる鋲形を形成するは工作上困難なるのみならず、過度にその頭部を鎚撃するときは「ステー」及び板の螺旋山を損害するの恐れあり。
また時としては「ステー」を圧迫短縮し板に凹形を呈せしめこれを損傷せしむることあるべし。故に「ステー」の頭部を完全に形成するは却って害ありて利少なきものなれば、通常「スナップ」を用ひずして単に陣笠形に形成し、板と「ステー」との取付を堅牢ならしめ蒸気の漏洩を防ぐに止むるを良とす。
けだし「サイド・プレート」は缶水欠乏のために焼損するの恐れ少なきものなれば、「サイド・ステー」はその螺旋山の支持力に充分依頼し得べく、「クラウン・ステー」のごとく頭の大なるを要することなし。また応急の修理に際しては第 1361図に示すがごとき頭なき「ステー」を用ふることあり。
機関車における「ステー」の取替には汽缶を取除かざる場合あるをもって、一時この種の「ステー」を用ふること多し。この「ステー」はその両端を中空となし、これを螺ぢ込みたる後その孔を押し広げ、もって気密を保たしむるものとす。
「サイド・ステー」には「テル・テール・ホール」(第 1360図の4)と称する小孔を穿つを例とす。この孔は「ステー」の切断せるに当りて蒸気を噴出せしむるために設けたる通路にして、これにより当局者を警戒するの用に供す。孔の直径は 8分の1" ないし 16分の3" にして、その深さは板の厚さを超へて缶内 2分の1" に達するを常とす。けだし「ステー」の折損切断する個所は概ね「シェル」に接近せる部分なるをもって、「ファイア・ボックス」側にはこの孔を備へざることあり。
銅製「ファイア・ボックス」には通常銅製「ステー」を用ひ、鋼製「ファイア・ボックス」には鉄製「ステー」を用ふるを例とす。その直径はいずれも 8分の7" ないし1と 8分の1" にして、「ステー」と「ステー」との距間は蒸気の圧力 175ポンド以下にて約4インチとし、175ポンド以上にては約3インチ 4分の3 となすを適当とす。銅製「ステー」は伝熱力大なるの利あるのみならず、鉄に比しその質柔軟なるをもって良く屈曲作用に堪ゆるの益あるものなれども、「シェル」の鋼板と接する部分においては電気分解作用を受けその局部腐蝕せらるるの害あり。
英国「ストーン」会社において発明せる撓屈性「ステー」は青銅製にして、第 1362及び 1363図に示すがごとく「ステー」を竪に4個所において切り欠ぎもって撓屈に便ならしむ。この「ステー」は実地使用の結果、普通のものに比すればその生命長きことを証したり。「ファイア・ボックス」の膨張収縮はなはだしき個所に用ふればその効能最も著し。
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