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2024年2月の記事

2024年2月27日 (火)

機関車工学:中巻(その239)鋲継目:継目の効率(1)

【 継目の効率(efficiency) 】

 この効率は継目の強さと、継目なき場合における強さとを比較したる率にして、これによって継目の強さ加減を鑑定するものとす。この率は前記の表に掲げたる鋲のせん断力、鋲及び板の圧砕力、または継目における鋲の穴を引去りたる板の抗張力の三者と、その穴を引去らざる板の抗張力との比にして計算上これを求むるものとす。

 実験に徴するときは継目の強さは、板と板との合せ目における摩擦のため実際計算せるものよりもはるかに大なるものなり。しかれどもこの摩擦は汽缶を製作したる当時において最も強く、多年使用中は自然減少するを免れざるものなれば、これを効率計算中に計上せざるを安全とす。

 しかして継目の効率を見出すには、鋲のせん断力、板の抗張力及び、板及び鋲の圧砕力の三者を計算し、その最も弱きものと穴なき1「ピッチ」の板の抗張力との比を算出するを要す。

 汽缶用鋼板の抗張力は板の種類によって多少異なりと言えども、1平方インチに付き 25トンないし 28トンと見なすべく、鋼鋲のせん断力はそのおよそ 5分の4 と仮定するを適当とす。また板及び「リベット」の圧砕力は実験上非常の差違あるものにして、時として1平方インチに付き 12万ポンドを上ることあり。また時として 10万ポンドを下ることあり。今これらの力を安全なる側に計量し左のごとく仮定すべし。

   f t = 55000 ポンド

   f s = 45000 ポンド

   f c = 95000 ポンド

 次に掲ぐる6例においては継目の効率の比較に便なるがために、総て缶板の厚さ t を 2分の1 インチとし、鋲の直径 d を 8分の7 インチとし、鋲孔の直径 d₁ を 0.91 インチとなし効率を見出すこと左のごとし。

 

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2024年2月25日 (日)

機関車工学:中巻(その238)鋲継目:三鋲式バットジョイント

【 三鋲式「バット・ジョイント」 】

 目板2枚を有する「バット・ジョイント」における鋲は、二重のせん断力によって抵抗せらるるをもって、前記のごとく「ラップ・ジョイント」と同一の計算によってその「ピッチ」を算定するときは、鋲のせん断力は「ラップ・ジョイント」の場合に比して2倍となると言えども、板の抗張力は「ラップ・ジョイント」の場合と異なる事なきをもって、両者の力に大なる不平均を来すべし。

1278

 これを平均せんには第 1278図のごとく目板の一枚を延長して、鋲の列をさらに一列増加するを要すべし。この方法によるときは外側における鋲のせん断力は内側における板の抗張力を助くる事となり、「バット・ジョイント」における「ピッチ」を増加せずして継目の効率を増加することを得べし。左に陳述せる効率の計算においてその理自ら明かなるべし。

 

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2024年2月23日 (金)

機関車工学:中巻(その237)鋲継目:目板の厚さ

【 目板の厚さ 】

 1枚の目板を有する「バット・ジョイント」においては目板の厚さは缶板の厚さと等しきを要すべく、また2枚の目板を有する場合においては目板の厚さは缶板の厚さの 2分の1 に相当すべき理なるも、薄き目板は「コーキング」を施すに不便なるをもって、外部の目板の厚さを 0.85t となし内部の目板の厚さを 0.75t となすべし。

 例へば缶板の厚さが

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なるときは、第 1272及び 1277図において

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1277
P502_20240220071601

 ただし実際は主板と同一厚さの板を用ふるもの多し。

 

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2024年2月22日 (木)

機関車工学:中巻(その236)鋲継目:複鋲式バットジョイントにおける鋲の心距

【 複鋲式「バット・ジョイント」における鋲の心距(pitch) 】

1276
1277

 第 1276図のごとき1枚の目板を有するものにあっては、前と同理により「ラップ・ジョイント」の場合と全く同一なるべく、また第 1277図のごとく2枚の目板を有するものにありては

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なるべしと言えども、これまた前述の理により「ラップ・ジョイント」の場合に準ずるを例とす。ただし多少「ピッチ」を増大するも妨なし。

 

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2024年2月21日 (水)

機関車工学:中巻(その235)鋲継目:単鋲式バットジョイントにおける鋲の心距

【 単鋲式「バット・ジョイント」における鋲の心距(pitch) 】

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 第 1271図に示すがごとき目板1枚を有する「バット・ジョイント」における鋲の配置は、単鋲式「ラップ・ジョイント」の場合と全く相同じきものなり。

1272_20240218165901

 また第 1272図に示すがごとき缶の内外に目板を有するものにあっては、鋲は二重のせん断力によって抵抗せらるるをもって

P501_20240218165901

なるべしと言えども、この計算によるときは p の価大に失して堅牢なる「コーキング」を施すこと困難なるべし。故にこの場合における鋲の配置は「ラップ・ジョイント」の場合に準ずるを例とす。ただし多少心距(pitch)を増大するも妨なし。

 

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2024年2月20日 (火)

機関車工学:中巻(その234)鋲継目:複鋲式ラップジョイントにおける鋲の心距

【 複鋲式「ラップ・ジョイント」における鋲の心距(pitch) 】

 複鋲式の場合においては鋲が2列となりて併列し、せん断力はあたかも単鋲式の場合に比して倍加せるをもって前例に準じ左式を得べし。

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 例えば前例のごとく t が

P500_20240218161402

なるときは、d₁ は 0.91 なるをもって

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 斯く算出したる心距(pitch)は単鋲式の場合に比すればはるかに大にして、「コーキング」をなすに不便なるをもってこれを多少縮少するを要すべし。すなわちこの場合においては P = 3” となすを適当とす。

 第 66表はこの公式に多少の斟酌を加へ実地適当なる割合を示す。

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P50066

 しかして各鋲列の中心間の間隔 c は d₁ の2倍以内となすべく、対角の心距(pitch)P₁ は単鋲式における心距(pitch)とほぼ同一となすを普通とす。

 

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2024年2月19日 (月)

機関車工学:中巻(その233)鋲継目:単鋲式ラップジョイントにおける鋲の心距

【 単鋲式「ラップ・ジョイント」における鋲の心距(pitch)(P) 】

 鋲と鋲との距間における板の広さは心距(pitch)P より鋲孔の直径 d₁ を引去りたるもの、すなわち p - d₁ なるをもって、この距間における板の断面積は (p - d₁)t にして

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なるべし。故に前例と同じくこの力が鋲のせん断力に等しきものとせば、

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 f s は普通 f t よりも小なるものなれども、継目における板の抗張力は穿孔の方法によって大にその強さを殺減せらるるものなれば、「ポンチ」にて孔を打抜きたる板における f t は f s よりも小なることあり。錘にて完全に穿孔したる場合には f t は f s よりも2割方強きものとす。故に錘にて穿孔したる場合を採り計算せんに

P499_20240218101201

なるべく、また第(161)式により

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なるをもって P は左のごとく算出せらるべし。

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 例へば t が

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なるときは第 64表により d₁ は 0.91 なるをもって

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P499_20240218102001

 単鋲式「ラップ・ジョイント」における鋲の心距(pitch)はこの計算法によって算定すべしと言えども、斯く算出したる p は少しく小に過ぎ「スナップ」の操縦不便なることあり。すなわちこの場合においては

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となすを良とす。第 65表はこれらを斟酌して実地適当なる割合を示す。

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P49965

 

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2024年2月15日 (木)

機関車工学:中巻(その232)鋲継目:鋲の直径

【 鋲の直径 】

 計算上鋲の直径を算出せんに、鋲の強さは継目における缶板の強さと同等のものと仮定するを要すべし。今、

  t  を缶板の厚さ(インチ)

  d  を鋲の直径(インチ)

  f t  を鋼板の抗張力(1平方インチに付きポンド)

  f c  を鋼板または鋲の圧砕力(1平方インチに付きポンド)

  f s  を鋲のせん断力(1平方インチに付きポンド)

と仮定すべし。

1270
1271

 第 1270図のごとき単鋲式「ラップ・ジョイント」、または第 1271図のごとき単鋲式「バット・ジョイント」においては、鋲が単一のせん断を受くるをもってその抵抗力は

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なり。また板と鋲と相圧迫し、板または鋲がこれに抵抗する力は d t f c なるべし。

 しかして継目の強さが最大ならんことを欲せば、この二力相等しきを要するものなり。すなわち


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 また第1272図のごとき単鋲式「バット・ジョイント」においては、鋲が上下において二重のせん断力によって抵抗せらるるをもって、その抵抗力はあたかも倍加せらるべし。故に前と同理により

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 鋼の圧砕力 f c の価は精確にこれを計量する事あたわずと言えども、通常せん断力 f s のおよそ2倍に等しきものと仮定せられたり。故に前例において f c = 2 f s とせば、第 1270および 1271図の場合においては d = 2.54 t となり、第 1272図の場合においては d = 1.27 t となるべし。

 斯のごとく鋲の直径は計算上継目の種類によって異なるを見ると言えども、実地工作上鋲の直径は缶板の厚さに応じて継目の締結に適当なるを要し、大に失すべからず。また小に失すべからず。

 しかして実地工作上より定むる鋲の直径は、普通第 1270及び 1271図の場合においては 2.54 t よりも小にして、第 1272図の場合においては 1.27 t よりも大なり。その結果前者においては比較的せん断力を減少して圧砕力に余裕を存し、後者においては比較的圧砕力を減少してせん断力に余裕を存するに至る。故に実地上の制限は通常計算によりて得べき継目の強さを殺減するを免れず。

 板の厚さに対する鋲の直径は人々の経験によって多少の差ありと言えども、通常単鋲式、複鋲式、あるいは「ラップ・ジョイント」「バット・ジョイント」等、継目の種類いかんを問はず t と d との関係は大よそ左の公式によって定むるを適当とす。

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 鋲の孔径は鋲の径よりいく分か大なるを要するものにして、鋲は締結の際その孔内に充実せらるるをもって、実際鋲の直径は締結の後は前掲の寸法よりもいく分増大せらるるものなり。この孔径 d₁ は通常鋲の直径よりも 100分の3 ないし 5 だけ大なるを良とす。これを公式にて表はすときは左のごとし。

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 第 64表は(160)及び(161)式を参酌して t d 及び d₁ の実地適当なる寸法を示す。

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2024年2月14日 (水)

機関車工学:中巻(その231)鋲継目:鋲の継目

【 鋲の継目(Rivetted Joint) 】

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 前述のごとく「バレル」その他円周の継目は、第 1266図(a)のごとく単鋲式「ラップ・ジョイント」となすもの多けれども、大形なる汽缶には(b)のごとく複鋲式「ラップ・ジョイント」となすもの多し。また水平の継目は複鋲式または三鋲式にして(b)のごとく「ラップ・ジョイント」となすものあり。(c) (d)または(e)のごとく「バット・ジョイント」となすものあり。継目は汽缶の最も虚弱なる部分なるをもって、水平の継目はこれを一直線内に置かざるを良とす。また水中に浸さるるときはその合せ目より腐食し始むるものなれば、これを汽缶の上部水面上に置くを良とす。

 継目の毀損分離を来す原因種々あり。今これを左に列記すべし。

 第1
 鋲の穴より板の縁端に至る部分、すなわち第 1267図に示せる a が狭小に過ぐるときは該部は亀裂して図に示せる顕象を来すべし。

1267

 板の縁端は汽缶製造の後「コーキング」を施し蒸気の漏洩を防ぐを要するものなれば、「ラップ」a が広きに失するときは板の弾力によって堅牢なる「コーキング」を加工する事あたわざるものなり。故に a の広さは強さにおいて充分なるを要すると同時に、また広きに失すべからざるものとす。実験に徴すれば a は鋲の直径の1倍半以内となすを要すべし。

 第2
 板の厚さと鋲の直径とが強さにおいて相平均せざるときは、第 1268図の(a)のごとく板あるいは鋲の圧損することあり。または(b)のごとく鋲のせん断せらるることあるべし。

1268

 第3
 鋲と鋲との心距(pitch)、すなわち第 1269図に示せる p が狭きに失するときは、板は図のごとくその中心に沿ふて亀裂することあるべし。

1269

 鋲と鋲との距間における板の強さと鋲の強さとはほぼ同一なるを要すべしと言えども、狭きに失するときは工作上「スナップ」の操縦に不便なるべく、またその距間広きに失するときは板の弾力によって堅牢なる「コーキング」を施すこと困難にして、蒸気の漏洩を防ぐ事あたわざるべし。

 鋲の継目は計算上その強さを出来得る限り増大するを要すべしと言えども、前述のごとく実地工作上種々の制限ありてもっぱら計算による事あたわざる場合少なからず。

 

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2024年2月13日 (火)

機関車工学:中巻(その230)鋲継目:汽缶の強さ

第5章 鋲継目(Rivetted Joint)

【 汽缶の強さ 】

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1265

 第 1264及び 1265図において、D を「バレル」の直径とし P を蒸気の圧力(1平方インチに付きポンド)とし、円周のある一点 a または b において缶板が蒸気の圧力に抵抗する力 f を見出さんに、P は直径 a b の両側において相反して a b に直角なる矢の方向に働くものと仮定することを得べし。故に「バレル」が a 及び b の両点において受くる総圧力は D × p にして、缶板が a または b の一点1インチの長さにおいて抵抗すべき力は、その 2分の1

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なること明かなり。また蒸気の圧力が汽缶の両端を圧し、缶板がその円周の一点において抵抗すべき力 f を見出さんに、蒸気は第 1265図のごとく「バレル」の両端の円面を圧し、相反してこれに直角なる矢の方向に働くべし。しかして各円面の面積は

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なるをもって、その総圧力は

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なること明かなり。しかるにこの力は円周の全長 π D をもって抵抗せらるるものなれば、円周のある一点1インチの長さにおいて抵抗する力は

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なり。すなわちこの価は前記 a または b における抵抗力の 2分の1 に相当するをもって、「バレル」が水平の方向に抵抗する力は円周の方向に抵抗する力の 2分の1 なることを知るべし。

 「バレル」が円周の方向に受くる圧力はその水平の継目(joint)をもって抵抗せられ、その水平の方向に受くる圧力は円周の継目をもって抵抗せらるるものなれば、水平の継目は円周の継目に比すれば比較的堅牢なるを要すべし。故にふつう水平の継目は複鋲式にして、円周の継目は単鋲式となすもの多し。大形なる汽缶においては水平の継目を三鋲式となし、円周の継目を複鋲式となすを例とす。

 

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2024年2月12日 (月)

機関車工学:中巻(その229)汽缶の構造:汽缶の実例

【 汽缶の実例 】

 汽缶発達の状況に就いては上巻第2編第2章に述べたるもって、ここにこれを略して単に数種の実例を示すに止むべし。第 1243ないし 1254図は本邦機関車に属する汽缶の実例にして、第 1255ないし 1261図は米国機関車に属するものの実例とす。

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 また 1262図及び 1263図はドイツ機関車に属するものの一例示す。

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 「ファイア・ボックス」の下部は従来機関車の構造上、車輪の間に挟まりその幅を縮少せらるるの例なりしが、近来は機関車の構造改良せられこれを拡張して、いわゆる大幅「ファイア・ボックス」を使用するもの漸次多きを加へたり。米国のごときはほとんどこれを基本の形式となすに至れり。

 

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2024年2月10日 (土)

機関車工学:中巻(その228)汽缶の構造:汽缶の種類

【 汽缶の種類 】

 「バレル」は汽缶の胴体にして普通3枚の銅板より成り、その短きものは時として2枚をもって製せらるることあり。その構造に三種あり。その1は第 1243ないし 1245図のごとく「バレル」の直径を三段に分ち、あたかも望遠鏡の形をなするものにして最も広く用ひらる。その2は「バレル」の前後2筒を同一の直径となし中間の1筒を一段小さくなすもの。その3は「バレル」の全径を通じて同一の直径となすものこれなり。

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 「ファイア・ボックス・シェル」には三種の形式あり。「クランプトン」形、「ベルペア」形、「ワゴン・トップ」形これなり。

 第 1243ないし 1251図のごとく、その頂部「バレル」に沿ひて円形をなすもの、これを「クランプトン」形と称す。

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 また第 1255ないし 1261図のごとく、その頂部平坦にして四角形をなすもの、これを「ベルペア」形と称す。

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 また第 1252ないし 1254図のごとく、その頂部「クランプトン」式と同形にして「バレル」に属する一部が円錐形をなすもの、これを「ワゴン・トップ」形と称す。

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 以上三種の汽缶は従来使用せる普通の形式にして、欧州各国においては主に「クランプトン」形及び「ベルペア」形を用ひ、米国にては主に「ワゴン・トップ」形を用ひ、また時として「ベルペア」または「クランプトン」形を採用せり。

 「ベルペア」形及び「ワゴン・トップ」形は、いずれも「ファイア・ボックス」の上部を拡張し、蒸気室及び伝熱面積を増加するの目的をもって設計せられたるものとす。しかして「ベルペア」形は「クラウン・ステー」及び「トランスバース・ステー」を、「ファイア・ボックス・シェル」に「ナット」を用ひて強固に取付け得るの便益あれども、「シェル」と「バレル」との間にさらに倚形の接合板を要するをもって製作上手数を要するを免れず。

 「ファイア・ボックス・シェル」は普通1枚の鋼板をもって製せられ、時として両側及び上部の板を離別して3枚の板を用ふることあり。けだし「ファイア・ボックス」の下部は腐食し易く最も早く修理を要する箇所なるをもって、時々両側の板を取替ゆるに便なると小型の鋼板を使用し得るものなればなり。

 

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2024年2月 9日 (金)

機関車工学:中巻(その227)汽缶の構造:概 要

第4章 汽缶の構造

【 概 要 】

 機関車用として今日採用せらるる汽缶は経済上最良なる形式にあらざれども、その形小にして軽量なる割合に蒸気の発生迅速なることはその最も利益とする所なり。従来その構造に関し種々の改良を加へその効を奏したるもの多しと言えども、かの有名なる「レイン・ヒル」競争において勝利を得たる「ロケット」が有せし汽缶の構造は、大体において今日なお唯一の形式として採用せらる。

 汽缶の形式は多管式にして欧米各国多少その構造を異にすと言えども、また大体においてはほぼ一定せるものとす。第 1241及び 1242図に示すは英国形汽缶の一例にして5箇の重要なる部分より成立せり。

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 第1
 「ファイア・ボックス」A は長方形の箱にして四壁及び頂蓋を有し外部は水をもって囲繞せらる。底部は開放せられて下部に「ファイア・バー」を有す。

 第2
 「ファイア・ボックス・シェル」B は「ファイア・ボックス」の外部を蓋ひ、その一端は「バレル」に連続し内部に水及び蒸気を包有す。

 第3
 「バレル」C は「ファイア・ボックス・シェル」より「スモーク・ボックス」に向て延長せる筒状の部分にして、内部に多数の「チューブ」を有し水及び蒸気を包有す。

 第4
 「チューブ」D は「ファイア・ボックス」より「バレル」を通じて「スモーク・ボックス」に延長せる細き管にして、「ファイア・ボックス」内に発生したる火焔を「スモーク・ボックス」内に導くものとす。

 第5
 「スモーク・ボックス」E は「チューブ」より排出するガスを受納する空室にして上部に「チムニー」F を有す。

 

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2024年2月 7日 (水)

機関車工学:中巻(その226)汽缶の蒸気発生力:蒸発効率

【 蒸発効率 】

 「セント・ルイス」の実験において使用せる石炭1ポンドの熱量は前に陳べたるごとく 14000英熱単位なり。しかして 212度の水より 212度の蒸気を作るには潜熱として 966英熱単位を要するをもって、この石炭の相当蒸発水量は 14000 ÷ 966 = 14.5、すなわち 14ポンド半にして我国の一種炭もほとんどこれと類似の品質を備ふ。しかしていかなる汽缶においても石炭の全熱はこれを利用する事あたわざるはもちろん、強制通風をもって劇しくこれを燃焼せしむる場合にはその利用率殊にはなはだ少きものとす。

 今前述の石炭を燃焼し石炭1ポンドに対して水8ポンドを蒸発し得たりとすれば、この場合における汽缶の蒸発効率は 8 ÷ 14.5 = 0.55、すなわち 100分の55 となるべし。

 汽缶の蒸発効率は汽缶により差異あるはもちろんなれども、同一の汽缶においてもその仕業の難易に応じて非常の差異あるものなり。しかして石炭を燃焼するの量増加するに従ひ、漸々その効率を減少することは実験に徴してはなはだ明かなり。

 けだし石炭を多量に燃焼せんにはこれに要する通風も従って大なるが故に、石炭ガスの多量はその熱を水に与ふるの暇少なくして有用の熱を大気中に放出するに至るべく。また火粉の量増加して有用の石炭を半燃焼のまま「チムニー」外に排出せしむるに帰因するものなり。故に汽缶は事情の許す限り大なるを貴び、炭火は徐々に燃焼せしむるをもって有利とすべく、強き通風によって炭火を煽動するは決して経済なる方法にあらず。

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 これらの関係は第 1239図により明かに説明せらるべし。この図は伝熱面積1平方フィート1時間に割り当てたる石炭の量と、石炭1ポンドの相当蒸発水量との関係を示すものにして、石炭を燃焼するの量増加するに従ひ曲線は漸次落下するをもって蒸発効率の漸々減退することを知る。図中第 535号機関車の分に付て数字を挙くれば 62表に示すがごとし。

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 石炭を多量に燃焼するの結果は、伝熱面1平方フィート1時間に付き燃焼する石炭の分量を増加するものなれば、結局伝熱面の蒸発率を増加する事となるものなれども、その蒸発率の進むに従ひ石炭1ポンドの相当蒸発水量は著しく減退するものなり。この関係は第 1240図によって明かなり。

1240535
 
 再び第 535号機関車の分について、第 1240図より数字を挙くれば第 63表に示すがごとし。

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2024年2月 6日 (火)

機関車工学:中巻(その225)汽缶の蒸気発生力:セントルイス博覧会における実験

【 「セント・ルイス」博覧会における実験 】

 「グレート」面上1平方フィート1時間内に燃焼する石炭の量、すなわち燃焼率と伝熱面の蒸発率との関係及び汽缶の効率等は、1905年米国「セント・ルイス」博覧会において「ペンシルベニア」鉄道会社より提供せる巨大なる機関車成績試験器において、出品中の8台の機関車に就いて試験せられたる成績によりその大体を知ることを得べし。この8台の機関車及び汽缶の重要寸法は第 60表に示すがごとし。ここに伝熱面と称するは皆その火焔に接する面積を取りたるものにして、すなわち「ファイア・ボックス」及び「チューブ」共その内側における面積を伝熱面として計上せり。

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 この実験に用ひたる石炭は皆同一炭山より得たる同質の石炭にして善良なる瀝青炭なり。その重量1ポンド中に有する熱単位は 14000英熱単位にして、その成分は固形炭素 75.85、揮発分 16.25、灰分 7、水分 0.9の割合より成る。

 同一の機関車に対しその燃焼率と蒸発率との関係はある公式にてこれを示す事あたわずと言えども、第 1238図に示せる8台の機関車の成績を見れば大体を推定し得べし。

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 燃焼率を増加すれば蒸発率も従って増加すと言えども、双方共同一なる割合をもって増加するものにあらず。図中第 628号機関車に対する曲線はやや中庸を得るをもって、その曲線に就いて数字を挙ぐれば 61表に示すがごとし。

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2024年2月 5日 (月)

機関車工学:中巻(その224)汽缶の蒸気発生力:伝熱面の蒸発率

【 伝熱面の蒸発率 】

 蒸気発生力は必ずしも伝熱面積に比例するものにあらざれども、通常伝熱面の平均1平方フィートにおいて1時間内に蒸発し得べき相当蒸発水量をもってその単位とし、これを伝熱面の蒸発率と称す。伝熱面の蒸発率は良質の瀝青炭をもってしては、よく 16ポンド以上にも達せしむることありと言えども、多くの場合においては 12ポンドをもってその最高蒸発率とすべし(上巻 第3編 第1章 第 205ページ参照)。

 

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2024年2月 3日 (土)

機関車工学:中巻(その223)汽缶の蒸気発生力:相当蒸発水量

第3章 汽缶の蒸気発生力

【 相当蒸発水量 】

 汽缶の蒸気発生力とは汽缶が一定時間内、例へば1時間内において蒸発し得べき水量を言ふ。この水量は蒸発する蒸気の圧力、及び補給する水の温度により異なるものなれば、これを一定の状況の下に換算してその標準を示すを例とす。すなわち相当蒸発率と称するものにして、華氏 212度の水を汽缶に補給し、大気の圧力すなわち験圧計に指示する 0ポンドの圧力の下において、同じく 212度の温度を有する蒸気に変ずるものと仮定してその場合の水量を称するものなり。

 この説明は下巻、熱及び蒸気の蒸発単位なる章において詳述せりと言えども、普通の場合においては実際の蒸発水量に乗ずるに 1.2 をもってせばその相当蒸発量に近きものを得べし。

 

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2024年2月 2日 (金)

機関車工学:中巻(その222)伝熱面及び火床面:伝熱面とグレート面との割合

【 伝熱面と「グレート」面との割合 】

 この割合は 60ないし 70 をもって普通なりとす。しかれども米国において多数採用せる大幅「ファイア・ボックス」と称するは比較的粗悪炭を使用するものにして、「グレート」面はなはだ広大なるをもってこの割合大に異なれり。第 59表は米国における多数の機関車に付て調査したる伝熱面 H と「グレート」面 G との割合を示すものなり。

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 我国における狭軌機関車の「グレート」面は 14ないし 18平方フィートにして、粗悪炭を使用する大幅「ファイア・ボックス」のみは 20平方フィートを超ゆるものあり。

 英国においては常に最良の石炭を使用するをもって 17ないし 20平方フィートをもって普通とし、近来は 20以上 26平方フィートに達するものあり。しかして米国における大幅「ファイア・ボックス」においては 40ないし 55平方フィートを有するものあり。

 

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2024年2月 1日 (木)

機関車工学:中巻(その221)伝熱面及び火床面:伝熱面

第2章 伝熱面及び火床面(Heating Surface and Grate Area)

【 伝熱面 】

 汽缶の伝熱面と称するは、「チューブ」の外部の総面積と「ファイア・ボックス」の内部における四壁、及び頂上の総面積とを合したるものを言う。

 「ファイア・ボックス」伝熱面と「チューブ」伝熱面との割合に就いては未だ定説なく、実例に徴すれば後者は前者よりも 10倍ないし 20倍大なり。しかして「チューブ」の長さとその外径との割合は普通 80倍ないし 100倍なりと言えども、米国においては 120倍の長さ、すなわち外径2インチの「チューブ」にて 20フィートの長さのものを採用するもの多し。

 「ファイア・ボックス」伝熱面と「チューブ」伝熱面とは、その蒸発力に大差ある事もちろんなるに、計算上これを混同するは当を得たるものにあらず。故に米国「ヴォーガン」氏は実験の結果より、「チューブ」伝熱面を相当割引して「ファイア・ボックス」伝熱面に引直すの公式を作り、これによりて得たる数と「ファイア・ボックス」伝熱面との合計をもって計算用に供すべき総伝熱面となせり。その公式左のごとし。これを「ヴォーガン」氏の公式と称し近来米国において良く利用せらる。

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 (例)

 「ファイア・ボックス」伝熱面 210平方フィート、「チューブ」の伝熱面 4586平方フィート、「チューブ」の長 20フィートなるとき、「ヴォーガン」氏公式による総伝熱面積は左のごとし。

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 伝熱面は蒸気の使用高と関係あるをもって、これを「シリンダー」の容積と比して定むるを常とす。今 H をもって総伝熱面(平方フィート)とし、C をもって「シリンダー」の容積(立法インチにて測り「ピストン」の面積と「ストローク」の長さとの相乗積とす)とせば、この C/H なる割合は英国製機関車においては概して第 57表の範囲内にあり。

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 「フォン・ボリス」氏はドイツにおける機関車の例を調査し第 58表の割合を示せり。

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 米国における伝熱面の大さに付ては設計者によりてはなはだまちまちにわたる。ある製造家は「シリンダー」容積1立法フィートに付き、伝熱面 400平方フィートの割合をもって標準とし( C/H の価としては 4.32に相当す)、320平方フィートをもって最低とすべし( C/H の価としては 5.40に相当す)と唱へたれども、近来の実例はこの範囲を脱するものはなはだ多し。

 「シリンダー」において発生する実馬力は動輪上の粘着力の範囲内において、その汽缶より供給を受くべき蒸気の分量いかんに関するものにして、蒸気発生分量は汽缶伝熱面の多少と石炭の良否、およびその燃焼率により決するは論を待たず。しかして上巻第 205ページに述べたるがごとく、普通の機関車において伝熱面1平方フィートに付き発生する最大馬力は 0.4 ないし 0.5 にして、平均 0.45 馬力を得るものと仮定するをもって適当となすべし。

 

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