第6章 サイクルおよびエントロピー
1.カノー・サイクル(カルノー・サイクル)
フランス人カノー(カルノー:S.Carnot)氏は、熱機関の動作を研究するため、1824年一つのサイクルを考案した。
このサイクルは機関が、全く理想的な膨張および圧縮を成す場合に、実現せられ得べきもので、実際のサイクルとはいく分違うも、それ以来これを基として比較研究せられる様になった。
カノー・サイクルは第26図に示すがごとく、四つの動作より成っている。すなわち
(1)最初 A 点で示される圧力 Pa、容積 Va、温度 T₁ なるガスに熱を加え、これを圧力 Pb、容積 Vb、温度 T₁ なる B 点まで等温膨張せしめ
(2)B 点にて熱の供給を絶ち、このガスを C 点(圧力 Pc、容積 Vc、温度 T₂ )まで断熱膨張を行わしめ
(3)この状態のガスを、圧力 Pd、容積 Vd、温度 T₂ なる D 点まで等温圧縮せしめ
(4)D 点より断熱圧縮により、始めの状態 A に帰らしめる
のである。この場合、圧縮点 D は圧縮の終わりにおけるガスの状態が、ちょうど最初の状態 A に帰る(一致)がごとく選定せねばならぬ。
かくのごとく一つのサイクルが完成したる時、ガスが成した仕事を求めるに
(a)ガスが A から B まで膨張する間に成す仕事
この間に成す仕事は面積 ABVbVa にして、且つ等温膨張であるから仕事の量 Wa は(すなわち面積は)第32式より
(b)蒸気が B より C まで膨張する間に成す仕事
この間は断熱膨張で、仕事は面積 BCVcVb にて表され、その量は第34式より
(c)圧縮により CD 間にて費やされる仕事
C より D まで圧縮するに要する仕事は、逆に D から C まで膨張によって成す仕事と全く同一であるから
(d)D より A まで圧縮するに費やされる仕事
圧縮に要する仕事は面積 DAVaVd にして、この間は断熱圧縮であるから
よって蒸気の成した仕事 W は
ここで B および C 点にて示される蒸気の圧力、容積および温度の関係を考えるに、この間は断熱膨張であるから圧力、容積および温度の間には次の関係がある。
また DA も断熱圧縮であるから D と A の間にも次の関係がある。
よって両式より
すなわち
これらの関係を(d)式に代入すれば
次に CD 間は等温圧縮であるから PcVc=PdVd である。この関係を(d)式に入れ
これを(b)式と比較するに全く同一であるから Wd=Wb である。よって(51)式は
しかるに(e)式により
であるから
完全気体においては第29式により PV=RT なる関係があるから、圧力 Pa および Pd に対する温度をそれぞれ T₁ および T₂ とすれば、上式は次の様になる。
しかして、これだけの仕事を成さしめるために与えた全体の熱量は
であるから、このサイクルの熱効率は
このカノーサイクルを、蒸気機関に当てはめるとどうなるかと言うに、第26図の等温線 AB および CD は、第27図の AB および CD で示すがごとく圧力一定な線となり、前記四つの動作は次のごとくなる。
(1)まず最初、容積 OK、圧力 KA、温度 T₁ なる水を、一定圧力 KA の下にて熱しことごとく蒸発せしめ、蒸気の容積が OL になったとする。この動作は実際の場合は缶内において起こることで、直線 AB で表わされる。
(2)ここで熱の供給を止め、この蒸気をシリンダー内に入れ、その容積を OM まで断熱膨張せしめる時は圧力 MC、温度 T₂ となり、この動作は曲線 BC で表わされる。
(3)C 点で示される蒸気(圧力MC、容積OM、温度T₂ )を、同圧力および同温度の水に還元せしめる時は、水の容積は ON となり、その動作は直線 CD で表わされる事になる。
(4)D 点より DA に沿い、断熱圧縮により容積 OK、圧力 KA、温度 T₁ になる点 A に帰らしめ、始めの状態に戻らしめるのである。
図中、水の容積 OK は、蒸気の容積 OL に比較すれば非常に小であるから、実際においては点 A は縦軸 OY の上にあると考えても良い。
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