機関車の構造及理論:下巻(その150)ストラール氏の牽引力算出方法(1)缶の蒸発量①
4.ストラール( Strahl )氏の牽引力算出方法
(1)缶の蒸発量
ストラール氏の牽引力の算出公式は、西暦1913年ドイツのストラール氏によって提案せられたもので、まず缶の最大蒸発量を求め、次に1時間1指示馬力当たりの蒸気消費量を実験的に見出し、これによって機関車の最大指示馬力、および任意の速度における指示馬力を求め、次に指示牽引力を求める方法で、その求め方は、本省運輸局式と同様であるからこの点は簡単にし、以下この公式がいかにして出来たかを簡単に説明する事とする。
機関車の牽引力の根源は、燃料の燃焼によって生ずる熱エネルギーであって、缶の伝熱面積を非常に大きくすることができれば、このエネルギーの大部分を水に伝えることができるわけであるが、機関車の缶はその構造上から大きさの制限を受ける事が多く、また仮にその制限を受けないと仮定しても、伝熱面がある程度以上に大きくなると、その効果は漸次低下するものである。
それゆえに伝熱面積の大きさをもって、缶の蒸発量を算出する基礎にするという事は妥当な方法でない。しかるに火格子面積は石炭の燃焼量を支配するものであるから、蒸発量はこの面積に比例するもので、これを基礎として表す方が合理的である。今
Q =缶の最大蒸発量(キログラム/時)
H =伝熱面積(平方メートル)
G =火格子面積(平方メートル)
a および b を定数とすれば
火格子面積1平方メートル当たり、1時間の最大蒸発量
は、次の式で求めることができると、ストラール氏が提唱している。
上式で a および b の定数の値を見出すことを得れば、G および H は機関車によって定まっている数字であるから、直ちに
なる火格子1平方メートル当たり、1時間の最大蒸発量を算出し得るのである。
今 H なる伝熱面積が無限に大きくなったと仮定したならば、G÷H の値はゼロになるから、従って上式は
となるのであって、伝熱面積を無限に大きくして、ガスの熱を十分缶水に伝えることを企てれば、最後にはガスの温度は缶水の温度と等しくなるはずで、換言すれば a は排出直前のガスの温度が、缶水の温度に等しく下がった場合に、火格子1平方メートル当たり、1時間に発生する蒸気量に等しいのである。
この関係から a の値を求めることができる。
B =石炭の燃焼率(キログラム/平方メートル/時)
G =火格子面積(平方メートル)
w =石炭1キログラムが燃焼したために生じたガスの重量(キログラム)
C =燃焼ガスの比熱
t =燃焼ガスの温度(℃)
tw =缶水の温度(℃)
h =蒸発熱量(カロリー/キログラム)
とすれば、1時間に燃焼する石炭量は B×G キログラムであるから、1時間に B×G キログラムの石炭が燃焼したために、できる熱ガスの量は B×G×w キログラムである。
以上の熱ガスの温度は火室で t 度で、その比熱は C であるから、この熱ガス1キログラムを t 度まで高めるために費やした熱量は t×C カロリーで、この場合、ガスの総重量は B×G×w キログラムであるから、全熱量は B×G×w×t×C=BGwtC カロリーとなる。
換言すれば、火格子上で1時間中に石炭が燃焼してできた熱ガスは、これだけの熱量を持っている事になるのである。
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