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2024年12月の記事

2024年12月31日 (火)

機関車工学:下巻(その128)機械部取扱:空転及び撒砂/空転の原因

【 空転の原因 】

 軌条湿潤せるとき、殊に小雨または朝露により湿潤せるとき、もしくば軌条上に油気あるときは、著しく機関車の粘着力を失するをもってこの際空転を促し易し。また列車出発するとき、及び急勾配、急曲線の個所を進行するときは、著しく列車の抵抗力を増加するために牽引力が粘着力に打勝ち空転を生じ易しとす。

 軌条頭磨滅もしくば線路不良なるとき、殊に軌条継目の個処にある枕木の排列不整にして、且つその個所における砂石の充填不充分なるときは、列車運転中線路の波動多きをもって列車の抵抗力を増進し、機関車動輪上における重量の分配を乱だし空転を促がすの原因をなす。

 ある機関車は他に比して割合に多く空転するの癖あるものあり。その原因種々なれども、外輪の性質非常に堅硬なること、動輪上の重量軽きに過ぐること、動輪弾機が弱きに失すること、外輪の不規則に磨耗したること等種々の原因に帰するものなり。総てこの種の機関車を運転するには、普通の方法によらずして「レギュレーター・バルブ」にて蒸気を加減し、「リバーシング・レバー」を「フル・ギア」に近く進めて運転するときは幾分かその空転を防ぐことを得べし。

 

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2024年12月30日 (月)

機関車工学:下巻(その127)機械部取扱:空転及び撒砂/空 転

空転及び撒砂/空 転

【 空 転 】

 機関車の空転とは機関車動輪の周囲に現はるる所の回転力、すなわち牽引力が動輪と軌条との間の摩擦、すなわち粘着力より大なるときに起る現象にして機関車空転するときは全く牽引力を失す。

 

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2024年12月29日 (日)

機関車工学:下巻(その126)機械部取扱:放出蒸気の音響/バルブモーションの故障

【 「バルブ・モーション」の故障 】

 放出蒸気の調子乱れて長短不同の音響をなすときは、すなわち「バルブ・モーション」の一部に故障あるを示すものにして、事不意に生ずるときは直ちに機関車を停止してその原因を探求すべきものとす。必ずある部分の毀損紛失等を発見すべし。しかして特に各部に故障を発見せずしてなお放出蒸気不同なるときは、全く「バルブ・モーション」の不正なるに基因すべければこれを正すの必要あるべきも、大抵は運転中「シリンダー・コック」より蒸気を噴出せしめてその欠点の個所を発見することを得べし。

 すなわち「リバーシング・レバー」を前部の極端に置くときは、前進「ストローク」のときは後部「シリンダー・コック」より蒸気を噴出すべく、また後進「ストローク」のときは前部「シリンダー・コック」より蒸気を噴出し、その噴出の工合同一なるときは正当なる「バルブ・モーション」なりと言えどもその動作このごとくならずして、その際全く蒸気を噴出せざるか、またはその分量少なきか、あるいは前後噴出の工合不同なるがごときは、すなわちその側の「バルブ・モーション」の不正なるを察すべし。

 「ピストン」が前部の死点に達する以前において前部「シリンダー・コック」より蒸気を噴出するか、または「ピストン」が後部の死点を過ぎたる以後において後部「シリンダー・コック」より蒸気を噴出せざるときは、すなわち語を更へてこれを伝へば前部「シリンダー・コック」よりはより早く蒸気を噴出し、後部の「シリンダー・コック」より、より後く蒸気を噴出するときは「スライド・バルブ」の運動が全体に後部に偏するを証するものなれば、「バルブ・スピンドル」もしくば「エキセントリック・ロッド」を少しく長くするを要す。

 ただし「ロッカー」を有するものに在ては、「エキセントリック・ロッド」の運動は「ロッカー」のためにその方向を転倒せらるるが故に、この種の「エキセントリック・ロッド」を加減せんときは反対にこれを縮むることを忘るべからず。もしまた前部「シリンダー・コック」よりはより後く蒸気を噴出し、後部「シリンダー・コック」よりはより早く蒸気を噴出するときは、「エキセントリック・ロッド」または「バルブ・スピンドル」の加減は前の場合と相反する事もちろんなるべし。

 ある事情によりて「エキセントリック」が車軸上において滑動しその中心の位置を変更したるときは、蒸気の働きは以上の事実と全く相異なるを見るべし。すなわち「ピストン」の前進または後進するに拘はらず、双方共に蒸気はあるいは早くあるいは後れて「シリンダー」内に進入すべし。

 例へば前進「エキセントリック」にして車軸の上に後部に滑りたるときは「リード」を増加せしめて、各「ストローク」の初めに当りてより早く蒸気を進入せしむべく(ただし「ロッカー」を有する場合にはこれに反して「リード」を減少せしめて、より遅く蒸気を進入せしむ)、また車軸の上に前部に滑るときは「リード」を減少せしめて、各「ストローク」の初めに当りより遅く蒸気を進入せしむべし(ただし「ロッカー」を有する場合にはこれに反して「リード」を増加せしめて、より早く蒸気を進入せしむ)。

 

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2024年12月28日 (土)

機関車工学:下巻(その125)機械部取扱:放出蒸気の音響/スライドバルブの故障

【 「スライド・バルブ」の故障 】

 「シリンダー」内に起る蒸気の吹鳴はまた「スライド・バルブ」より蒸気の漏洩するより生ずることあり。この場合はその吹鳴は引続きて絶えず起るものにしていわゆる連続的吹鳴なり。その音響は喘息的にしてその内に一種の笛声を含めり。

 「スライド・バルブ」の不工合は漸次その磨耗するより来るもの多ければ、それより生ずる蒸気の吹鳴は日を経るに従ひ漸次その度を増すを常とし、「ピストン」の不工合は「ピストン・リング」の破損するより来るもの多ければ、その吹鳴は突然に生ずるを常とするが故にこれをもって原因を判断するの一助となすべし。ただし時としては「スライド・バルブ」よりもまた間欠的の吹鳴を生ずることあり。すなわち「バルブ」は通常「フル・ギア」において使用せらるること少きをもって、「バルブ・シート」の中央部においては「バルブ」と「シート」とは密着すれども、「バルブ・シート」の両端に近づきたるときはその密着を欠き為めに蒸気を漏洩することあり。

 また「バランス・バルブ」においては、「メイン・バルブ」の背に設けある気孔より蒸気が直接に「エキゾースト・ポート」に向て漏洩することあり。これ「クラウン・バルブ」の不工合より来るものにしてその例はなはだ多し。

 

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2024年12月24日 (火)

機関車工学:下巻(その124)機械部取扱:放出蒸気の音響/ピストンリングの故障

【 「ピストン・リング」の故障 】

 前に陳べたる右側「クランク」が(イ)の位置より(ロ)の位置に移動しつつあるとき、または(ハ)の位置より(ニ)の位置に移動しつつあるときに、一種異様の吹鳴を聞くときはこれ右側「ピストン」の不完全を証するものなり。如何となればこの時は「ピストン」は「ストローク」の始めにありて、最も高圧の蒸気を受くるをもって、「ピストン・リング」不完全なるときは蒸気が「ピストン」の一側より他側に逃去し、その際異響を呈するによるものなり。同理にて右側「クランク」が(ロ)の位置より(ハ)の位置に、または(ニ)の位置より(イ)の位置に移動する時に当りて同様の吹鳴を聞くときは、左側「ピストン」の不完全を証するものなり。

 「ピストン・リング」より蒸気の漏洩するものは主として「ストローク」の始めの部分にあるをもって、その吹鳴は一定の時間を隔てて吹鳴し、いわゆる間欠的吹鳴なり。しかして「ファイア・ドア」を開きてそれよりこれを聞けば、その吹鳴は多くは清朗なる音響にして、時としては明瞭なる吼声を出すことあり。

 

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2024年12月23日 (月)

機関車工学:下巻(その123)機械部取扱:放出蒸気の音響/四個の音響

【 四個の音響 】

 動輪が1回転をなす間に左右の「シリンダー」においては、各々前後の「エキゾースト・ポート」より蒸気を排出するをもってここに4個の放出蒸気を生ずべく、その4個の音響は順次に絶えず繰返へさるるものなれば、機関手はまずこの4個の音響の区別を明かにし、ある放出蒸気は左右いずれの「シリンダー」に属し且つ前進(forward)「ストローク」に対するものなるや、または後進(backward)「ストローク」に対するものなるやを判断し得るを要す。

 普通の機関車においては一対の動輪中、その左右の「クランク」は互に直角をなし、機関車前進するときは右側の「クランク」が常に先行し、左側の「クランク」はこれより常に 90度の角度だけ後れて継行するものなり。

 今この式の「クランク」を有する機関車において、その右側動輪のみを観察するときは、その1回転中に生ずる4個の放出蒸気は、その「クランク」が左の4個の位置にある場合に属するを知るべし。

 (イ)
 右側「クランク」が前部の死点に達する数インチ以前(右側前進「ストローク」)。

 (ロ)
 右側「クランク」が軌条に達する数インチ以前(左側前進「ストローク」)。

 (ハ)
 右側「クランク」が後部の死点に達する数インチ以前(右側後進「ストローク」)。

 (二)
 右側「クランク」が最高部に達する数インチ以前(左側後進「ストローク」)。

 しかしてこの(イ)と(ハ)とは右側「シリンダー」の放出蒸気にして、(イ)は前進「ストローク」、(ハ)は後進「ストローク」に属し、(ロ)と(二)とは左側シリンダーにして、(ロ)は前進「ストローク」、(二)は後進「ストローク」に属するものなり。

 これらの事実をよく記憶するときは放出蒸気に現はるる不正の音響をよく判断し、いずれの部分に欠点あるやを察知することを得べし。

 

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2024年12月20日 (金)

機関車工学:下巻(その122)機械部取扱:放出蒸気の音響/音響の種類

放出蒸気(Exhaust steam)の音響/音響の種類


【 音響の種類 】

 機関手が放出蒸気の音響を聞きて機関車の完不完を知るはなお、医師が人体の脈拍を験しその健不健を察するがごとし。「バルブ」及び「バルブ・シート」に欠点なく、「スチーム・ポート」の開閉に不同なく、「ピストン」及び「ピストン・リング」は完全にして乾燥せる蒸気を使用するときは、放出蒸気の音響は清鋭正確にして、鋭利なる刃刀を用ひて煙筒の頂上において一々蒸気を切断するがごとくなるべし。

 これに反して諸部不完全なるときはその欠点の度に応じて、あるいは濁鈍なる音響を発し、あるいは連続せる吼声を出し、喘息的、跛偏的なる等種々の異響を呈すべし。

 

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2024年12月19日 (木)

機関車工学:下巻(その121)機械部取扱:運転中蒸気の加減/蒸気を使用せずして運転する場合

【 蒸気を使用せずして運転する場合 】

 列車の速度を減殺するとき、または下り勾配線に掛りて蒸気を使用するの必要なきとき、「レギュレーター・バルブ」を閉塞するときは、同時に「リバーシング・レバー」を「フル・ギア」の位置に落すを要す。

 蒸気を使用して運転する際は、蒸気は「バルブ」と「バルブ・シート」との間に浸入して油を運び、且つそれ自身にも油のごとき効用をなすものなれども、蒸気を使用せざるときはこの作用を失ひ、ややもすれば給油不充分に陥り易し。故にこの際「バルブ」の「トラベル」小なるときは、「バルブ・シート」の中央部のみ磨耗せしむるの恐れあるをもって、「レバー」を極端の「ノッチ」に落して充分の運動を与ふべし。

 蒸気を使用せずして運転するとき「シリンダー」内に起るべき真空及び空気圧搾の程度は、「レバー」が極端の「ノッチ」にあるとき最も少なく「レバー」を引き上ぐるに従ひ大なりとす。しかしてこれらは「ピストン」の運動を妨害し「ブレーキ」の作用をなすものなれば、隋力運転の際は「レバー」を極端の「ノッチ」に落すを要す。

 「シリンダー」内真空の発生は、「スモーク・ボックス」よりガス及び灰燼を「シリンダー」に呼び寄するの原因をなすものなり。下り急勾配線運転に際し制動力を要する場合において、なお且つ「レバー」を「フル・ギア」の位置に保つはこれがためなり。

 

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2024年12月18日 (水)

機関車工学:下巻(その120)機械部取扱:運転中蒸気の加減/蒸気を絞りて運転する場合

【 蒸気を絞りて運転する場合 】

 「レギュレーター・バルブ」を一部分だけ開き「カット・オフ」を遅くして運転すれば、「ピストン」上に加ふる圧力が終始やや均一となり機関車に激動を与ふること少なく、また「スチーム・チェスト」内の圧力低きをもって「スライド・バルブ」を動かすに要する力も少なし。故に蒸気を絞りて運転することは機関車各部を損傷せざること、ならびに列車を穏やかに運転し得るの点において得策たること疑を容れず。しかれどもこの方法をもってしては水及び石炭を不経済に使用し、これがため高速度の列車に対しては蒸気の供給に不足を来たすを免れず。

 「レギュレーター・バルブ」にて蒸気を絞り、高圧力の蒸気を低圧力の蒸気に変ずるときは、自然そこに熱量の一部を遊離すべきにより、その熱量をもって低圧蒸気を過熱するか、もしくば蒸気中に携帯せる水分を蒸発し得べし。ただし人あるいはこの利益を過大に見積る者あれども、実際遊離すべき熱量は僅少なるをもって利益問題として期待する程の事なかるべし。

 例へば今圧力 160ポンド(絶対圧力 175ポンド)の蒸気を、100ポンド(絶対圧力 115ポンド)のものに絞りたりとせん。蒸気の重量1ポンドの中に含有する熱量は圧力 160ポンドの場合には 1195英熱単位にして、100ポンドの場合には 1185英熱単位なり。故に 60ポンドだけ蒸気の圧力を殺減すれば差引 10英熱単位を遊離するの割合となる。故に今もし蒸気が充分に乾燥するものとせば、この遊離せる 10英熱単位は全く低圧蒸気を過熱するの用に供せらるべし。しかして重量1ポンドの蒸気の温度を華氏1度だけ上ぐるに要する熱量は 0.48英熱単位を要するをもって、遊離したる 10英熱単位は圧力 100ポンドの蒸気を

   10 ÷ 0.48 = 21

 すなわち 21度だけ過熱し得るの割合となる。すなわち圧力 100ポンドの蒸気の固有の温度は華氏 337度86 なるが、それが 21度だけ過熱せられて 358度86 となるの理論なり。

 次にまた遊離せる 10英熱単位が全部蒸気中の水分(湿気)の蒸発に費やさるるものと仮定するに、圧力 100ポンドの水の蒸発の潜熱は 876.37英熱単位なるをもって、10英熱単位をもってしては

  10 ÷ 876.37 = 0.0114

ポンドの水分を蒸発し得べく、すなわち単に1「パーセント」余の湿気を減じ得るの割合となる。しかしていずれの場合においても石炭の節約1「パーセント」、水の節約2「パーセント」を期することは難かるべく、結局蒸気を絞りて運転すれば「ワイヤー・ドローイング」を起して、それがために水及び石炭を損失すること大なるをもって、前述の僅かなる過熱もしくば湿気減少位にてはこれを償ふ事あたわざるものなり。

 故に蒸気を絞りて運転することは経済上の問題としてこれを見ずして、むしろ治療的性質を帯びたる左の場合に応用すべし。

 1.列車出発の際。

 2.「ビッグ・エンド」及び「エキセントリック」等の発熱の気味ある場合。

 3.「スチーム・チェスト・カバー」「シリンダー・カバー」「スタッフィング・ボックス」「スライド・バルブ」及び「ピストン・リング」等より蒸気漏洩の場合。

 4.「プライミング」の場合。

 5.撒砂器不完全にして空転の気味ある場合。

 6.動揺多き機関車及び諸「ブラス」「ピン」等の磨耗多き機関車を運転する場合。

 7.特別に最も穏和なる運転を要する場合。

 8.蒸気使用中特に多量に「シリンダー」油を給せんとする場合。

 けだし普通の「サイト・フィード・ルーブリケーター」にては、「レギュレーター・バルブ」を全開し「カット・オフ」を早くして運転する間は、油の供給はなはだ不充分にして油及び蒸留水が油管内に停滞すること多し。しかるに蒸気を閉塞するかもしくば蒸気を絞りて「カット・オフ」を遅くするときは、油管内に停滞せる油はたちまち「スチーム・チェスト」内に進入すべし。
 

 

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2024年12月17日 (火)

機関車工学:下巻(その119)機械部取扱:運転中蒸気の加減/経済的運転

【 経済的運転 】

 「カット・オフ」を100分の20 ないし 25に保ち「レギュレーター・バルブ」を全開して運転することは、多くの場合において最も経済なる運転方法たることは理論及び実地上において証明せらる。故に事情の許す限りこの「カット・オフ」を標準として運転すべく、この「カット・オフ」にて速度早きに過ぐるときは「レギュレーター・バルブ」の開き方を縮少すべく、速度遅きに失するときは「カット・オフ」を延長すべきなり。

 運転中蒸気を使用するの必要なきときは、まず「レギュレーター・バルブ」を閉ぢて、次に「リバーシング・レバー」を「フル・ギア」に落すべし。また隋力にて運転中さらに蒸気を使用せんとするときは、「レバー」を適宜の位地に引上げたる後「レギュレーター・バルブ」を開くべし。けだし1回転と言えども「フル・ギア」にて運転するの必要と効力とを認めざるによる。

 

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2024年12月16日 (月)

機関車工学:下巻(その118)機械部取扱:運転中蒸気の加減/列車出発

第3章 機械部取扱

運転中蒸気の加減/列車出発

【 列車出発 】

 列車を出発せんとするときは、機関手はまず「リバーシング・レバー」を「フル・ギア」の位置に据へて「レギュレーター・バルブ」を開くべし。この際静かに列車を動かし、且つ機関車を空転せしめざるよう徐々に「レギュレーター・ハンドル」を取扱ふべし。永く機関車を停止せしめたる場合、または機関車を付け換へたる場合には、列車出発の際「ドレーン・コック」を開き「シリンダー」内の凝結水を流出せしむるを要す。速度増進するに従ひ「レバー」は漸次その中心に向て引上げ、平常使用中の「ノッチ」に至りて止むべく、それと同時に「レギュレーター・バルブ」も列車の速度と重量とに応じ適当に開放すべし。

 列車出発の際、何故に「リバーシング・レバー」を「フル・ギア」の位置に置き、「レギュレーター・バルブ」を全開せざるやは左の理由に属す。

 1.
 激動及び空転を避くるがために、確実緩和にして均一なる蒸気力を長く且つ徐々に「ピストン」上に加ふるの必要あること。

 2.
 「シリンダー」冷却し居るをもって「カット・オフ」早くするときは、ますます蒸気の凝結を促がすべし。「レギュレーター・バルブ」にて蒸気を絞るときは、やや乾燥せる蒸気を「シリンダー」に送り得べく、且つ「カット・オフ」を遅くするときは蒸気凝結の程度少なし。

 3.
 「カット・オフ」遅く「スチーム・チェスト」内蒸気の圧力低きときは、「サイト・フィード・ルーブリケーター」より油をよく「スチーム・チェスト」内に注入し得べく、同時に「スライド・バルブ」は背面の圧力減少し、「トラベル」もまた大なるをもって充分の給油を得るの便あり。

 

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2024年12月14日 (土)

機関車工学:下巻(その117)天候不良の場合における運転:大雪中の列車運転/凍結の予防

【 凍結の予防 】

 寒気凛烈の地方にては機関車の給水管「ポンプ」及び「タンク」内の水が凍結することあり。凍結の結果はその器を破損せしむることあり。故に総ての機関車はかなり機関庫内に入れ、庫内は必要に応じて蒸気管または暖炉にてこれを温たむることあり。 しかして止むを得ずして庫外に長時間機関車を暴露するときは、汽缶を始め総ての水を排除し置くを要す。ただしいずれの機関車も外部に露出せる蒸気管及び水管は、毛布その他の保温材料にてよく包巻し置くべし。

 「レギュレーター・バルブ」より漏洩したる蒸気が、「スチーム・チェスト」及び「シリンダー」内にてことごとく皆氷結し居たるに心付かずしてこれを動かしたるに、たちまち「バルブ・ロッド」その他を折損したるの例あり。「スライド・バー」の後部に堅氷付着せるがため「コネクティング・ロッド」を屈曲したるの例あり。故に凍結の恐れある機関車を自動もしくば他動せんとするときは、一応「ピンチ・バー」にてこれを動かし見るを必要とす。

 機関車を長時間寒風に暴露するときは、汽缶及び「タンク」内の水を排除し置くは必要なりと言えども、その際は同時に「コミュニケーション・パイプ」内の水、「インジェクター」の「サクション・パイプ」内の水、ならびに「テンダー・ホース」内の水も除去するを要す。

 「サイト・フィード・ルーブリケーター」内の蒸留水、よく氷結して該器を破損することあり。「ドリップ・トラップ」内の水また同じ。故にそれらの水は除去し置くを要すべく、「ドリップ・トラップ」はその「ボール・バルブ・ゲージ」を取外し置くことあり。

 「プレッシャー・ゲージ」用小蒸気管内には常に蒸留水停滞し居るものなれば、「ティー・スタンド」における該管の取付口を取外づして管内の水を排除し置くを要す。その他「ブロワー・パイプ」、「エジェクター・パイプ」、暖房汽管内等に残留する水もことごとく皆掃除し置くべし。

 機関庫狭隘にして常備の機関車を収容する事あたわざる個所においては、かなり少数の機関車を流用運転し、それらの機関車帰庫したるときは常に蒸気を保たしめて庫内に収容し、予備機関車は総ての水を除去して庫外に置くを常とす。

 機関庫内全部を温むるの設備なきときは庫内の一部を区画して、機関車1両もしくば2両を容るべき温室を作り置くときは作業上はなはだ便利なりとす。すなわち雪を被りて帰庫したる機関車を直ちにその温室内に導くときは、たちまち雪を融解し得て掃除、検査、及び修理上に多大の便宜を得べし。 

 

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2024年12月12日 (木)

機関車工学:下巻(その116)天候不良の場合における運転:大雪中の列車運転/雪中の運転

【 雪中の運転 】

 雪中の運転には「テンダー」機関車よりも「タンク」機関車を使用するをもって便利とすること多し。殊に単行機関車にて進退する場合に、除雪器を機関車の前後に付け換へすることを要する場合においては然りとす。大雪の場合には列車がしばしば途中において停止せらるること多し。この場合には機関車を列車より切離し単行運転して急を次駅に報ずることあり。また他列車の機関車をして単行救援せしむることあり。斯かる場合において「テンダー」機関車の進行は脱線の恐れ多し。ただし雪中の運転は多量の石炭と水とを使用するの事情あるにより、この点に関しては「タンク」機関車はやや不便たるを免れず。故に「タンク」機関車を使用する区間においては、各所に石炭及び水の準備を要し常にその補充を怠るべからず。

 機関車「キャブ」内は些少の間隙をも有せざるよう密閉して運転するを常とす。大雪中は機関車内よりほとんど外部を窺ふことを得ず。仮令外部を窺ふとも数フィートの前方すら明了に見透すことを得ざるの場合あれば、これが運転に従事する者は平常充分にその線路の状況に通達するを要す。否らざれば停車場すらも知らずして通過し去ることあり。

 機関車がその除雪器にて雪を排除する事あたわず、終に進退に窮したるときほど不始末のものはなし。機関車は堅く圧し固めたる雪の内に突入し居り、その機械部は「フレーム」の内外を問はず雪片にて埋められ、機関車固定して容易くこれを動かすに途なし。故に線路工夫の働により機関車を掘り出ださざるべからず。器械各部の間に挟まれる雪は掃除すると同時に、蒸気または熱湯にてこれを溶かし去るを要することあり。それらの場合に処する従事員の辛苦実に予想の外にあり。

 途中または停車場において雪中に一時列車を停止したるときに、雪は車輪と軌条との間に挟まりてクサビのごとき作用をなして車輪を食止め、さらに列車を前進せしめんとするとき容易に動き出さざる事あるべし。故に雪中停止の場合には停止後少しく退行し置くか、または前進の際少しく逆行してさらに前進するの必要あり。

 雪は機関車の粘着力を奪ひ、且つ制動力を減少す。「ブレーキ・ブロック」と車輪との間に雪片介在するときは「ブレーキ・ブロック」の摩擦は著しく減少す。また制動力やや強きときは動輪を滑走せしむべし。故に下り勾配線により停車場に進入するときは、ややもすれば停止位置を誤まることあるべし。

 大雪地方における貯炭設備、及び機関車の「コール・バンカー」に就き注意を要するものあり。雪塊と炭塊と混合すれば蒸気騰発を害せらるる事もちろんなれば、貯炭個処には上屋を設け、「コール・バンカー」もまた相当の設備を施して雪を避くるを要す。しかして運転中は「アッシュ・パン」内に雪が吹込むべきをもって、前部の「ダンパー」はこれを閉塞し後部の分を開放すべし。否らざれば雪塊「アッシュ・パン」に堆積して空気の流通を妨害すべし。

 

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2024年12月10日 (火)

機関車工学:下巻(その115)天候不良の場合における運転:大雪中の列車運転/ 雪 庫

【 雪 庫(snow shed) 】

 雪に対する有効なる防備は、線路上に雪庫を作りて線路を覆ひ一つの木製隧道を作ることなり。通常雪の吹溜りをなすべき地点を選びて建造す。

 庫は雪の重量に耐へ、且つ主として側面より風のために吹寄せらるる雪を防ぐの構造に過ぎざる建物なりと言えども、一間の建設費に数十円を要するものなれば、これを降雪多き線路の全部にわたりて適用することは経済上失費たるを免れず、また四季庫内陰鬱のため常に乗客に不愉快を感ぜしむる事おびただし。しかして雪庫の不完全なるものにありては、その屋根より垂下する氷柱のために乗務員を負傷することあり。また雪融解に際し屋根より水滴軌条上に落ちて機関車の空転を惹起するの原因をなす。

 防雪林なるものは線路の両側もしくば片側に樹木を植え、それによりて風の方向を転じ雪の吹寄を防ぐの方法にして防雪上有利なりと称せらる。ただしその土地の風位及び雪の状態に応じ線路と防雪林との間隔を研究すること最も必要なり。

 

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2024年12月 9日 (月)

機関車工学:下巻(その114)天候不良の場合における運転:大雪中の列車運転/ 除雪の方法

【 除雪の方法 】

 雪は非常に列車の抵抗力を増進するものにして、40分の1 の下り勾配線においても時としては、充分に「レギュレーター・バルブ」を開放し「フル・ギア」にて運転せざるべからざることあり。故に降雪多量もしくば雪の吹溜りを生じたるときは、機関車が列車を牽引しつつ排雪を行ふには機関車の力全く不足すること多し。故に大雪の地方においてはしばしば除雪列車なるものを特発す。

 除雪列車は多くは単独機関車、もしくば機関車に緩急車1両を連結して出発するものにして、緩急車には線路工夫を乗せ、機関車の除雪器のみにては力及ばずして機関車停止するに至れば人力をもって排雪し、さらに機関車を前進せしむるの手段を取る。しかして大雪の場合には到底機関車の除雪器にのみ依頼することを得ず。全線にわたりて数多の除雪人夫を派するを常とす。しかれども一度除雪するもまた、たちまち風のため諸方よりそこに雪を吹き寄せられ常に同じ事を繰返すに過ぎざることあり。しかして雪吹き寄せの結果は風力静止するに至らざれば、到底線路の開通を見る事あたわざることあり。

 人力によるも機関車の除雪器によるも、その除雪量に自ら制限あり。人力をもって全線路の雪を排除せんと企つるはむしろ無謀の挙に過ぎず、また全線路にわたりて2フィート以上に積れる雪を、除雪器のみにて排除し行かんことも難事に属す。

 初めて線路上に降りたる雪は2フィートもしくば3フィートの深さに及ぶものと言えども、除雪器にて推進すれば割合に容易し線路の両側に排除し得ると言えども、降雪数回に及ぶ時はその排除せられたる雪は線路両側に壁を作りてわずかに列車の通路を開くものなれば、除雪器の前面にある雪はもはや線路の両側に逃ることを得ずして、機関車の前方にのみ推進せらるるの結果を呈す。

 故に線路工夫はこの際2~3チェーンごとに、約1チェーンの個所だけの線路の両側にある雪を除去し置き、機関車が推進し来りたる雪をここに放散し得るの余地を作らざるべからず。これ大雪の場合において線路工夫の務むべき仕事なり。しかして橋梁、「コルベルト」等あるときは、雪を棄つるに最も便利なる個所なるべきはもちろんなりとす。

 

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2024年12月 5日 (木)

機関車工学:下巻(その113)天候不良の場合における運転:大雪中の列車運転/除雪器

【 除雪器(Snow plow) 】

 除雪器の種類は種々ありと言えども我国において多く採用せらるるものは最も簡単なる形式にして、三角形をなし高さ約1フィート9インチなり。その枠は木製にして、機関車の「バッファー・ビーム」より垂下せる2本の木脚(幅 10インチ厚さ4インチ)に取付けらる。その構造簡単なるが故に4~5人の力をもって随時取外し得べく、必要に応じ機関車の前部または後部に取換え得らるるものなり。

 一区間を運転する機関車に取付けたる除雪器の軌条面上における高さは各機関車とも同一にすべきものなり。この間隔は普通2インチないし3インチにして各地方の雪の状況により斟酌を要すべし。この間隔不同なるとき、例へば先発列車の機関車の分と後発列車の機関車の分と1インチの差あるときは、先発機関車が除雪し行きたる後ち、後発機関車はまたさらに1インチだけ除雪するを要すべく。しかもその雪は先発機関車が除雪器にて圧搾し去りたるものをさらに削り取るものなれば一層の力を費やすべし。この際除雪器の高さ先後機関車とも同一ならば、後発列車は除雪上ほとんど何らの力を費やさずして進行し得ること明かなり。

 

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2024年12月 4日 (水)

機関車工学:下巻(その112)天候不良の場合における運転:大雪中の列車運転/雪

大雪中の列車運転/雪

【 雪 】

 降雪多量の場合には機関車の前頭に除雪器(snow plow)を装置して運転するを常とす。雪は乾燥して細粉の状態をなすものは排除するに便利なりと言えども、その湿気を帯ぶるものにあっては排除するに不便にして、線路及び車両の諸部に密着堆積するをもってはなはだ危険なり。我国において北海道の雪はその性質前者に属し、信越線の雪は後者に属し、奥羽線の雪はこれらの中間に位す。

 雪は一面には列車運転を阻碍すると同時に、他方においては降雪期中には線路の修理作業を中止せしむる上に、さらに線路を害する事はなはだし。雪融解して水となり線路に浸潤し、さらに凍りて氷となり霜柱となり、それよりまた変じて水となり、路床を害し枕木を浮沈せしむ。殊に初寒雪の降り初めと春季雪解けの際において寒温交々到るのときは痛く線路を損傷し、その結果車両の脱線を惹起すること少なしとせず。

 


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2024年12月 3日 (火)

機関車工学:下巻(その111)天候不良の場合における運転:大風雨中の列車運転/風難の実例

【 風難の実例 】

 我国において列車が風難に遭遇したるの実例、左表のごとし。しかしてその多くは風速度が1時間 25「メートル」、すなわち1時間 56マイル以上に達したるときに起りたるを認め得べし。

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 最も風速度は遭難個所付近の測候所にて測りたるものなれば、現場における風力とは多少の相違あるを免れざるべく、就中颶風の性質を帯ぶるものはその速度を知るに困難なるは明かなり。

 

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2024年12月 2日 (月)

機関車工学:下巻(その110)天候不良の場合における運転:大風雨中の列車運転/暴風警報

【 暴風警報 】

 中央気象台より発表する暴風警報はその警戒を分ちて三種となせり。すなわち左のごとし。

 第一種

 これ沿海警戒と称し低気圧の勢力はなはだしからざるも、なお海岸のごとき風力を遮断すべきもの少なき処に在ては低気圧の影響少なからず。漁舟等には危険なるをもってもっぱら漁舟及び小舟等に対する注意報なり。その風速度は1秒時間 10ないし 15「メートル」、すなわち1時間 22ないし 34マイルの速度の範囲内なり。

 第二種

 これ海陸警戒と称するものにして第一種に比すれば低気圧の勢力やや強く、海陸共に風雨の恐れあるを示すものにして、その風速度は1秒時間 15ないし 20「メートル」、すなわち1時間 34ないし 45マイルの速度の範囲内なり。

 第三種

 これ暴風雨の警戒と言ひ低気圧の勢力盛んなるものにして、風力増大し海陸共に暴風雨の襲来を受くべき恐れあるを示す。その風速度は1秒時間 20「メートル」、すなわち1時間 45マイル以上のものに該当するものにして運転従事者の最も注意すべきものに属す。

 

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