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2021年12月の記事

2021年12月31日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その211)牽引定数査定上考慮すべき事項(2)

(2)連結器の強さ

 自動連結器の強さは試験の結果、その破壊引張力は100トン以上であると言われている。いま安全係数を5とすれば、その許容内力は20トンであるから、出発抵抗を重量1トン当たり8キログラムとして見ると、連結器の強さによる牽き出し重量は

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となり、連結器の強度のみから考えると、現在の最大機関車D50形式級最大牽引力よりもはるかに大きいから、現在の状態においては何ら支障は無いようである。

(3)乗降場の長さ

 旅客列車の場合、乗降場の長さが短いときは、その停車場へ停車の場合、客扱いを成すことが困難であるから、自ずからその両数は制限される事となる。現在主要幹線における編成両数は、15両を限度と考えられているので、この点からも牽引定数が定まる事となる。

 もし牽引能力が大きいにも関わらず、乗降場の長さ不足のため両数を制限される場合は、小型の機関車と取り換えることも考えられる。

(4)停車場内本線または待避線の有効長

 停車場構内本線または待避線の有効長は、連結両数を制限する要素となるもので、最大連結両数はこの有効長によって制限される事となるのである。

 しかし牽引定数査定上から考えると、牽引定数はその区間の支配勾配、および均衡速度によって定められるのが本則であるから、特別の場合の他は、これら有効長を無視して考えるのが普通である。

(5)地方的気候状態

 気候状態に付いては、地方的にみて冬季積雪多き地方等に在りては、夏季と同一の牽引定数とすることは無理なる場合があるから、これらに対しては冬季においても、ある程度の降雪に対抗し得る様、いく分牽引定数を割引して査定する事も必要である。

 

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2021年12月30日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その210)牽引定数査定上考慮すべき事項(1)

第6章 牽引定数査定上考慮すべき事項

 機関車の牽引定数は既に述べた通り、平坦線および勾配線では機関車の牽引力により、また下り勾配線を運転する貨物列車および混合列車は、制動力によって制限される事となるが、なお次に示す事項に付いても考慮しなければならない。

  (イ)停車場内において牽き出し得る両数

  (ロ)連結器の強さ

  (ハ)乗降場の長さ

  (ニ)停車場内本線または待避線の有効長

  (ホ)地方的気候の状態

 以下、これらに付き簡単に説明しよう。

(1)停車場内において牽き出し得る両数

 列車出発の場合は、車軸ジャーナルの摩擦抵抗が大きいため、出発抵抗として相当大なる抵抗を与えるから、下り勾配のみを考えて牽引定数を定めるときは、停車場において牽き出し不能となる場合がある。従って下り勾配の牽引定数を制定する場合には、停車場にて牽き出し得る両数を考える必要がある。

 また上り勾配の牽引定数は、普通10パーミル以下は10パーミルと同じ牽引定数となし、勾配の緩やかとなるだけ速度を昂上しているが、貨物列車等においては勾配の緩やなる区間にて、特に牽引定数を大ならしめる必要あるときは、6~8%に相当する牽引定数を制定することがある。

 かような場合は6~8%の上り勾配の牽引定数を、停車場において牽き出し得るや否やを検討しなければならない。

 すなわち停車場構内は建設規程によれば、3.5パーミル以内の上り勾配があるので、発車抵抗を重量1トン当たり8キログラムとすれば、この場合の重量1トン当たりの抵抗は11.5キログラムとなるのに対し、8パーミルの上り勾配線における抵抗は、走行抵抗を含んで1トン当たり10キログラム、あるいは10.5キログラム程度なるをもって、この場合は8パーミル上り勾配線に相当する牽引定数は、停車場の牽き出しによって制限される事となるわけである。

 従って10パーミル以下の勾配における場合は、一応これらに付き検討する必要が起こるのである。

 

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2021年12月29日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その209)下り勾配における牽引定数

第5章 下り勾配における牽引定数

 上り勾配における牽引定数は、多くは機関車の牽引力に支配されるものであるが、下り勾配における牽引定数は、主として制動力によって制限されるものである。

 現行の運転取扱心得では、下り勾配の制限速度を定めるのに、非常制動による制動距離が800メートル以内に納まる様にしている。従って定められた制限速度からの制動距離が800メートルになる様な制動力に相当する、牽引定数を定めれば良いわけである。

 まず旅客列車に付いて考えると、客車の制動率は設計上客車の80%、機関車は50%以上となっており、客車が積車である場合においても、なお70%近くの制動率を持っている点から考え、空走時間を考慮に入れなければ、客車は連結両数の多いほど制動力が多くなるから、結局制動距離は空走距離を入れて考えても、連結両数の多少によってあまり相違を来たさない事となる。

 従って制動力のみに対しては、旅客列車に対する下り勾配の牽引定数には制限が無い事となる。それ故旅客列車の牽引定数は、主として第6章に述べる諸項によって制限を受ける様になるのである。

 次に貨物列車に付いて考えると、貨物列車は旅客列車とその趣きを異にしている。すなわち空車の場合は、貨車の制動率も客車と同じく80%であるが、積車の場合は自重の割合に荷重が大なるため、その制動率は30%前後となる。

 しかるに機関車は前述の様に50%以上であるから、結局貨車の連結両数の増加に伴って、列車の総重量に対する制動圧力の割合が低下し、この結果制動距離を延長する事となるので、この場合は制動力によって勾配の牽引定数が制限される事となる。

 なお現行運転取扱心得に示せる制限速度は、次表の通りである。

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2021年12月28日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その208)上り勾配における牽引定数(2)

2.列車速度種類別と支配勾配の均衡速度との関係

 牽引定数の制定は、列車速度種類別によって異なるもので、旅客列車にありては運転費の経済と言うよりもむしろ、旅行時間の短縮を計るため高速度運転を必要とする場合が多いが、貨物列車においては鮮魚、野菜または宅扱い列車等のごとく、特に急送を要する貨物以外は、一般にその運賃を低廉に保つ必要上、運転費の経済を考慮する必要が生じ、一列車にてなるべく最大の量数を牽引する様、低速度運転も必要となってくるのである。

 従って牽引定数を制定する場合には、速度種類による支配勾配の均衡速度を別に定め置き、大体これを標準としてその列車の使命に応じて均衡速度を定め、これから逆に支配勾配の牽引定数を制定するのが常である。

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 いま列車速度種類別と、支配勾配の均衡速度の関係に対する一例を示すと、前表のごとくで、これを図示すれば64図の通りである。

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3.形式別機関車の牽引定数

 ある運転区間の形式別機関車牽引定数を定めるには、第2章において図示したごとき牽引重量線図を利用し、支配勾配に対する均衡速度より牽引重量を見出し、各列車の牽引定数を制定すれば良いわけである。

 以上は上り勾配の牽引定数を制定する方法を述べたが、普通の場合は理論的に計算した牽引重量と運転速度によって試運転を行い、線路状態および地方的状況を考慮し、列車運転に無理のない様に牽引定数を定めるものである。

 しかしその区間に種々の形式の機関車がある場合は、最も多く使用される機関車に付いてのみ試運転を行い、その他のものに対しては、支配勾配の均衡速度より牽引定数を定めるのが通例となっている。

 

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2021年12月27日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その207)上り勾配における牽引定数(1)

第4章 上り勾配における牽引定数

1.運転区間の分割

 機関車の牽引定数とは既に述べた様に、各種形式の機関車が列車速度種別により、各区間を定められた運転時間によって運転するとき、安全に牽引し得る重量の最大両数を言うのであって、原則としてはこの重量を超えて牽引する事のできない制限を成しているものである。

 牽引定数は機関車の形式別、線路別および速度種類別に定められるもので、このうち機関車の形式と運転線路が定まれば、結局速度種類別に対する速度を決定することによって、その区間の牽引定数は決まる事となる。

 従って牽引定数を査定するには、機関車の形式、線路状態および速度種類別による、各々の場合に付いて研究する必要がある。

 機関車の牽引定数は、客貨の輸送と密接な関係があるから、なるべくその地方の輸送状態に応ずる様な、牽引定数を制定する必要がある。従って列車の性質によっては、その運転区間を一区間として牽引定数を制定する場合もあり、またその運転区間を適当に分割して、各区間の支配勾配によって牽引定数を定める場合もある。

 例えば勾配線等で、輸送量が極めて制限される様な場合には、わずか1両でも多く牽引せしめることのために、区間を分割する事があり、また大きな機関車を使用している箇所では、わずか換算2~3両位の差異の時は、ことさらに区間を独立せしめる必要がないので、長い区間として査定する場合もある。

 結局、運転区間を分割するや否やは列車の性質、ならびに地方の輸送状態によるものである。

 

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2021年12月26日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その206)支配勾配の決定方法(2)

(2)勾配上の取扱い均衡速度

 勾配上における均衡速度が高ければ、麓における速度が相当高くても、間もなく均衡速度まで低下するから、その標準長さは短くなる。なお列車が上り勾配において均衡速度に達する付近では、速度の低下し方が緩かであるため査定し難いこと、ならびに安全のため、各勾配の均衡速度より5キロメートル/時高めたものをもって、この場合、勾配上の均衡速度と仮定する。

 上り勾配の均衡速度は、列車速度種別によって異なるから、この場合の取扱い均衡速度もまた異なってくるが、貨物列車に付いて考えると、貨物列車の最低均衡速度は18キロメートル/時を標準としているから、この場合の取扱い均衡速度は23キロメートル/時となる。

(3)上り勾配の程度

 上り勾配の程度に付いては勾配の急なるほど、列車の減速は急に行われるので、従って支配勾配となるべき勾配の標準長さは短くなる。

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 いま各勾配に相当する牽引定数を牽引して運転したる場合、取扱い均衡速度に達するまでの減速線図を描けば、第63図の様になる。

 この図は列車が任意の速度をもってその麓に差し掛かった場合、その速度から漸次減速して取扱い均衡速度に達するまでに、いくばくの距離を進行し得るやという関係を示している。なお、曲線中 10・・・・・・25 とあるは、実際勾配がそれぞれ 10・・・・・・25 パーミルの箇所を、その勾配に相当する牽引重量を牽引して運転する場合を示せるものである。

 いま第63図によって、支配勾配となる実際勾配の標準長さは、いくばくなるかを知るには、まず前に述べた速度線図によって、勾配の麓における速度を知り、その速度にて勾配にかかり、取扱い均衡速度に達するまでの距離を見出せば、それがすなわち標準長さとなるわけである。

 例えば停車場から勾配の麓までの距離が2キロメートル、その勾配を10パーミルと仮定すれば、第61図より勾配の麓の速度を46キロメートル/時を得る事となる。よって第63図より10パーミル勾配を46キロメートル/時で上りはじめ、均衡速度23キロメートル/時に達するまでの距離を求めると、約1.45キロメートルを得る。これがすなわち支配勾配査定の標準長さとなるので、この長さを超えるときは機関車の牽引勾配は、10パーミル勾配に相当するものを適用しなければならない事となる。

 もし勾配の延長が1.45キロメートル以下なるときは、その長さによっても相違するが、この勾配は仮想勾配となるから、機関車は10パーミル勾配よりも緩やかな勾配に相当する定数を、牽引し得ることを示すものである。
 

 

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2021年12月25日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その205)支配勾配の決定方法(1)

3.支配勾配の決定方法

 ある区間の急勾配の長さが非常に長い場合は、もちろんその勾配によって牽引重量が制限されるから、その勾配が支配勾配となるが、もし勾配の延長が短いときは、勾配の麓における速度の有するエネルギーを利用する事によって、実際の勾配よりも緩かなる勾配、すなわち仮想勾配にて牽引重量を定めることができる事となる。

 従って支配勾配を決定するには、上り勾配線の延長がいくばく以上であるとき、実際勾配に相当する牽引重量を適用するかの、標準の長さを求めなければならない。

 それ故、上り勾配に対する標準長さを求めるに必要な条件としては、勾配の麓における速度、勾配上の取扱い最低均衡速度、および上り勾配の程度等を考えなければならない。

(1)勾配の麓における速度の求め方

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 まず最初に第61図のごとき速度線図を描いておくのである。この線図の描き方は、上り勾配における最低均衡速度を決めて、各勾配に相当した牽引重量を求め、この牽引重量で平坦線を運転する場合の速度を描けば良い。

 速度の加速状態を考えると、25パーミルの勾配に対する牽引重量は、これよりも緩かな勾配に対するものより少ないから、この重量で平坦線を運転すれば、他の勾配に対するものよりも速度の高くなること図のごとくである。

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 次に第62図のごとく、実際の線路縦断面図を修正したものを作る。図において(A)は実際の線路縦断面図、(B)は修正線路縦断面図を示すものである。しかるときは第62図(B)の線路縦断面図に対する停車場中心より、勾配の麓までの距離および勾配によって、第61図から勾配の麓における速度を見出すことができる。

 例えば第62図の修正線路縦断面図において、停車場より b 点までの距離が2キロメートルであるとき、b 点からの勾配が10パーミル勾配とすれば、勾配の麓の速度、すなわち b 点の速度は第61図から46キロメートル/時となる。

 

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2021年12月24日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その204)仮想勾配の意義とその求め方

2.仮想勾配の意義とその求め方

 列車が上り勾配に差し掛かった場合、その勾配の麓(ふもと)における速度が高く、勾配を上る間にその速度を低下して差し支えない場合は、速度低下のために放出するエネルギーが機関車の牽引力を助ける事になり、勾配を容易に上ることができる。

 例えば実際勾配は12パーミル(‰)でも、速度低下のために生じた惰性によって、2パーミルの勾配に相当する力が補助されたとすれば、列車は10パーミルの上り勾配を一定速度で上ったと同じ事になる。かように考えた場合の勾配を、仮想勾配と称しているのである。

 仮想勾配を計算するには、勾配の麓における速度の惰性、すなわち速度の有するエネルギーを利用するものであるから、まずエネルギーに付いて考えなければならない。

 いま勾配の麓における速度を V₁(メートル/秒)、頂上における速度を V₂(メートル/秒)とすれば、速度低下のために放出されるエネルギーは、速度 V₁ に対するエネルギーと、速度 V₂ に対するエネルギーとの差であるから、次の様になる。

P305

 列車には車輪および車軸の様な回転部分があり、減速する時はこれらの回転部分も同時に減速するので、これがためさらにエネルギーを放出する。その程度は一般に、直進部分のエネルギーの6%位であると考えられているから、Ek の値を6%増加し、且つ質量 m の代わりに

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を代入すれば

P306_20211127110301

となる。

 このエネルギーによって、列車は全然蒸気を使用しなくても、速度が V₁ から V₂ に低下するまでには、相当の距離を進行することができる。

 この場合、列車重量 w(キログラム)が、勾配の高さを h(メートル)だけ上ったとすれば、これに要したエネルギーは w×h(キログラムメートル)であって、これは速度が低下したために放出したエネルギー Ek と等しいはずで、これによって運動エネルギーが位置のエネルギーに変化したことがわかる。

 故に

P306_20211127110401

 従って

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 この式は速度の単位が メートル/秒 であるが、実用上 キロメートル/時 単位が便利であるから、V₁ および V₂ をキロメートル/時の単位に変え、これを V₁ および V₂ とすれば

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となるから、これを前式に代入して


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 第60図において、実際勾配 AB を運転する場合を考えると、列車は高さ H(メートル)だけ上らなければならないのであるが、麓の速度の高い場合はこの速度の惰性のため、h(メートル)すなわち AA' だけを助けられる事となるから、結局列車は H と h との差 H-h(メートル)だけ上れば良いことになり、これはちょうど A'B の勾配を上るのと同じ結果となる。この緩やかになった勾配が、すなわち仮想勾配となるのである。

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 今この仮想勾配を千分率で表わし、これを iv とすれば、第60図によって知られる様に

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 しかして上式の h に第181式を代入すれば

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 このうち

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は実際勾配を千分率で示したもので、これを i で表わせば、仮想勾配は次の様に表わされる。

P308_20211127110801

 もし勾配の麓における速度 V₁ と、頂上における速度 V₂ が等しい時には、

P308_20211127110802

となるから、仮想勾配は実際勾配と一致する事となり、この場合は速度の惰性は全然得られない事となるのである。

 上式は速度低下のためにできたエネルギーを勾配を上る間、常に平均に利用するという仮定の式であるから、実際運転に当たっては、最も優れた技量を発揮しなければ、これと一致することはなかなか困難である。

 なお仮想勾配は重量の多い列車ほど、放出する速度のエネルギーは大であるが、このエネルギーをもって勾配を上るにも、また大なる力を要する理由から、列車重量には無関係であると言い得られるのである。

 

【 例 】

 25パーミル上り勾配線の長さが1500メートルある箇所を、ある列車がその麓において55キロメートル/時の速度をもって上り始め、勾配の頂上において15キロメートル/時に減速したりと言う。

 この場合の仮想勾配はいくばくとなるか。

【 解 】

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の式を用いる。

 しかるに

P308_20211127110902

なる故

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 すなわち実際勾配は25パーミルであるが、速度の惰性を利用するため、ちょど17.2パーミルの勾配を上るに等しくなる。

 

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2021年12月23日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その203)支配勾配の意義

第3章 支配勾配

1.支配勾配の意義

 列車を運転する区間には、種々の勾配や曲線等が様々に配置されているから、勾配の緩急、曲線の大小等によって、列車運転に抵抗する割合も自ずから異なってくる。

 ある区間における機関車の牽引重量を求めるには、まずその区間の線路縦断面図を見て、いずれの部分の勾配が列車の運転に対して最も大なる抵抗を与える勾配であるか、言い換えるといずれの勾配が、最も大なる牽引力を必要とする箇所であるかを調べる必要が起こって来る。

 かようにその区間で最大牽引力を必要とする様な勾配を称して、支配勾配と言っている。なおこの勾配を牽引定数を査定する勾配であるという意味で、査定勾配とも称している。

 支配勾配は、必ずしもその線路中の最急勾配ではなく、全く牽引重量を制限する勾配でなければならないので、例えば急勾配であってその長さが短く、しかも勾配の麓の速度が高く、惰性を利用して勾配を上り得る場合には、その勾配に相当する牽引重量よりも、はるかに多い重量を牽引し得る事となるからである。

 しかしその線路の最急勾配の延長が、非常に短いにも関わらず、停車場を出発して未だ十分に活足の付かないうちに、すぐその急勾配に差し掛かる様な場合は、その麓の速度を高めることができないため、全然速度の惰性を利用する事のできない場合がある。

 かような場合は、その線路中の最も急な勾配が支配勾配となるので、これによって列車の牽引重量は制限される事になるのである。しかしながら、かような場合は極めて稀であって、大概はその区間の標準勾配に支配されることが多い。

 以上の様に支配勾配はその勾配の長さ、および勾配の麓における速度によって異なるものであって、勾配の長さが短く、また勾配の麓の速度が高い場合は、その実際勾配に相当する牽引重量よりも多い重量を牽引する事ができるのは、全く次に述べる様に、仮想勾配を利用し得るからである。

 

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2021年12月22日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その202)牽引重量を支配する要素

4.牽引重量を支配する要素

 機関車の牽引重量を求めるには、既に述べたごとく次の事柄を考えねばならぬ。

  (1)機関車の指示牽引力

  (2)機関車の走行抵抗

  (3)牽引車両1トン当たりの走行抵抗

  (4)線路の勾配および曲線の程度

 機関車の指示牽引力は、缶の容量およびシリンダー寸法等の大きいものほど大きく、また同一形式の機関車でも速度によって異なり、高速度になるほど小さくなり、また同一形式機関車が同一速度で運転しても、石炭の種類と燃焼率の大小によって相違し、発熱量の大なる石炭を大量に燃焼せしめれば、かなり牽引力を増すことができるが、劣質の石炭を少量ずつ使用した場合は、牽引力は小さくなる。

 かような理由から、結局機関車の指示牽引力は機関車の大きさ、すなわち形式、速度および石炭の使用状態によって制限される。

 次に機関車の走行抵抗は、機関車の構造、重量および速度に関係し、動軸数の多いもの、また重量の重いものは抵抗が大きく、同一形式の機関車でも速度によって走行抵抗に相違がある。

 すなわち高速度の場合は、その値が大きくなる。それ故、機関車の走行抵抗は、機関車の形式および速度に関係がある。

 牽引車両の重量1トン当たりの走行抵抗は、ボギー客車としからざるものによって相違するばかりでなく、速度によって非常な相違がある。ボギー客車は、その他の貨車または四輪あるいは六輪客車等に比して抵抗が少なく、また同一車両でも速度が高くなると抵抗が大きくなることは、機関車の場合と同様で、結局牽引車両の重量1トン当たり走行抵抗は、車両の構造と速度によって相違する。

 線路の勾配が急なれば急なほど抵抗が増加するので、牽引重量は小さくなり、また曲線半径の小さい線路では曲線抵抗が大きいので、牽引重量は制限を受け小さくなる。かような理由で、結局線路の状態によっても牽引重量に相違がある。

 以上述べたところを要約すると、機関車の牽引重量を支配する要素中

  機関車の指示牽引力は・・・・・・機関車の形式、速度、石炭の使用状態

  機関車の走行抵抗は・・・・・・機関車の形式、速度

  牽引車両の重量1トン当たり走行抵抗は・・・・・・牽引車両の構造、速度

  勾配および曲線抵抗は・・・・・・線路の状態

に関係し、牽引重量はこれらの総合的影響を受け、結局、機関車の形式、速度、牽引車両の構造、線路状態および石炭の使用状態に関係するもので、これがすなわち牽引重量を支配する要素である。

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 第59図はC51形式と8620形式機関車の、各速度に対する牽引重量を、10パーミル(‰)および25パーミルの上り勾配に付いて求めたもので、同一機関車でも速度によって牽引重量にはなはだしい相違がある。例えば10パーミルの上り勾配において、8620形式は速度30キロメートル/時のときは295トン、60キロメートル/時においては80トンで、速度の増加に対し牽引重量は3分の1以下になる。

 かように大なる相違を生ずる理由は、牽引力は速度の増加に伴って減少し、機関車および客車の走行抵抗は、これと反対に増加するがためで、速度の増加に伴い牽引重量は急激に減少するのである。

 勾配が牽引重量に及ぼす影響は極めて大である。例えばC51形式機関車において見るに、速度30キロメートル/時の場合、10パーミル上り勾配では445トン、25‰上り勾配ではわずかに140トンで、勾配の程度が2.5倍になったの対し、牽引重量は 3.18分の1 である。

 この理由は機関車自身の勾配抵抗のため、引張棒牽引力が25パーミル上り勾配に対するものの方が小さくなるからである。

 それ故、列車の運転計画に当たっては、急勾配になるに従い運転速度を低下して、牽引重量の減少することを、ある程度食い止める方法を講じている。

 

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2021年12月21日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その201)均衡速度(2)

【 例1 】

 C57形式機関車が旅客列車を牽引し、40キロメートル/時の速度をもって、10パーミル(‰)上り勾配を運転せんとする。その牽引重量はいくばくなるか。

 ただし40キロメートル/時における指示牽引力は7070キログラム、機関車走行抵抗および客車走行抵抗は運輸局の式によるものとする。(重量その他は付録の機関車の機能表参照)

【 解 】

 まず機関車走行抵抗を求める。

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に各値を代入すれば

P300_20211123220001

 従って平坦線における引張棒牽引力は

P300_20211123220002

 次に客車の走行抵抗を求める。

P300_20211123220003

に速度を代入して

P300_20211123220101

 なお勾配抵抗がトン当たり10キログラムなることは、前に述べた通りである。よって求める牽引重量は(179)式より

P300_20211123220102


【 例2 】

 D51形式機関車が、10パーミル上り勾配にて停止せる場合の、最大牽出重量を求めよ。

 ただし牽き出しの際の牽引力は、粘着力に制限されるものとし、この場合、指示粘着係数として 3.7分の1、出発抵抗はトン当たり8キログラムとする。(動輪上重量その他は付録の機関車機能表によること)

【 解 】

 まず指示粘着力を求める。

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 従って引張棒牽引力は、この場合は粘着力より機関車抵抗として、機関車全体の出発抵抗を差し引けば良いから

P301_20211123220201

 よって牽き出し得る重量は(179)式により

P301_20211123220202

 

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2021年12月20日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その200)均衡速度(1)

3.均衡速度

 均衡速度とは、列車がある速度をもって運転する場合、機関車の指示牽引力と、列車全体の総抵抗力が同じくなった時、言い換えると機関車の引張棒牽引力と、牽引せる全車両の総抵抗力とが釣合った時の速度を言うのである。

 機関車の牽引力と、列車の抵抗力との関係に付いて考えると、低速度のときはシリンダー牽引力は列車抵抗よりも大きいが、臨界速度以上になると、速度の増加に従って缶の蒸発量の制限を受け、牽引力は漸次減少するものである。

 一方列車抵抗は、出発の際は車軸ジャーナルの摩擦抵抗の増加により、相当大なる抵抗となるが、列車が出発すれば漸次抵抗は減少し、速度10キロメートル/時前後において最小の値となり、それ以後は速度の増加に従い、牽引力とは反対に漸次増加するものである。

 従ってある速度においては、機関車の牽引力と列車の抵抗力とが相等しくなる。すなわち両者が均衡状態となることが考えられる。この意味からこの時の速度を、特に均衡速度と称しているわけである。

 もしこの均衡速度に達した後、機関車の牽引力も線路状態にも変化が無いものとすれば、列車はこの均衡速度をもって等速度運転をすることになる。

58_20211121140901

 以上の観念を確実にするため、第58図においてこれを説明すると、A と B は平坦線と 10パーミル(‰)上り勾配線の引張棒牽引力、C と D は平坦線と 10パーミル上り勾配線の牽引車両の全抵抗にして、A 線と C 線との交点 P₁、B 線と D 線との交点 P₂ に対する速度が平坦線、10パーミル上り勾配線の各々に対する均衡速度である。

 機関車の牽引力が列車の抵抗力に対して、なお余力のあるときは、列車を加速せしめる力があるから、これを加速力と言い、牽引力が列車の抵抗力よりも小なるときは、列車は漸次減速する事となるので、これを減速力と称している。

 例えば第58図において A 線と C 線との交点 P₁ の速度よりも、低速度の場合を考えると、列車はこの P₁ の速度までは加速できるから、結局加速力を有する事となり、また反対に列車が P₁ よりも高い速度であるときは、列車の走行抵抗が牽引力よりも大きいから、漸次減速して P₁ の速度となるので、かかる場合には列車は減速力の作用を受ける事となるわけである。

 

523p298
523p299

2021年12月19日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その199)牽引重量

2.牽引重量

 機関車の引張棒牽引力は、全部牽引する車両に有効に利用されるものであるから、平坦直線を運転する列車に付いて考える時は、ある速度において牽引する車両の走行抵抗と、機関車の引張棒牽引力とは等しいはずであるから、次の関係が成り立つ事となる。

P295_20211121111201

 従って

P295_20211121111202

 この式は平坦直線に対する牽引重量であるが、勾配または曲線のある線路なるときは、指示牽引力から機関車自身の走行抵抗と、勾配抵抗(曲線抵抗は換算して勾配抵抗として表す)との和だけを引いたものが、客貨車を牽引するに有効な牽引力となる。もちろんこの場合には、牽引車両も同じく勾配抵抗の影響を考えねばならない。

 従ってある速度においては、機関車の引張棒牽引力と牽引車両の抵抗とは釣合の状態となるから、第178式と同様にその牽引重量を求めることができる。

 すなわち

P296

 従って

P296_20211121111201

 以上のごとく、牽引重量は客貨車を牽引するに有効な牽引力、すなわち引張棒牽引力を同一速度、および線路状態に相当する、牽引車両1トン当たりの抵抗で除した商を求めれば良いわけである。

P296c57

 今その例をC57形式機関車に付き示せば前表の通りで、また機関車の牽引重量線図の一例を示せば、第57図の通りである。

57c57

 

522p295
522p296
522p297
523p298

2021年12月18日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その198)引張棒牽引力

第2章 牽引重量

1.引張棒牽引力

 シリンダー内の蒸気圧力によって発揮される指示牽引力は、これが全部客貨車を牽引する力として有効に利用されるものでなく、その一部分は機関車自身の抵抗のために減殺されるものである。従ってこの指示牽引力から、機関車自身のために失われる抵抗を差し引いた残りの牽引力、すなわち客貨車を牽引するのに役立つ牽引力を、特に引張棒牽引力と称している。

 ふつう一般に呼ばれている引張棒牽引力とは、機関車の指示牽引力から機関車自身の走行抵抗を差し引いた、言わば平坦線における正味の牽引力を言っている。

 しかし広い意味では、機関車に対する勾配抵抗を差し引いたものが、真の引張棒牽引力であるが、ここでは便宜上、前者に対する正味の牽引力を指すものとする。

 引張棒牽引力は、第3編に述べたる3つの牽引力より、機関車自身の抵抗を差し引いた次の式によって表される。

P294

 しかして機関車が発揮する最大引張棒牽引力は、これら3つのうち最小のものによって制限されるのである。

 いま代表的機関車の平坦線における引張棒牽引力を示せば、次表の通りである。

P295

 

521p294_20211121101801
522p295

2021年12月17日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その197)牽引定数の意義

第5編 機関車牽引定数

第1章 牽引定数の意義

 機関車の牽引定数とは、各種形式の機関車が列車速度の種別により、各区間を定められた運転時間により運転するとき、安全に牽引し得る重量の最大両数を言うのである。

 しかして機関車の牽引定数は同一形式の機関車でも、旅客列車の速度種別に対するものは、貨物列車の速度種別に対するよりも少なく、また同一形式の機関車で、しかも同じ速度種別であっても、運転区間の勾配の緩急によって差異を生ずるものである。

 輸送方面より見るときは、機関車はある程度までは、相当多くの車両を牽引せしめる方が経済的であるが、天候が不良のために列車の抵抗力が増加せる場合、または重量品を積載した貨車が多数連結せられたる場合等には、定められた運転速度をもって列車を操縦することができないため、区間の定時運転が困難となり、ついには列車の運行を乱す様な結果となるので、これらの支障を起こさぬ様に成すには列車速度種別に応じて、安全なる範囲において、最大限度の定数を制定する必要が起こるのである。

 しかしながら、いかなる天候でも、いかに多く重量品積載貨車が連結されても、常に無事に定時運転を成し得る様な牽引定数を制定すると、平素の運転においては非常に不経済であるから、最も妥当な牽引定数を定めることが必要である。

 牽引定数を制定するには、機関車が牽引し得る重量をトン数をもって表わす事が合理的であるが、我が国においては後に述べる様に、重量10トンをもって換算1両とする、いわゆる換算両数法によっている。

 牽引定数を制定するには、既に述べた機関車牽引力および列車抵抗と基とし、次に述べる牽引重量、均衡速度および支配勾配(査定勾配)の求め方等に付いて研究せねばならない。

 以下、順次これらに付いて説明する事としよう。

 

511p293
521p294

2021年12月16日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その196)加速度抵抗(3)

【 例1 】

 重量1トンに付き、平均8キログラムの抵抗力に打ち勝って進行する、全重量500トンの列車が、その指示牽引力として8000キログラムを出したとすれば、毎秒毎時いくばくの加速度となるか。

【 解 】

 重量1トン当たりの列車の加速度を求めるには、指示牽引力から列車の全抵抗を差し引き、これを列車の全重量で除せばよい。すなわち


P291

 加速力と加速度との関係は(174)式

   F =30A

を用い、F =8 を代入すれば

P291_20211117162801


【 例2 】

 ある列車が、毎時50キロメートルの速度で走行しつつあるものを、毎時65キロメートル/時の速度と成すために、40秒を要したりという。

 加速度抵抗いくばくなるか。

【 解 】

P292

の式を用い

P292_20211117162901

を上式に代入すれば

P292_20211117163101


【 例3】

 総重量1000トンの貨物列車が、距離500メートルを走行して、速度10キロメートル/時より30キロメートル/時に加速したという。

 この場合の総加速力を求めよ。

【 解 】

P292_20211117163201

 の式を用い

P292_20211117163202

を代入し

P292_20211117163301

 従って全列車の加速力は

P292_20211117163302


【 例4 】

 総重量700トンの列車が、10パーミル(‰)上り勾配線を惰行運転で上りつつあるとき、ある地点の速度が70キロメートル/時とすれば、この列車は以後いくばく進行し得るか。

 ただし列車運転による走行抵抗は考えないものとする。

【 解 】

 加速力(減速力)と速度とを知って、走行距離を求めるのであるから

P292_20211117163303

の式を用い

P292_20211117163401

 この場合 V₁ は70キロメートル/時、V₂ は停車するときの速度であるからゼロである。また F は走行抵抗を全然考えないから、単に勾配による抵抗、すなわち減速力で負号(マイナス)を採る。従ってこれらの値を上式に代入すれば

P292_20211117163402

 すなわち進行し得る距離は2043メートルである。

 

461p291
461p292

 

2021年12月15日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その195)加速度抵抗(2)

(1)加速度 a の単位を変えた場合

 第173式の a は、その単位が(メートル/秒/秒)で表わされているが、日常我々が用いる加速度の単位は(キロメートル/時/秒)が便利であるから、この単位を A とし、同式の a にこれを代入すると次のごとくなる。

P289

であるから第173式は

P289_20211117111101

  F =加速度抵抗(キログラム/トン)

  A =加速度(キロメートル/時/秒)

(2)加速度 a を速度と時間とにて表した場合

 いま加速前の速度を v₁(メートル/秒)、V₁(キロメートル/時)、加速後の速度を v₂(メートル/秒)、V₂(キロメートル/時)とし、加速する間に要する時間を t(秒)、T(分)とすれば、これらの間には次の関係がある。

P289_20211117111201

 しかるに加速度は時間に対する速度の増加割合であるから、

P289_20211117111202

となる。

 従って

P289_20211117111301

となるをもって、これを第173式に代入すれば

P289_20211117111302
P290

  F =加速度抵抗(キログラム/トン)

  V₁ =加速前の速度(キロメートル/時)

  V₂ =加速後の速度(キロメートル/時)

  T =速度が V₁ から V₂ に加速する間に要する時間(分)

(3)加速度 a を距離と速度で表わした場合

 いま加速前の速度を v₁(メートル/秒)、V₁(キロメートル/時)、加速後の速度を v₂(メートル/秒)、V₂(キロメートル/時)、また加速する間に走行せる距離を S(メートル)とすれば、加速度とこれらの間には次の関係がある。

P290_20211117111401

 v₁ および v₂ を V₁ および V₂ に単位を変え、これを前式に代入すれば

P290_20211117111501

 よってこれを第173式に代入すれば

P290_20211117111601

  F =加速度抵抗(キログラム/トン)

  V₁ =加速前の速度(キロメートル/時)

  V₂ =加速後の速度(キロメートル/時)

  S =V₁ から V₂ に加速する間に走行した距離(メートル)

 以上、要するに加速度抵抗を求めるに必要な公式として、ぜひ記憶しなければならないのは、(174)、(175)および(176)の3つであるが、これらの式を使用する上に記憶していなければならない事が2つある。

 その1つは、上式はいずれも一定加速度の場合の式であること、他は回転部分の影響を6%と仮定したものであるから、蒸気列車にはもちろん適合するが、電気機関車および電動車は回転部分の影響が大きいので、上式で求めた加速度抵抗を、1割増し位にしなければならない事である。

 実際問題として加速度は加速中、決して一様のものでなく、低速度の間は加速割合が大であるが、高速度になるに従い加速度が小さくなる。

 この理由には2つあって、1つは牽引力が速度の増加に伴い減少することと、いま1つの原因は、走行抵抗が速度と共に増加していくので、結局両者の差は段々小さくなって、加速度も漸次小さくなり、最後にある速度に到達すれば、全然加速し得ない事になるものである。

 

461p289
461p290
461p291

2021年12月14日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その194)加速度抵抗(1)

第6章 加速度抵抗

 列車が出発してある速度に達するまでには、車両の抵抗に打ち勝って列車を加速するために牽引力を要し、またある速度で運転しつつある列車の速度を、より以上に高めるためにも、なお余分の牽引力を要することは明らかで、これを称して加速度抵抗と言っている。

 しかしこの抵抗は、前に述べた車両の走行抵抗、あるいは曲線抵抗等の様な全く損失となるものと異なって、列車を加速せしめるために消費される力であるから、これを抵抗と称することはあまり妥当ではないが、列車の運転に当たってより多くの牽引力を要するという意味において、抵抗という言葉を使用している。

 列車を加速するに要する力、すなわち牽引力は力学上から、次の式によって求めることができる。

P287_20211117094701

  f =加速に必要な力(キログラム)

  m =列車の質量(キログラム)

  w =列車の重量(キログラム)

  g =重量による加速度=9.8(メートル/秒/秒)

  x =列車の加速度(メートル/秒/秒)

 いま列車の重量をトンにて表し、これを W とすれば

   w = 1000W

となるから、前式はまた次のごとくなる。

P288

 また列車重量1トン当たりの加速力を F とすれば

P288_20211117094801

 以上の式で求めた加速力 F は、車両の直進部分を加速するに必要な力であるが、車両には車輪、車軸の様な回転部分があり、これらは速度の増加に正比例して回転速度が早くなるので、この回転を速めるためにも力が必要となる。

 しかしてこの力は加速度に正比例するの他、回転部分の重量および回転半径にも関係を持っている。すなわち回転部分の大きいものほど、また回転半径の大きいものほど、同一加速度に対して大きい力を必要とするのである。

 かように回転部分の速度を高めるに必要な力を、ふつう直進部分の6%とみなされている。従ってこの回転部分の影響を考えると、前式は次のごとくなる。

P288_20211117094802

 これがいわゆる加速度抵抗である。しかしてこの式が基本となり、このうちの a の単位の採り方を変えるとか、時間と速度の関係で表わすとか、あるいは速度と距離とで表わすとかによって、この抵抗式が種々の形として表わされている。

 以下これを3つの種類に分け、加速度抵抗式を示してみよう。

 

461p287_20211117094301
461p288

2021年12月13日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その193)換算勾配

2.換算勾配

 列車の運転に抵抗を与える点では、曲線抵抗も勾配抵抗と同様である。それ故、勾配線上に曲線が介在するときは、この曲線抵抗を求め、これを勾配抵抗に加えた和を換算抵抗と呼び、ちょうどこれに相当する勾配の様に取り扱う場合がある。

 例えば10パーミル(‰)上り勾配中に、半径300メートルの曲線が介在するときは、列車は走行抵抗の他に勾配抵抗の10と、曲線抵抗の2との合計12キログラム/トンで、ちょうど12パーミルの上り勾配の直線を運転する場合の勾配抵抗と等しい事になる。

 従って換算抵抗は(164)と(169)式とを使用することにより、次の式によって表される。

P286

 しかし実際においては、一つの勾配中に種々の半径と長さの曲線が介在する場合が相当あるから、かような場合は次の式によって求められる。

P286_20211114114001


【 例 】

 長さ1500メートルの10パーミル上り勾配線中に、次の曲線半径と長さとを有する曲線が介在するとき、その換算勾配はいくばくなるか。

  曲線半径(m)  曲線長さ(m)

     300       300

     450       250

     500       400

【 解 】

 勾配を上る場合と下る場合とに付いて計算しなければならない。

 勾配を上る場合

P286_20211114114002

 勾配を下る場合

P287

 すなわち勾配を上るときには曲線抵抗が加わって、ちょうど10.94パーミルの直線の上り勾配を上るのに相当し、また勾配を下るときは曲線抵抗のため、ちょうど9.06パーミルの直線の下り勾配を運転するのに等しい。

 

452p285
452p286
461p287

2021年12月12日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その192)曲線抵抗

第5章 曲線抵抗

1.曲線抵抗

 車両が曲線路を運転する場合には、全ての条件が全く同じでも、直線路を走行する場合に比較し、運転を妨げようとする抵抗が増すものであって、これを曲線抵抗と称している。

 曲線抵抗を起こす原因を見ると、大体次の4つを挙げることができる。

 (1)曲線の外側にあるフランジと、レール間に生ずる摩擦抵抗。

 (2)回転の中心(車両が曲線で方向転換するための中心)より前方は曲線の内側へ、後方は曲線の外側へ滑る、レールと車輪踏面間の滑り摩擦抵抗。

 (3)曲線の外側レールは内側に比して、その長さが長いため、車輪踏面の勾配によって緩和する様になっているが、これが適当になっていない場合に起こる、車輪のレール面を前後に滑るための滑り抵抗摩擦。

 (4)車両が垂直軸を中心として回転するために起こる摩擦抵抗。

 曲線抵抗を構成する抵抗の中で主要な値を持つものは、(1)の場合のフランジとレール間の摩擦抵抗である。すなわち曲線を通過する場合には、必ず遠心力を生ずるものであるが、この遠心力は速度の二乗に比例して増加するもので、それだけ摩擦抵抗が増加するものである。

 従って曲線抵抗は、その曲線半径はもちろん、軌間、カントおよびスラック量、車両の固定軸距、車両の構造、レールの摩擦状態によってその値が異なるから、一般的に適用し得る様な公式を見出すことは不可能であるが、一般には曲線半径にのみ関係させて表しているものが多い。

 その中でモリソン氏は、これを表すに次の式を示している。

P283

  Rc =曲線抵抗(キログラム/トン)

  μ =車輪とレール間の摩擦係数(粘着係数)

  G =軌 間(メートル)

  L =固定軸距(メートル)

  r =曲線半径(メートル)

 いまこの式に

P284

を代入すれば

P284_20211114104601

となり、車輪とレールとの間の粘着係数および固定軸距等から考えて、本式は妥当なるものと考えられる。

 また米国においては曲線の程度を表すのに、これを度数で示している。例えば2度の曲線、または3度の曲線等と称している。従って曲線抵抗も角度1度には何程と称している。

56_20211114104601

 これを求めるには第56図に示す様に、弦の長さ100フィートの中に挟まれている中心角 θ がこれである。次に角度と半径との関係を求める必要がある。

 図において

P284_20211114104701

 しかるに θ は小さく、ふつう10度内外のものであるから

P284_20211114104702

と考えて差し支えない。従って

P285

 故に

P285_20211114104801

  θ =曲線の強さを示す角度(度)

  r =曲線半径(フィート)

 すなわち5730を曲線半径(呎:フィート)で除せば、曲線角度が求められる。また曲線半径をメートルにて示す場合は

P285_20211114104901

  θ =曲線の強さを示す角度(度)

  Ro =曲線半径(メートル)

 曲線抵抗は他の抵抗よりも比較的小さいため、特に精確を要する様な場合の他は、これを無視しても実用上には大なる差し支えは起こらない様であるが、勾配が急で、しかも半径の小なる曲線がある場合には、相当影響すること大であるから、かかる場合は十分に考慮する必要がある。


【 例 】

 D51形式機関車が半径300メートルの曲線を通過する場合の、全曲線抵抗を求めよ。

 ただし機関車の総重量は、運転整備の場合を採り125.1トンとする。

【 解 】

P285_20211114104902
P285_20211114104903

 

451p282_20211114102301
451p283
451p284
452p285

2021年12月11日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その191)勾配抵抗(2)

【 例1 】

 出発抵抗を8キログラム/トンとすれば、勾配線上にて自動し得る勾配の程度いくばくなるか。

【 解 】

 勾配の加速力が8キログラム/トンよりも少しでも大きくなると、出発抵抗に打ち勝って転動するはずである。8パーミル(‰)の勾配では8キログラム/トンの加速力があるから、求める勾配の程度は、8パーミルを超える勾配でなければならない。

 しかし実際問題としては衝動のため、あるいは全列車一時に転動し始めるものでない理由から、より緩なる勾配でも転動し始めるものである。


【 例2 】

 客車1トン当たりの走行抵抗が 1.72+0.00061V² ( V=速度 キロメートル/時)で表わされるものとし、この客車が8パーミル下り勾配を転動し始めた場合、全然制動を施さないとすれば、速度は如何ほどまで上昇するか。

【 解 】

 この場合、下り勾配の最高速度は勾配による加速力と、走行抵抗とが釣合ったときで、本問においては下り勾配は8パーミルであるから、重量1トン当たりの加速力は8キログラムであって、結局、走行抵抗が8キログラム/トンとなる速度を求めれば、これが最高速度である。すなわち

P282

 故に

P282_20211113135001


【 例3 】

 全重量350トンの列車が、25パーミル上り勾配線を1200馬力を発揮して運転する場合、列車の運転速度はいくばくとなるか。

 ただし列車重量1トン当たりの平均走行抵抗は3キログラムとする。

【 解 】

 25パーミル勾配を運転するときの列車1トン当たりの抵抗は、勾配抵抗に走行抵抗を加えたものに等しい。

 従って列車全体の抵抗は

P282_20211113135101

 機関車はこの抵抗に等しい牽引力を発揮しなければならない。

 馬力と牽引力および速度との間には次の関係がある。

P282_20211113135102

 従って

P282_20211113135201

 しかるに HP=1200 T=9800 であるから

P282_20211113135202

 

441p281
451p282

2021年12月10日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その190)勾配抵抗(1)

第4章 勾配抵抗

 列車が勾配線を上るときには、地球の引力すなわち重力に打ち勝って、列車全重量を勾配線の高さまで引き上げるため、前に述べた走行抵抗以外に、なお余分の牽引力が必要で、これを称して勾配抵抗と言っている。

 我が国のごとく急勾配の多い路線では、この勾配抵抗の値は非常に大きく、列車の運転に影響を及ぼすことは甚大である。

 勾配抵抗を求めるには、線路の勾配を千分率で表わした数字が、すなわち重量1トン当たりの勾配抵抗(キログラム)となるのである。例えば10%上り勾配の抵抗は、列車重量1トンあたり10キログラムとなる。今これが計算方法を説明すると、次のごとくである。

55_20211113104801

 いま第55図において、勾配線 AB を車両が進行する場合を考え、車両の重量 W を2つの方向に分け、その一つは AB に垂直なる方向 ac、すなわち w と、他は AB に平行な bc、すなわち Rg とである。

 これを言い換えると、車両の重量 W が勾配のレール面に作用しているということは、車両の進行と反対の方向に Rg なる力が作用すると共に、勾配の面に垂直に w なる重量が作用している事と同じに考えられるので、この Rg なる力が、すなわち勾配抵抗である。

 いま図において2つの三角形 ABC と abc とは相似形であるから、相対する辺は互いに比例を成すをもって

P279

 従って

P280

となる。しかるに

P280_20211113104901

であるから

P280_20211113105001

の代わりにこれらを入れ替えると

P280_20211113105002

 故に


P280_20211113105102

 鉄道線路の勾配程度では、AB と AC とはほとんど同じ長さであるから、前式中 AB の代わりに AC を入れると

P280_20211113105101

 この式で

P280_20211113105201

は線路の勾配を示すものであるから、結局、勾配抵抗 Rg は車両の重量 W に勾配を乗じて求め得られる。いま上り勾配の程度を

P280_20211113105301

とし、前式の

P280_20211113105302

の代わりにこれを入れ換えると

P280_20211113105401

となるが、これは車両の全重量に対する抵抗であるから、これを列車重量1トン当たりに付いて求めれば、前式を W で除せば良いから、

P280_20211113105402

 また勾配抵抗をキログラムで表わすには、上式の分子に1000を乗ずれば良いから

P280_20211113105403

 すなわち勾配抵抗は、勾配を千分率で表わした数字が、そのまま勾配抵抗として表される事となる。

 以上は上り勾配の場合で、この場合は全然抵抗となるが、下り勾配の場合は、勾配抵抗は加速力となるのである。これは急な下り勾配を運転する場合、列車を制動しないでそのまま放置していると、漸次速度が高まって来る事によっても、容易に首肯(納得)されるものである。

 これによってみると、勾配抵抗は必ずしも無益なものでなく、下り勾配ではかえって利益になることがわかる。

 ふつう上り勾配および下り勾配の抵抗を示すには、その数字の頭に正負の符号を付し、上り勾配に対しては正、下り勾配に対しては負を採って区別している。例えば10パーミル(‰)上り勾配では +10、同じく下り勾配では -10、とするがごときである。

 

441p279
441p280
441p281

2021年12月 9日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その189)貨車の走行抵抗(2)

 列車の走行抵抗は、種々の原因でその抵抗値が相違する。従ってその公式も一様ではないが、各国の権威者によって提案されたものを挙げると、次のごとくである。

【 ストラール氏の式 】

P277

【 フォンボリス氏の式 】

P278

【 バルビエー氏の式 】

P278_20211113085401

【 ライツマン氏の式 】

P278_20211113085402

【 ナダール氏の式 】

P278_20211113085403

【 小林氏の式 】

P278_20211113085404

 

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2021年12月 8日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その188)貨車の走行抵抗(1)

5.貨車の走行抵抗

 貨車1トン当たりの走行抵抗は、空気抵抗に影響することがはなはだ大で、ことに有蓋空車においてしかりである。すなわち空貨車はその重量軽きも、空気抵抗は積車と何らの相違なきをもって、結局重量1トン当たりの走行抵抗は、空車においてはなはだ大である。

 第53図は、この関係を示す実績であって、これによれば相当大きな相違のある事がわかる。

53_20211110173601

 列車中、積空貨車の割合を省全体に付いて求めるに、平均において列車中には積車75%、空車25%程度の割合であるから、貨車の走行抵抗を求めるにも、この割合を使用して求めるのが普通である。

 次式は本省運輸局式の貨車走行抵抗の公式で、積車75%、空車25%の混成を予想して定めたもので、もし空車が25%以上の場合は、この式で求めたものより抵抗の増加を来たし、また空車が25%未満の場合は減少するものである。

P276

  R =貨車走行抵抗(キログラム/トン)

  V =速 度(キロメートル/時)

 この関係を示したものは第54図の通りである。

54_20211110173601

 次に空貨車は積貨車に比し、トン当たり走行抵抗がはるかに大きいのは事実で、その原因は次の各項であると考えられる。

  (1)空気抵抗

  (2)換算両数制定方法

  (3)車軸ジャーナルにおける摩擦抵抗

 空気抵抗に付いては前述の通りであるが、換算両数制定方法に関してみるに、近来の貨車は鋼製化その他の理由により、その自重ははなはだしく増加し、日常駅構内において目撃する貨車に付いて考えても、大部分のものは空車の換算両数に比し自重の方が重い様で、換言すれば同一換算両数を牽引するも、空車の場合はその実際重量が重いのである。

 次に車軸ジャーナルの摩擦抵抗は、車軸圧力の平方根に逆比例する。空車の場合はその重量が減少し、圧力も小さくなる結果、摩擦抵抗が増加する。

 空貨車の抵抗の割合が多いという事は、石炭の消費成績等を比較する場合には当然問題になるが、我が国には勾配区間が多いので、多少走行抵抗の相違があっても、全抵抗の主要部分が勾配抵抗にあるので、実用上の問題としては平坦区間を除きさしたる問題にはならない。

 米国においては、空貨車の走行抵抗が積車に比し大きいという理由によって、特殊な換算方法を採用している。一例として、ある区間の牽引定数が積車のみならば1000トン、また空車のみの場合は700トン、積空等分なるときは850トンと言う様に定めたものである。

 なお客貨車の走行抵抗とは別ではあるが、制輪子が多少でもタイヤに接している様な場合には、非常にその抵抗が増すものであることは、最近の試験において認められた。

 

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2021年12月 7日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その187)客車の走行抵抗

4.客車の走行抵抗

 走行抵抗は一般に R=a+bV+cV² の形で示し得ることは先に述べた通りであるが、客貨車では機関車に比して機械部分の構造が簡単なため、b 項の値がはなはだ小さくなるので、これを省略しても大した差異がないので、ふつう R=a+cV² なる形で表わされることもある。

 前にも述べたごとく、走行抵抗中の空気抵抗は、車両の断面積、前面の形状および車両数に関係し、車両の重量には何らの関係も無いから、これを車両1トン当たりで表わす場合には、連結車両数の多少によって、走行抵抗一般式中の第3項 c の値が相当異なってくるので、適当な連結車数を考え、実際に即した c の値を定めなければならないのである。

 本省運輸局においてはこれらの点を考慮し、実績を基として走行抵抗算式を次のごとく定めている。

P273_20211110173301

  R =走行抵抗(キログラム/トン)

  V =速 度(キロメートル/時)

 また最近、鋼製ボギー客車が多く製作され、将来全車両が鋼製化する用意として、これが走行抵抗を試験せる結果は次の通りである。

P273_20211110173401

 一般に客車の抵抗は、次に述べる貨車のそれに比較して小さいが、その原因は車両構造が良好で動揺が少なく、これによる損失を軽減し得る事と、いま一つは断面積に比しその重量が重いので、重量1トンに割り当てた空気抵抗が減少するからである。

 なお特殊な場合、例えば気動車等を単車運転する場合には、空気抵抗を別に計算しなければならない。この場合はふつう次の式が用いられる。

P274

  Ra =空気抵抗(キログラム)

  A =車両の断面積(平方メートル)

  V =速 度(キロメートル/時)

 次表は(150)および(151)式による客車走行抵抗の値を示したもので、(150)式の分は第54図に示すごとくである。

P274_20211110173601
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2021年12月 6日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その186)機関車の走行抵抗(2)

 次に各権威者から発表された、機関車走行抵抗の公式を示せば、次のごとくである。

【 ストラール氏(ドイツ)の式 】

P270_20211110135301

【 キーゼル氏の式 】

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 キーゼル氏は、機関車の先従輪および炭水車輪上重量に基く走行抵抗は、客貨車の抵抗と同一であると説明している。

【 ゴス氏の式 】

P270_20211110135402

 この式を見ると、ちょうどシリンダー内平均有効圧力 0.268キログラム/平方センチメートル(=3.8ポンド/平方インチ)に相当するだけ、機械部分の摩擦損失があることを意味し、速度には無関係である。

【 朝倉博士の式 】

 機関車の走行抵抗を考察するに、客貨車と同様、走行部を有するのみならず、機関車が動力車であるという点において、特殊な機械部分を装置している。故にその抵抗の研究においても、これを2つに分けて考える必要があると成し、機械部に対しては機械効率を使用して摩擦損失を求めるもので、次式で計算する。(第三編 機関車牽引力 参照)

P271_20211110135501

 次に車両抵抗としては次式により求めている。

P271_20211110135502

【 官房研究所の式 】

 官房研究所において、C53,C52,C51および8620形式機関車に付き、試験台試験を行った結果によれば機械部分の走行抵抗、すなわち機関抵抗は、次式で計算することができる。

P271_20211110135601

 

【 バルビエー氏の式 】

P272

【 フランク氏の式 】

P272_20211110135801

【 ナダール氏の式 】

P272_20211110135802

【 フォンボリス・ライツマン氏の式 】

P272_20211110135901

【 ランキン氏の式 】

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P273

 

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2021年12月 5日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その185)機関車の走行抵抗(1)

3.機関車の走行抵抗

 機関車の走行抵抗中には、機関車が単に車両としての摩擦抵抗や、空気抵抗等の他に、動力発生の元である機関の機械抵抗をも考えねばならない。それ故、これを次のごとく分解して考える必要がある。

  (1)機関の摩擦および衝撃による抵抗

  (2)先輪、従輪および炭水車の摩擦抵抗

  (3)空気抵抗

 現在、国有鉄道で採用している運輸局式を示すと、次のごとくである。

P268

 この式は少し複雑している様であるが、やはり前に述べた走行抵抗の一般式

P268_20211110074401

に合致している。すなわち速度に関係の無い値( 9.3 および 1.8 )、速度の一乗に正比例する〔 0.047(n-1) 〕 および 0.015 と、速度の自乗に正比例する 0.057 から成り立っている。

 次表は代表的機関車の走行抵抗を示したものである。

P269_20211110074501

 機関車走行抵抗は、力行運転の場合、惰行運転の場合、または主連棒および連結棒を取り外した場合では、その値に相違がある。官房研究所では、惰行運転の場合を試験結果に基づき、次の実験式で示している。

P269_20211110074502

 また惰行運転中における全抵抗を各速度に付き求めれば、次のごとくである。

P269_20211110074601

 これを力行運転の場合の走行抵抗に比較すれば、低速度においては小さいが、漸次速度が高くなるに従い、かえって大きくなっている。すなわちC51形式は60キロメートル/時、C53形式は35キロメートル/時、D50形式は約40キロメートル/時にて、その値が相等しくなり、それ以後、速度が高くなるに従い漸次抵抗を増加している。

 

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2021年12月 4日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その184)走行抵抗の一般式

2.走行抵抗の一般式

 走行抵抗中には、速度に無関係のもの、速度に正比例するもの、および速度の自乗に正比例するものの3つがある。

 今 R を全走行抵抗、V を速度とすれば、走行抵抗を示す一般式は次の形となる。

P267

 車両の走行抵抗は、いかなる種類のものでも総じてかような式で表わされるものである。しかしてこのうちの a,b,c は、それぞれ次のごときものである。

 a =速度の高低に関係のない一定の抵抗値を有し、これに属する抵抗は

  (1)機械部分の摩擦抵抗

  (2)車軸ジャーナルの摩擦抵抗

  (3)車輪とレールとの摩擦抵抗

 b =速度の変化に正比例して変化する走行抵抗部分で、これに属する抵抗は

  (1)衝撃による抵抗

 c =速度の自乗に正比例する走行抵抗部分で、これに属する抵抗は

  (1)空気の抵抗

  (2)動揺による抵抗

 

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433p268

 

2021年12月 3日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その183)走行抵抗を起こす原因(3)

(4)空気の抵抗

 空気抵抗は列車の速度と車両の断面積に関係し、重量には全く無関係のもので、これを分けると、車両の前頭および後部の形状に応じ、その部分に生ずる空気の衝突および渦巻に起因するものと、車体側面の摩擦および凹凸部に起こる小渦流に起因するものとであって、車両端部の形状の定め方いかんによって、その抵抗は大きな差のあるもので、最も理想的の形は、車体全体を流線形(ストリーム・ライン形)とすることである。

 流線形とは、あたかも葉巻タバコのごとき形を成すもので、この形の空気抵抗を1とし、その他の形状に作用する抵抗の値を示すと第52図の通りで、この結果から、空気抵抗は主として車両最後部の形状によって変わる事がわかる。

52_20211108231101

 上図より見れば、列車前頭をいたずらに尖らすことは有害無益で、むしろ後部を尖らす事が必要であるが、鉄道車両ごときは、かかる形状に作ることは不可能であるのみならず、前後いずれかの方向へも運転する必要から、前後部をそれぞれ異なった形にすることは、すこぶる不便である。

 列車が無風の所を運転するときは、列車速度に等しい風圧をその前面に受けるため、次の空気抵抗を受けるものと言われている。

P266_20211108231201

  P =空気圧力(キログラム/平方メートル)

  V =速 度(キロメートル/時)

 実際には車両の前頭は凹凸形を成しているので、前式で求めたものよりも少なく、大体その値の半分位あると言われている。

 ゴス教授が車両の模型を作って試験した結果によれば、無風中を運転した場合において、中間車両に働く空気抵抗を1とすれば、前頭の機関車に対してはその10倍、最後部の車両が2.5倍であった。

 この際発見した面白い現象は、機関車の次位車両の空気抵抗は最も少なく、その割合は0.8位であった。この原因は風が機関車前面に衝突したため、次位車両をよけて流れるものと考えられている。

 故に空気抵抗は長大な列車に対しては、その全長にわたる平均抵抗は漸次減少するが、逆に単車運転を成すものでは、その空気抵抗は総抵抗中、かなり大きな部分を占める様になるので、これを減少するためには両端の形状が重要性を持つもので、ガソリン動車のごときは流線形化の効果が特に大である。

 以上述べた通り、空気抵抗は速度の自乗に比例して増加すると共に、車両の外形と連結車数の多少に関係し、列車の重量には無関係であると考えられている。従ってこの抵抗は、ふつう次の様に表わされる。

P266_20211108231202

  R =空気の抵抗(キログラム)

  F =車両前面の形状による常数

  A =車両の断面積(平方メートル)

  V =速 度(キロメートル/時)

 すなわち車両の形状が流線化されているものと、いないものとは、車両の断面積は同じであっても F の値が異なってくるのである。

 空貨車1トン当たりの走行抵抗が、積貨車に比して大きいのは、軸受圧力の影響もあるが、空気抵抗が車両の断面積および速度に関係し、その重量には無関係であることがその原因を成している。

(5)動揺のために起こる抵抗

 動揺のために生ずる抵抗は、速度の増加に伴い前後、左右および上下等の動揺がはなはだしく、これがために起こるもので、その影響は速度の自乗に比例するものと考えられている。それ故、高速度の場合にはその抵抗は、はなはだ大きくなる。

 一般に走行抵抗中に速度の自乗の項のあるのは、空気の抵抗と、この動揺による抵抗のためである。

 

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2021年12月 2日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その182)走行抵抗を起こす原因(2)

(3)レールと車輪間の摩擦抵抗

 レールと車輪間の摩擦によるものは、これを3つに分けて考えることができる。

 第1は、車輪がレール上を回転するための抵抗で、もし路盤、道床およびレールに少しのたわみが無く、レール面が真の水平になっていれば、この抵抗は無いのであるが、実際には相当のたわみがあるので、このたわみのためタイヤ周は、進行方向に相当の長さをもってレールと接する事となり、この接触する長さに比例して抵抗を増す。この抵抗がすなわち回転摩擦である。

 またレールの継目個所における抵抗も、これに属するものである。

 第2は、タイヤがレールと接触する部分は理論上、点接触(ポイント・コンタクト)であるが、実際には車輪上重量のため、その接触部は歪みを受け、相当な面積をもって接触するはずである。

 しかるに踏面は円錐形を成すため、車輪の直径は各部で相違し、レールとの間において滑りを生じ、これがために抵抗を生ずるのである。

 第3の原因は、車両が直線路を運転するときは、特に蛇行動を増加するもので、ことにタイヤ踏面が円錐形を成している点において、その傾向を増加する。

 蛇行動のためフランジは左右レールに交互に接触し、走行抵抗を増加するものである。

 

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2021年12月 1日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その181)走行抵抗を起こす原因(1)

第3章 走行抵抗

1.走行抵抗を起こす原因

 列車が走行するために起こる抵抗は、その原因が複雑しているので、これを分けて考える事はなかなか困難であるが、大体次の5つになる。

  (イ) 機械部の摩擦および衝撃による抵抗

  (ロ) 車軸ジャーナルの摩擦抵抗

  (ハ) レールと車輪間の摩擦抵抗

  (ニ) 空気の抵抗

  (ホ) 動揺ために起こる抵抗

(1)機械部の摩擦および衝撃による抵抗

 蒸気機関車のピストン、ピストン棒、弁装置、クロスヘッドおよびクランクピン等の機械部分の摩擦と、各隙間に生ずる衝撃等のために起こる抵抗である。

 これらは蒸気機関車特有のものであって、特にこれを機関抵抗と称している。

(2)車軸ジャーナルの摩擦抵抗

 車輪が回転するとき、ジャーナルと軸受金との間に生ずる摩擦抵抗で、その大きさは車軸の負担重量、車軸および車輪の直径、ならびに軸受金と車軸間の滑り摩擦係数によって相違するものである。

51_20211107162101

 いま車軸上の負担重量を W キログラムとし、受金と車軸間の滑り摩擦係数を μ とすれば、車軸の回転に反対せんとする抵抗力は Wμ キログラムである。この力はもちろん車軸の周囲に作用するものであるから、これを牽引力と比較するため車輪周に換算するときは、この抵抗力は車軸と車輪との直径の逆比例になって減少する。

 いま車輪周に作用する抵抗力を R キログラムとすれば、これは次の式で表わされる。

P262

  R =ジャーナルの摩擦抵抗(キログラム)

  W =ジャーナル上の負担重量(キログラム)

  μ =軸受金と車軸間の摩擦係数

  d =ジャーナルの直径(センチメートル)

  D =車輪の直径(センチメートル)

 上式中、摩擦係数は給油状態が全く同じでも、決して一定のものでなく、車輪の回転速度と軸受金の圧力のいかんによって相違するもので、これらの間には次の関係があるものと言われている。

P262_20211107162001

  μ =軸受金とジャーナル間の摩擦係数

  P =単位面積当たり軸受圧力

  V =ジャーナルの円周速度

  K =定 数

 すなわち摩擦係数は回転速度の増加に伴い増すが、その影響は速度の五乗根に比例するので、大した影響のないことがわかる。例えば速度が2倍になっても、摩擦係数の増加は

P263_20211107162201

すなわち15%の増加に過ぎない。

 また軸受圧力が増加すると、その圧力の平方根に逆比例して摩擦係数が減少する。この影響はかなり大きいもので、もしこの圧力が2倍になれば

P263_20211107162202

すなわち約30%減になる。

 しかしこの関係は機関車および客車の様に、その重量の変化少なきものには何らの影響もないが、貨車の様に積、空の重量差の大きいものでは、相当に考慮しなければならない。

 客貨車の1トン当たり走行抵抗が、積貨車に比し大きいのは、空気抵抗が重量に無関係であることの影響もあるが、軸受圧力の小さいのも見逃しがたい原因である。

 なお摩擦係数は、滑り面の温度によっても相違がある。長時間停車後出発する場合は、その係数が大きいが、運転を継続するに従い温度が高くなり、給油状態が良好になるに従い係数は小さくなる。出発抵抗の大きい原因の一つは、この理由によるものである。

 タワー氏が100ポンド/平方インチ(=7.1キロ/平方センチメートル)の圧力において、ジャーナルの温度が華氏120度および60度の場合に付き、試験した結果は次表の通りで、各速度に対して温度の低い方が、その摩擦抵抗の大きいことが伺われるのである。

P263_20211107162301

 

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