心神喪失などの状態で殺人や放火といった重大な他害行為を犯した人間が不起訴や無罪となる「医療観察事件」。その被害者や遺族が得られる加害者に関する情報はわずかだ。真に被害者側を支援する制度を作ってほしい-。被害者らの団体が開いたシンポジウムを取材し、あるべき制度の形を考えた。
夫の死で理不尽を実感も情報少なく
医療観察事件の被害者や遺族への冷淡な扱いに声を上げるのは、平成31年に児童養護施設の施設長だった夫=当時(46)=を元入所者の男に殺害された大森真理子さん(59)。加害者の男は心神喪失だと判断され、不起訴になり、その処遇を決める医療観察審判を経て指定医療機関へ入院した。
真理子さんが「事件に至るまでのことを知りたい」と審判の傍聴などをする中で、幾度も実感させられたのは、遺族が触れられる情報の乏しさだ。そうした実情を変えるため、令和3年に被害者や遺族、支援者でつくる「がじゅもりの会」を発足させた。会は今月17日、3回目となるシンポジウムを開催した。
医療観察審判は加害者の処遇を決める重要な場だが、裁判官の裁量によって運用は大きく異なる。加害者の精神状態への影響を理由に被害者や遺族の傍聴が認められなかったり、認められても弁護士の同行が許されず、やりとりを理解できない人もいたりする。