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「統計の初歩の初歩から間違っている「一流新聞」の陰謀論思考」いまだに訂正を出さないということは、なにをいわれているか理解できないか、読者など適当にだましておけばいいと思っているか、どちらかなのでしょう。 https://t.co/qCmaQkgDHE
— 橘 玲 (@ak_tch) June 29, 2026
橘さんの投稿を見かけまして・・・・
今回ツッコむ記事
ステップファミリーへの中傷投稿が拡散して、朝日新聞が「継父は虐待多い?実は統計ない」と火消しに入った。中傷はもちろんダメ。でもね、その火消しに使われてる数字の読み方が、これまた小学校の割合でつまずくやつでガクッとした。
結論から先に言う。あの記事が出した数字は、継父の虐待が「少ない」ことを1ミリも証明していない。むしろ正しく割り戻すと、子ども1人あたりのリスクは実父より数倍〜数十倍高く出る可能性が高い。高学歴の新聞記者やデスクも統計が分からない証明だ。
記事はこう言う。中傷は事実無根だ、と。根拠に挙げたのが次の2つ。
そして「ほら、件数で見たら圧倒的に実父のほうが多いでしょ。継父が虐待しがちっていうのはデマ」と。…うん、この読み方が完全にアウト。小学校5年で習いました。いまは中学かも。
記事タイトルの「実は統計ない」自体は、半分は正しい。日本には「継父と実父で、子ども1人あたりどっちが虐待しやすいか」をちゃんと比べた公的統計が、実際ほぼ存在しない。母子世帯数すら国勢調査から推定するしかなくて、継父同居児の正確な数は誰も持っていない。
でもそれは諸刃の剣だ。「継父が多いという統計はない」なら、同じ口で「継父は少ないという統計もない」と言わなきゃフェアじゃない。なのに記事は、件数データを使って「少ない側」に話を寄せてる。これがダブルスタンダードなんだよね。
ここが今日の本題。「件数の割合」と「1人あたりのリスク」は、まったく別の数字だ。
実父が45.3%で継父が16.6%。件数だけ見れば実父が圧倒的。でも当たり前すぎる事実を1個思い出してほしい。そもそも実父と暮らしてる子のほうが、桁違いに多い。
日本の子どもの大半は実父と暮らしている。一方、継父と暮らす子は全体の数%しかいない。継父同居児の規模感を養子縁組ベースで推定すると年間2.2万世帯ペースで発生するくらいで、母数としては実父家庭と比べて2桁くらい小さい。
母数が2桁ちがうのに、件数だけ並べて「少ない」って言うのは、東京とどこかの限界集落で犯罪”件数”を比べて「村は安全だ」と言ってるのと同じ。人口で割らなきゃ何も言えない。これ、小学5年で習う「割合」の話。
比べたいのは件数じゃなくて、子ども1人あたりの検挙リスク。式はシンプル。
÷ (実父による件数 ÷ 実父と暮らす子の数)
件数比だけ取り出すと 16.6 ÷ 45.3 = 0.366。「件数ベースなら継父は実父の36.6%」。でもここに母数の比をかけて補正する。式を整理するとこうなる。
継父と暮らす子の割合は誰も正確に知らない。だから感度分析でやる。継父の母数を控えめ〜かなり少なめまで振ってみると——
| 前提 | 母数(子どもの割合) | 補正後リスク比 |
|---|---|---|
| 控えめ | 実父80% / 継父5% | 約5.9倍 |
| 中間 | 実父85% / 継父3% | 約10.4倍 |
| 少なめ推計 | 実父85% / 継父1.3% | 約23.9倍 |
| かなり少なめ | 実父90% / 継父0.5% | 約65.9倍 |
どの前提を置いても1倍を大きく超える。継父の母数を現実的な数%に置けば、子ども1人あたりの検挙リスクは実父の10倍前後〜数十倍に見える。件数の「0.366」とは真逆の絵が出てくるわけ。
もう一段えぐい話をすると、警察庁の「養父・継父16.6%」には養父(養子縁組した父)が混ざってる。養子縁組は家裁を通す・本人の意思や審査が入る、いわばスクリーニング済みの集団で、実父に近い。これが継父の数字を下に薄めている。
つまり、もし純粋な「継父・内縁の夫」だけを抜き出せたら、リスク比は上の表よりさらに高く出る。記事の数字は、むしろ継父側に有利に丸めた状態で、それでも母数補正すれば実父を上回る、ということ。
「虐待死で養親・継父はわずか2.7%」も同じ。継父同居児がもともと数%以下しかいないんだから、2.7%は母数からすればむしろ過剰代表ぎみですらある。
おまけに比較相手の「実父母67.1%」は実母も合算されてる。乳児の虐待死は実母が大きな割合を占めるから、この67.1%は父親同士の比較には使えない。分子と分母の定義がそろってない数字を並べて「ほら少ない」——比較になってないんだよね。
言いたいのはこれ。一流大学を出た記者やデスクでも、母数で割るという小学校の割合がスッと出てこない。これは頭が悪いというより、生の件数の”迫力”に脳が引っぱられて、母数が視界から消えるという有名な認知の罠(ベースレート・ネグレクト)だ。
裏を返せば、割合・1人あたり・条件付き確率——この「割るクセ」さえ持っていれば、新聞のミスリードの大半は自力で見抜ける。算数で一番こけるポイントが「割合」だと言われるのは伊達じゃなくて、大人になっても、しかも活字のプロでも、ここで普通にこける。
誤解しないでほしいんだけど、SNSの中傷を擁護する話じゃない。属性だけで個人を断罪するのは、データの読み方として一番ダメなやつだ(それこそ母数を無視した一般化)。
ただ、「データ上むしろ少ないから安心して」という安全側のウソで打ち消すのも、同じくらい不誠実。正しい着地はこうだ——1人あたりで見れば継父家庭のリスクはむしろ高めに出る。だからこそ、属性で叩くのではなく、継親子の関係形成の難しさや家庭内の力関係という”構造”で対策を語れ。これが家族社会学の到達点でもある。
数字に「少ない」と言わせたいなら、まず母数で割ってから出直してこい。それが報道のリテラシーってもんでしょ。
継父と暮らす子どもの母数は日本に正確な公的統計がなく、本稿のリスク比はあくまで前提を置いた感度分析・概算です。継父割合をどこに置くかで倍率は大きく動きますが、現実的な数%の範囲では「実父を上回る」という向きは頑健です。件数データ:警察庁(2025)、こども家庭庁(虐待死検証)。継父世帯の規模感:養子縁組ベースの推定(年約2.2万世帯)等を参照した概算。「養父・継父」「実父母」など分類が合算されている点も、比較の精度を下げる要因として割り引いて読む必要があります。