2026年6月29日(月)

【美輪明宏さん追悼・復刻連載】羽生選手、小平選手、高木選手 メダルの裏に冷静沈着な判断力

[ 2026年6月29日 03:30 ]

美輪明宏さん
Photo By スポニチ

 20日に老衰のため91歳で死去した歌手で俳優の美輪明宏さんの連載を、スポニチ本紙では約15年にわたって掲載していた。「世直しトークあれこれ」(05年11月~06年12月)、「明るい明日を」(08年1月~11年3月)、「美輪の色メガネ」(13年2月~23年12月)で、世の在り方を厳しい視線で見つめ、時に悩める人々に寄り添い、常に明日を生きる希望を伝えていた。美輪語録が人気だった連載を再録する。

<2018年3月4日掲載「美輪の色メガネ」>

 ◇日本選手のメダルラッシュに沸いた平昌冬季五輪が終わって約1週間、今でもあの感動の余韻に浸っています。テレビの前での応援でしたが、選手からたくさんのことを教えられたような気がしますが。 (世田谷区 大学2年 20歳)

 メダルに輝いた選手もいれば、残念ながら目標に手が届かなかった人もいました。勝負の世界は非情。表彰台に立てるか立てないか、どの競技も実力は紙一重の差しかありません。もちろん、運もあるでしょう。結果はともあれ、あの晴れ舞台に立つまで選手のみなさんは、どれほどの努力と研鑽(けんさん)を積んできたのでしょうか。

 そんな中でもドラマチックだったのは、フィギュア男子の羽生結弦選手でした。ご存じの通り、大ケガからの復帰。約4カ月ぶりに出場したのが、オリンピックの大舞台。私は前回のソチ五輪で金メダルを獲った時、実は心配なことが頭をよぎりました。それは、この世には「正負の法則」があるからです。ひとことで言えば、「楽あれば苦あり」。成功の後には必ず思わぬ落とし穴が待ち受けているのです。幸運であればあるほど反動は大きい。そして、昨年、アクシデントが起きました。ところが、今回、その逆境を見事にはね返したのです。

 スピードスケート女子500メートルで優勝した小平奈緒選手も女子チームパシュートをはじめ3種目で金、銀、銅メダルを獲得した高木美帆選手も何度も挫折を味わい、それを乗り越え栄光をつかんだのです。応援する私たちは、その姿に勇気と感動を覚えるのです。しかし、計り知れないプレッシャーに打ち勝つトップアスリートたちの精神力の強さは、常人には真似(まね)できるものではありません。やはり、何か特別な才能を持っているのでしょう。

 では、彼らから何を学ぶべきか。それは、どんな時でも常に冷静沈着でいられるということです。羽生選手は競技が終わった後の記者会見で、「スケートが続けられないと思ったことがあった」と明かしました。それほどのダメージを受けたにもかかわらず、日々、苦しいリハビリに耐え、諦めることなくしっかりと目標に照準を合わせていたのです。

 肉体的にも精神的にもあれほどのショックに襲われれば、普通の人間なら「もうダメだ」とマイナス面ばかりに囚(とら)われ、理性が感情に負けて、あたふたしたり自暴自棄に陥ってしまうものです。そうなると、本来自分のなすべきこと、やるべきことを見失うばかりか、苦しみから逃れようと目先の快楽や酒におぼれ、人生そのものを棒に振ってしまうことにもなりかねません。

 ところが、羽生選手は、いかなる時も高みを目指して冷静に対処し行動し続けていました。クールに自分が置かれた立場、境遇を客観的に分析し、どうすれば困難を克服できるかを緻密に計算していたのです。「逆境は嫌いではありません」と、こともなげにインタビューに答えていたのには驚きました。小平選手、高木選手も同様です。どんな苦難に遭遇しても決して感情に左右されることなく、あくまで理性で判断を下し難題をクリアしていく。その点を大いに学ぶべきです。

 ところで、羽生選手がフリーの演技で使用した「SEIMEI」は、平安時代の安倍晴明が主人公の映画「陰陽師」のテーマなどを構成したもの。どなたの案か分かりませんが、あえてこの曲を選んだことも摩訶(まか)不思議です。ひょっとして古(いにしえ)の呪術師の見えない力が五輪の魔物を封じ、勝利に貢献したのかもしれません。

「美輪明宏」特集記事

「美脚」特集記事

芸能の2026年6月29日のニュース

広告なしで読む